●前回のおさらい●
総帥の過去話から、彼がバンドをやっていた事が明らかになった。
そして、その流れで、沙那ちゃんのリペアしたギターを、最初に総帥が見る事に成ったのだが……
……っとまぁ、そんな風に総帥が意気消沈しながらも。
沙那ちゃんがリペアをかましたギターの入ったハードケースを開ける。
そして手に取って。
「ほぉ、これはまた懐かしいな。今時『AMPEG JAZZ SPIRIT SOUND』っとは珍しい」
……っと、感嘆の声を上げた。
までは良かったんだが。
そうやってギターを手に取った瞬間から、総帥は奇妙な顔をし、やや訝しげな表情を浮かべ始める。
なんだ?
しかも、外観を隈なくチェックしした後。
ボディに付いてるプレートを確認したり、ギターのシリアルナンバーを指でなぞりながら入念に見始める。
いや勿論、リペアの出来具合をチェックしてるのは解るんだが。
なんで、そこまで外観に拘ってるんだろうな?
普通なら外観よりも、軽く弾いてみるもんだと思うんだが。
「あれ?ヤッパリ、そうだよなぁ。そうだとしか思えんよなぁ」
「なにがだよ?」
「いやな、このシリアルナンバーな」
「うっ、うん?シリアル?」
「……これ、ナンバーから言っても、間違いなく元俺のギターだぞ」
「はぁ?なんだよ急に?それ、どう言うこったよ?」
なんだなんだ?
本当に、そりゃあ、一体どう言う事だ?
屋根裏から出てきたギターが、どこをどうやったら総帥の物だったって話になるんだ?
あぁでも、だからこそ外観を入念にチェックしたり。
シリアルナンバーなんかを気にしてた訳なんだろうから、これは意外と信憑性が高い話なのかもしれないな。
「いや、どうもこうもな。この弦を張替える際に面倒だから外したままにしたカバーと言い。この1弦のペグの曲がり具合と言い。見た事のある外観だなぁって思ってチェックしてたんだけどな。プレートに付いてるシリアルナンバーまで同じじゃ、元俺のだとしか言い様がないんだよな。……まぁ、唯一違いがあるとすればアームが無い事ぐらいだしなぁ」
外観に関しての唯一の違いはアームかぁ。
確かにシャドウズ系の音楽をしてたなら、アームが無いのは不自然では有るよな。
リードギタリストのハンク=マーヴィンが、滅茶苦茶ビブラートアームを使う人だったからなぁ。
けど、此処で発掘されただけに、それ以外が全く同じ物って言うのも、なんとも奇妙な話だよな。
「いやいや、総帥。そのギターは、此処の屋根裏で発掘されたもんやで。絶対、総帥の物やないで」
「そうなんだよな。そこが不審な所なんだよな。でもな。実は、このギターって、とあるライブ会場で、いつの間にか消失したギターなんだよ」
そっ、そう言う事か!!
なら、少なからず話が見えてきたな。
これで屋根裏にあった理由も、意味を成してきた感じだし。
「それって、性質の悪いファンに盗まれたとかですか?」
「あぁ、可能性的にはな。楽屋に置いてあって失った物だから、その可能性は飛躍的に高いな。当時、柄の悪いファンとかも多かったしな」
やっぱりだ。
奈緒さんの質問に対する総帥の回答が、その全てを物語ってやがる。
あの孫娘の姉ちゃん、恐らくは『楽屋荒らし』をしてやがったみたいだな。
まぁ、証拠が無いだけに、此処を言い切れる訳じゃないんだが。
あの姉ちゃん『素行が良い』とは、口が裂けても言えない様な姉ちゃんだったからなぁ。
可能性だけは、飛躍的に高くなったな。
なら、更に確認を入れてみるか。
「あのよぉ、総帥」
「なんだ?」
「総帥のバンドのファンの中に、アフロみたいな頭をして、化粧の濃い、スケ番みたいな恰好をした姉ちゃんって居なかったか?」
「スケ番みたいな恰好の女だと?……あぁ、そう言えば居た、居た。確かに居たなぁ。なんか1人だけ勘違いした格好をして浮きまくってた女が、毎回ライブに来てたな。俺達のバンド内じゃ『ズベタ』って渾名で呼んでた女だな。……っで、ソイツが、どうかしたんだよ?」
「いやな。証拠も無しに、憶測だけで人を疑うのは、どうかと思うんだがな。その『ズベタ』って呼ばれてた女。多分、この家の前の持ち主の孫娘だぞ」
「マジかよ。あのズベタ……」
「いや、まぁ、その場に居た訳じゃねぇから、憶測の域は越えねぇんだけどな。此処の家の孫娘は、そんな感じの女だったなって話な。それに発掘されたのが、屋根裏ってのも疑わしくは有るよな」
まぁ、本人か、どうかは解らんけどな。
もし、それが本人だったら、残念な事に全ての辻褄が合っちまうんだよな。
なんと言っても、盗品でもない限り、楽器なんかを屋根裏に隠す必要性が、何所にも見受けられないからな。
特に此処は、実家じゃなくて、ババァん家。
なら尚更、そんな奇妙な場所に隠す必要なんて無くないか?
