●前回までのあらすじ●
テスト勉強を徹夜で頑張った倉津君。
そして、そんな彼を起こす為に奈緒さんは、彼の鼻を摘まんだ息が出来なくなる様な状態で激しいおはようのキスをする。
それにより、倉津君は死に掛けるが。
その後、奈緒さんは、倉津君の言った「キス」ではなく「チュ~」っと言う言葉に妙に照れた様子だったので。
また余計な事を考えて、奈緒さんを、それでからかおうとする倉津君。
その結果は如何に!!
「いや、あれだけ激しくされたら『キッス』じゃなくて『チュ~』でしょ。あんなに吸われたの、俺、生まれて初めてッスよ」
まずは、こんな感じでどうだ?
だって、女の人ってよぉ。
面と向かって『激しい』とか『吸った』とかって言われんのが、あんまり好きじゃないだろ。
だから、こう言えば、如何に奈緒さんと言えども、少しは恥ずかしがる筈だ。
どうよ?どうよ俺!!
「うん?……その言い分だと、クラは、毎日誰かに『おはチュ~』されてるって事だよね?」
あぁそう来るか。
って言うかな。
この人、ホント、常に俺の考えの斜め上を行く人だよな。
そんな質問が返って来るとは、全然思ってなかった。
「いやいや、俺は、奈緒さん以外と、一回もチュ~なんてした事が無いッスよ」
「そう……なんだ。あっ、じゃあさ、君からも、私に『おはチュ~』してみる?」
奈緒さんは、自分の唇を人差し指で『ポンポン』っと差す。
その仕草が妙に可愛い。
「いや……俺……その」
はいは~~い、毎度毎度のショボ臓発動ッスよ!!
いやまぁ、実際はやってみたいけどな。
なんて言うか、こう言うのってよぉ。
意外と、こっぱずかしくて、中々出来ねぇもんだよな。
それ以前に奈緒さん、よく考えて下さいよ。
そこのドラムで山中が突っ伏して寝てるとは言え、一応は奴も、この場には存在してるんですよ。
奈緒さんにキスした瞬間、変なタイミングで、ムクってゾンビみたいに起きて来たらどうするんですか?
「ほ~ら、早く。『おはチュ~』頂戴……ク~ラッ♪」
あぁダメだ……始まっちまったな。
奈緒さんの一番悪い癖、悪乗りが始まっちまったよ。
そりゃあ元を正せば、調子に乗って、奈緒さんをからかおうとした俺が悪いんだが。
この人、ホント、俺をからかうのが好きだよな。
勢いに任せて、舌まで入れて『ディープおはチュ~』したろか!!
「いやいや、奈緒さん。流石にダメっすよ。……そこに山中居るし」
はい、やっぱり無理でしたぁ~~~。
「クラ……私と『おはチュ~』するのが、そんなに嫌なの?」
「いやいやいや」
「じゃあ『おはチュ~』して『おはよう奈緒』って言ってみ」
来た来た来たぁ。
更に来ちゃったよ。
俺が抵抗すればする程『要求のレベルアップ』が行われる、奈緒システムが……
早く何とかしないと、この人、無限に要求を増やしてくるぞ。
どうする俺?
「いや、あの、奈緒さん」
「もぅ良い……へたれ」
業を煮やしたのか奈緒さんは、いつもの『ヘタレ』っと言う言葉を残し。
プンスカ怒りながら、プイッと横を向いてしまう。
また俺は、奈緒さんに恥を掻かせてしまったんだろうか?
だとしたら、こんな風にオロオロするのも、いい加減辞めないとな。
こんな事バッカリしてたら、その内、確実に奈緒さんに捨てられちまうな。
そう思った瞬間、奈緒さんは体を急速に反転させ、軽く俺の唇に自分の唇を重ねてきた。
その後、直ぐに唇を離し、奈緒さんは俯く。
俺からキッスしなかったから怒ってるんだろうな。
早めに謝ろう。
「あっ、あの、奈緒さん……」
「おはよう……クラ」
不意に顔を上げた奈緒さんは、眩しい位の笑顔を、俺に向けてくれた。
この人……かっ、可愛すぎるぞ!!
まだそんな『必殺の隠し技』を、持ってたんッスね。
恐ろしい人だ。
それに引き換え俺と来たら……
また不意打ちはされるわ……
どもるわ……
地上で、最も情けなくて最悪な生き物だな。
本心ではしたいくせに、人目ばっかり気にする。
俺は、いつになったら、自分から積極的に、奈緒さんをリードしてあげれるんだろうな?
情けねぇなオイ!!
しかしまぁ、此処までして貰ったら、せめて、なにかお返ししないと、これは、流石に格好が付かないよな。
単細胞の核が知恵を絞って、無駄だとは解りながらも、必死に思考する事2秒。
俺が精一杯考えて、奈緒さんにした行動。
それは……
「おっ、おはよう、奈緒」
「あっ……」
『奈緒さんの前髪をかき上げてデコチュ~』
小学生でも出来そうな低レベルな、お返しだ。
あぁ~~~あぁっ、もぉマジでカッコ悪っ……マジ、最悪だ。
しかも、そこに……
「あっ、あの、あの、あの、おっ、おはようございます」
GYAAAAAAaaaaaAAAaaaAaaAA~~~~~S・U・N・A・Oさんじゃないですか!!
