最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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094 不良さん 完全に話が逸れる

公開日時: 2021年5月11日(火) 00:21
更新日時: 2022年11月17日(木) 18:15
文字数:2,656

●前回のおさらい●


 真面目に悩んでいた筈の倉津君なのに。

樫田さんの登場により、いつの間にか話題は脱線転覆を繰り返している。

「そりゃあ約束だから、当然、教えてやるわな。……但し、出来たらの話な」


おぉそうだ、そうだ。

この構図って、良く良く考えたら、いつもの俺が、崇秀にやられてるパターンじゃねぇか。


って事は、葉緑体でもガンバりゃ、なにかと出来るもんだな。

今の俺は、崇秀バリに嫌な奴を演じれてるぞ。


まぁ、その内ボロが出るだろうがな……



「真琴君……お願い。お願いだから、私にそれを教えてよ……私の事そんなに……嫌い?意地悪しないで……ねぇ、お願い」


いぃぃいいぃぃいぃ~~~~!!


だっ、誰だよ……

これは樫田の皮を被った、何処かの漫画キャラクターか?


……って言うのもな。

樫田は性格は『あれ』だが、顔の構造自体は、決して悪くないんだよな。

……いや、寧ろ、面食いな俺から見ても、嫌いな顔の作りじゃない。

故に、このド腐れた性格さえなんとかすれば、きっと凄ぇモテる女になる可能性を秘めているんだよ。


だから、このキャラ変には、俺もビックリしてしまった訳だ。


……って事だから。

オマエは、一生そのキャラを演じ続けろ。

そうすれさえすれば、オマエの人生は、今日を境に華やかな薔薇色になる筈だ。


なんて言いながら、少し照れている俺。



「おっ!!おっ!!わかってんじゃねぇか。オマエに欠落してるものは、それだよそれ」

「なにがよ?全然、訳わかんないんだけど」


あっ……言ってる傍から、元の千尋に戻っちまった。


素の千尋だ。


なので、もぅ既にコイツには『萌の欠片』も残っておらず、ソレと同時に、奴の薔薇色の人生終了の合図が聞こえた。


まぁそれでも、約束をしただけに、一応、さっきの話の説明だけはしてやるか。


またやるかも知れねぇし……



「わかんねぇって、なんだよ?良いか。お前みたいなド腐れ女でも、そう言う可愛い部分を見せたら、男なんざイチコロなんだよ」

「しっ、失礼な。誰がド腐れ女よ。……それにどう言う事なのよ?イマイチ、意味が良く解らないんだけど」

「あのなぁ、オマエの普段を知ってれば、そんな可愛い仕草をするとは思わねぇだろ。……偶に、そう言うところを男に見せたら、男なんざ『あっ、コイツ、意外と可愛いじゃん』とか簡単に思ちゃうもんなんだよ」

「あからさま過ぎる。……男って、そんなに馬鹿な生き物なの?」

「所詮、そんなもんなんだよ、男って言うのは、どうやっても、女に単純に騙される様に作られてんだよ」


現に俺も、ほんの少しだが、さっきのオマエには『ドキッ』っとした。


既に、これが動かぬ証拠だ。

故に、この時点で立証されていると言って良い。

マニアの俺が言うんだから、間違いはない。


自信を持って可愛い女になってくれ樫田……頼むから。



「ちょっと待って……って事はよ。真琴の言ってる事が正しいとしたら、奈緒って、そんな事が出来るって事だよね。そんなの初めて知ったんだけど」

「いや……奈緒さんの場合は、ちょっと違うぞ。勿論、狙ってやってる感は否めないんだが、恐らく、あの人は『天然』だ」

「ふ~~~ん、あの奈緒がねぇ」


なんだよ、変な顔するんだな。

この表情から察するに、奈緒さんって、俺と逢ってる時以外は、全然違う態度で友達に接してるみたいだな。


一体、学校では、どんな感じなんだろうな?


