最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
殴り書き書店

385 ピンク・スパイダー

公開日時: 2022年2月25日(金) 00:21
更新日時: 2023年9月9日(土) 13:04
文字数:2,341

●前回のおさらい●


真上さんの抗えない魅力に、困惑気味の倉津君でした(笑)

 そして数分後、真上さんは、いつものティーポットを持って帰って来た。



「お待たせしました」


彼女は、戻って来た際の、いつもの笑顔も忘れてない。


これは、相変わらず『癒される笑顔』だ。



「あぁ、いつも、すんません」

「あぁっと、気にしないで下さいね。私が好きで、お出しさせて頂いてる事なので……それよりも、倉津さんには、いつもお付き合い頂いて感謝してますよ」


ぬうぅぅぅうぅううぅぅ~~~~っ。

真上さんは、何を言っても嫌味が無いんだよな。


普通な、こう言う言われ方をすると、多かれ少なかれ、嫌味に感じる部分が有るもんなんだが。

真上さんからは、そう言った嫌な部分を一切感じた試しがない。


この人、いつも本心で、こんな事を言ってるんだよな。

ホント、どうやったら、こんな精神になれるんだろうな?


まさにゴッドですよゴッド!!



「いやいや、そんなそんな。俺なんかに、お茶を出して貰えるだけでも、幾ら感謝しても足りないッスよ」

「どうして……そんな事を言われるのですか?私は、お茶をお出ししたい方にしか、お出ししませんよ」


……死ぬ。

彼女が『天然』だと解っていても、このセリフは簡単に死ねる。


それに男性なら誤解もする。


なんて言うのかなぁ、真上さんのこの行為って、なにかしろ『特別扱い』されてる気分になるんだよなぁ。


解ってても、本当に嵌りそうだ。


ヤバイから話題を変えよ。


これは危険だ。



「あの、ところで真上さん。さっきの武藤の話、理解出来ましたか?」

「えぇっと、銀行の話でしょうか?」

「そうッス、そうッス」

「あぁっと、正直言えば、あまり良く解りませんでしたね。あれは、どう言った意味なのでしょうか?教えて頂いても良いですか?」


よしよし、急に話題を変更したのに、上手く真上さんが喰い付いてくれた。

まぁ、この辺については、人間ってのは『気になる事』や『解らない事』には抵抗力が薄いからな。


そこが功を奏して、良かった、良かった。


これ以上は、マジで危険だったからな。



「いや、実は、凄く簡単な話なんッスよ」

「そうなんですか?」

「うっす。あのッスね。あの話はッスね。金銭管理は通帳でするより、自分で数えて確認した方が、金の価値が解るからなんッスよ」

「えぇっと、それは、どう言った意味でしょうか?」

「なんて言うんッスかね。お金を自分で持つって事はッスね。それだけ危険が伴うって事なんッスよ。それにお金が目減りする恐怖を肌で感じ続ければ、人間なら誰しも減らしたくなくなる。それ=ッスね。金の価値が解ってくるってもんなんッスよ」

「なるほど、そう言う事だったんですね。私、お金には疎いもので、要さんの言う事が、実は良く解らなかったんですよ。けど、倉津さんが丁寧に教えて下さったので、少しだけ解りました。あの……ありがとうございますね」


……アカンね。

普通に会話してても、これは嵌るわ。


真上さんって、ホント、どういう構造で出来てるんだろうな?

こんなんじゃ、なにやっても、この人、相手に良い様に誤解されるぞ。


ってな訳でだ。


また話題を変えよ。



「あぁ、全然良いッスよ。友達が困ってたら、教えてあげるのが人情ってもんッスからね」

「あっ、はい。私も、倉津さんを見習って、これからも一生懸命勉強しますね」


あのさぁ。

突然で悪いんだけど、みんな『蜘蛛の巣』って知ってる?


1度でも糸に絡まったら最後。

絶対逃げられないし、もがけば、もがく程、絡まって来るんだよ。


知ってた?



にゃああぁぁぁ~~~~!!

嵌ってるのが解ってるのに、心地良い『蜘蛛の巣』なんて嫌過ぎる。

真上さんの蜘蛛の巣は『逃げたい』んじゃなくて『逃げたくない』になるんだよぉ。


まさに地獄の『ピンク・スパイダー』


なので、誰か助けちくり。



「あぁ、うっす」

「あぁっと、いけない。また、やっちゃいましたね」

「へっ?なにがッスか?」


えっ?まさか真上さん、これって、狙ってたんですか?



「くすくす、いえ、お恥ずかしい話なんですが。……倉津さんと、お話してると楽しくて、つい、お茶を淹れ忘れちゃうんですよ。お待たせしちゃって、本当に申し訳ありません」


……矢張り、俺を殺す気ですか?

次、そう言う事を言うと、本当に俺は軽く死んじゃいますよ。


ホント、もぅ無理ッスよ。


真上さんの店に来る回数が増えれば増える程。

彼女の魅力が、毎回毎回、脳内更新されて伝わってくるんじゃ、辛過ぎるってもんですよ。


しかもだな。

その更新内容ってのが、パソコンの更新同様、更新されれば、される程、彼女のデータが明確になっていき、更新前より、よりシンプルに魅力を伝わってくる。


解っていても、こうなったら結構、地獄だ。


けどな。

俺がこうやって言いながらも、真上さんに嵌りきらないのには理由が有るんだよ。


①奈緒さんって彼女が居るのは、勿論、一番の理由なんだがな。

②真上さんの俺を見る眼が、理性を掛けるストッパーになってる。


実は、彼女の眼、なにを言ってても、純粋で濁りが無いんだよな。

そんな眼で見られたら『浮気しようかな?』なんて邪な気持ちに成らず、寧ろ吹き飛んじまうんだよな。

だから、その真上さんの純粋な眼のお陰で、ギリギリのラインだが、何とか理性を保ってられる。


これがなければ、きっと『浮気』してたかも知れないな。


いや、敢えて言うなら、確実にしていただろう。



「いやいや、滅相もない。楽しんで貰えてるなら、それはそれで有りッスよ」

「そうですか。そう言って頂ければ、私も、少し気が楽になりました」

「なら、良かった」

「……ところで倉津さん。本日は、どの様な御用向きで、コチラにお越し頂いたんですか?」


おっと、真上さんに言われるまで、完全に忘れてた。


こうやって有意義な時間を過ごさせて貰ったのは、良いんだけどな。

俺、これで帰ってたら、ただの馬鹿だよな。


まさに俺、無様(笑)


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


真上さんの魔性に嵌りながらも、最終的に嵌り切らないのは、矢張り、奈緒さんの存在。

……ってか、あんな良い彼女が居るのに、浮気なんか無様な真似はしちゃいけません(笑)


なんて事がありながらも、漸く本題である『追加メイド服の受注』


これが万事上手く行くかは、次回の講釈。

なので良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート