●前回までのあらすじ●
自分の小遣いは、自分で稼いでる事を山中君に伝えた倉津君。
そして今度は、山中君の過去の話を聞こうとする。
「ところでよぉ、山中」
「なんや?」
「オマエって、大阪に居た時って、どんな奴だったんだ?」
「俺か?……そら、オマエ。頭はビシッと7:3に分けて、牛乳瓶眼鏡。学生服も全ボタン止めして、首のカラーもキッチリ巻いとった。まぁ大阪で『真面目の山ちゃん』って言うたら有名や……それが俺やな」
崇秀に引き続き、こんな所にも、薬物の哀れな犠牲者が……
未成年・成年に関わらず、命に関わる事だから、薬物の摂取は辞めた方が良いぞ。
特に最近じゃあ、未成年の摂取が多く確認されている様だが、オマエは、何所で、それを手に入れたんだ?
それとも大阪に居た時点で、既にヘビーユーザーだったのか?
確か、大阪だと『西成』って所が、そう言う薬物が頻繁に出回ってるって噂を聞いた事あるな。
そこか?
それにな山中、そんな酷い幻覚が見える様になってるって事は、手遅れになるのも時間の問題だぞ。
薬やるならやるで、せめて良質なもん使えよ。
西成みたいなドヤ街で出回ってる粗悪なものを使ったら、直ぐに、オマエみたいに脳味噌が蕩けちまうからな。
良いな、気を付けろよ。
「そうか、そうか……オマエ、相当、眼が悪いんだな。お可哀想に」
俺は、万が一に賭けた。
薬物汚染による頭の故障じゃなくて、眼が悪だけなら、まだ救いがある。
「なに言うとるねん。俺の視力は両目とも1.5じゃ」
ダメだ、眼じゃなかった……
哀れ山中。
せめて医者じゃなく、俺から宣告してやろう。
「じゃあ、頭の方か……残念だったな、ソッチの方が人間的に重症だ」
「オマエ、最近、秀みたいに口悪なってきたな。人間的に終わってるのは、オマエの方じゃ」
ホントに、俺のツレは、口が達者な奴が多いな。
あぁ言えば、直ぐにこう言う……どんな脊髄で反射して喋ってやがんだよ?
それにしても、なんで大阪の話を、そんなに隠すんだ?
なんか言い難い話でも有るのか?
俺なら大概の話を聞いても、なんとも思わねぇんだけどな。
「ってかよ。なんで、そんなに大阪の話を隠す必要があんだよ?」
「いぃや、別に。なんも隠しとる訳やあらへんけど。……ってか、オマエ、俺の過去なんか聞いてどないすんねん?そんなオモロイ話なんぞ、そないに無いぞ」
「まぁどうもしねぇけどよ。オマエが大阪で、どんなロクでもない事をしてたのか位、知りてぇじゃねぇかよ」
「あのなぁ。もっかい言うけどなぁ。俺は、オマエや、秀みたいな漫画人生は送ってへんで。……言うなれば、ただの不良のロクデナシやっただけや」
ロクデナシねぇ。
不良の後に、ロクデナシって言葉が出るって事は、自分の悪事を自覚してるって証拠だ。
下手すりゃコイツ、相当な大物だぞ。
「って事は何か?鑑別所に送られたとかか?」
「まぁなぁ。オマエの言う通り、一回別荘(鑑別所)には世話には成ってたな。それにコッチに来るまでは、保護観付きやったしな」
マジか!!
冗談で聞いたつもりだったが、まさか、鑑別所にまで送られてたとはな。
コイツ大阪で、一体なにをやらかしやがったんだ?
