最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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593 片倉さんの頼み事

公開日時: 2022年9月22日(木) 00:21
更新日時: 2023年1月14日(土) 15:55
文字数:3,676

●前回のおさらい●


 同人誌の完売と共に、ブ-スから去ろうとしている眞子を必死に繋ぎ止めようとする片倉さん。

そのあまりの必死さに、ついつい歩を止めてしまう倉津君だったが……一体、どの様な用件があるのか?

 片倉に連れられて来られた喫茶店内には、思ってた以上に空席が多く、人影は少なかった。

恐らく、此処の喫茶店は場所が場所なだけに、コミケ来訪者にはあまり利用されていないのだろう。


……って言うか寧ろ、この時間帯だからこそ、入店してる奴等も少なく。

一般人や、外人のアニオタぐらいしか見当たらないのかもしれないけどな。


っとまぁ、そんな閑散とした茶店の奥の席に、取り敢えず、腰を落ち着かせる。


そんで、量カジは『ホットコーヒー』を頼み。

俺は、それには倣わず、此処は女子の如く可愛らしく振舞う為だけに『オレンジジュース』などを頼んでみる。


但し、頼んだ物は『生100%』の高い奴だがな。



……さて、飲み物も注文して話を聞く準備も整った事だし。

そろそろ、その片倉が言う俺やGUILDの話とやらを聞いてやるか。



「あの、それで、早速で申し訳ないのですが、先程のお話は、どの様な内容の、お話しなんでしょうか?」

「あぁっと、イキナリなんだね」

「本当にすみません。片倉さんには申し訳ないとは思うのですが、あまり時間が無いのも現実でして……」

「あぁ、そうだったね。ごめん。無理言っちゃってるよね俺」

「構いませんよ。けど、あまり長話をしてる時間はありませんので、出来れば簡潔にお願いしますね」

「あぁ……そうだよね」


まぁそうは言っても、実際は。

今日はTV収録で奈緒おねぇ様が家に居ないので、帰っても暇なだけなんですけどね。


それに、此処で買った同人誌も郵送してるから、今日読めないしな。


ホントは暇なんですよ。



「あの、それで?」

「あぁ、実はさ。倉津さんの親戚である真琴君には、ちょっとした頼み事が有るんだよ」

「はぁ、真琴ちゃんに頼み事ですか」

「そうそう……けど、ほら、彼、此処最近、連絡が付かないでしょ。それで困り果ててたら、そこに親戚の倉津さんが偶然現れてくれたもんだから、倉津さんから、彼への伝言を頼もうと思ってね」


あれ?俺に頼み事があるって話の内容は解ったけど、片倉の奴、おかしいな事を言いやがるな。


連絡が付かなかったって、どう言う事だろうな?


まぁ確かに、今はこんな形で、こんな声だから電話に出る訳にはいかないから、携帯電話の電源を落としちまってるが

その分、毎晩奈緒さんのパソコンでメールのチェックだけは欠かしてないるから、片倉からメールが届いてたら見落とす筈はないんだがな。


ひょっとして、この様子だと……『スパム・メール』と勘違いして、量カジのメールをゴミ箱に捨てちまってたか?

若しくは、後で読もうと思って放置してたのかな?


けど、どちらにしても、そりゃあ流石にマズイ状況だな。



「えぇっと、でしたら、真琴ちゃんには、なんとお伝えしたら良いんですか?」

「いや、なんて言うかさ。倉津君には、とあるイベントの為に、曲を一曲書いて貰いたいんだよね……そう言う伝言を頼みたいんだけど、いける?」


オイオイ、なにを言い出すかと思ったら。

イキナリ、なんだよ、その誰も考えも付かない様なムチャブリは?


んな真似、変に期待されても、俺には100%出来ねぇぞ。


ってかな。

もしこの体でも手伝えそうな事なら、少しは協力してやろうと思ってたんだけどな。

作曲なんて、そんな無理難題を急に押し付けられても対応出来ねぇ処か、正直困るだけだな。


第一にして俺は、今までに曲なんぞ一曲も書いた事がねぇからな。


そりゃあ明らかに無理な注文。


これはもぉ完全な人選ミスレベルだな。



「あの、片倉さん。差し出がましい様ですがね」

「うん?」

「恐らくなんですが、真琴ちゃんは、多少の演奏や、曲のアレンジ程度なら出来るかもしれませんが、丸ごと曲を一曲を書くなんて出来ないと思いますよ」

「へっ?」

「この間、本人が、そうハッキリと言ってましたから」

「えっ?そうなの?」

「あっ、はい」

「そっかぁ……まいったなぁ。今日中に、なんとかして貰おうと思ってたんだけどなぁ」


えぇ~~~!!そんなもん、本人が居ても無理だから……

そんな風に即興で曲が書けるのは、俺の知り合いじゃキチガイの崇秀だけだし。

(↑奈緒さんと嶋田さんは即興派じゃないからな)


しかも奴は、今頃、寝ずに研究してる筈だ。

なので、これ以上、奴に迷惑を掛ける訳にもいかねぇから、そんなもん100%無理な注文だぞ。



「どうして、そんなに急に、曲が必要に成ったんですか?」

「いやねぇ。これ自体は、急にって話って訳でもないんだけどね。なんと言っても、前からメールには、その旨を伝える言葉を何度も入れてたしね。けど、待てど暮らせど、一向に倉津君からの連絡が無かったんだよなぁ」

