●前回のおさらい●
どれだけの格差が有ろうとも、崇秀にとって倉津君(眞子)は『掛け替えのない親友』だと思ってくれていた。
当然、それを聞いた眞子も素直な気持ちに成り。
崇秀が、自分にとっては『なんでも出来るヒーロー』だったと告白する。
だが、その言葉に崇秀は……『なんでも出来たのには裏がある』っと言い出した。
果たして、その真意は?
「いや、実はな。俺の頭が良いのには、ちょっとした理由があってな。脳味噌の中を『遺伝子操作』されてるからなんだよ」
「えっ?……なに?」
「いや、だからな。俺な。生まれた時はな。頭が、ちょっと弱い『知恵遅れ』の子供だったんだよ」
「えっ?なに?崇秀、なに言ってんの?そんな…の…嘘……だよね」
「いやいや、ホントホント。冗談抜きに、ホント。……つぅかな。ほら、ウチの親父って『遺伝子工学の博士』だろ。だから、テメェの息子が『知恵遅れ』だと世間体が悪いとでも思ったんだろうな。親父さぁ、俺を殺す気で『色々な人体実験の素材』として、俺を使いやがったんだよ。そんで、実験をやった結果。実験をやった当の本人も解らない様な結果が出て。この有様……って訳なんだよな」
「酷い……そんなの……」
……なんて事なの。
普通に聞けば、誰が聞いても与太話にしか成らない話だけど、こう言う話が崇秀の口から出ると、まったく信じられない訳じゃない。
だって崇秀は、こう言った、本当の意味での性質の悪い冗談は、絶対に言わないからね。
確かに普段の崇秀は、人をからかったり、馬鹿にした様な物の言い方をするけど、それは常識の範疇の中での話。
今の様な、人を傷付ける可能性のある不快な言動は絶対にしない。
特に、それが『差別的』なものに成れば、尚更言わない。
だから、こんな話は、嘘であって欲しいとは思うけど、その反面、こんな無茶苦茶な話でさえ信用出来てしまう。
それにしても……なんて親なんだろう。
こんな事は、絶対に有り得ちゃイケナイ話なのに。
それに崇秀。
今、気軽に、こんな話をしたけど。
私なんかより、想像を絶する様な酷い目に遭ってたんだ。
それも、それもだよ。
右も、左も、なにも解らない様な赤ちゃんの時にだよ……
こんな人道の外れた事が有ってはいけないのに。
……でも、だからこそ崇秀は、誰に対しても分け隔てなく、他人に対して優しく成れるのかもしれない。
出来無い子を見たら、その時の自分と重ね合わせて放って置けなくなり、ナンデモカンデモ心からお節介しようとしてるんだろうしね。
そっか……崇秀の、他人に対する異常性の根本は、そこにあったんだ。
「へっ?いやまぁ、酷いどころか。今となっちゃあ、逆に、有り難いとさえ思うがな」
「えっ?えっ?でも……」
「いやまぁ、そりゃあな。……親父に『イラナイ子』の烙印を押された事実だけは、なにもかわらねぇし。俺自身が『人』であるのかすら疑わしいもんだけどな。特に、今は恨んじゃ居ねぇよ。親子揃って、人じゃねぇかも知らねぇけど」
「なんで、そんな事を言うの?崇秀は、ちゃんとした『人』だよ。もし、違うって言う奴が居たら、私が、問答無用で半殺しにしてやる!!そんな事言う奴は絶対に許さない!!」
『人』だよ!!
私の『親友』は、誰がなんと言おうと『人』だよ!!
人だもん!!
「まぁまぁ、怒ってくれんのは有り難いが、そんなに熱くなるなっての。俺は事実を話してるだけで、別にオマエに同情して貰おうって訳じゃねぇんだからよ」
「でも、人だもん!!」
「だから、熱くなるなって言うの。大体にしてだな。この体の中に、どれだけの遺伝子が混じってるのか解ったもんじゃねぇんだぞ。これじゃあ、人と言うより、優良遺伝子の塊だろ。……ただのキメラじゃん」
「違う!!そんな事を言うな!!崇秀は人だもん!!」
「オイオイ、俺はなにも、この体を悲観して、こんな事を言ってる訳でもねぇだぞ。寧ろ、んな事は、なにも気にしちゃあ居ねぇ。さっきも、そう言っただろ」
「えっ?でも、だって……人だもん……人だから……」
あの……それ、どう言う心境?
