●前回のおさらい●
ライブハウスに来ていたものの。
奈緒さんと山中は、他のバンドのメンバーを歓談中。
そこに割って入る気に成れなかった倉津君は、一人で暇をしていた所に、嶋田浩輔なる人物と遭遇。
2人で話し込んでる内に、倉津君に楽器を見せて貰った嶋田さんが。
一度ベースを演奏した後、倉津君に一度ベースを弾いてみてくれと頼んでくる。
さて、その結果は?
「マジ上手いッスね。俺なんかが言うのもなんですけど、嶋田さん、ベースが本業でもやっていけますよ」
「そんなに褒めないでよ。俺はベース諦めた組なんだからさぁ。……あぁそうだ、そうだ、良かったら、倉津君も、なにか弾いてみてくれないかな?」
「おっ、俺ッスか?」
「俺、無理言った?」
「あぁいや、一応程度なら、今、嶋田さんが弾いた曲は弾けるんッスけど。……追加で、先に言っておきますけど、滅茶苦茶下手ですよ」
「なに言ってんの。楽器は『魂』で弾くもんだよ。テクが全てじゃない」
「そうッスか……じゃあ」
-♪--♪-♪-♪-------♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-……
そう言って貰えた俺は、少し気が楽に成ったのでベースを弾いてみる。
一応だが1つも間違える事無く、調子よくベースから音が奏でられているぞ。
しかも一回もネックを見ずに、前を向いた状態で弾けてる。
まさか、こんな所で仲居間式トレーニングが役に立つとはな。
ありがとうな……人としてはダメな先生よぉ。
「どうッスかね?ヤッパ、聞くに堪えないッスよね」
「うん、そんな事ない。良いと思うよ。……あぁそう言えば、倉津君。今、ネック全く見てなかったけど、曲を全部憶えてるのかい?」
「いやいや、憶えてるつぅか、なんつぅか。崇秀がネックを見ながら演奏するなって言うもんで……だから今、その癖を付けてるところッスかね」
「はぁ~~~っ、仲居間さんもそうだけど、最近の中学生は凄いね。もぅそんな事まで出来るんだ。……って、ちょっと待って、倉津君ってベースを始めて、まだ1ヶ月って言ってなかったっけ?」
「はぁ」
「まいったなぁ。最近じゃあ、凄い才能の人が出て来てるんだね……はぁ~~~、俺も、もうそろそろ潮時かな」
「へっ?ちょ!!嶋田さんダメッスよ!!ベースですらあんなに上手いって事は、ギターは、もっと凄いんッスよね。勿体無いッス」
「勿体無い……か……まぁ俺も、もうちょっと若かったら、そう考えられたんだろうけどね」
年齢の話か……難しいよな。
俺達みたいな学生なら、チャランポランな事をしてても許されるが。
この人の年齢を正確には解らないが、嶋田さんは恐らく社会人。
そうなれば、音楽をやってる奴に対しての世間の目は、有名人でもなければ冷たい。
年齢的にも、いつまでも馬鹿は出来無い……って事か。
確かに厳しいよな。
「あの、因みに、嶋田さんてお幾つなんッスか?」
「俺?……俺は今年で23。君から見たら、もぉ立派なオッサンだね」
「とんでもないッス。全然若いッスよ」
「ありがとう。でも、君に逢って、決心が付いたよ」
「なんのッスか?」
「今回でスカウトを受けなかったら、俺は音楽を諦めて就職するよ。夢だけじゃ、お腹は膨れないからね」
「あっ、あの……」
「君が気にする事じゃないよ。俺自身が決めた事だしね」
流石に此処で、青臭くも無責任な言葉は吐けないな。
本来この場では、餓鬼らしく青臭い事を言うのが正しいのかもしれない。
……が、残念な事に俺は、実家が実家なだけに、少なからず大人と言う名の嫌な世界を知ってしまっている。
それに伴って、大人の理不尽なルールと言うのもわかる。
それだけに、とてもとても、そんな青臭い事を言える気分にはなれなかった。
だからせめて、それが出来ないのであれば、前向きな話をしよう。
「じゃあ、逆に言えば、スカウトを受けられれば。音楽を続けるって事ッスよね?」
「まぁ、そう言う事になるだろうね」
「じゃあ、そんな嶋田さんにお願いがあるんッスけど。聞いて貰ってもいいッスか?」
「うん、いいよ。なに?」
「実は俺んトコのバンドも結成したところなんで、今タイバンしてくれるバンドを探してたんッスよ。だから良かったらなんッスけど、もし今日、嶋田さんがスカウトに受かったら、俺等と一緒に、何処かの箱でライブをやってくれませんか?」
タイバンの使い方を間違って無いよな。
言っては見た物の『タイバン』の意味は良く解ってねぇからな。
まぁ多分、一緒にライブをやるって意味だとは思うから。
多少間違ってても、俺の意思だけは。なんとか伝わるものだとは思う。
「うん。良いよ。上手く行ったらの話にはなるけど、是非一緒にやろう」
「ありがとうございます。よろしくッス」
「こちらこそ。さて……倉津君に元気を貰った事だし、一頑張りして来るかな」
「頑張って下さい。俺、嶋田さんとのタイバンを楽しみにしてるッス」
「うん、ありがとう。……あぁそうだ、良かったら住所と電番を渡しとくから、何かあったら電話してきてくれると有り難いね」
「ウッス……じゃあ俺も」
そう言って名刺交換ならぬ、住所交換を行った。
ただ、こうやって住所交換をしたのは良いが、不安なのは俺の実家の事だ。
ヤクザの本家なだけに、いきなりドスの利いたヤーさんが電話に出て、嶋田さんがビビらなきゃ良いんだが……
この辺の不安だけは、どうしても拭えないな。
最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>
どうやら倉津君は、夢を追える限界の年齢を考察しているようですね。
それは一体幾つぐらいのものなのだろうか?
そして、この悩みには答えはあるのか?
その辺を次回は綴っていきたいと思います。
また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
読み終わったら、ポイントを付けましょう!