●前回のおさらい●
遠藤さんとのベースの話が『返却する事』で決着した不良さん。
その後、お礼をしたいと言って来た遠藤さんに対して。
不良さんは、取り敢えず『なにか困った事があった時に相談にでも乗ってくれ』と、その場を濁そうとするが。
それを聞いていた国見さんに『奈緒との恋愛相談に乗ってやってくれ』と言われ焦る不良さんだったが……
更にそこに、帰った筈の奈緒が戻っき、焦る不良さんだが。
遠藤さんと、国見さんが、上手くその場を取り持ってくれる。
そんな2人に有難味を感じながらも、ベースを返却してなくなった不良さんの為に、奈緒が新しいベースを買いに行く事を提案して2人はスタジオを後にする。
そんな風にして、楽器を買いに横浜駅に着いたのは大体20時過ぎ。
足早にJR横浜駅の改札をすり抜けて、目的地である、この時間でもやっているであろう楽器屋に向かう。
しかしまぁ、本当に、こんな時間まで楽器屋なんか開いてるのか?
俺の中での楽器屋って言うのは、いつもオッサンか、オバはんがやってて。
大体、19時前後には閉店してて、家の中で飯でも食ってるものと相場が決まっているものだと思っていた。
しかも、売ってるの楽器も、学校で使うハーモニカとか、縦笛のイメージしかない。
「奈緒さん。ホントに、こんな時間まで楽器屋なんか開いてるんッスか?」
「うん、大丈夫だよ。まだこの時間なら、余裕で開いてるよ」
「へぇ~~~、意外と、楽器屋って遅くまでやってるんッスね」
「そうだね。この周辺だったら、大体閉まるのが21時ぐらいの店が多いかな」
「そうなんッスか?」
地元のジジィ、ババァの店を基準にしてる時点でOUT。
繁華街じゃあ、流石に、そんな早くには店を閉店しないか。
「うん。あぁ大手で言えばイケベ楽器は20時までだけどね。あそこは東京中心の店舗展開だから、中々行く機会が少ないのよ。……なんか、どうしても神奈川で済ませちゃう傾向があるのかな」
「んじゃあ、今から、どこに行くんッスか?」
「取り敢えず、時間も時間だし。イシバシ楽器か、MUSIC LAND KEYか、クロサワ楽器ってところかな」
この時間から、3店舗も廻る気なんですか?
「んで、結局、どこから行くんッスか?」
「まずは、此処から一番近くにあるダイエー7Fのイシバシ楽器かな」
こうして、奈緒さんの怒涛の快進撃が始まった。
***
人気の多い駅内を器用に人を掻き分け、スイスイと泳ぐ様に、人ゴミを進んで行く奈緒さん。
そんな彼女に、俺はただ、何の抵抗も無しに引っ張られていくだけだ。
だが俺は、そんな行動ですら、奈緒さんと比べて体がデカイので、矢鱈と人にゴンゴンぶつかっている。
駅を出るだけでも、もう何人の人とぶつかったか解らない程だ。
その度に文句を言われたり、睨まれたりもしたんだが。
その辺は、ただ睨み返すだけで、相手方は何も言ってこなくなる。
なんだ?俺って、そんなに怖いのか?
***
急いだ甲斐も有って、店舗に着くまで、そんなに時間は必要なかった。
駅から約5分ぐらいでダイエーに到着。
店に着くなり彼女は、この店に良く来るのかして、なんの迷いも無しにベースのコーナーにスタスタと進んでいく。
けど、相も変らず、何も解っていない俺は、ただ只管、彼女の後ろをくっ付いて行くだけだ。
「クラ。この辺にあるの全部ベースだから、見てみて」
「はぁ」
展示されてるベースの数は、ギター程では無いにしろ、かなりの数がある。
悩む以前に、どれがどういう物かさえ解らない。
イキナリ無茶振りだ。
「気に入ったのがあったら店員さん呼んで、試し弾きしてみよっか」
「へぇ?試し弾きって言われても……なにがなにやら」
「うん?あぁ、そうなんだ。じゃあ、自分の手に馴染むとか、こんな音鳴らしてみたいとか、そう言うのあるじゃない。それを試してみれば良いんじゃない」
「いや、あの、こう言っちゃあ、なんなんッスけど。あんま、そう言うの考えて弾いてないって言うか……」
不純な動機と言うか……
奈緒さんに逢う事だけが理由と言いますかぁ……
「そっかぁ。じゃあ、少し私が見繕ってみよっか?」
「あっ、はい、出来れば、お願いします」
「そっ。じゃあクラ、手ぇ出して」
「あっ、はい」
指示通り手を出す。
そうすると奈緒さんが、俺の手を自分の手と合わせて何かを始めた。
なにやってるんだ?
