最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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014 不良さん、アホ店員と攻防する

公開日時: 2021年2月19日(金) 22:52
更新日時: 2022年11月1日(火) 20:24
文字数:3,069

●前回のおさらい●

実家の組が経営するカラオケボックスで、面倒が起きない為に色々動いていた真琴が部屋に戻ると、そこにはメタリカを歌う向井さんの姿があり。

彼女のイメージに合わず焦る真琴だったが、彼女の横の席に座り話している内に、ベースの話題に成る。


そこで「そのベースを一度弾いてみたい」と言い出した向井の為に、別室と、アンプを取りに受付カウンターに向かう真琴だった。

「オイ、コラ、糞店員!!なんもゴチャゴチャ言わねぇで良いから、サッとアンプを出しやがれ!!」

「はっ、はぁ?」


向井さんの為に、カラオケボックスのもう一室借りに来たのと、アンプを求めて受付まで来たんだが。

それだけじゃあ状況が何も解らないのか、アホ店員は、俺の言葉が全く理解出来ず素っ頓狂な声を上げる。


ってか、こんだけ親切丁寧に言ってやってるって言うのに、オマエはその状況把握すら出来ないのか?

アンプが要るって、わざわざ言ってやってるんだから、四の五の言わずに、さっさとアンプを出せよ!!


つぅか、今起こってる状況を瞬時に理解しろよなオマエは!!



「アンプだよ、アンプ。カラオケ屋の店員なのにアンプも知らねぇのかよ?ほら、あれだ、楽器弾く時に使う奴だよ」

「えっ?えぇ~~~」

「えっ?じゃねぇつぅの!!このカラオケボックスにはアンプもねぇのかよ?」

「いやいや、坊ちゃん。此処カラオケBOXだからこそ、そんなもんないッスよ」


ないのかよ!!



「えぇ~~~い、役に立たねぇ奴だな。カラオケボックスなら、それぐらい用意しとけよな」

「そっ、そんな事を言われても……」

「あぁもぉ解った、解った。ねぇんなら、ゴチャゴチャ言っててもしょうがねぇ。直ぐに買って来い。10秒以内だ」


財布をカウンターに思いっ切り投げ付け、買いに行く事を煽る。



「あっ、あぁ、はい、わかりましたけど。幾ら位の奴を買って来ましょうか?」

「その財布に入ってる金で買える、一番高ぇ奴だ」

「あぁはい」


その言葉を発すると同時に。

アホ店員は思い切りダッシュして、階段を駆け下りていく。


まぁ慌てた所で、この辺で楽器屋が在るのは駅ビルの中。

どう早く見積もっても、最低10~20分は掛かるだろうな。


さて、そうなるとだ。

あのアホが帰ってくるまでの時間は、どうしたもんかな?

特に、なんもやる事がねぇしな。


しゃあねぇ。

此処でボケッとしてても始めらねぇから、勝手に厨房に入ってピザでも焼いてるか。

これなら、此処に誰かが来ても言い訳になるし、出来上がるぐらいに、あのアホも帰って来んだろ。


***


「ハァ……ハァ……かっ……買ってきました」


アホが帰ってくるまでの所要時間7分。

レンジに入れたピザも、まだ完全には焼けていない状態だ。


コイツ……どんだけ足が早ぇんだよ。

駅に行くまででも、最低でも3分ぐらいは掛かる筈だぞ。



「オマエ、はえぇな」

「じゅ、10秒じゃ、流石に無理でした」


アホだ。

誰も、そんな事マジに言ってねぇつぅ~の。


言葉の文だよ、言葉の文。



「はえぇのは良いけどよぉ、そんな調子でモノは大丈夫なのか?」

「大丈夫ッスよ。俺、こう見えても、昔ギターとかやってましたから」

「そうなんか?何気にスゲェなオマエ。ギター弾けんだ」

「ウッス。他にも色々弾けるッスよ」

「ほぉ。何がやれんだ?」

「ギターにベース。ドラムにシンセ。一通りなんでも出来るッスよ」

「マジか?オマエ、マジでスゲェな」

「そッスかね?まぁバンドのヘルプやってる内に、チョコチョコ憶えたんだけなんっスけどね」


勿体ねぇな。

そんだけなんでも出来んなら、何でオマエは、こんなヤクザの経営する様な腐ったカラオケBOXの店員なんかやってんだよ?


完全に人生の岐路を間違ってんぞ。



「じゃあよぉ。何でバンドとかやってねぇんだ?」

「いや、大した腕じゃねぇんすよ」

「はい?」

「楽器自体は全部が全部出来るんッスけど、お陰で全部が全部、なんか中途半端なんッスわ」


あぁ……いるよな、こう言う奴。

器用貧乏って言うのか、こういう奴の事を。



「そっかよ。ってか、オマエの話はもぉ良いや。それでオマエの買ってきたモノはどれだ?」

「これッスね」


店員はドンッと俺の前に箱を置く。


オイオイ、んだこれ?

