●前回までのあらすじ●
バンドの解散を賭けたライブに、特攻隊長として名乗りを上げた倉津君。
さてさて、彼は一体、何をするつもりなんでしょうね?(笑)
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まずステージの袖で1~4フレットのみを使い、早弾きモドキで曲を奏で始めた。
イキナリ、ステージに出て行くより。
姿を見せずに此処でオーディエンスを煽って、曲に集中させれる可能性が高いと思ったからだ。
そんで俺の予定通り、真っ暗なステージ上にあるスピーカーからは低音ベースが響き渡り。
さっきより観客のざわめきが大きくなった。
序に言えば、予定に無い曲の変更に、ウチのバンドのメンバーも呆気にとられる。
「ちょ……オマエ」
「後は任せたぜ。……じゃあな」
俺は、山中の言葉を無視して、一気にステージに躍り出る。
瞬時にスポットライトが俺を捉え、目の前が真っ白になる位の光量を放つ。
かなり眩しいが、そんな事は関係ねぇ!!
抑えていた演奏したかった欲求を全て乗せて、思い切りベースをかき鳴らしてやるだけだ!!
「「きゃぁぁあぁ~~~!!最初から兄貴君の登場だぁ~~~!!兄貴く~ん!!」」
「「キタァ~~~!!魔虎兄貴ぃ~~~~!!バンドの切り込み隊長!!」」
「「「「「おぉ兄貴だ!!兄貴ぃ~~~!!」」」」」
スポットが当たると同時に。
ライブハウスに貯まっていた熱気と、300人以上居る人間の視線が一気に俺に集中する。
それと同時に、普通の奴なら瞬時に卒倒しそうな勢いの熱気が俺に纏わり付いてくる。
まさに全身の毛穴が『ザワザワ』する感じだ。
だが、こんなもんは俺のとっちゃあ『ただの気持ち良い微風』に過ぎない。
寧ろ、俺は、人に注目される事によって、自分の集中力をドンドン上昇させていくタイプ。
なので、切り込み程、俺に適した環境はない。
なら、そこが解ってる以上、此処からは、真っ白になったままで最後まで曲を弾くだけだ。
にしても……モヒの奴も、ロンの奴も、前回の俺達の惨敗を見ても、まだ懲りずに会場に足を運んでくれたんだな。
それによく見たら、俺のTシャツを奪い合ってくれてた女の子も一緒に来てくれてるじゃねぇか。
ありがてぇな。
……ホント、オマエ等が居てくれたら、スゲェ心強いぞ。
まさに百人力だぜ!!
そんな風に小さく感激をしながら、曲の冒頭を弾き続け。
次のメンバーの出番を待つ。
さて、ここからが本番だ。
他のメンバーは、俺のこの行為に対して、一体どう来る?
この俺のスーパー・アレンジに付いて来られるのか?
***
そんな中、俺の次に会場入りしたのは、当然、俺と、音の骨組みを作るドラム担当の山中。
奴は、自分のスティックをくるくる廻しながら。
俺を馬鹿にする様に、余裕の表情を見せながらステージ上に上がってきた。
野郎ぉ~~~!!なんだよ、その余裕はよぉ!!
ってか、俺の必死に考えたアレンジは、そんな余裕が持てるほど単純なものなのか?
「出た出た!!関西のクソッタレ野郎だぁ~~~!!オマエ、ライブ前に、ちゃんとトイレ行って来たんだろうな?またライブ中に糞漏らすなよ!!」
「おぉ、心配すな。言われんでも、ちゃんと行って来たでぇ。さっき、うんこブリブリやったからな。今日は漏らせへんでぇ……って、アホか!!俺、この間も漏らしてへんわ!!」
「出た!!関西野郎の無駄なノリ突っ込み!!やっぱり、コイツ、死ぬほどアホだぁ~~~!!死ねぇ~関西人!!」
「やかましいわ!!オマエ等、そんな事バッカリ言うとったらなぁ。トイレでも勃起が直れへん様になる演奏するぞ!!」
「おぉ、なら、やってみろよ!!このバイアグラ野郎がぁ~~~!!」
「任しとけや、ボンクラ共!!俺のドラム聴いたら最後。オマエ等、一生バイアグラいらずの体じゃあ!!野郎はチンコおっ立てたまま、女はパンツビチャビチャに濡らしたまま生活しとけや!!」
「「「「「おおぉぉぉおぉぉおぉおぉ~~~!!」」」」」
相変わらず、えげつないマイク(?)パフォーマンスだな。
こうやって客との一体感を作るのは、バンド内でも、コイツが一番上手く作れる。
ホント、コイツは神経が図太いし、誰とでも直ぐ仲良くなるよな。
こう言うのを、多分、カリスマ性って言うんだろうな。
大したもんだ。
にしても……なんで山中の奴、直ぐにドラムに行かずに、俺の方に来るんだ?
オイオイ、まさかコイツ……
「グハッ!!」
俺が必死に演奏しているにも拘らず、無言で、俺のわき腹に一発パンチを入れやがった。
オマエなぁ……そんな事して、俺が演奏をしくじったらどうすんだよ?
ありえねぇ野郎だな。
そうやって俺が、心の中で文句を言った瞬間、奴は楽しそうに口を開いた。
「なんや、なんや。豪いオモロイ事してくれるやないか、マコ。これは、俺に対する挑戦状か?そう受け取って良ぇねんな」
「悪ぃ……が、最初から、そんな気しかねぇよ!!この馬~鹿ッ!!つぅか、そんなツマンネェ事をのたまわってないで、さっさとドラムん所へ行って、ヘボいドラムでもポコポコ叩いてやがれつぅの!!あぁそれとなぁ、殺れるもんなら殺ってみろよ。今日の俺は、早々簡単にはくたばらねぇかんな」
「ほぉ~~~、おもろいやんけ。ほんだら、ご要望通り、俺のドラム音でオマエを撲殺したるわ」
「ほざいてろ」
上手く煽れたな。
元々山中は負けず嫌いだから、直ぐに、俺の挑発に乗るとは思っていたが、まさか、こうも簡単に乗るとはな。
ヤッパ、馬鹿は扱い易い。
……その分、他のメンバーは頭が良いから、扱い難いけどな。
「……そやけどのぉ。ヤッパ、生ライブは良ぇな。こう言うイレギュラーが有るからこそ、ライブは辞められへんねん。まぁオモロイ分、オマエは大きく後悔する事になるやろうけどな。こう言う事はな。素人の浅はかな考えでやるもんやないで。ライブ経験値がモノを言うからな」
「なっ!!」
「ほんだらな。オマエのお陰で、またライブがおもろなってきよったわ」
そんな言葉を残して山中は、鼻歌交じりで、本当に楽しそうにドラムに向かって行く。
ただ俺は、山中の残した言葉に、少し恐怖感を感じた。
『経験値』って話だ。
これは、ちょっとや、そっとバンドをやった位じゃ、そう簡単に手に入るものじゃない。
なので俺は、あまりにも無茶な事をしたのかも知れないと、少し反省した。
けど、やっちまったものは、今更どうやっても変わり様がない。
つぅか、此処でビビッて後退する位なら、最初からやらねぇつぅ~の!!
だから、掛かって来いヤァ~~~!!
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
アレンジで、イキナリ早弾きをして観客を煽る事に成功した倉津君ですが。
その後に山中君がステージインをして、なにやら不穏な空気が流れて来ましたね。
このまま、何事も無く倉津君の目論見は成功するのか?
それとも……(笑)
そこはまた次回の講釈。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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