●前回までのおさらい●
喧嘩には勝ち。
性欲の権化であるゼンちゃんも追い払った。
そして、戦利品に成った女の子達にも危害を加えるつもりはない事を宣言した。
だが、何故か話だけが嚙み合わない倉津君。
ピンチ!!(笑)
「ねぇ、兄貴君さぁ」
「なんだよ?」
「あたしなら、別に騙しても良いよ」
「なっ!!」
騙して良い、ってなんだ??
「だって兄貴君、あたしから見たら良い人に見えちゃうんだから、これは、もぉ君が何を言っても変わらない訳じゃん?だったら、もぉそのまま騙しちゃえば良いじゃないの?」
「いや、そうなんだろうけどよぉ」
「ってかね。兄貴君は音楽をやってる以上、夢を売る商売をしてるんだから、あたしにも夢を見させてくれても良いんじゃないの?それが嫌って言うんなら、流石に辞めるけど……出来れば、あたしは、君のファンは辞めたくないんだけどなぁ」
「虚構で良いッて事か?」
「ってか、兄貴君。さっきから、本音トーク全開じゃん。どこが虚構なのよ?」
まぁな。
確かに俺は、平気で嘘を付ける程、器用な人間じゃねぇけどよぉ。
それで良いのか?
まぁ、それ以前にだな。
折角、応援してくれるって言ってるのに、無碍にするのも変だよな。
「じゃあよぉ。俺が、アンタ等に応援を頼んでも良いのか?」
「当たり前じゃない。嫌って言っても応援してあげるよ。ねっ、みんな」
「だね。こんな良い子見た事ないよ。ほんとズッポリ嵌ちゃいそう……嫌な感じ」
「だよね~。私さぁ、兄貴君の為なら、なんでもしてあげたいって心境だよ。オバサンがホストに嵌る気持ちとか、なんか、わかった気がする」
「だよね、だよね。なんかさぁ、最近、此処まで真面目な子っていないよね。ホント、究極の女誑しって、きっと、こう言う子の事を言うんだろうね」
あれ?なんか俺、実は貶されてねぇか?
だって『嫌な感じ』『ホスト扱い』『究極の女誑し』だぞ。
どれをとっても、良い印象なんかねぇじゃねぇか。
あぁけど……考え様によっちゃ、最低ラインの人間として見られてる訳だから、その分、なにがあっても幻滅はしないか。
だったら、まぁ良いか。
「なぁアンタ、1つ聞いて良いか?」
「あたし?」
「あぁアンタだ」
「あのさぁ兄貴君。一応、あたしにも塚本美樹って、名前が有るんだけど」
「あぁ悪い……じゃあ、塚本さんさぁ」
「美樹で良いよ」
まただ。
なんで女って、そんなに名前で呼ばれたいんだ?
「じゃあ、美樹さんさぁ。なんで俺なの?ウチのバンドだったら、ギターの嶋田さんも、ドラムの山中も、ベースの向井さんも、ヴォーカルの有野も、みんな、俺なんかよりズッと演奏が上手いじゃんか。なのに、なんで俺なんかに興味が湧いたんだ?おかしくねぇか?」
「見た目……かな」
見た目なぁ。
俺、そんなに見た目、格好良くねぇんだけどなぁ。
どっちかと言えば、厳つい感じしか受けねぇ様にも思えるんだが……
第一それだとよぉ。
「音楽関係ねぇのかよ!!」
「うぅん。全然、関係有るよ。だって最初は、見た目があたしの好みだったから好きになったんだけど。今はね、兄貴君の音楽も、パフォーマンスも俄然好きだよ。君の全てから、眼が離せないって感じだね」
「ねぇ美樹。ズッと気になってたんだけど。そこまで凄いものなの?さっき元香が、美樹に聞いた時は『あぁ凄いんだぁ』とは思ったけど。……美樹、絶賛だよね。なにがそこまでアンタに言わせてるの?アンタ、そう言う音楽の評論みたいなホームページやってるでしょ。その美樹が言うんだから、相当なもんだよね」
「あぁ……それ、結構、難しいかも。なんて言うのかなぁ、あのバンドの良さは、口では上手く伝えられないのよ。実際、生で見て貰わないと、多分、兄貴君の良さは、1/10も伝わらないと思うよ」
「そうなんだ」
なんッスかね、この妙なプレッシャーは?
