●前回のおさらい●
数学な不得意な真菜ちゃんと、数学が得意な倉津君。
真菜ちゃんが疑問に思った数学の問題をいとも簡単に解いたので、そのまま解き方の説明を倉津君がする事に!!
「あぁっと、良いか真菜?まず、この問題のキモに成る部分はな。いつ既製の数式に、この数値を代入するかが問題なんだがな。ゴチャゴチャすっと面倒臭ぇだろ。だからよぉ、此処で数値を代入すりゃあ一発で計算が済むんだよ」
「えっ?えぇっと……」
うわあぁ~~~っ。
必至に説明してるのは解るけど……あまりにも教えるのが下手だなぁ。
この様子からして、感覚的に計算をする真琴ちゃんと違って。
理詰めで計算をしたがる真菜ちゃんとでは、少々考えに開きが有りすぎるみたいだ。
それに真琴ちゃんは、自分の理解してる解き方だけで計算をしているから、異常に説明が少ない。
これじゃあ真菜ちゃん、多分、なにも解ってないんだろうなぁ。
現に真菜ちゃんは、頭の上に『?』を飛ばして、混乱してる様だし……
「あの、兄様。ごめんなさい。もぅ1度説明して頂いて良いでしょうか?」
「へっ?あぁ、良いけどよぉ。解り難かったか?」
「あぁ、はい、代入するタイミングは解るんですが。何故そうなるのかがイマイチ。何故ですか?」
「えぇっと。なんでって聞かれてもなぁ。そう言う簡易なやり方が楽だからかな」
「えぇっと……そうなのですか?」
うん、真琴ちゃんの言ってる事自体は、なにも間違っちゃ居ない。
基本的には、この問題の解き方としては正解だしね。
ただ……その前提条件として。
そこに行き着くまでの『前提に成る数式の意味を真菜ちゃんが解ってない』から、その説明だけじゃ、なにもかもが説明不足になっちゃってる。
でも、真琴ちゃんは果てしなく感覚的に数学を捉えてるからなぁ。
こう言う天才的な発想って、説明するとなると結構難しいもんなんだよね。
折角頑張ってる所を邪魔しちゃあ悪いとは思うんだけど、此処は少しフォローするべきかもね。
「眞子、すまねぇが。真菜に、ちゃんと説明してやってくんねぇか?俺は、どうにも感覚でしか数学を捉えられないから、キッチリと説明出来ねぇわ」
……っと思ってたら矢先、真琴ちゃんからGIVE-UP宣言されちゃったね。
「うん。OKOK。……じゃあ此処からは、ちょっと私が真琴ちゃんに代わって、真菜ちゃんに説明させて貰うね」
「御姉様、鈍くて、すみません」
「うぅん。全然鈍くなんてないんだよ。それに真琴ちゃんの説明も悪くない。お互い、言ってる事自体は、なにも間違ってないからね」
「そうなのですか?ですが、兄様が間違っていないのでしたら、私が鈍いだけなのではないのでしょうか?」
「うん、大丈夫だよ。真菜ちゃんは、全然鈍くないから」
これも、また良い機会だ。
真琴ちゃんの感覚的な数式に、数式に於ける理論の説明の仕方を教えて置いてあげれば。
真菜ちゃんの数学の勉強で苦戦した時、いつでも見てあげる事が出来る状態に出来る。
此処さえクリアーすれば、2人の兄弟としての距離が一気に縮める可能性があるかも知れないね。
だったら、こんなチャンスは滅多にないから。
このチャンスを最大限に生かして「理屈を踏まえた説明の仕方」を真琴ちゃんにも教えるべきだね。
「うん、じゃあ2人共。なにが悪かったか説明するね。でわ、まずは最初に真菜ちゃん」
「あっ、はい」
「因みにだけど、さっき、真菜ちゃんが疑問に持った事ってなんだっけ?」
「あぁ、はい。あの数式の状態で、何故、あの数値が代入されるのかが、ハッキリとは理解出来ませんでした」
「そうだったね。じゃあ、そこを理解する為に、まずは、その問題を、学校で習った普通に解き方をしてみようか」
「えっ?普通に解いても良いんですか?」
「うんうん、普通に解いても良いんだよ。今、学校で習ってる、ゴチャゴチャした解き方をしてみて」
「あぁ、はい、では……」
真菜ちゃんは、矢張り、数学が不得意なのか、必死になって解答を導き出す。
それを真琴ちゃんは気が気じゃないのかして……矢鱈とチラチラ見ている。
まぁけど、この問題に於ける真菜ちゃんの解答は正解。
この様子からして、根本の部分は理解してるみたいだけど、数学への苦手意識から来る毛嫌いさが原因みたいだね。
うん、実に解りやすい。
だったら、きっちり計算式なんかを教えるよりも、もっと数学の根本的な部分を改定した方が良さそうだね。
