●前回までのあらすじ●
入院中の倉津君に、素直ちゃん、ステラさん、ジミーさんとお見舞い(?)に来た後。
ライブでは一回も顔を出さなかった崇秀が現れた。
さて、なにが起こるのか?
「ほぉ、その言い分じゃあ、オマエは、俺が見舞いに来ると予想していたと」
「たりめぇだ。オマエの行動なんざ、全てお見通しなんだよ、この出待ち野郎が」
「ほぉほぉ、そこまで言い切れるなら、序に俺が考える、オマエ等の評価を言ってみろよ」
「良くも悪くも、ステラが言った通り、イマイチって所じゃないか。……まぁ敢えて付け加えるなら『期待を込めたイマイチ』若しくは『バンドの実力を知った上でのイマイチ』って所だな」
「ほぉ~、そりゃあまた、良い読みだな。悪くないぞ」
まっ、こんなもんだろ。
「じゃあよぉ、またまた序と言っちゃなんだが。俺が、ステラと、ジミーを、オマエの元に送り込んだ理由は解るか?」
「大凡ならな」
「おっ、なんだよ、なんだよ。頑張ってんな単細胞。してどうみる?」
「なんて事はねぇ。この女のガッチガチの頭の固さを、俺みたいな馬鹿に当てて、ほぐしたいんだろ」
実は、俺はそう考えていた。
さっきまで、ステラと話してた会話の中で感じた事なんだがな。
この女は頭が良いくせに、変に柔軟性が無い。
崇秀は、それが将来的にステラの弱点になり得ると感じていたのだろう。
だから、いつも通り改善を考えた。
まぁその方法が『単細胞の俺に引き合わせる』と言う暴挙な訳だが……これは決して、間違った選択をした訳ではない。
馬鹿の理屈は、賢い奴から見れば『なんだそれ?』って思うかも知れないが、その実、どうやれば、そんな考えになるのかが気になって仕方が無い。
そうなってしまえば、コイツ等は、自分の解らない事を、全て会話の中で『質問』する。
そこで俺が再び、馬鹿の理屈を言う、繰り返しステラが質問する。
んで最後に……此処が一番重要なんだが。
ステラが信用する奴の名前を出して、自分の考えが違っていた事を証明する。
まぁ上手く行ったかどうかは知らないが、多分、崇秀が、ステラを此処に寄越した理由は、そんな感じだと思う。
現にステラは、崇秀が来て以来、俺達の会話に入ってきていないからな。
「なんだ、今日のオマエは、なんかスゲェな。完璧な答えだ」
おっ、正解なのか。
いやいや違うな。
性格が悪いコイツが、簡単に『正解』とか言う時は、必ずと言って良い程、まだ何か隠してる事がある可能性が高い時だ。
不用意だが、少し探りを入れてみる必要があるな。
「完璧なぁ。……この程度で『完璧』なんて言う様じゃ、オマエ、アメリカに行って、少し馬鹿になったんじゃねぇか?」
「ほぉ、驚いたな。オマエは、俺が、まだ隠し玉を持ってると言いたい訳だな」
「オイオイ、頼むから、違うとか言うなよ」
「じゃあ、なんだよ?」
「まぁ、明確な答えまではわからねぇが。恐らく、オマエの最終的な目的は『対バン』だな」
どうだよ?
此処で初めて、完璧って言葉になるんじゃないのか?
オマエの真の目的は、俺達に危機感を作る事だ。
ライブが上手く行った事に対して、慢心をさせない為にも。
国内外問わず、スゲェ敵が、まだまだウヨウヨ居るという事を認識させなきゃならない。
故に恐らく、俺の予想が間違っていなければ、このステラとジミーは凄腕のプレイヤー。
まぁ早い話、今回の目的は『刺客の顔見せ』って所だな。
「いや、全然違うぞ。残念だったな。そこはハズレだ」
はぁ?
「うっ、うん?じゃあ、なんだよ?」
「いや、大した話じゃねぇんだがな。面白いライブをやってくれたお礼として、そいつ等2人を、オマエ等のバンドの『サブ』に使って貰おうと思ってよ。……その為の顔合わせだ」
「はぁ?……どういうこった?」
……始まったよ。
また恒例の訳の解らない事を言い出しやがった。
「どういう事もヘッタクレもねぇよ。オマエん所のバンドのサブで、そいつ等を使って良いぞって、言ってるだけだろ」
「いや、こんなややこしい女も、訳の解らんトウヘンボクも、ウチのバンドにはイラネェし」
「まぁそう言うなって、これでもステラは『狂気』を扱わせたら、中々面白いギタリストだし。ジミーはドラマー兼、結構、凄腕のマネージャーなんだぜ」
狂気を扱う?