『俺は、この時点で、最重要な事を忘れている』

いや、正確には憶えているんだが、何故かコチラの話が、答えのキーワードになる様な気がしてならない。


兎に角、奈緒さんの事を樫田の聞いてみよう。



「なぁなぁ、オマエのその表情から察した事なんだがな。普段の奈緒さんって学校では、どんな感じなんだ?」

「奈緒?……あぁ見たまんまの子だよ。他人を寄せ付けない冷たい感じで、学校に来ても、殆ど、私と咲以外とは喋らない。まぁそれでも奈緒は、男子女子共に人気が有るんだよね。なんて言うか、運動神経も良いし、勉強も出来る。それで楽器でしょ……カッコイイってイメージが学内では定着してるみたいだね」

「はぁ?」


確かに、カッコイイ・イメージが無いと言えば嘘になる。


……が、どっちかと言えば俺は。

悪戯ばっかりして、チョコチョコ動き回る妖精みたいなイメージが有るんだがな。


ふ~~~む、なんだ、このイメージの違いは?



「あっ、あのよぉ」

「今度はなによ?」

「ちょっと今から、変な事を言うけど。オマエは、それがおかしいと思ったら聞き流してくれな」

「うっ、うん、良いけど」

「奈緒さんって『妖精』みたいなイメージねぇか?」

「あっ、うん。それ、わかるわかる」


良かった。

樫田が満面の笑みで頷いてる所を見たら、同意を得れたって事だよな。


奈緒さん、学校でも、そう言うイメージも有るんだな。



「確かに奈緒って、普段から毅然としてるから『妖精の女王』みたいな感じは有るよね」

「はぁ?」

「えっ?なに?違うの?」

「いやいや、全然違うぞ。……俺の言ってる妖精は、あの気紛れ起こして悪戯とかする『ティンカーベル』みたいな奴なんだが……」

「へっ?」

「はぁ?」


矢張り、樫田と俺とでは、奈緒さんに対するイメージに、あまりにも大きな開きがある。


此処まで行ったら、既に他人の領域だ。


確かに樫田の言う様なイメージを、俺も最初から持っていなかった訳ではないが……それは仲良くなる以前の話。

今の俺には、奈緒さんに対して、そんなカッコイイ・イメージは毛先の程もない。


どちらかと言えば……

①山中や関西人を勘違いして『冷たくあしらって』相手が『美味しくなってる』とか、無茶苦茶オチョコチョイな事を考えてたり。

②俺の買い物にも拘らず、オマケや値引きを、楽器屋の店員に催促する様なお節介な事をしたり。

③崇秀にからかわれて、ムキになって自分が恥ずかしい様な事をしたり、無駄に緊張してみたり。

④1度笑い出したら、自分で制御出来なくなったり。

⑤物知りで説明マニア、これも1度話し出すと止まらないし、上手く説明出来無いと膨れる。


兎に角、奈緒さんは表情豊かと言うか、小さな事で一喜一憂するイメージが付いている。

故に俺の中で、これらの行為は日常的に起こっているものだと思い込んでいたもんだから、俺なんかより付き合いの長い樫田や咲さん達が知らない筈はないと、決め付けていたのかも知れない。


ただそうなると、どっちの奈緒さんが、本当の奈緒さんなんだろうか?


樫田の言う『妖精の女王』イメージ?

俺の考える『ティンカーベル』イメージ?


そこを詳しく知りたくなってしまった俺は、バンドの事なんて、完全にそっちのけで、その話を樫田と続けた。



この様子からして、結局の所、俺は、自分のツマラナイ人生なんかより『奈緒さんの方が数倍大事に感じてる』様だな。


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


更に話が逸れて行ってますね。

ですがバンドの件も、元を正せば奈緒さんの事を考えての事なので、全くお門違いと言う訳でもないのかもしれませんね。


自分の本当の気持ちを確かめる上でも、必要な事なのかもですし(笑)

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