「うん、そうだね。答えは、それで正解だね。ほらほら、全然大丈夫じゃない」
「あぁ、はい。ですが……」
「うんうん、大丈夫、大丈夫。真菜ちゃんの言いたい事は解ってるよ。『どうして、此処で、さっきの代入方法が成立するのか?』って思っちゃってるんだよね」
「あぁ、はい、そうですね」
「だよね。普通はそうなっちゃうよね。……でも、実は、それこそが穴。真琴ちゃんがさっき出した数式も、真菜ちゃんが今出した数式も、この2つの数式を見比べてみると解り易いと思うんだけど。根本的なラインだけを見れば、実は全部同じなんだよね。でも、さっき真琴ちゃんがやった方式は、簡単な計算を先に行なう事によって、簡単に数式が成立する様になっているから、普通の公式とは外れちゃう。……まぁ、ゴチャゴチャと言ったんだけど。早い話、真琴ちゃんがやった事って言うのはね。数式の順番を変えただけの話なんだよね」
……っと言う事なんです。
まぁ中学2年生位の問題なら、簡単に、こう言う数字の入れ替えが出来ちゃうんだよね。
「えぇっと……」
「あぁっと、ちょっと、今の説明じゃあ解り難いかったかな?」
「あぁはい、少し解り難い感じですね」
「だったら、今の数式の話は忘れて、簡単な掛け算で数式を分解してみよっか」
「えっ?数式の分解ですか?それにどうして、今更、掛け算なのですか?」
「うん?あぁ、数学って言うのはね。数式を分解したり、くっ付けたりすると、比較的楽に計算出来るんだよね。だから。……基本のラインから考えを変える為」
「あぁ、はい……それじゃあ」
「うん、じゃあ問題ね。真琴ちゃんも一緒にやってね」
「あっ、あぁ、構わねぇよ」
暗算の速さを鍛えるのは、数学の基本。
それが例え『A』『B』『X』『Y』『γ』『Σ』の様な記号が入って来ようが、そこは大した問題じゃない。
此処を、より早く、より正確に計算出来る事が成績アップの秘訣。
実は数学って、小難しい数式を憶える事がメインと思われがちだけど。
こう言う楽をした上で、遊び感覚を養うのが一番重要なポイントだったりするんだよね。
『数式を憶える』のは、その後でも、十分対応出来たりするからね。
まぁまぁ、口で言っててもなんだから『百聞は一見にしかず』
まずはチャレンジしてみて下さいな。
「じゃあ、行くよぉ。2412×1134=幾つでしょう」
「……2735208じゃねぇか」
「えっ?」
「うん、正解。完璧」
「えっ?えっ?どうやって、そんなに早く……」
「あぁ、驚かなくて良いんだよ。真琴ちゃんは、元々暗算が得意だし。今のはね。12×1134と、その解答に×200したものを足しただけだと思うし」
「えっ?なんで?」
そぉそぉ、良い感じだね。
そうやって、人の得意分野に興味を持つ事も非常に大事な事なんだよ。
此処で打ちひしがれてちゃ、話にならないからね。
「うん、じゃあ、解り易くする為に、まずは、全体的な数値を見てみようか」
「はい」
「じゃあ此処で、注目すべきは点が2412なのは解る?」
「えぇっと……解りません」
あぁ凹まないで。
まだ、わかんなくても良いんだよ。
此処が最初から解る人なんて、真琴ちゃんか、崇秀ぐらいのものだから。
「あぁ、落ち込まなくて良いんだよ。此処が、最初からわかってたら、この説明自体をする必要が無いからね。心配要らないよ」
「そうなのですか?」
「うんうん、大丈夫だよ。……あぁっと、因みになんだけど。この数値を注目する理由はね。前の千と百の位の『24』と、十と壱の位の『12』……これって倍数って事なんだよね」
「えっ?あぁ、本当ですね」
「じゃあね。12×1134さえ計算しちゃえば。後は『24』が12の倍数だから、数値を百の位に合わせて×200してあげれば良いでしょ。それを足しさえすれば、答えは、普通に計算したものと同じになる。……早い話ね。全部を掛けるなんて面倒な事をしなくて良くなるし、計算による間違いも減るって訳なの」
「本当ですね。凄いです」
「でしょ。……だったら、さっき真菜ちゃんが疑問に思った式を、これと同じ要領で分解してみよっか」
まずは、これが出来れば万事OK。
だって数学は100%、必ず正確な回答のある学問。
どんなやり方をしてでも、正解にさえ到達すれば良いだけなんだよね。
1つの数式に固執しない『自由な発想』を持って、色々なアプローチをする事が大事。
それこそが、数学の楽しみ方。
本当に遊び感覚で良いんだよね♪
「これで良いですか」
