最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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188 不良さん、出町男に困惑させられる

公開日時: 2021年8月13日(金) 00:21
更新日時: 2022年12月3日(土) 21:40
文字数:4,582

●前回までのあらすじ●


 入院中の倉津君に、素直ちゃん、ステラさん、ジミーさんとお見舞い(?)に来た後。

ライブでは一回も顔を出さなかった崇秀が現れた。


さて、なにが起こるのか?

「ほぉ、その言い分じゃあ、オマエは、俺が見舞いに来ると予想していたと」

「たりめぇだ。オマエの行動なんざ、全てお見通しなんだよ、この出待ち野郎が」

「ほぉほぉ、そこまで言い切れるなら、序に俺が考える、オマエ等の評価を言ってみろよ」

「良くも悪くも、ステラが言った通り、イマイチって所じゃないか。……まぁ敢えて付け加えるなら『期待を込めたイマイチ』若しくは『バンドの実力を知った上でのイマイチ』って所だな」

「ほぉ~、そりゃあまた、良い読みだな。悪くないぞ」


まっ、こんなもんだろ。



「じゃあよぉ、またまた序と言っちゃなんだが。俺が、ステラと、ジミーを、オマエの元に送り込んだ理由は解るか?」

「大凡ならな」

「おっ、なんだよ、なんだよ。頑張ってんな単細胞。してどうみる?」

「なんて事はねぇ。この女のガッチガチの頭の固さを、俺みたいな馬鹿に当てて、ほぐしたいんだろ」


実は、俺はそう考えていた。


さっきまで、ステラと話してた会話の中で感じた事なんだがな。

この女は頭が良いくせに、変に柔軟性が無い。


崇秀は、それが将来的にステラの弱点になり得ると感じていたのだろう。

だから、いつも通り改善を考えた。


まぁその方法が『単細胞の俺に引き合わせる』と言う暴挙な訳だが……これは決して、間違った選択をした訳ではない。

馬鹿の理屈は、賢い奴から見れば『なんだそれ?』って思うかも知れないが、その実、どうやれば、そんな考えになるのかが気になって仕方が無い。

そうなってしまえば、コイツ等は、自分の解らない事を、全て会話の中で『質問』する。


そこで俺が再び、馬鹿の理屈を言う、繰り返しステラが質問する。


んで最後に……此処が一番重要なんだが。

ステラが信用する奴の名前を出して、自分の考えが違っていた事を証明する。


まぁ上手く行ったかどうかは知らないが、多分、崇秀が、ステラを此処に寄越した理由は、そんな感じだと思う。


現にステラは、崇秀が来て以来、俺達の会話に入ってきていないからな。



「なんだ、今日のオマエは、なんかスゲェな。完璧な答えだ」


おっ、正解なのか。


いやいや違うな。

性格が悪いコイツが、簡単に『正解』とか言う時は、必ずと言って良い程、まだ何か隠してる事がある可能性が高い時だ。


不用意だが、少し探りを入れてみる必要があるな。



「完璧なぁ。……この程度で『完璧』なんて言う様じゃ、オマエ、アメリカに行って、少し馬鹿になったんじゃねぇか?」

「ほぉ、驚いたな。オマエは、俺が、まだ隠し玉を持ってると言いたい訳だな」

「オイオイ、頼むから、違うとか言うなよ」

「じゃあ、なんだよ?」

「まぁ、明確な答えまではわからねぇが。恐らく、オマエの最終的な目的は『対バン』だな」


どうだよ?

此処で初めて、完璧って言葉になるんじゃないのか?


オマエの真の目的は、俺達に危機感を作る事だ。


ライブが上手く行った事に対して、慢心をさせない為にも。

国内外問わず、スゲェ敵が、まだまだウヨウヨ居るという事を認識させなきゃならない。


故に恐らく、俺の予想が間違っていなければ、このステラとジミーは凄腕のプレイヤー。


まぁ早い話、今回の目的は『刺客の顔見せ』って所だな。



「いや、全然違うぞ。残念だったな。そこはハズレだ」


はぁ?



「うっ、うん?じゃあ、なんだよ?」

「いや、大した話じゃねぇんだがな。面白いライブをやってくれたお礼として、そいつ等2人を、オマエ等のバンドの『サブ』に使って貰おうと思ってよ。……その為の顔合わせだ」

「はぁ?……どういうこった?」


……始まったよ。


また恒例の訳の解らない事を言い出しやがった。



「どういう事もヘッタクレもねぇよ。オマエん所のバンドのサブで、そいつ等を使って良いぞって、言ってるだけだろ」

「いや、こんなややこしい女も、訳の解らんトウヘンボクも、ウチのバンドにはイラネェし」

「まぁそう言うなって、これでもステラは『狂気』を扱わせたら、中々面白いギタリストだし。ジミーはドラマー兼、結構、凄腕のマネージャーなんだぜ」


狂気を扱う?