「保護観付きだと?オマエ、一体、何やったんだよ?」
「人1人半殺しにしただけや。別に、そない大層な話やない」
「……その言い方だと、冗談じゃねぇよな?」
「あぁマジや。序に、そいつの店もボロッボロッに壊したったわ」
半殺しに店破壊?……っで、場所は大阪か。
これ、なんか引っ掛るな。
どこかで聞いた様な気がするんだが……イマイチ記憶を辿っても、思い出せねぇな。
「けどよぉ。オマエがポリに捕まる様な、そんな間抜けな真似するとは思えねぇんだが」
「ポリなんぞに、誰が捕まるかぁ。親に泣きつかれて自首したんや」
「自首だと?なんでそんな事したんだよ?そんなもん後輩にでも行かしゃ良いじゃねぇか」
「まぁあの時は、そう言う訳にもいかんかったんや。なんせ俺が半殺しにした相手は、姉貴の彼氏やった男やからな。どこをどうやっても逃げ様がなかったんや」
あぁそう言う事か。
この話で、漸く、引っ掛ってた話が繋がったぞ。
俺の予想では、コイツが鑑別所送りになったのは、コイツが以前に話した『引き篭もりに成ってる姉貴』が原因。
悪い男に引っ掛って、心身ともにボロボロになったって、あの話だな。
……っとなると、日数的にも、大阪であった、あの事件が濃厚って事か。
あの事件って言うのは……
確か、去年の5月頃に、大阪のミナミにある、とあるホストクラブを数十人の男女が襲撃。
その上、店舗を放火して、一時期、世間を騒がせた事件だ。
事件の概要としては、先に言った様な感じなんだが、実際は、もっと酷い内容だ。
ポリから得た情報では、中に居たホスト全員の顔面だけを狙って、原型を留めないぐらい問答無用でボコボコにしばいた上、店内のあらゆる物を破壊し全壊させた。
その上で、逃げられないホストをそのままに、店を全焼させたって事件だ。
先程も言ったが、世間じゃ、一時期、大騒ぎした時もあったが。
最近では、ほとぼりが冷めたのか、時間と共に、あまり聞かなくなった。
けど、まさか、コイツが首謀者だったとはな。
まぁけど、あれだな。
これだけデカイ事件を起しちまったんなら、大阪に居ずらくなっても、おかしくはない。
恐らく、心機一転を図る為に転校をしたんだろう。
俺の予想では、こんな感じで、コイツは神奈川に流れてきた筈だ。
『襲撃』→『自首』→『鑑別所送り』→『初犯の為、約6ヶ月で出所』→『転校』
……ってところだな。
それでコイツは、1年の後半に神奈川に引っ越してきたと。
これで計算上は、ほぼ合ってる筈だ。
「はぁ~~~、なるほどな」
「なんや?豪い悟っとるな。話が全部見えたか?」
「まぁな……しっかしまた、大胆な事を仕出かしたもんだな」
「確かにな。そやけどなぁ、どうしても、あのカスホストだけは許せんかったんや。女を喰いもんにする様なアホは、さっさと死んだ方が良ぇ。……まぁあれは、俺なりの世直しちゅう奴やな」
『世直し』と来たか……
まぁ、世直しって言えば、世直しだわな。
ホストに喰いモノにされ、人生を狂わされて女の人は沢山居るからな。
……けど、正直言ってしまえば。
山中には悪いんだが、あんなワザとらしい奴等に騙される方も、どうかしてるとは思うんだがな。
実際、ホスト本人達も『擬似恋愛』ってメディアで言い切ってるもんな。
「それにしてもオマエ。よくもまぁ、そんなに襲撃する人間を集められたもんだな。あれって確か、最低でも20~30人位は集まったんじゃなかったか?」
「アホ言うな。そんなもん1声掛けたら、直ぐに祭り好きの不良が集まってきよるわ。それになぁ、なんもあの店の事に怨みを持ってたんは、俺だけやない。娘を風呂(風俗)に墜とされた両親とかも、一杯おったからな」
「あぁ、なるほどなぁ。そう言う事な」
町のゴンタクレと、ホストクラブに恨みを持つ縁者。
確かに、それを集めりゃ、簡単に20~30名にはなるな。
それにしても、あれだよな。
崇秀にしてもそうだが、コイツ等って、ホント、なんに対しても用意周到に上手いやり方をするよな。
既に手口が、犯罪組織のやり口に近いんだよな。
それに、さっき俺も『集めりゃ簡単に集まる』って意見には同意したが。
こんなもん、大きなバックが有るか、相当なぐらい喧嘩に実力がなきゃ、絶対に人は集まらねぇ。
そう考えたら、このアホが喧嘩が強いのも頷けるな。
まっ、でも、この話は、この辺で切るか……山中も、あんまり蒸し返したくねぇ話だろうしな。
だから此処は1つ、心優しい俺は、違う話に変更してやろうじゃないか。
感謝したまえ。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
山中君も、大概悪いですね(笑)
そしてこれが、山中君が持っている【闇】の部分であり、神奈川県に転校してきた理由でもあった訳ですね。
まぁ今現在で、こんな事を仕出かしてしまったら。
一気に特定されて、NET上で晒される所でしょうが……この時代はまだ、そこまでNET文化が浸透していなかったので、比較的この程度で収まってるみたいですね。
しかも、襲撃者の中には大人が多くいた為に、未成年である山中君は首謀者とみなされなかった。
こう言う言い方は良くないのかもしれないのですが『未成年を利用した、上手いやり方』だと思います。
さて、そんな中。
倉津君は、なにやらまた話を転換させるようですが、今度はなんの話をするんでしょうね?
その辺については、また次回の講釈。
また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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