●前回のおさらい●
一悶着あったものの、眞子が投下した秘密兵器『真上さん爆弾』により。
漸く、当初の目的であった『ホランドさんのギター』をご店主さんに見て貰う事に成功した。
だが彼は、果たして、どの様な評価を下すのか?
……っとまぁ、そんな訳でして。
ホランドさん秘蔵のギター『66 Rickenbacker 365 Fireglo』を店主の方に渡すんだけど。
手に取った瞬間、またしてもご店主さんは口一杯に文句を言い始める。
えぇ……
「なんだこりゃあ?オイオイオイオイ、ギター小僧。こりゃあ『66 Rickenbacker 365 Fireglo』が泣き喚いてるぞ。コイツを、テメェなんぞが持つには100年早ぇわ」
「なに!!」
「なにが『なに!!』だ。……あのなぁギター小僧。楽器ってのは弾いてなんぼなんだよ。オマエ、最近まで、コイツをチョコチョコ弾く程度で、無駄にメンテばっかりして、家の中にでも飾ってたんじゃないか?……ギターは飾りじゃねぇんだぞ」
「うっ……しかしだな主人。鑑賞するのも悪い事ではないだろ」
「確かに悪くはない。だがな、行き過ぎたメンテナンスってのは『過保護な親』と一緒で、ギターの根本的な部分を悪くする。そんな事もシラネェのか?」
「いや、行き過ぎたと言う程、メンテをしてた訳ではないんだが」
「ギター小僧……この無惨な『66 Rickenbacker 365 Fireglo』はなぁ。テメェの腐ったメンテのお陰で、年代モノの割には、ちっとも木が乾いてねぇ。それに、なんだ、この無駄に残ってる油分は?どうやったら、この年代のギターが、こんな酷い仕上がりになるって言うんだ?……寧ろ、こっちがご教授願いたいもんだ」
うわっ!!さっきまでのご店主とは、打って変わってマジモードだ。
この人……崇秀が推奨するだけの事はあって、凄い鑑定眼を持ってらっしゃるみたい。
ホランドさんのギターをちょっと見ただけなのにも拘らず、使用頻度までも完全に言い当ててる。
……凄いね。
ヤッパ、見る人が見れば、一見しただけで、そこまで解るんだ。
プロは違うねぇ!!
「これが……悪い仕上がりになってると言うのか?」
「あぁ、てんでダメだな。話にもならん。……オマエは、このギターの『本質』を完全に腐らせてる。オマエは、最低のプレイヤーだ」
「そんな。……私が最低のプレイヤーだと……」
「ふん……取り敢えず、これは預かって置いてやるから。オマエが、これを持つに相応しい人間になったら、此処まで取りに来い」
「待ってくれ!!見ず知らずのアナタに、それを預けろと言うのか?」
「あぁ、そうだ。コイツみたいに『魂の抜けた意思の無いギター』はゴミ同然だ。値段が高いからと言って、使わねぇなら、どこにあっても一緒だろ」
「しかしだな……」
「なら、買い取ってやる。オマエは、これを持つには相応しくない人間だ。クダラナイGUILDランクで上位に居るからって、変に調子に乗るな。コイツはなぁ、残った最後の自分の意思で、オマエじゃなく『新しい主』を求めてるんだよ」
うわっ……なんかファンタジックな感じの話をしてるんだけど、妙に説得力が有るなぁ。
「待ってくれ。どうすれば良いんだ?それを手放す気はないぞ」
「チッ……なら、どんどん使え。今日から、オマエのメインギターにするって言うなら、コイツの性能を引き出した上に、きっちりとメンテナンスもしてやる。……さぁ、どうするよ、ギター小僧?」
「待ってくれ。本当に待ってくれ。私のメインのギターはESPの物がある。それを、サブに廻せと言うのか」
ホランドさんのその言葉を聞いたご店主さんは、今まで以上に怒りの表情を浮かべ始めた。
そして……
「オイ、ギター小僧!!なら、なんでソッチを持って来ねぇんだよ。……馬鹿のかかテメェは?話にならんな。オマエの様な馬鹿とは2度と話をしたくねぇから、それを持って、さっさと帰れ。……この場から消え失せろ!!」
「うぐっ!!」
厳しい……
この人は、お金でモノを考えてるんじゃないんだ。
楽器のあり方が間違っていたら、自分の大切な仕事であっても一切合切請け負わず……断るんだ。
昔ながらの『職人気質』なんだ。
「さてさ~~~て♪約束通り、初心者ギター小僧のギターは見てあげたよ。さぁさぁ、今度は、鞍馬ちゃんのベース出してみようか」
うぐっ……
出せないよ……
私、一応、毎回、自分の出来る範囲で調整は、ちゃんとしてるんだけど……
詳しい事までは、よく解らないから、意外と適当に調整をしてたりするんだよね。
音造りに拘りを持ってるホランドさんが、この調子で罵られてるんだから……私なんかだと滅茶苦茶怒られそうだなぁ。
ヤダなぁ……
・・・・・・
……あぁでも、そこはそう考えないべきかも。
此処は1つ、変にビビってないで、もぉこの際ビシッと言って貰った方が良いのかもね。
そう言うメンテナンス系の話も、いい加減、キッチリ憶えて行った方が良いのも間違いない筈だしね。
その方が、ライブを観に来てくれたお客さんに、良い音が提供出来るもんね。
むむ、なら此処は、怒られる覚悟を決めて……見て貰います!!
「あの……宜しく、お願いします」
「はいはい、どれどれ」
ご店主は、私の愛機『79 Sting -rayちゃん』を受け取ると、今度は、細部まで舐める様にマジマジと見始めた。
ホランドさんの時の見かたとは、全く違う。
なんだろう?
眼に余る様な酷い状態だから、何所から怒って良いものか悩んでるのかなぁ?
もしそうならヤダなぁ……
「ふ~~~ん。どうやら鞍馬ちゃんとは、最初から縁が有るみたいだな」
へっ?なにがですか?
なんの話ですかね?
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
価値観の違いと言うものがありますので、ホランドさんの行動も一概に間違っていた訳ではないのですが。
矢張り、楽器を奏でる物であるならば「ギターの価値を上げる」よりも【リスナーに良い音楽を提供する事を一番に考える方が良いかなぁ】っと思い、今回のお話を書かせて頂きましたぁ♪
まぁ早い話、ホランドさんの考え方は『コレクターの考え』であって『プレイヤーの考え』ではなかった、っと言う事ですね。
さてさて、そんな風にボロクソに言われたホランドさんを尻目に。
今度は、眞子のベースをご店主さんに診て貰う事に成ったみたいなのですが……最後のセリフが、どうにも不可解。
一体、このセリフには、どの様な意味が隠されているのか?
そこら辺を次回は書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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