最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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410 何よりも怖い物

公開日時: 2022年3月23日(水) 00:21
更新日時: 2022年12月29日(木) 20:43
文字数:2,447

●前回のおさらい●


 出来るだけ自分が犯してしまった罪を再確認して、奈緒さんに謝罪の電話を掛けようとする倉津君……


どうなるのか?

 そんな情けなくも、惨めな気持ちになりながらでも、奈緒さんに対してのケジメを付ける事だけは、絶対的に必要だと考える。


これを放棄してしまったら、本当に親父同然の屑だ。


故に、家路に着く途中、無性に重く感じるチャリを押しながら、奈緒さんの携帯電話に電話を掛ける事にした。


一刻も早く、この事を奈緒さんに全てを告白して、少しでも早く楽になりたかったんだろう。

どこまでも卑怯な自分に、気持ちがドンドン滅入っていく。


『プルルルルル……ガチャ!!』


はぁ……矢張り、奈緒さんは、何回もコールを鳴らさせてはくれない。

いつも通り、1コールで俺の電話に出てくれた。


今の俺にとっては、彼女のこんな何気ない行為ですら……心が痛む。



『はいは~い。クラだよね?どうかしたの?なんか用?』


そんな奈緒さんの明るい声が、耳元に木霊する。


いつもなら嬉しく感じる声なんだが。

今だけは、コレさえも受け入れられず、なんとも言えない心境になる。


『罪の意識』とは、自然なままでも全てをネガティブな方向へ持って行くようだ。


こんな自分自身を、どこまでも不快に思う。



「……奈緒さん……俺……」

『うん?…………ふぅ。なぁに?なんかあったのクラ?声……暗いよ』


たった1言……そう、俺が、たった1言だけを発しただけで、奈緒さんは何かを汲み取って、俺に優しく話し掛け始めてくれた。


それに伴って、キッチリと声のトーンも合わせてくれている。


……辛い。


自業自得だとは言え、この奈緒さんの優しさは、本当に辛い。

罪悪感と、罪の意識が上手く交じり合ってしまい、余計な化学反応まで起こってしまう。


そんな奈緒さんの好意を素直に受け取れ切れずに、俺は沈黙するしかなかった。



「・・・・・・」

『はぁ……あのねぇクラ。今度は、何を仕出かしたのかは知らないけど、包み隠さず、正直に、おねぇさんに言ってみ。……全部吐き出しちゃえば、少しぐらいはスッキリするかもよ』

「なにが……」

『うん?』

「なにがあっても、こんなの、絶対にスッキリはしませんよ」

『あっそ。じゃあ君は、私になんの用が有って、ワザワザ電話をして来たのかな?』

「そっ、それは、そうッスけど」

『私……折角、電話して来てくれたクラには悪いとは思うけど。いつまでも、君の煮え切らない態度に付き合う気はないよ。用事があるならサッサと言う。言わないなら切るからね。……もぉ切っても良い?』


煮え切らない訳じゃない。

やらなければイケナイ事は、ちゃんと解ってる。


ただ……自分の出す命令を体が拒絶をして、口が思う様に動いてくれない。


今更になってミットモナイ話なんだが、奈緒さんの声を聞いて、余計な恐怖感が増してしまい。


全く……なにも言えない。


こんなに誰かに対して『怖い想い』をしたのは、生まれて初めてだ。

話をしたら、奈緒さんが居なくなる様な気がして……矢張り、俺の口からはなにも出てこない。



「・・・・・・」

『もぉ、いい加減にしなよ、クラ。話がないなら、本当に切るよ』

「すっ……すみません」


俺は訳も解らずに、謝罪の言葉だけが口から飛び出した。


これしか言えないかった。



『ふぅ、じゃあ許す。なにがあったかは知らないけど、全部許してあげるから、もぅクラは気にしなくて良いよ』

「なっ、奈緒さん!!違うんッスよ!!これは、そう言う意味で謝ったんじゃないんッスよ」

『あっそ。じゃあ、ソッチも含めて許してあげるよ。君が、ちゃんと謝ったんだから。もぅ、なにも言わなくて良いよ』

「なっ!!」


……わかってない。

なにもわかってないよ、奈緒さん。

これは、そんな軽い気持ちで許せる様な話じゃないんッスよ。


俺は、自ら奈緒さんを裏切ったんだから、そんなに簡単にアナタに許して貰える筈なんかないんッスよ。


怒られても、キレられても、しょうがないんッスよ。



『なにが『なっ!!』よ。どうせ、大した事でもないのに、君が勝手に重々しく感じてるだけでしょ』

「違うんッスよ。そうじゃないんッスよ、奈緒さん。奈緒さんが思ってる以上に、これは深刻な話なんッスよ」

『ふ~ん。じゃあなに?その深刻な話とやらを言ってみなよ。でも、今度、沈黙したら、直ぐに電話を切るからね。出来るだけで良いから、早く話してみ』

「あっ、あのッスね。あの、俺、あの、だから、その、あの……」


電話を切られるのが怖くて無理矢理言葉を紡ぐが、それには今回の内容が一切なにも含まれていない。


これじゃあ、伝え様にも、なにも伝わる筈がない。

いや、この期に及んで……なにも伝えたくないのかも知れない。


けど、俺には、切られる恐怖しかなく。

俺は電話に向って、ただ必死に、訳の解らない言葉だけを出し続けただけだった。



「だから、俺、あの……」

『はぁ~、なるほどね。……そっか、そっか。そりゃあ言い難い筈だ。OKOK。それなら、全然OKだから許してあげるよ。心配しなくても良いよ』

「なっ、奈緒さん……その様子だと、なにかわかったんッスか?」

『なぁんだ。ちゃんと話せるんじゃない』

「こっ、こんな時に、かっ、からかわないで下さいよ!!」

『からかってないよ。本当に、君が、私に伝えたい事がわかっただけ』

「そんなぁ。……いっ、一体、なにが、わかったって言うんッスか?」

『それ……私の口から言って良いの?それに、私から言う話?』

「ぐっ!!」


この独特の言い回しからして、奈緒さんは、本当に全部解ってるみたいだ。

いや……全部を把握してる訳じゃないだろうけど、ある程度の予想は出来てるみたいだ。


けど、だったらなんで、そんなに平然としてられるんだ?

もし本当にわかっているんなら、少しは取り乱す筈じゃないのか?

いや、贅沢な話かも知れないが、少しは取り乱してくれても良いんじゃないのか?


例え、それが『浮気公認』を公言していたとしても……少しは怒るなり、なんなりしてくれないと、余計に不安になる。


……それとも奈緒さん。

もぅ今の段階で呆れて果ててしまって、俺なんて、どうでも良くなってしまっているのだろうか?


俺の馬鹿げた思い込みで取った行動のせいで……全てが終わっちまうのか。


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


これは真上さんの時にもあった話なのですが。

人間は、責められるよりも、許される方が数十倍恐ろしいと言う事。


それを身を持って体験する羽目に成ってしまいましたね。


そして、なにもかもを見透かしてしまっている様な態度を取る奈緒さん。


この行動に、倉津君は、どうするつもりなのか?


それは次回の講釈。

また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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