●前回のおさらい●
大きな葛藤を抱えながらも、漸く、今の性別に合った服装に着替えた倉津君。
さて、まだ奈緒さんも帰って来ていない状況で、何をして彼女の帰宅を待つのか?
妙な悟りを開いて、奈緒さんに借りた服を一気に着た俺は、それから一旦、髪を綺麗に整え。
その足で急ぎ部屋に戻り、暖かいコタツに足を突っ込んだ。
何故、こんなに慌てて移動したかと言うとな……この格好、滅茶苦茶寒いんだよ。
いや、って言うのもな。
奈緒さんの借りてる服を全部着るまでは、なんか俺が女装をする様な感覚が抜けず。
自分がトンデモナイ変態行為をしてる様な妙な気分に成っていたから。
この服装に着替え終わるまでは、ズゥ~~~と変な緊張感を持っていたし。
それに伴って心臓も、ドキドキとアホみたいに心拍数を上げてたから、通常時より、かなり体温が上昇してたんだけどな。
着替えて終わって我に返った途端、急に体の方が、今が12月の糞寒い時期だって事に気付きやがったんだよ。
そこからはもぉ『寒い』って意識だけが体を支配してきて。
ちゃんと服を着替えたにも関わらず、ガチガチと身震いをし始める始末だったんだよな。
それに、それ以外にも理由があってな。
この今してる女の格好ってのが、根本的な部分からして、下半身が異常なまでに寒いんだよ。
冬場だって言うのに、無駄に短いスカートを奈緒さんがチョイスしたもんだから、スカートの裾から『スースー』と冷たい風が入って来て地獄の様に寒いんだよな。
この事により、俺の中ではスカートってもんが、まったく防寒着としての機能をしてない事が証明された訳だ。
っでまぁ、そのスカートも去る事ながら。
俺が下半身に寒さを感じる理由はそれだけに留まらず、この女子のパンツっての厄介でな。
通常で考える男性のパンツとは違い、面積が異様なまでに小さいから、そのスカートの裾から入って来る風のせいで尻が冷える事、冷える事。
女子って、こんな格好をしてて寒くないんかなぁ?って思うぐらい寒い。
っで、更に此処で、下半身の寒さに対する追い打ちをかけているのが。
奈緒さん、着替えを置いて行ってくれたのまでは良いんだがな。
靴下や、ストッキングらしき物を置いて行くのを忘れちまったらしく、俺、今、生足のままなんだわ。
そりゃまぁ、こんな状態だったら下半身が寒くもなるわって話だ。
いやもぉ、ホント、実際これは、マジで下半身からの寒さだけで死ねるレベルだぞ!!
しかしまぁ、なんだな、女子ってのは、ほんとスゲェ生き物なんだな。
よくもまぁ、こんな短いスカートを履いて、わざわざ面積の小さいパンツまで履いて、冬場の寒い外に出てるんだからよぉ。
こんなもん、ほぼ修行僧の精神じゃねぇか!!
まぁそれに反して、そんな美意識と、自意識の高さには感心してしまうがな。
まぁまぁ、そんな訳でだ。
女子のファッションを理解するには、まだまだ寒さの耐性が足りない俺は、暖まる為にもコタツに入って、可愛くぬくぬくしてる訳だ。
ここは幸せじゃのぉ。
……あぁけど、気が抜けたら、なんか妙に退屈になってきたな。
流石にまだ『誰か来ないかなぁ?』と言う心境にまでは成れないが『奈緒さん、早く帰って来てくれないかなぁ?』と言う心境には成りつつあるよな。
って言うかな、奈緒さんが帰って来たら、まずは最初に、靴下類を貸して貰わなきゃいけねぇしな。
俺、極度の冷え性だから、このままじゃコタツに入ってても死んじまう。
そう思っていたら……
『ガチャ!!』
『トタトタトタトタ……ガラッ!!』
「ハァハァ、ただいまクラ。ちゃんと服着れた?……って、あら?」
……っと、そんな願望を持った矢先。
思いっ切り息を切らせた奈緒さんが、帰宅予定時間より1時間も早く、ご帰還された。
やった、奈緒さんだ!!
