●前回のおさらい●
こんな非常事態の中、奈緒さんから、千尋ちゃんの来訪予定を告げられる倉津君。
しかも、その千尋ちゃんの来訪を待たずして、素直ちゃん迄、奈緒さんの家に来訪してくる始末。
だが四の五の言ってられない状況なので、真上さんの真似をして、その場を乗り切ろうとするが……矢張り、そう簡単には上手く行かない。
そんな時、テンパった倉津君の頭の中に、ある声が聞こえて来た。
その声の正体とは、一体……(笑)
『私は、アナタと共に生まれ……アナタと共に14年間を過ごした者です……』
えっ?なにこれ?
これって、俺の脳味噌が完全にテンパったからこそ聞こえて来る、鮮明な幻聴って奴か?
つぅか、急に14年間一緒過ごしたとか言われても、俺に双子らしき者が居るなんて話、誰からも1度も聞いた事がねぇからなぁ。
こりゃあ一体、どういうこった?
『そぅ……正確には双子じゃないの。……私、真琴ちゃんの体の中にある女性としての一部でしかないから』
またまた、はっ、はい?
俺の中にある女性的な一部ですと?
じゃ、じゃあ、なにか?
そんなアンタが今、こうやって出現して来たって事は、此処でアンタと精神交代でもして。
アンタに、この場を任せたら、この場を綺麗に納めてくれるっとでも言いたいのか?
もしそうだとしても、そんな漫画みたいな事が有り得るのか?
それにアンタは『俺が元に戻りたい』って意思を示したら、ちゃんと体を返してくれるのか?
そこも約束出来んのか?
……ってか、なんで俺は、精神交代なんぞ出来る事を前提に話してんだ?
『うん、大丈夫。……そこの約束は絶対的に守る。……真琴ちゃんが【この世が嫌にならない限り】必ず、この体は真琴ちゃんに返すよ。だって、この体は真琴ちゃんだけのものじゃない』
ホントだな?
絶対だからな。
『うん……信じて。絶対に嘘はつかないから』
わかった!!
じゃあ、もぉこの際だ。
今の状況じゃ、背に腹は変えられねぇ!!
まだオマエの事は、なんか良くわかんねぇけど、兎に角、この場は信じて任せたぞ!!
『俺が代われ』って言うまで、オマエが倉津眞子を演じろ!!
ほんと、なにがなんだか解らねぇけど、もぉヤケクソだな俺……
『うん、わかったよ、真琴ちゃん』
謎のソイツの声が頭の中に広がると、俺はイキナリ客観的な立場に立ってる様な感覚に陥る。
そして……喋る筈の無い倉津眞子の口が、俺の意思がないまま開き始めた。
「奈緒さん。そんなに慌てなくても、私なら誰が来ても大丈夫ですよ。心配ないです」
「えっ?なに?急に、どうしちゃったのクラ?」
「あの、奈緒さん。此処でクラなんて言ったら、素直ちゃんに私の正体がバレちゃいますよ。だから、ちゃんと眞子って呼んで下さいね」
「えっ?あっ……うっ、うん。そっ、そうだね」
「じゃあ、素直ちゃんを呼んで来てあげて下さい。いつまでも玄関口で待たされてたんじゃ、寒いでしょうから」
「えっ?あっ、あぁ、うん。……そっ、そうだね」
その言葉を聞いて、奈緒さんは即座に立ち上がるんだが。
今の倉津眞子の言葉や、態度に、納得出来ない様な訝しげな表情を浮かべ。
眞子の方を疑う様な眼差しでジィ~~~と見ながら、素直を呼びに玄関に向って行く。
そんな感じで奈緒さんは、部屋を出る最後の最後まで、警戒する様にコチラを見続けているんだが……
そんな彼女に対して倉津眞子は『安心して大丈夫ですよ』っと言わんばかりの微笑み掛けている。
矢張り、これにも奈緒さんは納得出来ない面持ちだが。
いつまでも素直を玄関口で待たせる訳にもいかず、此処で一旦、部屋を退出して、そちらに向かって行った。
……って事は、ほんの少しだが、これで時間が出来たな。
なら、今の内に、コイツの正体を、もっと詳しく知って置かなきゃな。
それを聞く最大のチャンスが訪れた訳だし。
***
なぁ、オマエさぁ、本当に何者なんだ?
『私の正体はね。真琴ちゃんの体の中に存在するXX染色体の人格なの。だから私は、アナタと一緒に産まれ。今まで一緒に過ごして来たって事になるのよ』
……って事は、なんだ。
例の薬が原因でXX染色体が活性化したからこそ、オマエの人格が、こうやってハッキリと具現化したって事か?
『うん。大凡は、そんな感じ。でも、変に誤解しないでね。私は、真琴ちゃんの体を奪おうなんて微塵も思ってないから。そこだけは本当に信じて欲しい』
じゃあ逆に聞くが、なんで急に出て来たんだ?
薬の影響があったにせよ。
今まで大人しくしてたんなら、今更、出て来る必要性なんか無いんじゃないか?
