最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
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078 不良さん 夢を追える年齢について考えてみる

公開日時: 2021年4月24日(土) 19:44
更新日時: 2022年11月14日(月) 21:01
文字数:2,006

●前回のおさらい●


 ライブハウスに来ていたものの。

奈緒さんと山中は、他のバンドのメンバーを歓談中。


そこに割って入る気に成れなかった倉津君は、一人で暇をしていた所に、嶋田浩輔なる人物と遭遇。


2人で話し込んでる内に、倉津君に楽器を見せて貰った嶋田さんが。

一度ベースを演奏した後、倉津君に一度ベースを弾いてみてくれと頼んでくる。


さて、その結果は?

「マジ上手いッスね。俺なんかが言うのもなんですけど、嶋田さん、ベースが本業でもやっていけますよ」

「そんなに褒めないでよ。俺はベース諦めた組なんだからさぁ。……あぁそうだ、そうだ、良かったら、倉津君も、なにか弾いてみてくれないかな?」

「おっ、俺ッスか?」

「俺、無理言った?」

「あぁいや、一応程度なら、今、嶋田さんが弾いた曲は弾けるんッスけど。……追加で、先に言っておきますけど、滅茶苦茶下手ですよ」

「なに言ってんの。楽器は『魂』で弾くもんだよ。テクが全てじゃない」

「そうッスか……じゃあ」


-♪--♪-♪-♪-------♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-……


そう言って貰えた俺は、少し気が楽に成ったのでベースを弾いてみる。


一応だが1つも間違える事無く、調子よくベースから音が奏でられているぞ。

しかも一回もネックを見ずに、前を向いた状態で弾けてる。


まさか、こんな所で仲居間式トレーニングが役に立つとはな。


ありがとうな……人としてはダメな先生よぉ。



「どうッスかね?ヤッパ、聞くに堪えないッスよね」

「うん、そんな事ない。良いと思うよ。……あぁそう言えば、倉津君。今、ネック全く見てなかったけど、曲を全部憶えてるのかい?」

「いやいや、憶えてるつぅか、なんつぅか。崇秀がネックを見ながら演奏するなって言うもんで……だから今、その癖を付けてるところッスかね」

「はぁ~~~っ、仲居間さんもそうだけど、最近の中学生は凄いね。もぅそんな事まで出来るんだ。……って、ちょっと待って、倉津君ってベースを始めて、まだ1ヶ月って言ってなかったっけ?」

「はぁ」

「まいったなぁ。最近じゃあ、凄い才能の人が出て来てるんだね……はぁ~~~、俺も、もうそろそろ潮時かな」

「へっ?ちょ!!嶋田さんダメッスよ!!ベースですらあんなに上手いって事は、ギターは、もっと凄いんッスよね。勿体無いッス」

「勿体無い……か……まぁ俺も、もうちょっと若かったら、そう考えられたんだろうけどね」


年齢の話か……難しいよな。


俺達みたいな学生なら、チャランポランな事をしてても許されるが。

この人の年齢を正確には解らないが、嶋田さんは恐らく社会人。


そうなれば、音楽をやってる奴に対しての世間の目は、有名人でもなければ冷たい。


年齢的にも、いつまでも馬鹿は出来無い……って事か。


確かに厳しいよな。



「あの、因みに、嶋田さんてお幾つなんッスか?」

「俺?……俺は今年で23。君から見たら、もぉ立派なオッサンだね」

「とんでもないッス。全然若いッスよ」

「ありがとう。でも、君に逢って、決心が付いたよ」

「なんのッスか?」

「今回でスカウトを受けなかったら、俺は音楽を諦めて就職するよ。夢だけじゃ、お腹は膨れないからね」

「あっ、あの……」

「君が気にする事じゃないよ。俺自身が決めた事だしね」


流石に此処で、青臭くも無責任な言葉は吐けないな。


本来この場では、餓鬼らしく青臭い事を言うのが正しいのかもしれない。

……が、残念な事に俺は、実家が実家なだけに、少なからず大人と言う名の嫌な世界を知ってしまっている。

それに伴って、大人の理不尽なルールと言うのもわかる。


それだけに、とてもとても、そんな青臭い事を言える気分にはなれなかった。


だからせめて、それが出来ないのであれば、前向きな話をしよう。



「じゃあ、逆に言えば、スカウトを受けられれば。音楽を続けるって事ッスよね?」

「まぁ、そう言う事になるだろうね」

「じゃあ、そんな嶋田さんにお願いがあるんッスけど。聞いて貰ってもいいッスか?」

「うん、いいよ。なに?」

「実は俺んトコのバンドも結成したところなんで、今タイバンしてくれるバンドを探してたんッスよ。だから良かったらなんッスけど、もし今日、嶋田さんがスカウトに受かったら、俺等と一緒に、何処かの箱でライブをやってくれませんか?」


タイバンの使い方を間違って無いよな。

言っては見た物の『タイバン』の意味は良く解ってねぇからな。


まぁ多分、一緒にライブをやるって意味だとは思うから。

多少間違ってても、俺の意思だけは。なんとか伝わるものだとは思う。



「うん。良いよ。上手く行ったらの話にはなるけど、是非一緒にやろう」

「ありがとうございます。よろしくッス」

「こちらこそ。さて……倉津君に元気を貰った事だし、一頑張りして来るかな」

「頑張って下さい。俺、嶋田さんとのタイバンを楽しみにしてるッス」

「うん、ありがとう。……あぁそうだ、良かったら住所と電番を渡しとくから、何かあったら電話してきてくれると有り難いね」

「ウッス……じゃあ俺も」


そう言って名刺交換ならぬ、住所交換を行った。


ただ、こうやって住所交換をしたのは良いが、不安なのは俺の実家の事だ。

ヤクザの本家なだけに、いきなりドスの利いたヤーさんが電話に出て、嶋田さんがビビらなきゃ良いんだが……


この辺の不安だけは、どうしても拭えないな。


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


どうやら倉津君は、夢を追える限界の年齢を考察しているようですね。


それは一体幾つぐらいのものなのだろうか?

そして、この悩みには答えはあるのか?


その辺を次回は綴っていきたいと思います。


また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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