最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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283 不良さん、狂った思考の魔王のライブを見せ付けられる(序章)

公開日時: 2021年11月16日(火) 00:21
更新日時: 2022年12月17日(土) 15:56
文字数:2,652

●前回のおさらい●


 倉津君との会話を終え、ステージに向かっていく崇秀。


ただ、そんな呑気な崇秀がステージインするだけで、観客は異様なまでの盛り上がりを見せる。

そして、彼が奏でた一曲目は奇妙な曲のタイトルは『I・N・A・G・A・W・A』


この曲の意味は、一体……

 俺の疑問をそのままに、オドロオドロした音が、奴のギターから奏でられ始めた。

その奇妙奇天烈なオドロオドロしい音は、ギターからアンプに移り、そのアンプからスピーカーに憑依……奇妙な音は、会場全体に鳴り響いた。


それ以降は……身が凍る様な、静かで、幽玄な音が連続で流れ。

日中の日差しの高い中、糞暑い時間にも拘らず、会場全体が『冷気』……いや『霊気』に包まれていく。


この音を聞くだけで『寒気』を催し、この糞暑い筈の浜辺での体感温度は『-5℃』以上下がった様な気がした。


更に……奴の曲の独特なリズムと音色が上手く観客の聴覚を刺激し。

奴のギターの音色を聞いてるだけで、たった1人で真夜中に山中の『墓場』を歩いている様な恐怖すら感じる。


それはまるで……『日本独特の怪談』を聞いてる様な錯覚に陥っていく。


『Inagawa』……それは、まさに『恐怖』を代弁する様な代物だった。


***


 そんな中、静かに曲は終わる。


あぁ因みに、聞いている観客の反応はだな。

海だけに、水着やラフな格好な奴が多いんだが。

誰も彼もが奴の曲に『寒気』を感じたのか、上に服を羽織ったり、バスタオルを掛けたりしてる。


それ程、強烈な悪寒を感じさせる曲だった。



「しかし……なんで『Inagawa』なんだ?訳わかんねぇ?」


俺の疑問は、なにも解消される事なかった。


この時点では、まだ曲の題名が、奴の『ボケ』だと気付いていなかったっと言う事だ。



「どないだ?『稲川淳二の怪談』を聞いてるみたいで、肝が冷えて面白かっただろ?」


・・・・・・


しょ……しょうもな!!

何かと思えば、怪談話の得意な芸能人『稲川淳二』の名前から取って『Inagawa』だったのかよ!!


ツマンネェ駄洒落みたいな題名付けてんじゃねぇよ!!


駄洒落好きのオッサンか、オマエは!!



そこに、俺と同じ考えを持った男が、この馬鹿に反論の声を上げた。

こう言う時には、必ずと言って良い程、率先して声を上げてくれる男。


その名は……反論大王『鮫島良一』


『奈緒さん親衛隊(本人未公認)』を自称する男だ。



「った……ったく!!ふっ、ふざけた曲を弾いてんじゃねぇぞ、仲居間さん!!」

「おっ、おっ、誰かと思えば、鮫じゃん!!どうだったよ?これで、ちょっとは涼しくなっただろ?」

「あのなぁ。だから、ふざけんなって!!」

「まぁまぁ、そう言うなって……だってよぉ、今日暑ぃじゃん。なら、炎天下で曲を聞いてくれる客へのサービスだろ、サービスがよ」

「相も変わらず、不真面目な野郎だな。……っで、そのサービスの曲とやらが終わったんなら、次からは、真面目にやるつもりなんだろうな?」

「いいや、その気は全くねぇよ。……今日はな、全曲、客のリクエスト聞いて、即興で曲を作る腹積もりだ。……面白そうだろ?」

「がっ!!」

「がっ!!」


あぁ、イカンイカン!!

崇秀の馬鹿さ加減に、思わず鮫島とシンクロしちまったよ!!


……つぅかな。

8000人も入ってるライブで『客のリクエスト』なんぞをイチイチ聞いて『即興』で曲を演奏するだと?


無茶苦茶な提案にも程があるぞ。


大体にして、そんなもん、どうやってやるつもりだよ?


それにオマエ……それをやるって事は、ひょっとして、このライブに向けて、一切合切、曲を用意してないッて事なんじゃねぇのか?