つぅか美樹さんって、そんな有名な人だったんだな。
そんな大それた人が、俺なんかが注目株で申し訳ねぇな。
けど、そう聞いちまったら、もっと頑張んねぇとマズイよな。
俺が下手糞な演奏をしたら、彼女の評価まで下げちまう事になりかねないからな。
しかしまぁ……ホント、色んな人に巡り会わせてくれるよ。
このベースって奴はよ。
「あんま鵜呑みにしない方が良いぞ」
「くすっ、またそうやって謙遜する……まぁ良いけどね。ってかさぁ、そんな事より、記念に、みんなで写真撮ろうよ」
「良いね、良いね。私、デジカメと3脚有るよ」
「流石、写真部。理子は、いつ何時もカメラは手放さないね」
「当然♪当然♪」
「っで理子、構図どうする?」
「そぅだねぇ~。だったらさぁ、単純明快に兄貴君を中心にして、みんなで写真撮ろうよ。後は、各々好きなポーズを取るって言うのはどぉ?」
「それでいこっか。じゃあ序にさぁ、兄貴君にはベース持って貰おうよ。その方が、断然格好良いしさ」
「だねだね。それ、良いね。じゃあ、もう1つ序にさぁ、瀬野の馬鹿を踏んで貰おうか?その方が如何にもッポクない?」
「それ、完璧♪瀬野なんか踏み台にしちゃえ!!」
いや……流石に、瀬野が可哀想じゃね?
そりゃあまぁ、骨は折っちゃいねぇが、あのまま放置された上に、屈辱写真って……
俺は、少し反論しようとしたが、彼女達は一切それを聞いてくれない。
気付けば、瀬野を踏む羽目になっていた。
瀬野、哀れな奴……。
結局、俺は、瀬野を踏んで、真ん中でベースを構えて仁王立ちする羽目になった。
更に……
美樹さんは、俺の右手に胸を思い切り押し当てた形で腕を絡め。
真美さんは、俺の右足に胸を思い切り押し当てた形で腕を絡め。
元香さんは、真美さんの逆の足で、真美さんと同じ事をする。
この調子だと理子さんは、俺の左手に胸を思い切り押し当てた形で腕を絡め事になるんだろうな。
なんだこれ?
こんな事されたら、俺の無限膨張マシーンは、無節操に立ち上がるちゅうの!!
んで、爆発必至!!
けっ、けど、奈緒さん。
これは浮気じゃないッスよね?
ファンサービスって事で、問題無いッスよね。
「じゃあ撮るよ。あぁそれと兄貴君、絶対、無表情を崩さないでね」
「うっ、うっす」
理子さんは、タイマーをセットすると。
俺の思った通りの位置に付いて、シャッターが切れるのを待つ。
俺は訳が解らないまま、無表情でカメラだけを睨んでいた。
ってか、そこに意識を集中しないと、起きたまま夢精しちまいそうな勢いなんだよ。
『カシャ』ってシャッター下りた瞬間、俺の間抜けなイキ顔なんぞ、晒す訳にはイカネェからな。
無心無心。
『ピピピ……パシャ!!』
……終わった。
童貞には厳しい状況だったが、何とか事無きを得たぞ。
頑張ったな俺。
けどよぉ。
記念写真の割りに、俺はかなり厳しい顔してたと思うんだが……良いのか、それで?