今のデコチュ~した瞬間を、素直に見られちまったぁぁあぁぁぁあぁぁ~~~!!
これは『かなり恥ずかしい』なんて処の騒ぎじゃないぞ!!
って言うかな素直。
オマエなぁ、部屋に入ってくる時は、必ずノックしてから部屋に入って来るのが礼儀ってもんだぞ。
なのに、なんでそんなにタイミング悪く、そう言う事を忘れるんだ。
らしくねぇぞ素直!!
動揺を隠せない俺は、心の中で素直に注意する。
「あぁ、おはよう、アリス。昨日は、よく眠れた?」
うわぁ~~~っ!!奈緒さん凄ぇ~~~!!
この人は、俺なんかとは根本からして格が違う。
自分も、素直の前でデコチュ~されたくせに、まるでなにも無かった様にニコッと笑って、普通に朝の挨拶をしてるぞ。
しかもな。
相手を気遣って『昨日はよく眠れた?』なんて台詞まで、よくもまぁ平気な顔をして言えたもんだな。
度胸が有ると言うか……肝が据わってると言うか……
現役女子中学生じゃ、人生経験値の差で、現役女子高生には勝てないか。
誠に恐るべし、向井奈緒!!
しかしまぁ、そう考えたら、素直は、まだまだ子供なんだな。
その奈緒さんの行動に動揺して、なんも対処出来てないもんな。
(↑自分も滅茶苦茶動揺してたくせに、偉そうな俺)
「あの……あの……あっ、あぁ、はっ、はい、よく眠れました」
「そぅ、それは良かった。じゃあ、馬鹿2人の早朝仮テストをする前に、朝ごはんにするから、アリスは、先に顔洗っておいで」
「あっ、あの、あぁ、はっ、はい、ありがとうございます。あの、お言葉に甘えさせて貰って、私、先に洗面所お借りしますね」
慌てて扉を戻り、洗面所に向っていく。
……にしても、凄い動揺のし様だな。
それを証拠に、いつもは自分の事を『僕』って言うのに、今アイツ『私』って言ってたからな。
この出来事は、アイツの中では、相当ショッキングな部類だったんだろうな。
まぁ確かに、映画でもない限り、中々あんなシーンに出くわす機会なんて、日常的には無い訳だから、これは仕方がないと言えば、仕方がないんだろうな。
素直って、偶に吃驚する様な大胆な事をする割に、あんまりこう言う事に免疫がないのな。
(↑ヘタレの癖に偉そうな俺)
「クラ。君達も朝ご飯にするから、カズを起こしてから、一緒に顔洗ってきなよ」
「あぁ、ウッス」
「それと……」
「なっ、なんッスか?」
「さっきのデコチュ~……ちょっとドキドキした。あぁ言うのは、私も好きだよ♪」
オイオイ、マジか?
なにも思い付かなかったから、咄嗟にやった事なんだが、まさかの高評価だな。
珍しく奈緒さんも照れてるしよ。
しかしまぁ、この照れた表情、マジ可愛いな、この人。
なら俺……ちょ、ちょっと臭いセリフでも吐いて、サービスしてみっかな。
「俺、奈緒が気持ち良くなるなら、いつでも、それぐらいしてあげるッスよ」
思い切り顔を引き締めていったんだが、決まったか?
決まったのか俺?
俺は、それを確かめる為に、奈緒さんを見てみる。
すると、存外に効果が有ったのか。
奈緒さんは顔を赤らめながら、コチラに近づいて来るじゃ有りませんか。
だから俺は、再度、顔を引き締めた。
どんなにヘタレな俺でも、今なら行ける!!
「クラ……」
「なんッスか、奈緒さん」
『ポコッ』
予想に反して、不穏な可愛らしい音と、それに反する激痛が、脳天に稲妻の様に走る。
俺はピンポイントに落ちた雷撃の中、慌てて奈緒さんを見る。
するとだ。
奈緒さんの手には、いつのまにか、あの例のデスノートが丸まった状態で握られており。
しかも、その表情は、さも哀れな者を見る様な、完全に白けきった顔をしている。
俺の激痛は、これを確認する事によって、更に痛みを増していく。
「痛ってぇ~~~!!奈緒さん、それ、マジ痛ぇ~ッスよ」
「調子に乗るからよ。大体、君は、いつから、そんな軟弱な二枚目・ゲームキャラが吐く様な、女誑しなセリフを言う様になったのよ。洗面所で顔洗いながら、鏡を、じっくり見てきたらどぉ?」
「……さぁせんした(すみませんでした)」
酷ぇ……
いつもは嬉々として、自分から、俺に、そんなセリフばっかり言わすくせに……
俺が、自分から言った瞬間、これだよ。
しかも、言うに事欠いて『顔洗って、鏡見て来いですぜ』
そりゃねぇっすよ。
……っとまぁ、こんな感じで、朝のドタバタ・イベントが終了していく訳だ。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
まぁ、所詮は倉津君なので、こんなもんですね。
そう簡単には奈緒さんを、からかえない様です(笑)
それでも、奈緒さんの評価は良かったみたいなので、そこそこは彼なりには頑張れたと思います。
まぁまぁ、そんな感じで続いて行きますので。
次回も、また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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