●前回のおさらい●
沙那ちゃんがギターを取りに行ってる間に、沙那ちゃんの現状を素直ちゃんに上手く説明した倉津君。
それで納得を得た頃に、沙那ちゃんがギターを持って帰って来て、倉津君に曲のリクエストを聞いてくるのだが……その実力は如何に!!
「おにぃちゃん。なにが良い?」
「なにが良いか?ってか、なにが弾けるんだ?」
「聞いた事のある曲なら、なんでも弾けるよ」
ブッ!!
矢張りギター歴7年とも成ると『耳コピ』が出来るのはデフォルトだったか。
伊達じゃねぇな。
「なっ、なんでも弾けるの?」
「うん。弾けるよ。弾けないで、どうするの?」
「じゃ、じゃあ、向井さんが作った曲で『Distorted love』(歪な愛)って弾ける?」
素直の奴、曲のリクエストするのは良いけどよぉ。
また、イキナリ、豪くマイナーな曲を選曲したもんだな。
まぁ、俺自身は、この曲の詳しい詳細は、よく知らないんだが。
確か、この曲って、奈緒さんが作って、崇秀がアレンジしたって言う、極上で、極悪な難易度を誇る曲だろ。
そんで、それが仇となって。
曲の争奪戦での選曲にもエントリーされてたんだが。
あまりにも難易度が高すぎて、最後の最後まで弾き手が決まらず『最終的には、お蔵入りになった』って曲だよな。
そんな難易度の高いマイナーな曲を沙那ちゃんは弾けるのか?
それ以前に知ってるのか?
「あぁ……『Distorted love』(歪な愛)かぁ。うん。それぐらいなら完璧に弾けるよ」
「……嘘」
「嘘じゃないよ。これぐらい簡単だよ」
マジですか?
曲もキッチリ押さえているみたいだし。
しかも、それを『簡単に弾ける』っとまで言い切ったな。
これは、ひょっとして滅茶苦茶上手いんじゃないか?
そんな風に、沙那ちゃんに対する俺の期待値は上がっていく。
「それじゃあ、弾くよ」
♪♪♪--♪♪-♪♪♪-♪-♪--♪--♪♪♪-♪♪-♪♪♪--♪---♪♪--♪-♪-♪♪--♪♪……
マッ……マジか?
沙那ちゃんの宣言通り、本人は『なんて事ない』みたいな顔をして弾き始めたんだが。
その演奏は、まるで何度も弾いた事がある様な感じを醸し出していて、あの酷い難易度だと言われる曲に対しても余裕すら感じる。
そりゃあよぉ。
崇秀の演奏に比べれば、大分、見劣りする部分がある演奏だとしても、曲のラインを一音たりとも外さずに、完璧なまでに弾き上げてる。
これ程、極悪な難易度を誇る曲を意とも簡単に弾くなんて……流石は、特殊な環境の下、幼い頃からギターと一緒に生きてきただけの事はある卓越した技術だな。
・・・・・・
……けどまぁ、そんな沙那ちゃんの演奏に対して、敢えて弱点をあげるとすれば。
1人でズッと弾いてきたのが仇となっているのかして、全くと言って良い程、音に協調性が見受けられないなぁ。
沙那ちゃんの出す音は、果てしなく自分勝手で自由奔放な音【天上天下・唯我独尊】を地で行く様な感じだ。
それに、技術に頼り過ぎてる面も少々見受けられる。
……けどな。
そこを除けば、とてもとても、この年の小学生がするPLAYじゃないのも事実。
こりゃあ、マジでスゲェわ。
***
……そうやって6分程の曲を弾き終えた沙那ちゃんなんだが。
本人は、やけに不満そうな顔をして、ギターのペグを弄りながら、なにやら考え込んでいる。
この様子じゃあ、今の完璧な演奏にも、なにか不満があるのだろうか?
「うん?どうかしたのか?」
「おにぃちゃん、ゴメン。余り、上手く弾けなかった」
ブッ!!あれで?あれでなのか?
