●前回のおさらい●
実家の組が経営するカラオケボックスで、面倒が起きない為に色々動いていた真琴が部屋に戻ると、そこにはメタリカを歌う向井さんの姿があり。
彼女のイメージに合わず焦る真琴だったが、彼女の横の席に座り話している内に、ベースの話題に成る。
そこで「そのベースを一度弾いてみたい」と言い出した向井の為に、別室と、アンプを取りに受付カウンターに向かう真琴だった。
「オイ、コラ、糞店員!!なんもゴチャゴチャ言わねぇで良いから、サッとアンプを出しやがれ!!」
「はっ、はぁ?」
向井さんの為に、カラオケボックスのもう一室借りに来たのと、アンプを求めて受付まで来たんだが。
それだけじゃあ状況が何も解らないのか、アホ店員は、俺の言葉が全く理解出来ず素っ頓狂な声を上げる。
ってか、こんだけ親切丁寧に言ってやってるって言うのに、オマエはその状況把握すら出来ないのか?
アンプが要るって、わざわざ言ってやってるんだから、四の五の言わずに、さっさとアンプを出せよ!!
つぅか、今起こってる状況を瞬時に理解しろよなオマエは!!
「アンプだよ、アンプ。カラオケ屋の店員なのにアンプも知らねぇのかよ?ほら、あれだ、楽器弾く時に使う奴だよ」
「えっ?えぇ~~~」
「えっ?じゃねぇつぅの!!このカラオケボックスにはアンプもねぇのかよ?」
「いやいや、坊ちゃん。此処カラオケBOXだからこそ、そんなもんないッスよ」
ないのかよ!!
「えぇ~~~い、役に立たねぇ奴だな。カラオケボックスなら、それぐらい用意しとけよな」
「そっ、そんな事を言われても……」
「あぁもぉ解った、解った。ねぇんなら、ゴチャゴチャ言っててもしょうがねぇ。直ぐに買って来い。10秒以内だ」
財布をカウンターに思いっ切り投げ付け、買いに行く事を煽る。
「あっ、あぁ、はい、わかりましたけど。幾ら位の奴を買って来ましょうか?」
「その財布に入ってる金で買える、一番高ぇ奴だ」
「あぁはい」
その言葉を発すると同時に。
アホ店員は思い切りダッシュして、階段を駆け下りていく。
まぁ慌てた所で、この辺で楽器屋が在るのは駅ビルの中。
どう早く見積もっても、最低10~20分は掛かるだろうな。
さて、そうなるとだ。
あのアホが帰ってくるまでの時間は、どうしたもんかな?
特に、なんもやる事がねぇしな。
しゃあねぇ。
此処でボケッとしてても始めらねぇから、勝手に厨房に入ってピザでも焼いてるか。
これなら、此処に誰かが来ても言い訳になるし、出来上がるぐらいに、あのアホも帰って来んだろ。
***
「ハァ……ハァ……かっ……買ってきました」
アホが帰ってくるまでの所要時間7分。
レンジに入れたピザも、まだ完全には焼けていない状態だ。
コイツ……どんだけ足が早ぇんだよ。
駅に行くまででも、最低でも3分ぐらいは掛かる筈だぞ。
「オマエ、はえぇな」
「じゅ、10秒じゃ、流石に無理でした」
アホだ。
誰も、そんな事マジに言ってねぇつぅ~の。
言葉の文だよ、言葉の文。
「はえぇのは良いけどよぉ、そんな調子でモノは大丈夫なのか?」
「大丈夫ッスよ。俺、こう見えても、昔ギターとかやってましたから」
「そうなんか?何気にスゲェなオマエ。ギター弾けんだ」
「ウッス。他にも色々弾けるッスよ」
「ほぉ。何がやれんだ?」
「ギターにベース。ドラムにシンセ。一通りなんでも出来るッスよ」
「マジか?オマエ、マジでスゲェな」
「そッスかね?まぁバンドのヘルプやってる内に、チョコチョコ憶えたんだけなんっスけどね」
勿体ねぇな。
そんだけなんでも出来んなら、何でオマエは、こんなヤクザの経営する様な腐ったカラオケBOXの店員なんかやってんだよ?
完全に人生の岐路を間違ってんぞ。
「じゃあよぉ。何でバンドとかやってねぇんだ?」
「いや、大した腕じゃねぇんすよ」
「はい?」
「楽器自体は全部が全部出来るんッスけど、お陰で全部が全部、なんか中途半端なんッスわ」
あぁ……いるよな、こう言う奴。
器用貧乏って言うのか、こういう奴の事を。
「そっかよ。ってか、オマエの話はもぉ良いや。それでオマエの買ってきたモノはどれだ?」
「これッスね」
店員はドンッと俺の前に箱を置く。
オイオイ、んだこれ?