でもな。
そうやって早く帰って来てくれたのは、非常に嬉しいんだけどな。
奈緒さん、全体的に帰路を急いだ上に、駅からも全力疾走で帰って来てくれたのかして、その息は、かなり上がってる。
きっと奈緒さんは、俺が1人の時に、おかしな事に成ってないかが心配になって、此処まで急いで帰って来てくれたんだな。
なんか申し訳ないな。
でも、それだけに、此処は出来るだけ明るく振舞わないとな。
此処での暗い顔は厳禁だ。
「あっ、お帰りッス奈緒さん。早かったッスね」
「あっ、あぁ、ただいま……って、それは良いんだけど、どうしたのよクラ?なに、その余裕?私が出て行く時は死にそうな顔してたのに……それに、自分の意思で、ちゃんと着替えもしたんだね」
「いやいや、奈緒さん。今も余裕なんてもんはこれっぽっちもないんッスよ。けど、一応ッスね。なんとか崇秀の馬鹿には連絡がついたんで、奴から得たの解答からも『これは四の五の言ってないで着替えなきゃなぁ』って思ったから、着替えた感じなんッスよ」
「そうなんだ。……っで、結果は、どうだったの?」
「はぁ、それがッスね。今の俺の格好を見て貰ったら解るとは思うんッスけど。奴が言うには、取り敢えずは、絶望的な感じなんッスよ」
「えっ?じゃあ、全然ダメじゃない」
まぁ、そうなんッスけどね。
「あぁ、けど、なんか、この話を聞いてくれたアイツが、本腰を入れて俺を男に戻す研究に取り込んでくれるらしいんッスよ」
「えっ?ちょ……仲居間さんが、クラを男に戻す研究って……あれ?でも、仲居間さんって中学生だよね。あの人、そんな難しい事も、わかっちゃうの?」
「あぁはい。つぅか、アイツの親父さんが遺伝子工学の博士だってのは、今朝の会話の中でも話したと思うんッスけどね。なんでもアイツ、自身も、そこのラボに入り込んで研究してくれるらしいんッスよ」
「そうなんだ。はぁ~~~、凄いね。相変わらず、凄いバイタリティだね。けど、仲居間さんが研究を始めるって事は、なにかしろ原因が解ったって事だよね。……結局、原因ってなんだったの?」
「あぁ、じゃあ、ちょっとややこしい話なんで、その辺を纏めて話していきますね」
「あっ、うん。お願い」
俺は、さっきまで話していた崇秀との会話を簡略して奈緒さんに伝えた。
***
「……って事ではないか?って話なんッスよ」
「じゃあ、その仮説が正しければ。こうなった原因は、仲居間さんのせいだったって事?」
「あぁ、まぁ平たく言えば、そう言う可能性も高いんですが。まだ不確定な話なだけに責めてやらないで下さいね。アイツ、それが原因だって確定した訳でもないのに、さっき、罪の意識で一度潰れそうになったんで」
「あっ、うん。わかった。……けど、クラは、それで良いの?」
「いや、全然良くはないんッスよ。けど、ちょっとした悪戯しようとは思ったかもしれないんっスけど、そこまでの悪意がないだけに、これを怒るのもお門違いかなって……それに、こんな事になるなんて、誰も予想出来なかったでしょうからね」
つぅか、逆に言えばだな。
アイツの仮説が正しければ、俺の、この両方の生殖器を持つと言う『面白おかしい体が原因』と言う説も有りますからね。
流石の崇秀でも、俺にこんな変化が起こるなんて夢にも思ってなかったと思いますよ。
「まぁ、そうだね。現に、私も訳わかんないもん」
「でしょ。それにッスね。アイツ、そうやって自分の責任だと決まった訳でもないのに、賠償金や、自身が立てたツアーを全てキャンセルまでして、俺を戻す研究してくれてる訳ですから、寧ろ、これは有り難いと思うのが正しいんじゃないかなぁって思うんッスよ」
まぁ本心じゃ。
彼女である奈緒さんの気持ちがあるから、出来れば、早急にでも男には戻って安心させてあげたい、って意思は強いんッスけどね。
それに反して、奈緒さんと、崇秀が理解してくれてるなら、もぉ性別なんて別にどっちでも良い様な気にも成ってるんッスよ。
「うん。そっか、そっか。でも、それでこそクラだよ。……ってかさクラ。それだけ可愛いんだったら、もぅいっその事、そのまま女の子になっちゃったら?私、可愛い女の子って好きだよ」
「奈緒さんが、ズッと一緒に居てくれるって言うなら、別に性別なんてドッチでも良いッスよ」
「えっ?ちょ、クラ。君、マジで、そんな事を言ってんの?」
「はい、勿論、大マジっすよ。もし奈緒さんが望むなら、この体のまま一生生きて行くのも有りッスよ」