まぁ、こうやって協力してくれてんだから、オマエを否定したい訳じゃないんだけどな。
『それはね。真琴ちゃんが困って、私を呼んだからだよ」
へっ?俺がオマエを呼んだ?
「そぉ……それで、真琴ちゃんが困ってるって事は、私自身が困ってるのと同じ。だから、真琴ちゃんの呼び声に応えたんだよ』
そっ……そうなのか?
じゃあ、本当にズッと前から、俺と、オマエは共に生きてたって事だよな?
『うん、そうだよ。だから私、真琴ちゃんの事なら良く知ってる。……うぅん、全部知ってる』
そっ、そうか。
まっ、まぁ、俺個人としては、あまり女子には知られたくない様な事も一杯あるんだが。
現状で考えるなら、そう成っても仕方がないわな。
つぅか、ここまできたらもぉ、オマエは本当の兄妹だな。
いやもぉ、それ以前の問題として、こうやって体や意思を共有してんだから、本当の兄妹以上の関係だな。
『えっ?真琴ちゃん?……その言葉って、こんな謎めいた私の事を受け入れてくれるって言うの?それに兄妹だって思ってくれるの?』
当たり前だつぅの!!
現に頭の中で会話出来るなんて、普通じゃあ出来ねぇ関係だからな。
きっと、それが出来てる以上、オマエの言ってる事は、なに1つとして嘘なんかじゃねぇだろうしよ。
俺は、オマエを信じてやるよ。
だから俺は、今からオマエの事を『眞子』って呼ぶ。
俺にだけ真琴って名前が有って、オマエに名前が無いなんて不公平だからな。
それで良いだろ、眞子?
『こっ、こんな私に、なっ、名前まで付けてくれるなんて……ありがとう、真琴ちゃん。だったら私、真琴ちゃんが満足出来る様に精一杯頑張るね。うぅん、頑張らせて』
おぉ、頼んだぞ眞子。
『うん、任せて……あぁっと、イケナイ。奈緒さんが帰って来たから、話は、また後でね。……真琴ちゃん、見守っててね』
おぉ、わかった。
じゃあ今は、オマエと言う存在をシッカリ見て、女ってもんを勉強させて貰うから、また後で、ゆっくり話そうな。
『うん』
***
しかしまぁ、世の中には、奇妙な事が起こるもんだな。
まさかXX染色体に人格が有るとはな……
昨日の出来事同様、おかしな事が、意外と世の中には溢れてるもんだ。
でもよぉ、眞子の奴、ズッと一緒に居たんなら、もっと早くに声を掛けりゃあ良いのにな。
まぁ、聞いた所によると、薬の影響で人格として発現してるだけに、その辺は無理だったのかもしれないが、なに遠慮してんだかな。
若しくは、そんな事なんて何も関係なく。
この現象を俺が受け入れてる時点で、俺の頭がおかしくなっちまってるだけなのかもしれねぇけどな。
まぁこの辺に関しては、自分自身の事なだけに、どうやっても確認のし様がねぇけどな……
***
こうして俺の代わりにXXの精神体である眞子が、奈緒さん、素直、千尋の相手をする事になった。
俗に言う『女子会』って奴の始まりだ。
なので此処からはもぉ、なにもかもを割り切って。
今後の為にも、タップリと女子の本音って奴を勉強させて貰うとするかね。
これも不幸中の幸いと言うべきか、眞子と言う存在が俺の味方である以上、事はどうあれ、今後もある程度は安泰だし、本当の女子を知るには良いチャンスが巡ってきたってもんだ。
だから皆の衆、洗い浚い、俺の前で女子の本性を晒すが良いぞ。
……ってか、この女体化って奇妙な現象が起こってからと言うもの、ほんともぉ、なにもかもヤケクソだな、俺。
もぉ、この状況には笑うしかねぇわ(笑)
勿論、引き攣った笑いだがな。
いや、やっぱ……全然笑えねぇや。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたです<(_ _)>
これにて【第一章・第二十二話・体に宿る2つの心】は終了になるのですが……如何でしたでしょうか?
まぁ、これでも、結構端折ってる部分はあるのですが。
普通の男性が女体化した場合なら、まだ、もう少し早く順応出来るかもしれないのですが。
今回の場合、その対象がヤクザの組長の息子である倉津君だったので、中々上手く行かない部分もあったみたいですね。
なので、こうやって受け入れるまでに、凄く話数が掛かっちゃったのには、非常に申し訳ないと思うのですが。
その反面、皆さんが思われているよりも遥かに、女体化した場合の苦痛や、リアリティをお伝え出来たものだとも思いますです(笑)
因みになのですが、最後に出て来たXX眞子についても、ちゃんと理由がありますので。
此処の謎も、後の説明で、読者さんに納得して頂ける様な物にして行きたいと思いますです♪
……ってな訳で次回からは。
第一章、第二十三話【女子会(始まり)】をお送りしたいと思いますので。
良かったら、女子の本音トークと言う普段は見れない物を楽しんで頂ければ有難いです。
ではでは皆様、またのご来訪、心よりお待ちしておりますです♪
(*´▽`*)b
読み終わったら、ポイントを付けましょう!