なんだそりゃあ?
それ……どこのラノベに書かれてた技能だよ。
そんな奴、この世の中に、早々存在しねぇつぅ~の。
もし居るとしたら、それは多分、オマエぐらいのもんだ。
それにジミーは、マネージャーだと?
まだライブを二回しかしてない俺等に、そんなもんが、本当に必要なのか?
どう考えても、まだイラネェだろ。
「いや、イラネェから」
俺は冷め切った顔で、馬鹿秀に、そう言ってやった。
「オイオイ、なんで、そんな解答になるんだよ?急に馬鹿になるんだな、オマエって」
「なんでだよ?俺、なんかおかしな事を言ったか?」
「あのなぁ、俺が、この2人を『サブ』で使えって言うのを、もっと噛み砕いて考えてみろよ。それだけで、自ずと答えは出て来る筈だぞ」
まただ。
また変な事を言ってくる。
まぁそうは言っても、どうせ、なんか考えがあっての話なんだろ。
しょうがねぇなぁ。
そこら辺を考慮して、少し考えてみてやるよ。
まぁ敢えて、この馬鹿の話に乗るとしたらだな。
一番最初に浮かび上がってくるのは、例の『シャッフルの話』だ。
どういう事かと言えばだな。
例えば、このステラとジミーって奴を、ウチのバンドに加えたとしよう。
するとだ。
ヴォーカル……奈緒さん・素直。
ギター ……嶋田さん・ステラ。
ベース ……奈緒さん・俺。
ドラム ……奈緒さん・山中・ジミー
シンセ ……素直
……っと、奈緒さんの負担は大きいが、一応、バンドの担当楽器の構成がこうなる訳だ。
そこで、ボーカルを基準に考えた場合。
①Vo奈緒さん・Gu嶋田さん・Ba俺 ・Dr山中 ・Si素直
②Vo奈緒さん・Guステラ ・Ba俺 ・Drジミー ・Si素直
③Vo奈緒さん・Gu嶋田さん・Ba俺 ・Drジミー ・Si素直
④Vo奈緒さん・Guステラ ・Ba俺 ・Dr山中 ・Si素直
⑤Vo奈緒さん・Gu嶋田さん・Ba奈緒さん・Dr山中 ・Si素直
⑥Vo奈緒さん・Guステラ ・Ba奈緒さん・Drジミー ・Si素直
⑦Vo奈緒さん・Gu嶋田さん・Ba奈緒さん・Drジミー ・Si素直
⑧Vo奈緒さん・Guステラ ・Ba奈緒さん・Dr山中 ・Si素直
⑨Vo奈緒さん・Gu嶋田さん・Ba俺 ・Dr奈緒さん・Si素直
⑩Vo奈緒さん・Guステラ ・Ba俺 ・Dr奈緒さん・Si素直
+シンセ無しの10パターン。
①Vo素直 ・Gu嶋田さん・Ba俺 ・Dr山中 ・Si素直
②Vo素直 ・Guステラ ・Ba俺 ・Drジミー ・Si素直
③Vo素直 ・Gu嶋田さん・Ba俺 ・Drジミー ・Si素直
④Vo素直 ・Guステラ ・Ba俺 ・Dr山中 ・Si素直
⑤Vo素直 ・Gu嶋田さん・Ba奈緒さん・Dr山中 ・Si素直
⑥Vo素直 ・Guステラ ・Ba奈緒さん・Drジミー ・Si素直
⑦Vo素直 ・Gu嶋田さん・Ba奈緒さん・Drジミー ・Si素直
⑧Vo素直 ・Guステラ ・Ba奈緒さん・Dr山中 ・Si素直
と言う、単純に28パターンが出来る。
更に残りのメンバーで……
①Vo素直 ・Guステラ ・Ba― ・Drジミー ・Si素直
②Vo素直 ・Gu嶋田さん・Ba― ・Dr山中 ・Si素直
③Vo素直 ・Guステラ ・Ba― ・Dr山中 ・Si素直
④Vo素直 ・Gu嶋田さん・Ba― ・Drジミー ・Si素直
⑤Vo素直 ・Guステラ ・Ba俺 ・Drジミー ・Si素直
⑥Vo素直 ・Gu嶋田さん・Ba俺 ・Dr山中 ・Si素直
⑦Vo素直 ・Guステラ ・Ba俺 ・Dr山中 ・Si素直
⑧Vo素直 ・Gu嶋田さん・Ba俺 ・Drジミー ・Si素直
+シンセ無しの8パターン。
①Vo奈緒さん・Guステラ ・Ba奈緒さん・Drジミー
②Vo奈緒さん・Gu嶋田さん・Ba奈緒さん・Dr山中
③Vo奈緒さん・Guステラ ・Ba奈緒さん・Dr山中
④Vo奈緒さん・Gu嶋田さん・Ba奈緒さん・Drジミー
⑤Vo奈緒さん・Guステラ ・Ba俺 ・Drジミー
⑥Vo奈緒さん・Gu嶋田さん・Ba俺 ・Dr山中
