●前回のおさらい●
脱税品かつ、盗品に成っていたゼマティスのベース。
そして不良さんは、その持ち主である遠藤康弘と言う人物に国見さんを通して会うが……
その康弘は、倉津組と敵対する広域暴力団『遠藤組の組長の息子』だった。
だが康弘は、話の解る人間だったので話し合い自体は何事も無く終わるが。
此処で康弘は、まだなにやら不良さんに提案があるらしく、話を継続してくる。
「いえ、以前から続いてる抗争の件なんですが」
今、そこ?
何を言い出すのかと思えば、うちの実家との抗争の話だと?
なんで今の状況で、そんな話が?
「いや、ちょっと待てよ。そんなもん、俺等がいくら話した所で、どうにもならねぇだろうに。抗争なんざ、オマエんトコの親父が折れるか、俺んトコの馬鹿親父が折れるかしねぇと終わらねぇ。そう言うもんだろ」
「確かに、そうなんですが。このままじゃお、互いの組みにガサが入って共倒れ。それこそ意味が無いと思われませんか?」
「まぁよぉ。このままじゃイケねぇのは、確かだが」
「ですから、良かったら、我々だけでも友達になりませんか?」
「あぁ?」
なに言ってんだコイツ?
マジで訳わかんねぇ。
ヤクザの抗争を、お友達同士の喧嘩かなんかと勘違いしてるのか?
そんなもん、俺等が仲良くしたって始まんねぇぞ。
マジで、なに考えてやがんだ?
「ダメですか?」
「いや……えぇぇえぇ~~~!!なに言ってんだ、オマエ?そんなもん、ダメも、糞もねぇだろ」
「ダメも、糞もない?……じゃあ良いんですね」
「いやいやいや、ちょっと待ってくれ」
「ダメなんですか?」
「いっ、いや、べっ、別に構いやしねぇが。そんなもん何の意味があんだよ?」
「意味?そんなもの何も無いですけど」
なんなんだコイツは?
勉強しすぎて、頭おかしくなってんじゃねぇの?
発想が、なんだか変だぞオマエ?
「つぅか、オマエさぁ。なんでそこまでして、俺なんかのツレになりてぇの?」
「別に意味なんてないですけど」
「はぁ?なんなんだよ、オマエは?じゃあ、俺とツレになったら、どうするんだよ?」
「遊びに行きますよ」
「はぁ?いや、どこにだよ?」
「だから、倉津さんの所へ遊びに行きますよ」
「オイオイオイオイ、んな真似したら、オマエ、マジで殺されるぞ」
「大丈夫ですって。抗争してるたって、まだまだ小競り合いの段階。まだ、お互い相手の子供を的にかける様な状態じゃ有りませんよ……だったら、この程度の事、どうって事ありません」
まぁ、そうだろうけどもだ。
敵対し合ってる組の子供が、その敵対組織の本家に遊びに行くって……どんな発想だよ。
……あぁけど、もぉなんか考えんの面倒臭くなって来た。
もぉ良いや、どうにでもしてくれ。
「わかったよ。但し、家には来んなよ。絶対、外でしか逢わねぇかんな」
「ありがとうございます」
「なんだかなぁ?」
「あぁそうだ、そうだ。話に夢中になりすぎて、お礼をするのを忘れてました。……なにが良いですか?」
急に、話しが変わるのな。
「いらねぇよ」
「それでは、僕の気が済みません。……何か無いですか?」
「あぁメンドクセェ。じゃあよぅ、なんかあったら、取り敢えず、なんか色々教えてくれ。アンタ、大学生なんだから、俺より色々と物を知ってんだろ」
「そんな事で良いんですか?」
「あぁ、構わねぇよ」
「じゃあ、早速なんだがな、康弘。この少年の悩みを聞いてやってくれ」
オッサンが、なんの脈絡もなく、突然、話に入ってきやがった。
今まで一言も話さなかったクセに……なにを急に話に入って来てやがんだよ。
「うっ、うるせぇ!!俺にゃあ悩みなんかねぇよ。オッサン、余計な事を喋んじゃねぇぞ」
「何を言ってるんだ?奈緒ッペの事で悩んでるだろ、少年」
「奈緒ッペ?あぁ、向井さんの事ですか。彼女が、どうかしたんですか?」
「だから、何にもねぇって!!」
「いやな、康弘。実は、この少年な。奈緒ッペに【ホの字】なんだが、さっき、オマエさんのベースのせいで揉めてたみたいなんだよ」
「えっ?……じゃあ、それって、僕のせいって事ですよね」
「違う違う違う、心配しなくてもオマエのせいじゃねぇから、大丈夫大丈夫」
メンドクセェ~~~っ!!
果てしなくメンドクセェぞ、コイツ等!!
大体、変にお節介な真似をしようとせずに、他人の事なんか、ほっとけよな!!
なんなんだ、このお節介星から来た、お節介星人共は……
大体、オマエ等なぁ。
そんな俺の事に興味を持つより、まだ自分の事でする事あんだろに。
オッサンは、店の事や、あのボンクラ店員の教育。
遠藤は、実家の事か、今後の為にも勉強の事だけを考えてろ。
ズケズケと、他人に、あんま干渉するんじゃねぇよ。
気持ち悪ぃ。
「そうはいかないよ」
「だから良いからよぉ。頼むから、俺と奈緒さんの事は放って置いてくれ」
「遠慮するな」
「だから、イラネェって言ってんだろオッサン。デケェお世話なんだよ」
「あっ、あのっ……さっきはゴメンね、クラ。あのまま帰ろうと思ったんだけど。なんかそんな気分になれなくて、まだ居るかな?って思って戻って来たんだけど……」
GYAAAAAAAaaaaa~~~!!何と言うタイミングの悪さ!!