もしそうなら、マジで、どうなってんだ、コイツの精神は?

色々な大切な機能を、崇秀の母親である静流さんの腹の中に忘れ過ぎじゃねぇか?



「んじゃま鮫、話の序だ。なんか『こんな曲が聞きたい』って、リクエストはねぇか?」

「オイ……マジでヤル気か?」

「ったりめぇだろ。俺のライブは、客のコンセプトに合わせてやるのが主義なんだ。押し付けがましく、自分の曲を客に聞かせる様なダセェライブなんて、お断りなんだよ」

「マジかよ……」

「っで、どんな曲が良いよ?……おぉそうだ、そうだ。なんなら、此処数ヶ月のオマエの心境を、即興で曲にしてやろっか?」

「ちょオマ!!」

「「「「おぉ、やれやれ、仲居間さん!!それ、面白そうじゃん!!」」」」

「オマエ等なぁ!!」

「OKOK。んじゃま、リクエスト通り、それでいってみっか……『Blinded by me』」

「やめろちゅう~の!!」


奴が、そんな話を聞く筈も無い。



「……っと、イカンイカン。その前に、UV-7じゃ低音重視だから、曲と音が合わねぇや。まずは、曲に合ったギター変えねぇとな」

「「「「「あはははははっはっははっはっ……」」」」」


っと思ったら、そんな馬鹿な事を言って、観客に笑われてる。


そりゃあそうだろ。

大体にして『UV-7じゃ音が合わない?』ってなんだよ?

曲を停める理由がギターの変更じゃあ、観客に笑われても仕方が無いってもんだ。


つぅか、ギターなんてもんは、どれで、何を弾いても同じなんじゃねぇのか?


そんな馬鹿な事を言ってるから、オマエは笑われてるんだぞ。


現に俺なんてよぉ。

愛機のFender USA American Deluxe Jazz Bassフラットレス以外は、殆ど使った事ねぇんだからな。

(↑以前に奈緒さんのベースを使った事がある&遠藤)


故に俺は、奴のこの奇妙な行為を疑問に思った。



すると……それを素早く感知したのか。

ライブ途中にも拘らず、ズカズカとコチラに寄って来る。


んで、俺に向って一言を発する。



「オイ、倉津。速攻で向井さん呼んで来い。んで、ステージの裾でマイクを持たせて待機」


違った。


崇秀は指示を出す為だけにコチラに来ただけで、俺の疑問に答える為ではなかった。


ってか、その指示を出したら、直ぐ様、ステージに逆戻りして行こうとしている。

今の奴には、俺の事なんぞは、既に眼中に無いらしい。



「オイオイ、崇秀。奈緒さん呼んでくるのは良いが、オマエ、奈緒さんに何させるつもりなんだよ?」

「さぁな。そいつは聞いてのお楽しみだ……兎に角、急ぎで頼んだぞ」


それだけを言い残して……奴は、自分のハードケースからGretsch/White・Falconを早急に取り出す。


相変わらず、ピカピカしたスゲェ綺麗なギターだ。


けどな、俺……あのギター嫌いなんだよな。

さっきも言った様に、真っ白なボディの滅茶苦茶綺麗なギターなんだが……あのギターって、俺達の初めてのライブで、崇秀のアホンダラァに完膚なきまで大敗を喫したイワク付きのセミアコギターなんだよな。


本音で言えば、出来れば、見たくも無いギターだ。


そんな嫌なギターをアンプにブッ刺し、大急ぎでステージに戻って行く。



けど、そのギターに交換したからって、なんか意味があるのか?(。´・ω・)?


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


崇秀は、相も変わらず、ふざけたライブしかしませんね。

8000人の観客からリクエストを聞いて、即興で曲を奏でるなんて、もぉ正気の沙汰じゃないですね(笑)


でも、そんな無茶な事を『完璧にやり通す』からこそ、崇秀に対する人気は留まる事を知らないんでしょうね。


さてさて、そんな状態の中。

次回は『自称・奈緒さん親衛隊の鮫ちゃん』を即興で奏でる様ですが……一体、どんな曲を奏でるんでしょうね?


そこが少しでも気に成りましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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