⑦Vo奈緒さん・Guステラ ・Ba俺 ・Dr山中
⑧Vo奈緒さん・Gu嶋田さん・Ba俺 ・Drジミー
⑨Vo奈緒さん・Guステラ ・Ba俺 ・Dr奈緒さん
⑩Vo奈緒さん・Gu嶋田さん・Ba俺 ・Dr奈緒さん
……っと言う、別のバンドを作る事も可能だ。
要するにだ。
28+26=54通りのパターンで、シャッフルが可能な訳だ。
更にWヴォーカル・Wギター・Wベースなどの変則的なバンドを含めれば、それこそ無限大にパターンが出来る。
それに何かの事情で、ライブに突然参加出来無い場合も、どこかのバンドにHELPを頼まずに、直ぐに補填が出来る。
これは、大きなメリット。
これが崇秀の考える『シャッフル』だと思われる。
まぁ、だから、基本的な部分では『面白いアイデイア』……って言うか、自分が楽しむ為に、よくそんな人材を見つけて来たなってのは感心する。
但しだ!!そうやって面白いと考える反面、問題が、全くないっと言う訳でもない。
だってよぉ。
まずにして、そんな事をしようと思ったら、相当な『意思疎通』や『信頼関係』が無きゃ出来無いからだ。
勿論、現メンバーだけであれば、今の処、それも可能かも知れないけれどもだ。
そこに、このステラと、ジミーが加入してしまったら、それは、バンド自体が初期段階に戻ってしまうのと同義語。
だから、もし、これが崇秀の求めている答えならば。
悪い話ではないんだろうが『メリットに比べて、リスクが高過ぎる』って言うのが、俺の見解だ。
「あのよぉ崇秀。オマエの言いたい事は、大体、見当は付くんだがな。どうにもコイツはリスクが大き過ぎるんじゃねぇか?」
「まぁまぁ、面白い事にリスクは付き物だ。オマエがどう捉えるかで、話は急変する筈だがな」
「まぁよぉ、わかんねぇでもねぇがよぉ……どうにもなぁ」
「……そっか。じゃあ、まぁ良いや。この話は無かったって事にしてくれ」
あれ?
なんか知んねぇけど、思ってた以上に、やけにアッサリ引き下がりやがったな。
コイツの事だから、もう2~3回は噛み付いてくると思ってたんだがな。
「うん?なんだよ、オマエにしては、やけに諦めるが早いじゃねぇか」
「まぁな。……別にコイツは、オマエ等に強制する話じゃねぇからな。オマエ等がイラナイって言うなら、それはそれで良いんだよ。俺が、また別の使い方を考えるだけのこった」
「因みにだが、どんな使い方を考えてんだ」
「まぁ、そうだなぁ。今んとこは予定でしかねぇんだが……この2人は、オマエ等のバンドのレベルに合わせて探した連中だから、ソコソコに腕は立つ。だからまぁ、スリー・ストライプの山さんにでも頼んで、ツアーミュージシャンでもやって貰うってのがオチなんじゃないか」
「Oh my God!!まじデスカ仲居間サン……私達、マタ、つあー・みゅーじしゃんデスカ?」
いきなりジミーは悲痛な声を上げて、それ以上に嫌そうな表情をしている。
けど、何がそんなに不満なのか、俺には理解出来無い。
何故ならツアーミュージシャンって言うのは、その殆どがメジャーデビューを確約されている連中の事だからだ。
此処からプロになった奴も少なくはない。
だから、プロを目指すものにとって、不満の声を上げるのは、普通は有り得ない話なんだよなぁ。
それに第一、俺達のバンドは、まだ出来て日が浅い。
こんな所に入るより、そっちの方がズッと、効率良くデビューが見込める筈なんだが……なのに、この態度。
なんで、そんな嫌がる必要があるんだ?
わっかんねぇなぁ。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
崇秀が、またロクデモナイ事を提案してきましたね。
ただ、何故、ステラさんと、ジミーさんはツアーミュージシャンを嫌がるんでしょうね?
その謎は次回明らかに!!
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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