しかも、自分で『人じゃない』って言う程、此処まで酷い『自分の生い立ち』すらも全く気にしてないって、どういう神経なの?
「アホ。……もうちょっと、話の本質を考えろ」
「本質って言ったって……崇秀は、人だよ」
「違うって言ってんだろ。そこじゃねぇの」
「でも、そこも大事だよ」
「あぁもぉ、そうじゃなくてだな。あのなぁ、キメラ人間でもなんでも、社会に有用な存在になっちまえば。それは既に、なんの問題はないの。……要は、悲観する暇があったら、誰にでも必要とされる様な人間に成れば良いだけの事。それだけで、俺の存在意義は成り立つだろうに」
「なっ!!」
「……それにな。俺が、それを立証出来れば『できちゃった婚』をしたウチのお袋も、世間から後ろ指を刺されずに済むだろ。自分の存在意義ってのはな。そうやって世間に示すもんだって話をしてんの」
えぇえぇぇぇ~~~!!
何でこんな話をしてるのかと思ったら。
そんな事だけを私に伝えたくて、こんな誰にも言いたく無い様なカミングアウトをしたって言うの?
……信じられない。
それに、なんて……ポジティブな思考なの?
そこまで頭が良いなら、普通は他人を見下すだけで、自分の為にしか使わないか、悪用するしか考えないモノなのに……本当に崇秀は、世の中に『自分の持てる全ての才能を垂れ流す』つもりなんだ。
此処まで来たら、凄すぎて、なにがなんだか解らないよ。
・・・・・・
……って、ちょっと待って!!
違う違う!!これはそんな話じゃない!!
これって……ひょっとして、私の為に言ってない?
自分の不幸生い立ちを聞かせた方が、少しは私の方がマッシだと思えて『生き易くなる』って考えてるんじゃないの?
まだだ……
また、コイツは……
ホント、嫌いだよ……
「崇秀さぁ……私の事、ぐすっ、心配して……今の話したでしょ」
「あっ、バレやがった。あぁ因みに、嘘は言ってねぇからな。全部事実な事実」
ヤッパリ……そうだったんだ。
「そう言う問題じゃなくて、ぐすっ……なんで、崇秀が、ぐすっぐすっ……そこまでする必要が有るのよ。ぐすっ……こんな事、本当は言いたくなかったんでしょ」
「別にぃ。オマエになら、なにを知られても問題無いし。大体にして俺、ホントに気にしてねぇし。つぅか、んな事ぐらいで泣・く・な。前も言ったがな『可愛い面』が台無しになるから、泣・く・な」
泣くなとか言われても……この状況じゃ、感動してるから、勝手にポロポロ涙が出て来るんだもん。
男女に関わらず、私の事を、こんなに心配してくれる友達が居るのが嬉しくて仕方ないんだもん。
泣くもん。
女の子だから、泣いても良いんだもん!!
……でも、このまま泣いてたら、崇秀が、カミングアウトまでして話してくれた話が無駄に成っちゃうかぁ。
大切な……親友を困らせるのは……良くないよね。
うんうん、良くない良くない、きっと良くない。
それにね、それにね。
親友が……あの……その……『可愛い顔を台無しにしちゃいけない』って言うんなら、きっと、これも『しちゃいけない』んだよ。
じゃ、じゃあ、しょうがないよね。
泣くのは我慢しなきゃね。
崇秀は、眞子の大切な親友だし……
「あぁ、うん。わかったよ。……じゃあね、もぉ泣かないね。ぐすっ、ぐすっ」
「泣いてんじゃん」
……酷い。
自分が泣かせて置いて『泣くな泣くな』言うから我慢してるのに……
大体にして、女の子ってのはさぁ。
基本的に感情が豊かだから、男性より涙腺が緩いもんなの。
直ぐにポロポロ涙が出る仕様に成ってるの!!
だから、そんな意地悪な事を言わなくても良くない?
じゃあ、良いよ良いよ。
そんな意地悪言う奴には、もぉ思いっ切り泣いたる。
「あぁ、そうですよ。どうせ泣いてますよ。私は泣き虫ですよ。……そんな事を言うなら、もっと泣いてやるもんね。こんな所で、女の子に泣かれたら、崇秀の世間体悪くなるだけなんだからね。それでも良いんだよね?もぉ泣くからね。準備万端だからね。知らないからね」
「オマエ……嫌な女だな、オイ」
「うっさいよ!!崇秀が意地悪言うからでしょ。もぉ、わんわん泣いたる」
「わかった、わかった。勘弁してくれよ。コンビニで『ぷっちんプリン』を買ってやるから泣くな。オマエ、あれ、好きなんだろ」
えっ?