「あぁ、そうなんですか……」


あぁ、こりゃあ、あれだ。

此処まで来たら、スパムとかと勘違いした以前の問題で、なんか別口のアドレスで送られてる可能性すらあるな。


俺自身、結構な数のアカウントを持ってる事だし。



「それに、実は俺さ。『オタクイメージ撲滅委員会』って会の会員でね。それでまぁ、世間の人が持ってる、今までの様なギトギトのオタクのイメージを、会員全員で、なんとか払拭しようと思ってるんだよ」


おやおや。

なんの企画かは知らんが、それはまた、なんとも無茶な事をやってるんでゲスなぁ。


けど、オタクのそう言うイメージは『俺の馬鹿イメージ』同様、中々消せないと思うよぉ。

なんせ、ギトギトのオタクは、自分がギトギトだって事にすら気付いてないからねぇ。


難易度高いと思うよぉ。


それに、その話、曲を書くのとは、殆ど関連性0だな。


なんだそりゃあ?



「確かに、世間の方に、オタクの方がクリーンなイメージを持って頂く事は良い事ですね。ですが、今の話の中で、曲と、イメージの関連性を、あまり感じませんが。……会のイメージソングって感じの話ですか?」

「あぁ、そうじゃなくてね。今、俺が主催で『コスプレ可のダンスパーティ』とかをやってて、そこでさっき言ってたオタクのイメージUPを計ってるんだよ。っでまぁ、此処最近じゃあ、その会自体も盛り上がって来てた所だし、今まで見たいにDJを使わずに、演奏を生バンドを入れてみようって案が浮上したんだけど、……その依頼したバンドって言うのが、曲を書くのはおろか、アレンジすらロクに出来無い連中でさ。兎に角、今現在、全然使えないんだよね。だから、GUILDランカーの倉津君に、なにか良い案がないかと聞こうと思ってたんだよ」


一辺に、全部説明しやがったな。


よく息が続いたな。


その肺活量からして、ヴォーカル志望か?



「あぁ、なるほど。そう言う事情だったんですか」

「まぁ若しくは、それがダメだったら、倉津君に直接、出演依頼を出そうと思ってたんだけどね」


ふ~~~む、まぁ言ってる事は解るんだけどな。


ダンパ用の生演奏つぅっても……ねぇ。


まぁ本来、今回のケースの様な場合は、変にオリジナルの曲なんてものを作るんじゃなく。

既存の曲を『即興でアレンジ』して演奏した方が、確実に会場は盛り上がるもんなんだけどな。


その方が、下手に変な曲を書いて顰蹙を買う事もないし、それに伴う大火傷をせずに済むしな。


まぁ……かと言って、アレンジすら覚束ない連中に、即興を押し付けるってのも明らかに酷ってもんだしなぁ。

そのバンドの奴等も出来無いなりにも、覚束ない手付きで必至に楽器を演奏してるんだろうから、下手な事を言ったらテンションダウンに繋がり兼ねない。


こりゃあ、結構な難題だ。



「……あの~~~、私で良ければ。1度、演奏レベルだけでも確認しましょうか?」


結局、これしかないよな。


現状では一切関わるつもりは無かったんだが。

片倉が本気で困ってるなら、これを見捨てて行く訳にもイカネェしな。


但し……こういう事をするのは、今回だけだぞ。


良いな、此処だけは勘違いすんなよ?



「えっ?倉津さんって……なにか楽器弾けるの?」

「あぁ、えぇっと、趣味程度なんで、全然大した事はないんですけど。一応、真琴ちゃんと同じベースなら、少しだけ弾けますよ」

「ホントに!!マジで!!……あぁ、でも今、アイツ等の音源を持ち合わせてないや」


コイツだけは……おぬしは、本当に使えん男じゃのぉ。

今日のダンパに必要なら、バンドの音源ぐらい常備して持っとかんかい!!


……ったくもぉ。



「そうですか。……じゃあ、仕方有りませんね」

「あぁ……うん。だよね」

「私が、そのライブハウスのある場所まで移動して、1度聞いてみましょうか?」

「えっ?……今、なんて言ったの?」

「あの、ご迷惑じゃなかったら、私が、真琴ちゃんの代行で、そちらまで行かせて頂きますが……どうされます?」


どぉこれ?どぉこれ?

このタイミングで、この発言が出来るなんて超良い子じゃね?


ひょっとしなくても、量カジの中で、眞子株がストップ高まで上昇してんじゃねぇか?



「えっ、でも、倉津さん……時間」

「困ってる人を見て放っては置けませんよ。微力ながら、お手伝いしますよ」

「倉津さん……」


さぁ崇めろ!!

さぁ褒め称えろ!!

そして、今後一生、俺を女神と仰ぎ。

さっきモブ女扱いした非礼を詫びて死ね!!


……嘘嘘。

心配せんでも、眞子がキッチリ手伝ったる。



「それじゃあ、行きましょうか♪」


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


( ´,_ゝ`)プッ

散々文句を言ってたくせに。

結局は、お人好しな性格が表に出て、片倉さんの手伝いを再度する羽目に成りましたね(笑)


まぁでも、良くも悪くも、困っている人間を見捨てられないのが倉津君。

此処から、どう言う事になるかは解りませんが、これは正しい選択をしたものだと思われます。


ただまぁ、状態がどうあれ。

『今、自分がか弱い女子に成ってしまっている』と言う警戒心だけは忘れないで欲しい所ですね。


さてさて、そんな中。

片倉さんの主催する『コスプレダンパ』の会場に向かって行く訳なのですが。


コミケ会場から、何処に向かって走って行くんでしょうね?

その辺りが気になりましたら、また是非、遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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