「そっ、そうなんだ」
意外だったみたいだな。
「それにッスね。今朝、奈緒さんに言われてから色々考えてみたんッスけどね。奈緒さんや、崇秀が、この体をこんだけ理解してくれてるなら、取り敢えずは、姿、形なんてもんは、そんなに問題じゃないのかなぁって思うんッスよ。それに奈緒さんとの恋愛だって、考えれば、なんか良い方法が有るんじゃないかなとも思うんッスよね」
「あらら、暫く見ない内に、なんか悟っちゃってる」
「いやいやいやいや、そうは言っても、勿論、男に戻れるに越した事はないんですよ。此処だけは勘違いしちゃダメっすよ」
「そっか。……けど、それだけクラに覚悟を決めてるんだったら、本格的に私も覚悟決めなきゃダメみたいだね」
迷ってるんだ。
そりゃあまぁそうだよな。
異性じゃない上に、突然、同性に成る様な奴じゃ、今後、恋愛対象としては見るのは難しいよな。
こんなの有り得ない状況に陥ったら、幾ら愛情の深い奈緒さんであったとしても気持ちが冷めちゃう事だってあるだろうしな。
だとしたら、恋愛対称じゃなくて良いから、せめて友達として見て欲しい。
ヤッパ、こんな形に成っちまったんじゃ、それも無理かな……
「あの、奈緒さん。俺、突然、訳も解らず、こんな形になっちゃいましたけど、それでもまだ好きで居てくれますか?それとも、もぉダメっすかね?」
「うぅん、ダメじゃないよ。って言うか、君が、どんな姿であっても私は君が好きだよ。嫌いになんかなる訳ないでしょ。なんで、そんな事を言うのよ?」
「えっ?だって俺……」
「あのねぇ、クラ。……クラは、なにがあっても私のものなの。それで、私はクラのもの。此処は、なにがあっても絶対に変わらない、2人にとっては不変の法則だよ」
「奈緒さん……あぁ、良かった。……俺、今、もぉ捨てられるかと思って、心臓が停まりそうでしたよ」
「もぉ、この子は、なんて事を言うのよ。馬鹿な事を言わないの」
「すんません。あの序と言っては、なんなんですが、今ちょっとだけ奈緒さんにキスさせて貰っても良いッスか?」
「うん。勿論、良いよ。女の子になった後の、初めてのキスを私に頂戴」
「うっす」
「…………って!!あぁ、ちょっと待った!!ちょっと待った!!タンマ、タンマ。今はダメ!!今だけはダメダメダメ!!」
へっ?
はぁ?
なに?なにがダメなんッスかね?
ってか、突然、なんでダメなん???(。´・ω・)?
最後までお付き合いして下さって、誠にありがとうございますです<(_ _)>
どんな状況下に陥っても「君の事が好きだ」と言ってくれる、理解力の高い彼女である奈緒さん。
そして、現状を冷静に判断して大きな責任感を感じ、倉津君の為だけに、全ての予定をキャンセルしてまで研究を始めてくれた崇秀。
良いですねぇ♪
まぁ勿論、そうは言っても。
悪意の有無に関わらず、崇秀が、こんな余計な事をしなければ、この状況には成らなかったので、崇秀の行動自体は、当たり前の行為と言えば、当たり前の行為なのですがね。
こんな事態に陥らなければ『この2人の倉津君に対する本当の気持ちが解らなかったかもしれない』っと考えれば、倉津君にとっては、これもまた1つの、良い経験に成ったのではないでしょうか?
こんな風に、何処までも倉津君を想ってくれる彼女や。
責任の有無に関わらず、全てを投げ出してまで倉津君を救おうとしてくれる友人なんて、早々に居たもんじゃありませんしね。
仮に、崇秀に全く責任がなくても、今までの彼の倉津君に対する行動から察するに、彼は今と全く同じ行動をしたと推測できますしね。
そんな『倉津君を大切に思ってくれ、信頼出来る2人が居る』からこそ。
今現在、倉津君もやや落ち着いた状況で話せる様に成って来てる感じですしね。
さてさて、そんな中。
愛情の確認をしようと、倉津君が、奈緒さんにキスをしようとして瞬間。
突然彼女が、恐ろしい程に慌てふためいて『今はダメ!!』っと強烈な拒絶反応を示している様なのですが……これは一体、何があったのでしょうか?
その答えについては、次回の講釈。
少しでも、奈緒さんの拒絶した理由が気に成った方が居られましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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