「理子理子。どぉどぉ?上手く撮れてる?」
「ちょっと待ってね。今見るからさぁ……うわっ!!これ、ヤバイよ。兄貴君、超格好良いんだけど!!」
「どれどれ、私にも見せてよ……うわっ!!これは、かなりキテるね」
「なにがそんなにキテるのよ?」
「これ、ヤバイって」
「どれ?……あっホントだ。ってかさぁ、アンタ等エロ過ぎだよ」
「一番エロイ顔してるアンタが言うな!!」
「そぉ?美樹の方がエロくない?」
「どれよぉ?……なになに、あたし、全然エロくないじゃん」
「アンタ、ちょっとは自覚したら?」
「理子って、何気に酷い事を言うよね」
あの……すんませんが。
おたく等、なんの話し盛り上がってるんッスかね?
なんで記念写真で、エロの話が出るんッスかね?
あの……よく意味が、わからないんッスけど……ひょっとして、この記念撮影の趣旨が解ってないのって、俺だけッスかね?
「じゃあさぁ、兄貴君に見て貰ったらどぉ?誰が一番エロイか決めて貰ったら良いじゃない」
ホント、なんの話ッスかね?
未だに俺には、サッパリ解らん会話の内容だ。
つぅかな。
年上の女の人の考える事なんぞ、俺如きが解る筈もねぇか。
……奈緒さん助けちくり!!
「そうだね。そうしよっか……じゃあ、ハイ、兄貴君どうぞ」
「うっ、うっす」
俺は訳が解らないまま、デジカメを受け取って、その画像を見る。
そこには……
美樹さんは、俺の右手に胸を思い切り押しまま左腕を絡め。
更に、残った手で俺の顔を撫でる様にして、右耳を噛んでる様な写り方をしている。
真美さんは、俺の右足に胸を思い切り押しまま左腕を絡め。
更に、残った手でベースの本体まで手を伸ばし、舌を出して俺の足を舐める様な仕草で写っている。
元香さんは、真美さんの逆の足で、両手で足を掴み。
舌を出してベースの本体を舐めている様な仕草で写っている。
最後に理子さんは、俺の左手に胸を思い切り押し当てた形で右腕を絡め。
更には、残った手でベースのネックを持ち、俺の首元を舐める様な仕草をしている。
しかもな。
みんな、いつの間にか、衣服を着崩してるんだよな。
ブラとか、パンツとか、胸の谷間とか、微妙に見えてるチラリズム。
エロ過ぎだろ。
んでだな。
当の本人である俺は、緊張して強張った顔で直立不動のまま。
ダサッ俺!!
つぅか、それ以前に、これ、なんの写真?
こんなの、エロ本でしか見た事ないエロ画像だぞ!!
誰がエロイとかじゃなくて、全員エロイわ!!
自慢じゃねぇが、この写真だけで、余裕で20回は抜けるぞ!!
敢えて、此処で、もう一回言わせて貰うとだな。
……奈緒さん助けちくり!!
「ねっ♪理子が一番エロイでしょ」
「いや、あのッスね。こう言っちゃなんですが、美樹さんも大概エロイですよ」
「ウッソ、そんな事ないって……よく見てよ。どう見ても理子か、真美の方がエロイでしょ」
「あぁ、そうッスね。確かに2人共エロイッスね」
「くすっ……って言うかさぁ。なんで兄貴君、さっきから『下っ端言葉』になってるのよ?」
「いや、あのッスね。俺なんかみたいなヘボい中学生が、高校生のお姉さん方に、偉そうな事を言うのは100年早いと悟ったもんで」
「可愛い……もぉ兄貴君ってば可愛過ぎだよ。あたし、そんな事を言われたら、君の為に死んじゃうって」
いや、美樹さん……胸、胸、胸、胸が顔面に当たり過ぎッス。
つぅか、死ぬ死ぬ。
そんなに、顔に抱き付いたら100%窒息してしまうッス!!