えぇっと、それってさぁ『私の涙』って、その程度の価値しかないって事なのかなぁ?
直ぐに泣くからって、幾らなんでも『ぷっちんプリン』だけってのは、ちょっと安過ぎるんじゃないかい?
断固、値上げ交渉希望ですよ!!
「なにそれ?安ッ!!……じゃあ、せめて、大きい奴2個ね。2個だよ。3個でも良いけど」
「オイオイ、なんだよ、そのセコイ発想は?……ってか、オマエ、安ッいなぁ!!」
「なんでよぉ。『1泣きで、2個美味しい』なんだよ。安くないもん」
「グリコのキャラメルかよ」
「あぁ、じゃあ、それも2個ね。2個買って……3個でも良いけど」
「ドンだけ業突く張りなんだよ」
「果・て・し・な・く♪」
「俺の真似すんな」
「「……ぷぷぷっ……あははっははっはは……」」
ヤッパ、最終的には、これで良いんだよね。
私なんかの為に色々な事を話してくれたり。
その話を聞いて色んな意味で泣かされたりする様な事には成ったけど、崇秀とは、最後には一緒に笑っていたい。
それに、こうある為にも、永遠に、切っても、絶対に切れない縁でありたい。
きっと私は、崇秀と言う存在が居ないとダメなんだろうね。
だって、もし崇秀が居なかったら、こう言う状態には成らなかったかも知れないけど。
その分、こんな風に泣いたり笑ったりする、常に満足が出来る様な楽しい人生は歩めなかったと思う。
私1人だったら、誰にも相手にされない様な屑のヤクザ成っていたと言うのが、良い所のオチだろう。
だから、私にとっては『この崇秀との関係が最高』なんだね。
口は悪いけど『最高の親友を持てた』と感謝の念が尽きない。
こう言う親友がモテた事は、本当に幸せな事ですね。
あぁでも、此処で絶対に勘違いしちゃダメですよ!!
確かに崇秀は、正真正銘、隠す所の無い最高の親友だけど、男としては見れないからね!!
此処だけは、間違えないでね!!
私の恋人は、絶対の絶対に奈緒さん1人だけなんだからね!!
あぁ後、これも序に言って置きたいんだけどね。
もぉ、これから崇秀の前では、一枚も猫を被らず、いつもの、こんな普段通りの感じで居てやるんだからね。
此処は覚悟するんだぞ♪
その方が、お互い気持ちが楽で居られそうだしね。
最高なんですよ♪♪
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
『父親の人体実験により作られた天才』
それこそが、崇秀の頭の良さの根本であり、他人とは違う思考回路を持ってる理由だったんですね。
ただ、そうは言っても。
幾ら頭が良かろうが、運動神経が発達していようが、それを本気で使いこなす為の『努力』っと言うものが無ければ無意味。
どれだけの天才であっても、その活躍出来るであろう分野に『興味』を持たなければ輝く事なんて出来ないですからね。
なので崇秀は、作られた天才とは言え、その活躍出来るであろう分野を広める為に様々な知識や分野に手を出し。
自らの手で編み出した『複合原理』で、多分野で活躍出来る下済みを努力して作っているんですよ。
(特に崇秀は、自身が作られた天才だと言うのを自覚していますしね(笑))
ですが、これこそが、本来『天才のすべき努力』なんですよ。
これが出来て初めて天才と呼ばれる人材であり、自身が『本物の天才』っと証明出来る訳ですからね。
要するに、作られた天才であろうと、ナチュラルな天才であろうと。
1つの分野にしか特化出来ない様な柔軟性のない思考の人間じゃ、それは『本当の天才』ではなく。
『ただのその分野で才能のあっただけの人』に過ぎないって事ですね。
どんな状態であっても天才なら『多彩であるべき事を証明できなければ意味がない』と私は思っていますので(笑)
さてさて、そんなとんでもないカミングアウトが崇秀からあった後なのですが。
相変わらず崇秀は、普段通りみたいですし。
眞子は眞子で、そんな崇秀の行動に感動しながらも、これまた普段通りに接している。
そんな2人が次回、どんな事を巻き起こすのか?
それは次回の講釈。
そこが少しでも気にして頂けましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾
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