アンプって、思ってたものよりも滅茶苦茶デケェんだな。
まさか、こんなにデカイ物だとは、夢にも思わんかっったわ。
「オッ、オイ、アンプって、普通に、こんなデケェもんなのか?」
「いや……チッチャイのからデッカイのまで、サイズは色々有りますよ」
「じゃ、じゃあよぉ。何でワザワザこんな馬鹿デケェ奴を買って来たんだよ?」
「へっ?……坊ちゃんが一番良いのを買って来いって言ったからッスけど」
……本当に馬鹿なんだな、コイツ。
確かに、その金額で一番良いのを買って来いとは言ったがよぉ。
一番高くても、カラオケBOXに奇跡的に有る様な、ちっちぇ奴で良いじゃねぇのか?
それをなにも、こんな本格的な奴を買わなくても……頼むから、一寸はモノを考えてくれ。
まあしょうがねぇ。
ロクでもないアホに、物を頼んだ俺にも責任はあるんだしな。
「まっ、まぁ良いや。取り敢えずよぉ。もぅ一室、別に借りっから、コイツを、そこに設置しといてくれ」
「ウッス」
不安だ。
いつも通り返事は良いんだが、相手がコイツじゃ不安しか残らねぇ~~~。
一瞬、コイツに任せて大丈夫かって思ったんだが、俺にはアンプの扱い方がわからねぇ。
故に、この馬鹿に、最低限度の注意するだけしか出来無い。
「オイ、頼むから、空箱とか置きっ放しにすんなよ。それとピザ焼いといたから、アンプの設置が出来たら、序に持って来てくれ」
「ウッ、ウ~~~ッス」
矢張り不安だ。
***
部屋に戻りながら、俺は少し悩んでいた。
勢い良くアンプを探しに行ったのは良いんだがな。
良く良く考えてみたら、なんか、結構ミットモナイ事してるよな。
向井さんと、ちょっと話が合ったからって、アンプを買いに行く。
流石に、これは、些か遣り過ぎではないだろうか?
見方によっちゃ、なんか下心満載にも見えなくもないしな。
あぁっと、先に言っとくがな。
別に俺自身は、向井さんに対する下心なんて厚かましいものはねぇんだぞ。
当然、親切にしたからって、そんな下劣な見返りを求めてる訳でもねぇ。
それ以前に、女に手を出すほど経験値がねぇ……これが本音だ。
だがよぉ。
それって俺の心情であって、相手に解るもんじゃねぇよな。
そう考えると、やっぱ、部屋には戻り辛いなぁ。
そんな風に俺は扉の前で1人突っ立ったまま、中に入る事を躊躇していた。
「坊ちゃ~~~ん。設置出来ましたよぉ~」
「うっ、うわ」
いきなり背後から声を掛けて来たのは、アホの店員。
驚かすな!!
「はえぇな、オイ」
「いや……アンプの設置なんて、箱から出して電源入れるだけッスから」
「そんなもんなのか?」
「はい、そんなもんっスよ」
なら、先にそれを言えよな。
そんな事位なら、俺にだって出来るだろうに……
「まぁ良いや。それよりオマエ、中に入って、山中って奴を呼んでくれねぇか?」
「はぁ、良いッスよ」
「あぁ、その前に一応確認しとくが、俺はオマエのなんだ?」
「坊ちゃんですよね」
死ね。
違うだろ。
「オイオイ、しっかりしてくれ。俺は、オマエの後輩って設定だろ」
「あぁ」
『あぁ』じゃねぇ。
それじゃあ、危うく『坊ちゃんがお呼びですよ』とか言い兼ねない状態じゃねぇか。
そう言うボケをするんじゃないかと思ったから、一応確認したんだが、本当に確認して置いて良かったよ。
「良いか、ボケ。中に入ったらこう言うんだ『山中君、マコが呼んでたぞ』……出来るか?」
「はぁ」
よく解ってねぇ時の返事は、相変わらず、気のねぇ感じだな。
こんなんで本当に大丈夫なんか、コイツ……いや、それ以前に人間として大丈夫か、コイツ?
よくこんなんで生きてられるな。
「たっ、頼むぜぇ~、オイ」
「大丈夫ッスよ。山中って奴を此処に呼べば良いだけなんでしょ?」
「まぁ、そうなんだけどよぉ」
アホ店員は、何故かコチラに向かってガッツポーズをして中に入って行く。
なんなんだ、この一抹の不安は……
最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>
自分勝手な言い分ばっかり言う倉津君と、アホ店員との攻防は如何でしたか?
まぁ早い話、完全なネタ回ですね(笑)
(((((((*'ω')ニゲロ!!
↑一番のクズは逃亡を図った(笑)
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