あんな完璧な演奏で『上手く弾けなかった』って言い切るのか?
「いやいやいやいや、そんな事はねぇって。十分、上手く弾けてたって」
「ホント?でも、2回目のイントロの入り方が、少し変じゃなかった?アソコは、イマイチだったと思うんだけど。後ね。これも2回目なんだけど、サビの3音目と6音目が良くなかったよ」
どこが?
……って言うか。
口頭でキッチリと欠点を説明されてって言うのに、その失敗があまりにも細かすぎて、何所をミスったのかすら、俺には皆目見当も付いてねぇ。
『なんじゃそりゃあ?』って感じだな。
「いやいや、スティーブ=ヴァイじゃねぇんだからよ。そんなに正確に弾かなくても良いんじゃないか?多少、遊びや、ミスがあっても良いと思うぞ」
いやな。
別に『スティーブ=ヴァイの演奏を批判しよう』って訳じゃないんだがな。
あの人の演奏って、あまりにも正確無比過ぎるから。
どこにも隙が無くて、機械的って言うか、誰が弾いても同じ様に聞こえちまうから、曲に面白味が無いんだよな。
悪い言い方をすれば、正確過ぎて、打ち込みをしたコンピューターの演奏っぽいんだよ。
だから、感覚にだけ頼って、いい加減な演奏をしている俺としては、余り好きな音楽とは言えない。
それにな。
俺の中での音楽ってのは、なんて言うか、もっとこう……みんなで楽しみながら、パァ~~~っと演奏するもんじゃねぇのかな?って思う節があるから、こういう意見に成っちまう訳だ。
まぁ、こんなもんは、所詮、俺の個人的な主観でしかないんだけどな。
まさに『好みは人それぞれ』って話だしな。
「へっ?そうなの?」
「いやまぁ、そりゃあな。いい加減な演奏をするよりは、そっちの方が良いのかも知れないけどな。そんな事バッカリ気にしてて、楽しく演奏出来てたか?」
「楽しく演奏?なにそれ?それ、どうやるの?」
あぁ……これはあれだな。
親父さんは、どうやら『ギターキッズ』が良く嵌る、テクニック重視の完璧系の音が好みみたいだな。
現に沙那ちゃん自身も、そう言う演奏を練習してるみたいだしな。
でも、そうなるとだな。
下手に此処で沙那ちゃんの演奏を弄って良いものか、悩み処なんだよな。
ブッチャケ、沙那ちゃんが楽器を作る以上、完璧な演奏の方が、楽器の善し悪しを判別しやすいだろうしな。
けどなぁ。
折角のこの機会だし、そう言う『適当な音楽がある』っと言うのも認識させて置いてやりたいんだよなぁ。
「うん?どうやるかってか?……なら、ちょっと待ってろな」
「うん」
まぁでも、本人が知りたがってるなら、別に隠し立てする必要もないか。
やるだけやってみて、後の判断は、本人に意思に任せるのも悪かねぇだろうしな。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
どれだけ演奏が上手くても、必ずしも欠点と言うものが存在するもの。
それが沙那ちゃんの場合は、どうやら「音に協調性がない事」みたいですね。
まぁ、なので、将来、ビルダーだけでやってくとか、ソロでやっていくなら、なんの問題がない欠点にはなるのですが。
これがバンドをやるとなると、かなり大きな欠点に成りかねないので、やや問題のある欠点と言えるかもしれませんね。
バンドに協調性がないと、良い音楽は生まれませんしね。
……ってな訳なので。
そんな沙那ちゃんに対して、倉津君がなにかを教えようとしてるみたいなのですが。
沙那ちゃんは、それをどう感じるのか?
次回は、そんな話を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
それにしてもあれですね。
沙那ちゃん、倉津君に滅茶苦茶懐いてますね。
もう当たり前の様に、倉津君の膝の上に乗っかってますし(笑)
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