疑い過ぎか?
「あぁ、だったら、そいつは、ほぼ確定だな」
「なんでだ?」
「なんせ、あのズベタ。そのギターが消失したライブの前に、サインを強請りに来てたんだがな。余りにもしつこいから、思いっ切り断っちまったんだよ。だから、恨みの線が濃いかも知れないんだよ」
「サインを断ったって……サイン位してやったら良いじゃん」
「いや、後々面倒臭そうだったから、そうしてやりたかったのは山々だったんだがな。所属会社の意向で、気軽のサインをしちゃいけないって契約が内容の中にあったんだよ。バンドのイメージに合わないとか言う理由でな」
これも時代って奴か?
まぁ、確かに言われてみれば。
音楽性は別にしても、名目上、ビジュアル系のロックバンドが気軽に愛想良くホイホイサインするのも、どうかとは思うよな。
……けどな。
ショービズなんて、所詮は、ファンありきで成り立ってる商売。
なのに、事務所がサインを規制するってのも、どうなんだろうな?とは思うよな。
なんか、そっちも間違ってる感じがする。
「そやかて。それで恨まれて、ギターをペチられとったら世話ないわな」
「だよな。まぁ、その俺等が所属してたインディーズレーベル。そう言うオラオラ営業が祟り過ぎて、見事なまでに業界から干されちまって、直ぐに倒産したけどな」
「そらそやわな。総帥には悪いけど、当然やと思うわ」
……っで、腕が有るのに、CDを2枚しか出せなかったと。
そんで、そんな悪名高いレーベルのバンドだから、大手レーベルからの移籍話も出て来なかったと。
なんか不幸な話だな。
……でも、これを逆に言えばだな。
俺にとっては、総帥って拾い物になるんじゃないか?
此処で自分のギターと再会したって事も、俺に『総帥を今から立ち上げるサイトに誘いなさい』って神様からの啓示なんじゃねぇのか?
自分の都合の良い方に考えすぎか?
「……じゃあ、総帥。それでバンド辞めちゃったんですか?」
「まぁね。その時点で、なぁ~~~んかもぉ、どうでも良くなっちまってな。会社の倒産後は、みんなバラバラで、バンドも自然消滅。各々の道を、勝手に歩き始めちまったって感じだな」
「そうなんですか」
「まぁ、そうは言ってもな。俺だけは未練がましく、この業界にしがみ付きたくて、今の業種を選んだんだけどな」
ほらほら、やっぱりそうだ。
『未練がましく』って事は『まだバンドをやりたい』って情熱が、結構な熱量で総帥の心に残ってるって事なんじゃねぇの?
だったら、これって、マジで一日千秋のチャンスなんじゃね?
ある意味、今の総帥の生活を変えれるかも知れないから、これも『リフォームプラン』の一環になる訳だしな。
(↑またしても無理矢理なコジ付けをしようとする俺)
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
これまた奇妙な縁が芽生え始めましたね♪
まさかまさかの屋根裏で発見されたギターが、元総帥の物だったと言う事実。
そして更に、まだ総帥の中には、バンドに対する燻っている気持が残っているかもしれないと言う事実。
これはもぉ倉津君にとっては、絶好のチャンスが巡って来たものだと思います。
まぁただ、燻った気持ちが残っているとは言え。
現状で、何処までの気持ちが残っているのかが解らないだけに確証が持てる訳ではないのですが。
一度、スカウトしてみる価値はありそうですしね。
さてさて、そんな中。
スカウトする気満々な倉津君は、一体、どの様な交渉を持ちかけるつもりなのでしょうか?
次回は、その辺を書いていこうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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