なんだそりゃあ?


それ……どこのラノベに書かれてた技能だよ。

そんな奴、この世の中に、早々存在しねぇつぅ~の。

もし居るとしたら、それは多分、オマエぐらいのもんだ。


それにジミーは、マネージャーだと?

まだライブを二回しかしてない俺等に、そんなもんが、本当に必要なのか?


どう考えても、まだイラネェだろ。



「いや、イラネェから」


俺は冷め切った顔で、馬鹿秀に、そう言ってやった。



「オイオイ、なんで、そんな解答になるんだよ?急に馬鹿になるんだな、オマエって」

「なんでだよ?俺、なんかおかしな事を言ったか?」

「あのなぁ、俺が、この2人を『サブ』で使えって言うのを、もっと噛み砕いて考えてみろよ。それだけで、自ずと答えは出て来る筈だぞ」


まただ。

また変な事を言ってくる。


まぁそうは言っても、どうせ、なんか考えがあっての話なんだろ。


しょうがねぇなぁ。

そこら辺を考慮して、少し考えてみてやるよ。


まぁ敢えて、この馬鹿の話に乗るとしたらだな。

一番最初に浮かび上がってくるのは、例の『シャッフルの話』だ。


どういう事かと言えばだな。

例えば、このステラとジミーって奴を、ウチのバンドに加えたとしよう。


するとだ。


ヴォーカル……奈緒さん・素直。

ギター  ……嶋田さん・ステラ。

ベース  ……奈緒さん・俺。

ドラム  ……奈緒さん・山中・ジミー

シンセ  ……素直

……っと、奈緒さんの負担は大きいが、一応、バンドの担当楽器の構成がこうなる訳だ。


そこで、ボーカルを基準に考えた場合。


①Vo奈緒さん・Gu嶋田さん・Ba俺   ・Dr山中  ・Si素直

②Vo奈緒さん・Guステラ ・Ba俺   ・Drジミー ・Si素直

③Vo奈緒さん・Gu嶋田さん・Ba俺   ・Drジミー ・Si素直

④Vo奈緒さん・Guステラ ・Ba俺   ・Dr山中  ・Si素直

⑤Vo奈緒さん・Gu嶋田さん・Ba奈緒さん・Dr山中  ・Si素直

⑥Vo奈緒さん・Guステラ ・Ba奈緒さん・Drジミー ・Si素直

⑦Vo奈緒さん・Gu嶋田さん・Ba奈緒さん・Drジミー ・Si素直

⑧Vo奈緒さん・Guステラ ・Ba奈緒さん・Dr山中  ・Si素直

⑨Vo奈緒さん・Gu嶋田さん・Ba俺   ・Dr奈緒さん・Si素直

⑩Vo奈緒さん・Guステラ ・Ba俺   ・Dr奈緒さん・Si素直

+シンセ無しの10パターン。


①Vo素直  ・Gu嶋田さん・Ba俺   ・Dr山中  ・Si素直

②Vo素直  ・Guステラ ・Ba俺   ・Drジミー ・Si素直

③Vo素直  ・Gu嶋田さん・Ba俺   ・Drジミー ・Si素直

④Vo素直  ・Guステラ ・Ba俺   ・Dr山中  ・Si素直

⑤Vo素直  ・Gu嶋田さん・Ba奈緒さん・Dr山中  ・Si素直

⑥Vo素直  ・Guステラ ・Ba奈緒さん・Drジミー ・Si素直

⑦Vo素直  ・Gu嶋田さん・Ba奈緒さん・Drジミー ・Si素直

⑧Vo素直  ・Guステラ ・Ba奈緒さん・Dr山中  ・Si素直


と言う、単純に28パターンが出来る。


更に残りのメンバーで……


①Vo素直  ・Guステラ ・Ba―   ・Drジミー ・Si素直 

②Vo素直  ・Gu嶋田さん・Ba―   ・Dr山中  ・Si素直

③Vo素直  ・Guステラ ・Ba―   ・Dr山中  ・Si素直

④Vo素直  ・Gu嶋田さん・Ba―   ・Drジミー ・Si素直

⑤Vo素直  ・Guステラ ・Ba俺   ・Drジミー ・Si素直

⑥Vo素直  ・Gu嶋田さん・Ba俺   ・Dr山中  ・Si素直

⑦Vo素直  ・Guステラ ・Ba俺   ・Dr山中  ・Si素直

⑧Vo素直  ・Gu嶋田さん・Ba俺   ・Drジミー ・Si素直

+シンセ無しの8パターン。


①Vo奈緒さん・Guステラ ・Ba奈緒さん・Drジミー 

②Vo奈緒さん・Gu嶋田さん・Ba奈緒さん・Dr山中  

③Vo奈緒さん・Guステラ ・Ba奈緒さん・Dr山中  

④Vo奈緒さん・Gu嶋田さん・Ba奈緒さん・Drジミー 

⑤Vo奈緒さん・Guステラ ・Ba俺   ・Drジミー 