まさか奈緒さんが、この時点で戻って来るとは夢にも思ってなかったぞ!!
もぉ、よくある漫画の展開じゃねぇんだから、こういうシュチュエーションは辞めてくれよな。
それと、奈緒さん。
その、扉から半分だけ顔を出す感じも辞めて下さい。
俺は、アナタには無条件で萌えてしまうんですから。
ヤバッ……ヤッパ、奈緒さん超可愛い!!
「あぁ、奈緒ッぺ良い所に帰ってきた」
いや、黙れオッサン。
「僕も、今から、向井さんを探しに行こうと思ってた所なんだ」
オマエも黙れな、遠藤。
「いや~~~っ、このタイミングで戻ってくるとは、完璧だな、奈緒ッペ」
オイコラ。
口をホッチキスで止められたいのか、オッサン?
それ以上は口を開かずに、黙れつってんだろがよぉ!!
「はぁ……奈緒さん。もう此処出ましょう。俺、あれからズッと絡まれてるんッスよ」
「そう……なの?」
「そうなんッスよ。だから、早く、どっか行きましょう」
「あっ、うん……」
強引とも言える感じだが、この場に居るよりはマッシ。
気付けば俺は、奈緒さんの手を取って、此処から逃げ様としていた。
「ねぇ、クラ?何処かに行くのは良いんだけど……ベースは良いの?」
「あっ、ぐっ……」
「スタジオに置いて行っちゃうの?」
「いや……あの……実は……」
「あぁゴメン。実は、そのベース、僕のでね。倉津君には申し訳ないとは思ったんだけど。一旦、ベースを返却して貰ったんだ」
「えっ……どっ、どういう事ですか?」
「うん……実は、非常に言い難い話なんだけどね。彼にベースを譲ったまでは良かったんだけど、どうしてもまた、このベースを自分の手元に置いて置きたくなってさ。僕が我儘言って、今返して貰ったんだよ」
うぉ!!今まで康弘って呼び捨てにしてたけど、遠藤さん、アンタ最高だな!!
俺と、奈緒さんの喧嘩の内容が解らないまでも、それ相応の回答をしてるじゃないか!!
マジ最高だよ、アンタ!!
「そうなのクラ?」
「あっ……まぁ、そんな感じッス」
「けど、お金は、どうしたの?」
「それに関しては俺が立て替えといた。あのベースを100万って言うのは、ちょっとボリ過ぎだって、少年にも怒ってた所だ」
オッサン……いや、国見様。
アナタ様は神か?仏かの類の方なのか?
遠藤さんのフォローしきれて無い部分を、完璧にフォローしきった。
はぁ~~~、いやはや、矢張り持つべき友は、こう言う友だな。
「そう……なんだ」
「ウッス」
俺は黙っていよう。
喋れば、きっとボロが出るだけだ。
ホッチキス。
口にホッチキス。
「じゃあクラは、今、ベース無いんだね」
「あぁ、そう言えば、そうッスね」
そっかぁ。
そう言えば、遠藤にベースを渡しちゃったから、ベースが無くなって、明日から練習が出来無いんだよな。
これは困ったな。
しかも、馬鹿秀が『1日でもやらなかったら、直ぐ下手になるから習慣付けろ』とかも言ってた様な気がするな。
アイツ……普段はロクでもない事しか言わない奴なんだが、そう言う所だけは信用出来んだよな。
これは参ったなぁ。
「そっかぁ。じゃあ、ちょっと楽器屋に寄ってみよっか?クラの好みのベースが有るかどうかは、解らないけど。見に行ってみる?」
「へっ?こんな時間なのに、まだ楽器屋ってやってるんッスか?」
「うん。やってるよ。時間的にはギリギリだけど、まだ滑り込めるんじゃないかな」
「そうなんッスか?じゃ、じゃあ、お願いして良いッスか?」
「うん。私で良かったら」
アナタが良いんです。
いや、アナタじゃなきゃ意味がないんです。
正直ベースには、まだそんなに興味はないが。
奈緒さんと一緒に時間を過ごせるなら、ベースを弾き続ける意味はある。
なら、必然的にベースは必要。
んで、そのベースを奈緒さんと買いに行くチャンスが、今、目の前に転がってる訳だろ。
なら時間がギリギリだろうと、楽器屋行くしかないしょ!!
「俺、良くわかんないッスから、宜しくお願いします」
「なになに?なにを、そんなに畏まってるのよ?」
「いや、その、なんて言うか、その」
「なんか変だね、クラ。……あぁいけない、時間無いから、そろそろ行こうか」
「ッスね」
そう奈緒さんが言った後。
俺と、奈緒さんは、国見のオッサンのスタジオを後にする訳なんだが。
国見さんと、遠藤さんは、なにも言わず見送ってくれた。
アンタ等、ホント大人だな。
学校のアホ2匹だったら、絶対に此処で俺をからかう筈だからな。
最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>
倉津君『お節介な奴は嫌いだ』みたいな事を言ってた割には。
見事なまでに『そのお節介な人達』に助けられてましたね(笑)
しかも助けられた後は、自分に都合の良い展開が待ち構えていた。
こう言う運の強さと言うのを、倉津君は、意外と持ち合わせているのかもしれませんね。
(ただ倉津君や、こういう自分に都合の良い展開ばっかりが、いつまでも続くと思うなよ(意味深))
( ゚Д゚)オイ!!なんか言ったか!!
そんな訳で次回。
奈緒さんとのお買い物に行く訳ですが……なにが待ち受けている事やら(笑)
それは次回の講釈です。
でわでわ、ま~~~たねぇ~~~(*´▽`*)ノ
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