●前回のおさらい●
ドラムの件でグチ君は、山中君のスパルタ方式で特訓中。
そして、ボーカルの件では、奈緒さんが、カジ君を指導中。
そんな中、ハミ子に成ってしまった倉津君は、タバコを吸いに屋上へ逃亡を図った!!
(サボって、人任せにして、ただで済むと思うなよ(ΦωΦ)フフフ…)
煙草を吸おうと考えた俺は、例の喫煙所になってる屋上に上がった。
いや、此処を正確に言えば『本心じゃタバコが吸いたいんじゃなく』『精神的な苦痛になった為、逃亡を図った』と言った方が、より正確な表現だと言えよう。
そんな俺は、自身を邪魔者だと思い込みながら、屋上で休憩がてら煙草に火をつけた。
っと同時に『ヴォ~~~ヴォ~~~ヴォ~~~……』っと携帯のバイブ音が鳴り響く。
一瞬、奈緒さんにサボりがバレたものだと思い気焦りした。
だが、携帯電話の画面を見て、直ぐに安心する。
ナンバーディスプレイに表示された文字は『非通知』だったからだ。
奈緒さんは、絶対に『非通知』では電話を掛けて来ないからな。
此処は、安心だと言え様。
んで、安易に安心した俺は、なにも考えずに電話に出る。
「はい、誰?」
「あっ、あの、コチラは倉津さんの、お電話番号で宜しかったでしょうか?」
あれ?この物凄く腰の低い喋り方は……
「あっ、あぁなんだ、誰かと思ったら、真上さんか。非通知だから誰かと思ったよ」
「非通知……ですか?あの、まだ私の携帯番号を登録して頂いてないんですね……あぁっと、別に問題ありませんけど」
電話の主は王家真上さん。
あの武藤の知り合いで。
この間、奴に紹介して貰った上品な感じのする服飾デザイナーの人だ。
まぁ、年は同い年なんだが、今回の件では多大に世話になってるんで、俺は彼女を呼ぶ時、ついつい『さん付け』で呼んでしまう癖がついている。
「っで、なんの用ッスかね?」
「あぁっと、すみません。話が逸れちゃいましたね。……あの、用件って言うのは他でもないんですよ。例の衣装の件で……少しお時間を頂きたくてお電話を差し上げたのですが……お時間有りますか?」
そう言う要件かぁ……
けど今はちょっと気分が凹んでるし、なにより休憩中なんで、そう言う系列の話は、あんまり聞きたい気分ではないな。
っとなるとだ。
「いや、すんません。今、ちょっと手が離せない感じッスね」
「そう……ですか。では、また改めて、お電話させて頂きますね。……一応、完成の報告だけしたかったので……あの、失礼します」
「へっ?ちょ……ちょっと待ってくれ真上さん。今、なんて言った?『完成』って言わなかった?」
はい?
もし完成したって言ったんなら、なにが完成したんだ?
・・・・・・
オイオイ、まさかとは思うけど。
この短期間で『女子全員分のメイド服を完成させた』とか言うんじゃねぇだろうな。
依頼してから10日も経ってねぇぞ!!
「あっ、はい、完成って言いました。あぁっと、差し出がましいとは思ったのですが、生地が少々余りましたので、適当なサイズで5着ほど追加製作しておきましたので、良かったら、お客さんのサービスにでも使って下さい……はい」
「いやいやいやいや、ちょ、ちょっと待ってくれ真上さん。マジで、全部出来たのか?」
「あっ、はい。本当は、昨晩の内には完成していたのですが。つい、そのまま転寝(うたたね)をしてしまいまして……面目ないです。あぁ、それと連絡が遅くなって申し訳ありません……はい」
「マジかよ」
「あっ、あの、転寝の件ですか?」
「あぁいや、そうじゃなくて完成の件」
「あっ、はい。それでしたら、恐らくは、ご満足頂ける物になってると思います。……私見ですけど」
「いや、あの、それにしても早過ぎないか?」
「あぁっと、ご迷惑が掛かっちゃいけないと思いまして……はい」
これはまた大人な意見だなぁ。
いや寧ろ、これは例え大人であっても、中々此処まで真正面から言える言葉じゃないよな。
だってよぉ。
今、真上さんが言った事を言うだけの奴なら世の中にも五万と居るんだがな。
大半の奴は、そんな約束の一つも守れない、信用の出来無い様な口先ばっかりの人間。
社会人でも、そんないい加減な人間が多いから、納期にキッチリ納入してくれれば御の字。
大概の企業ってのは言い訳ばっかりして、納期がズレるのが一般的な常識な訳だ。
それを10日以上前に納品って……マトモな行為だけに、真上さんは、かなり自分にシビアな人間みたいだな。
「けど、真上さん。なんで、そんなに早く仕上がったんだ?」
「あぁっと、少し睡眠時間を削りました。1日の睡眠時間を3~4時間にすれば、大凡なら、これぐらいで出来ますよ」
えっ?ちょ……この人、そこまでする様な人なのか?
「ちょ!!真上さん無茶苦茶だぞ。そんな無茶したら、体に掛かる負担が尋常じゃないぞ」
「あぁ、その辺は、ご心配には及びませんよ。慣れてますので。それに私、今回の依頼を頂いた要さんには、他にも大きな借りが有りますので、出来るだけ早くに頑張ろうと思いまして……私、人に借り作るのが苦手なもので……はい」
「グッ……なんか、そう言われると、俺が居た堪れなくねぇか?」
「いえいえ、これは、私が勝手にやった事ですから、倉津さんは、なにも気にされる必要はないんですよ。それに其方の文化祭で、店の広告を出させて頂きますので、私は、それで十分満足させて頂いております」
矢張り、この子、普通じゃない。
武藤の知り合いだから少し変わった所はあるだろうとは思っていたが、此処まで徹底するタイプの人だったんだな。
真上さんは短期間で自分の仕事をし、その見返りが『自分の店の宣伝』だけで良いと言う。
だが、何故そんな無欲な事が断言して言えるんだ?
俺は、そんな大人しくも、シッカリとした王家真上と言う人物に興味を持ってしまった。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
真上さん……強烈ですね(笑)
自分の仕事に対する真摯な態度や、責任の持ち方や、考え方が、まさに大人を超えた大人の思考です。
まぁ、度が過ぎるのが、玉に瑕なんですがね(笑)
そんな真面目な真上さんに興味を持ってしまった倉津君。
そして、此処からどう言う展開になるかは……次回の講釈。
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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