「抜け駆けすんな!!」
「痛っ……だって、可愛過ぎない?」
「アンタさぁ。会長失格だよ、それ」
「ゴメンゴメン」
「でもさぁ、美樹の気持ち解るよね……もぉね、ホント兄貴君の為なら『なんでもしてあげるよ』って気持ちになるのも頷けるよ。あのさぁ、兄貴君、チケット販売とか困ったら、絶対、私に言ってね。全部売って来てあげるから」
「あぁ、それ、無理だよ元香」
「なんで?」
「兄貴君のバンドのチケットは、売れ残るどころか、寧ろ、入手困難なプラチナチケットなのよ。……なんせ、仲居間さんの仕切りだからね」
「うわっ!!凄いバックが付いてるんだ」
此処まで浸透してるんだな、あの馬鹿は……何所まで顔が広いんだよ?
此処まで来たら、もう恐ろしいとか、そんな可愛いレベルの話じゃねぇよな。
あの『時の魔王』は、ホント、どんな時間軸で生きてるんだろうな?
疑問しか残らねぇよ。
つぅか、そんな事より、そろそろ時間がヤバイな……
「あの……ちょっと良いッスかね?」
「なに、どうしたの?」
「非常に盛り上がってる所、申し訳ないんッスけど。俺、そろそろ練習に行かないとダメなんッスよ」
「あっ、そっか、そっか。ごめんね、引き留めちゃって」
「あぁ全然良いッスよ。俺も楽しかったし」
「兄貴君って、ホント、優しいよね」
「いや、そう言うんじゃなくて、ホント、楽しかったッスから」
「ホント、まいったなぁもぉ……あぁそうだ。別れ間際になっちゃったけど、自己紹介しとくね。私、瀬川真美。兄貴君、憶えて置いてね」
「うっす」
そう言やぁあ、そうだよな。
俺、塚本美樹さん以外、彼女達の名前しか知らないよな。
折角、ファンになってくれたんだから、しっかり憶えなきゃな。
因みにだが……
塚本美樹さんは、逗子商業高校1年、趣味は音楽評論。
瀬川真美さんは、同じく逗子商業高校の1年、趣味は銀細工。
藤代理子さんは、川崎仲野高校1年、趣味はカメラ撮影。
長谷川元香さんは、奈緒さんと同じ高校の蓮田高校1年、趣味はパソコン。
ッてな感じな訳だ。
偶然とは言え、なんとも凄い人達に出会ったもんだな。
コリャアある意味、バンドをやる上でバックアップしてくれる『最強の助っ人』じゃね?
彼女達の期待に応えられる様に、マジでガンバろ!!
「じゃあ、俺、そろそろ行くッスね」
「うん、気を付けてね、兄貴君。あぁそれとライブ決まったら、絶対、連絡してね。これ、私の連絡先ね」
「うっす」
っと、まぁそんな感じで、全員の電番を貰った。
俺も勿論、自分の家の電番を教えたんだが……家が家だけに不安しか残らない。
まぁそんな事を、今更考えても仕方が無いので、取り敢えずは、此処で彼女達と別れた。
そんな俺を、全員が全員、俺が見えなくなるまで手を振り続けてくれていた。
此処まで来たら、感動だな。
勿論、この後、ダッシュで『上星川』に向って行くんつもりなんだが……『彼女達の匂い、俺に移ってないだろうな』
奈緒さん……そう言うのスゲェ敏感だからな。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
これにて、第三十六話『最強の助っ人』は終了なのですが……
またなんか大変な事に成ってきましたね。
まぁこれに関しては、私の悪意でしかないのですが。
彼女達は一体、この後、どの様な行動に出るのかを楽しみにして貰えたら嬉しいです(*'ω'*)
さてさて、そんな感じで次回からは
第三十七話『告白』……っと言う意味深なタイトルなのですが。
一体、倉津君は、なにを告白されるのでしょうか?
その辺は、次回からの講釈。
また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
読み終わったら、ポイントを付けましょう!