「そぉそぉ。そうやって分解すれば。真琴ちゃんが、あの時、何故、その数値を代入したかの意味も解って来るでしょ」
「あぁ……本当ですね」
「でしょでしょ。……って事で、真菜ちゃんは、問題を難しく考えすぎてただけなのよ。数学って、みんなが思ってるよりズッと楽しくて、単純なものなんだよ」
「姉様……凄い」
これが、俗に言う、数学に於ける理論や理屈って奴だね。
此処が理解出来れば、数学は一気に楽しくなるんだよね。
……後、どうでも良い話なんだけどね。
一般的にも数学って苦手な人が多いから、直ぐに回答出来たら、尊敬されたりもしちゃったりするんだよね。
此処が出来れば、変な優越感って奴に浸れたりするよ。
ホント、どうでも良い話だけどね。
……ってな訳なんで、真菜ちゃんの言った言葉に、話を戻しますね。
「うぅん。私なんかより、俄然、真琴ちゃんの方が凄いんだよ」
「えっ?どうしてですか?」
「いやいやいやいや、なに言ってんだよ眞子!!オマエの方が100%スゲェじゃん」
「全然全然。私は理論付けて、こう言う解釈に行き付いただけで、真琴ちゃんみたいに天才的な発想じゃないよ」
……って事なんですよ。
だから、真菜ちゃんね。
真琴ちゃんの事を、もぉ『愚兄』って言っちゃダメだよ。
そして出来れば、お兄さんの事を実は数学の天才だったと思いなさい。
まぁ本当の事を言えば、私の理論付けも、所詮は後付けなんだけどね。
「あの、それって……」
「そぉそぉ、真琴ちゃんはね。そう言う天才的な感覚で、数学全般の問題を捉える事が出来るの。だからこそ、今、真菜ちゃんがやった分解や、付け加えが、脳内で全て補完出来ちゃう。でも、その分、理屈じゃない部分しかないから、説明が上手く出来無い。けどね、逆に言えばね。そこに数式の理論さえ付け加えれば、真菜ちゃんに勉強を教える事も出来る様になる。……なんて言うか。数学が得意なお兄さんって、なんか格好良くない?」
此処はもぉ、全力で真琴ちゃんを褒め殺しですよ。
そして真琴ちゃんは、これを機にガンガン調子に乗って、数式の理屈を憶えて下さいな。
そうすれば、真菜ちゃんにとっても自慢のお兄さんになるからさ。
いつまでも『愚兄』なんて呼ばれてる場合じゃないんだよ。
「あぁ、はい。私自身が、数学が苦手なので、それは尊敬出来ますね」
「ふふっ……なんだってさ。良かったね、真琴ちゃん」
「なっ、なっ、なっ、なに?真菜が、俺を尊敬だと?マッ、マッ、マジかよ」
よっしゃあ!!これは100%上手く行ったね。
受験勉強なんかより、ズッと大切な事を成功させられたよ。
こう言う、兄弟で、お互いを尊敬し合える人間関係こそが、勉強に於ける本当の『宝物』
此処は上手く行って良かったよ。
「あっ、いや、あの……」
ぷっぷっぷっ……照れてる、照れてる。
でも、真琴ちゃんの、その気持ち良く解るなぁ。
なんて言ったって私も、その昔、真菜ちゃんとは、こう言う関係を構築したいと切には願っていたんだけど、お互いが余り顔を合わす機会もなく、同時に、そんな接点にすら恵まれなかった。
結局、なにも成し得ないまま、今現在まで迎えてしまった。
だからこそ、これは、真琴ちゃんにも喜んで貰えた筈。
そんな望みに貢献出来て、嬉しく思うよ。
まぁ、正直言えば、やっぱり私も、その輪の中に入りたいんだけどね。
今の立場じゃ……流石に、そこまでは無理だろうね。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>
今回の一件で、ほんの少しだけなのかもしれませんが、倉津君と真菜ちゃんの距離が縮まったかもしれませんね♪
まぁ流石に過去の事があるだけに、一気に距離を縮める事は不可能かもしれませんが。
こうやって少しづつでも実績を笠ね、真菜ちゃんの信頼を勝ち取って行けば、過去の行いも清算出来るかもしれませんしね。
さてさて、そんな2人を見て。
矢張り眞子も、その輪の中に入りたい様なのですが……
どうにも、それを口にするのは難しいらしく、此処では身を引こうとしてる様子。
そんな眞子の気持ちを、倉津君や真菜ちゃんは察する事が出来るのか?
次回はその辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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