⑥Vo奈緒さん・Gu嶋田さん・Ba俺   ・Dr山中  

⑦Vo奈緒さん・Guステラ ・Ba俺   ・Dr山中  

⑧Vo奈緒さん・Gu嶋田さん・Ba俺   ・Drジミー 

⑨Vo奈緒さん・Guステラ ・Ba俺   ・Dr奈緒さん

⑩Vo奈緒さん・Gu嶋田さん・Ba俺   ・Dr奈緒さん


……っと言う、別のバンドを作る事も可能だ。


要するにだ。

28+26=54通りのパターンで、シャッフルが可能な訳だ。

更にWヴォーカル・Wギター・Wベースなどの変則的なバンドを含めれば、それこそ無限大にパターンが出来る。


それに何かの事情で、ライブに突然参加出来無い場合も、どこかのバンドにHELPを頼まずに、直ぐに補填が出来る。


これは、大きなメリット。

これが崇秀の考える『シャッフル』だと思われる。


まぁ、だから、基本的な部分では『面白いアイデイア』……って言うか、自分が楽しむ為に、よくそんな人材を見つけて来たなってのは感心する。


但しだ!!そうやって面白いと考える反面、問題が、全くないっと言う訳でもない。


だってよぉ。

まずにして、そんな事をしようと思ったら、相当な『意思疎通』や『信頼関係』が無きゃ出来無いからだ。


勿論、現メンバーだけであれば、今の処、それも可能かも知れないけれどもだ。

そこに、このステラと、ジミーが加入してしまったら、それは、バンド自体が初期段階に戻ってしまうのと同義語。


だから、もし、これが崇秀の求めている答えならば。

悪い話ではないんだろうが『メリットに比べて、リスクが高過ぎる』って言うのが、俺の見解だ。



「あのよぉ崇秀。オマエの言いたい事は、大体、見当は付くんだがな。どうにもコイツはリスクが大き過ぎるんじゃねぇか?」

「まぁまぁ、面白い事にリスクは付き物だ。オマエがどう捉えるかで、話は急変する筈だがな」

「まぁよぉ、わかんねぇでもねぇがよぉ……どうにもなぁ」

「……そっか。じゃあ、まぁ良いや。この話は無かったって事にしてくれ」


あれ?

なんか知んねぇけど、思ってた以上に、やけにアッサリ引き下がりやがったな。


コイツの事だから、もう2~3回は噛み付いてくると思ってたんだがな。



「うん?なんだよ、オマエにしては、やけに諦めるが早いじゃねぇか」

「まぁな。……別にコイツは、オマエ等に強制する話じゃねぇからな。オマエ等がイラナイって言うなら、それはそれで良いんだよ。俺が、また別の使い方を考えるだけのこった」

「因みにだが、どんな使い方を考えてんだ」

「まぁ、そうだなぁ。今んとこは予定でしかねぇんだが……この2人は、オマエ等のバンドのレベルに合わせて探した連中だから、ソコソコに腕は立つ。だからまぁ、スリー・ストライプの山さんにでも頼んで、ツアーミュージシャンでもやって貰うってのがオチなんじゃないか」

「Oh my God!!まじデスカ仲居間サン……私達、マタ、つあー・みゅーじしゃんデスカ?」


いきなりジミーは悲痛な声を上げて、それ以上に嫌そうな表情をしている。


けど、何がそんなに不満なのか、俺には理解出来無い。

何故ならツアーミュージシャンって言うのは、その殆どがメジャーデビューを確約されている連中の事だからだ。


此処からプロになった奴も少なくはない。

だから、プロを目指すものにとって、不満の声を上げるのは、普通は有り得ない話なんだよなぁ。


それに第一、俺達のバンドは、まだ出来て日が浅い。

こんな所に入るより、そっちの方がズッと、効率良くデビューが見込める筈なんだが……なのに、この態度。


なんで、そんな嫌がる必要があるんだ?


わっかんねぇなぁ。


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


崇秀が、またロクデモナイ事を提案してきましたね。


ただ、何故、ステラさんと、ジミーさんはツアーミュージシャンを嫌がるんでしょうね?


その謎は次回明らかに!!


良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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