手と手を合わせるのは、幸せだが……これってベースとは関係なくね?
「あの……なにやってるんッスか奈緒さん?」
「うん?大体の手の大きさを測ってるのよ。……やっぱり、クラの手ぇ大きいね」
「えっ?あぁ、そうッスかね」
「うん。弦楽器弾くんだったら、手が大きい方が、弦を押さえ易いから有利なんだよ」
「へぇ~~~っ、そうなんッスね」
「そうだよ。ほらほら、私なんか、こんな手が小さいから、弦を押さえるのが大変なんだよ」
「はぁ、色々有るんッスね」
ふ~ん。
手のデカさなんか気にした事なかったが、変な所で役に立つもんなんだな。
でもッスね。
奈緒さんの手は、小さくて可愛いですよ。
このままズッと手を合わせてたい心境ッス。
「だね。まぁけど、クラの手の大きさなら、なんでも大丈夫だね」
「いや、あの、それって、逆に、選択肢が増えてないッスか?」
「あぁ、そう……だね。じゃあ、いっその事デザインで決めてみる?」
「デザインッスか。あぁけど、これだけ有ると、それも決め兼ねちゃうかな」
「そっかぁ。じゃあ、こうなったら、最後の手段しかないね」
「最後の手段?……なんッスか?」
「インスピレーション」
「はぁ?」
インスピレーションって、直感の事だろ。
そんないい加減なもんで、ベース選んで良いものなのか?
「不信に思った?」
「はぁ、まぁ、正直言えば」
「だよね……でも、世の中には、なんかね。『楽器の方から自分を呼んでたから、購入した』とか言う人も居るぐらいだからね。最初は、そういうので選ぶのも悪くないかもよ」
あぁ……居ますね、居ますね、そう言うスピリチアルな事を言う奴。
俺もそう言う事を、平気で言いそうな奴を知ってますよ。
まぁけど、考えてみれば、そう言うのもありなんだろうな。
どうせ今は、大してベースが弾ける訳でもねぇし、音の事なんて、殊更、なにもわからない。
だから今は、奈緒さんの言葉に通り、インスピレーションとやらに従って買い。
後々、自分に拘りでも出来る様な事が有れば、今度はキッチリ選ぶのも悪くないか。
その頃になってりゃ、多少は音の事もわかんだろしな。
……っと言う事でだ。
取り敢えず、今は、そのインスピレーションとやらで……
呼んでる奴。
俺を呼んでる奴。
俺を呼んでる奴……ねぇ。
なんだろな?
なんか、どのベースを見ても、あんまり自分が呼ばれている様な気が一切してこねぇな。
これって……やっぱ動機が不純だからか?
それをベースに悟られてるとでも言うのか?
だったら、インスピレーションで選べない以上ダメじゃん!!
そう思いつつも。
そうじゃないと思いたい俺は、再度、飾ってあるベースを見直してみると。
奇跡的に……っ言うか。
偶然、偶々、一点だけ、何故か俺の目に飛び込んで来たベースがあった。
だから俺は誘われるがままに、フラフラとソイツの所に行ってみる事にした。
最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>
さぁ2人でベースを買いに行こう、ってな感じで、やってきました横浜駅。
だが不良さんは、ベースの善し悪しが解らないから混乱中(笑)
そんな中、彼と相性の良さそうなベースを発見。
さて、そのベースとは、どの様な商品なのか!!
そして彼は、そのベースの機能を理解できるのか!!
それはまた、次回の講釈。
また遊びに来てくださいねぇ(*'ω'*)ノ
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