アンプって、思ってたものよりも滅茶苦茶デケェんだな。

まさか、こんなにデカイ物だとは、夢にも思わんかっったわ。



「オッ、オイ、アンプって、普通に、こんなデケェもんなのか?」

「いや……チッチャイのからデッカイのまで、サイズは色々有りますよ」

「じゃ、じゃあよぉ。何でワザワザこんな馬鹿デケェ奴を買って来たんだよ?」

「へっ?……坊ちゃんが一番良いのを買って来いって言ったからッスけど」


……本当に馬鹿なんだな、コイツ。

確かに、その金額で一番良いのを買って来いとは言ったがよぉ。

一番高くても、カラオケBOXに奇跡的に有る様な、ちっちぇ奴で良いじゃねぇのか?


それをなにも、こんな本格的な奴を買わなくても……頼むから、一寸はモノを考えてくれ。


まあしょうがねぇ。

ロクでもないアホに、物を頼んだ俺にも責任はあるんだしな。



「まっ、まぁ良いや。取り敢えずよぉ。もぅ一室、別に借りっから、コイツを、そこに設置しといてくれ」

「ウッス」


不安だ。

いつも通り返事は良いんだが、相手がコイツじゃ不安しか残らねぇ~~~。


一瞬、コイツに任せて大丈夫かって思ったんだが、俺にはアンプの扱い方がわからねぇ。

故に、この馬鹿に、最低限度の注意するだけしか出来無い。



「オイ、頼むから、空箱とか置きっ放しにすんなよ。それとピザ焼いといたから、アンプの設置が出来たら、序に持って来てくれ」

「ウッ、ウ~~~ッス」


矢張り不安だ。


***


 部屋に戻りながら、俺は少し悩んでいた。


勢い良くアンプを探しに行ったのは良いんだがな。

良く良く考えてみたら、なんか、結構ミットモナイ事してるよな。


向井さんと、ちょっと話が合ったからって、アンプを買いに行く。

流石に、これは、些か遣り過ぎではないだろうか?

見方によっちゃ、なんか下心満載にも見えなくもないしな。


あぁっと、先に言っとくがな。

別に俺自身は、向井さんに対する下心なんて厚かましいものはねぇんだぞ。

当然、親切にしたからって、そんな下劣な見返りを求めてる訳でもねぇ。


それ以前に、女に手を出すほど経験値がねぇ……これが本音だ。


だがよぉ。

それって俺の心情であって、相手に解るもんじゃねぇよな。


そう考えると、やっぱ、部屋には戻り辛いなぁ。


そんな風に俺は扉の前で1人突っ立ったまま、中に入る事を躊躇していた。



「坊ちゃ~~~ん。設置出来ましたよぉ~」

「うっ、うわ」


いきなり背後から声を掛けて来たのは、アホの店員。


驚かすな!!



「はえぇな、オイ」

「いや……アンプの設置なんて、箱から出して電源入れるだけッスから」

「そんなもんなのか?」

「はい、そんなもんっスよ」


なら、先にそれを言えよな。


そんな事位なら、俺にだって出来るだろうに……



「まぁ良いや。それよりオマエ、中に入って、山中って奴を呼んでくれねぇか?」

「はぁ、良いッスよ」

「あぁ、その前に一応確認しとくが、俺はオマエのなんだ?」

「坊ちゃんですよね」


死ね。


違うだろ。



「オイオイ、しっかりしてくれ。俺は、オマエの後輩って設定だろ」

「あぁ」


『あぁ』じゃねぇ。

それじゃあ、危うく『坊ちゃんがお呼びですよ』とか言い兼ねない状態じゃねぇか。


そう言うボケをするんじゃないかと思ったから、一応確認したんだが、本当に確認して置いて良かったよ。



「良いか、ボケ。中に入ったらこう言うんだ『山中君、マコが呼んでたぞ』……出来るか?」

「はぁ」


よく解ってねぇ時の返事は、相変わらず、気のねぇ感じだな。


こんなんで本当に大丈夫なんか、コイツ……いや、それ以前に人間として大丈夫か、コイツ?

よくこんなんで生きてられるな。



「たっ、頼むぜぇ~、オイ」

「大丈夫ッスよ。山中って奴を此処に呼べば良いだけなんでしょ?」

「まぁ、そうなんだけどよぉ」


アホ店員は、何故かコチラに向かってガッツポーズをして中に入って行く。


なんなんだ、この一抹の不安は……


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


自分勝手な言い分ばっかり言う倉津君と、アホ店員との攻防は如何でしたか?

まぁ早い話、完全なネタ回ですね(笑)


(((((((*'ω')ニゲロ!!

↑一番のクズは逃亡を図った(笑)

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