第二十六話『奈緒の気持ち』が始まるよぉ~~~(*'ω'*)ノ
026【奈緒の気持ち】
……う~~~ん、まいったなぁ。
こりゃあ、一体どうしたもんだ?
奈緒さんに、明日の件を早速連絡しようと思い。
嶋田さん家からの帰り道。
上大岡の駅に並ぶ公衆電話で彼女の家に電話を掛けてみたんだが、そこで返って来た答えは『奈緒さんは、まだ帰宅していないとの通知』
こんな風に、初期段階から彼女に何も伝えられないまま、完全に出足を挫かれた訳だ。
……っと言うよりもだな。
実際は、そんな事よりも、もっと重要な問題を彼女の母親の口から聞かされた。
なんでも、奈緒さんのお母さんが言うにはな……どうやら奈緒さんは『此処数日、実家には帰っていない』らしいんだよ。
まぁ、奈緒さんから聞いた程度しか、彼女の家庭環境は知らないが。
少なからず、その家庭環境を考慮すれば、この『家に帰っていない』っと言う話は有り得ない話ではない。
なんと言っても以前から、奈緒さんの持つ両親への嫌悪感は、かなりキツイものがあったからな。
『家に居づらい』とか『両親と顔を合わせたくない』とか、そう言う理由なんかもあるんだろう。
そう考えれば、この母親の言葉は非常に信憑性が高い。
いや、恐らくは、この母親が言うよりも、もっと酷い状態になっている可能性だってある。
例えばだな。
彼女は、此処数日どころか、実際は、殆ど家には寄り着いていない……そんな可能性すら秘めてる様な気がしてならない。
この辺は、ある程度の予想していた事とは言え。
流石に、その事実を直接耳にした以上、これは心配で堪らない。
付け加えて、この奈緒さんの精神不安定な状態を悪化させているのは、此処数日の俺の態度。
俺は、そんな彼女から不安を取り除くどころか、無駄なまでに『彼女を心配させてばっかり』だ。
ホントに、俺って奴は……
そんな風に、彼女の実家に電話してから、俺の不安要素は時間が経つ毎にドンドンと増していく。
***
駅前で悩んだ挙句。
俺は、漸く、そんな奈緒さんを探す、ある1つの提案を思い付いた。
それは『心当たりを、虱潰しに当たって行く』なんて言う最も原始的な方法。
非常に情けない話なんだが、俺の河豚味噌しか詰まってない脳味噌では、これが限界だ。
下手に考えるよりも、先に行動した方が良いと言う考えを自で行く俺は、直ぐ様、この安易な思考に逃げてしまう。
―――要は、馬鹿過ぎるんだろう。
けどな。
そうは言っても、他に何も思い付かないなら、今は、これに縋るしかない。
兎に角、早急に行動を開始する事にした。
もぉ奈緒さんの事が心配で、居ても、立っても居られない状態だしな。
***
だが、直ぐ様、俺のやり方には、多々残念な問題がある事に気付いた。
仮に、これを実行したとしても。
彼女を発見するには、あまりにも可能性が薄いと言う事だ。
勿論、それを裏付ける理由は有る。
①彼女の行きそうな場所の情報が、殆ど無い……寧ろ、皆無。
②それに情報源になりうる彼女の交友関係を、正直あまり知らない。
以上のこの2点。
故に、この方法で人探しをするには、かなり致命的な情報不足にもなる。
それどころか、相当、要領良くこなさないと、奈緒さんを見付ける以前の問題として、探す事すらままならない状態。
このままじゃ、全てが徒労に終わる事だって有り得る。
だから、自分の持っている情報を整理しなければならない。
まず俺は、そこから始めた。
第一に、彼女の行きそうな場所を整理してみた。
……だが、これも、やる前から無駄だと言う事が、直ぐに解る。
何故なら、俺が奈緒さんと出かけた記憶が在るのは『楽器屋』と『練習スタジオ』
ほぼこの2点でしか、逢った記憶がない。
後、無理矢理ねじ込めば、奈緒さんの母校『蓮田高校』なんてのも有るが……流石に、この時間に学校に行く馬鹿は居ないだろう。
……っとなるとだ。
先程挙げた、この2点が有力になるんだが。
『楽器屋』については、この時間は、もぉ営業なんてしていない。
どんなに営業時間が長い店であっても、既に21:00には閉店している。
そんな訳で、こちらは物理的に侵入不可能なので、此処に奈緒さんが居る確立は0だ。
なら、もう1つの考えである『練習スタジオ』はどうだろうか?
スタジオなら、まだこの時間も営業しているし、最も彼女と過ごした時間が長い場所。
深夜に何所か行ってるとしたら、可能性としては0では無い。
けど、結論を言えば、コチラもNOだ。
一見すれば、用事が終わって戻って来るなんてパターンも考えれるが。
用事が終わった後に、そんな何時間も同じ場所には居ないだろうし、バンドの練習をしないなら此処に居る理由もない。
なら、この時点で、奈緒さんの行きそうな場所って奴は壊滅する。
故にだ、今度は奈緒さんの知人を当たる方へ、思考変換せらざるを得ない。
……だがなぁ。
此処にも、矢張り問題がない訳じゃない。
勿論、理由は、俺の知りうる奈緒さんを知り合いが多くは存在しないからだ。
敢えて奈緒さんの友人をリスト・アップするとすれば……
①ウチのバンドのメンバー。
②清水咲さん。
③アホの樫田千尋。
④遠藤康弘。
⑤国見のオッサン。
⑥馬鹿居間馬鹿秀。
頑張っても、これが精一杯だ。
しかも、この中でも、ウチのメンバーは使えないのは明白。
例え、誰かに何かを聞いた所で、恐らく、俺が期待する様な回答は返って来ない。
メンバーは、俺よりも奈緒さんとの付き合いが浅いから、当然と言えば当然だろう。
それでも一応は、もしもって事が有るので、保険を掛ける為に全員に電話してみたが……矢張り、敢え無く、此処でバンドのメンバーは全員脱落。
『誰も、彼女の居場所は知らないとの事だった』
なら、次だ。
友人関係にある咲さんと、アホの樫田。
……っと思った矢先。
早くも、この思考が出た時点で、1人が脱落している事に気付く。
言うまでもなく、脱落者は清水咲さんだ。
だってよぉ。
まずにして俺は、彼女の連絡先すら知らない。
これでは正直どうしようもない。
だから彼女の件は、樫田に連絡した時にでも、連絡を頼むのが良策だろう。
これで俺の知ってる彼女の友人は、1人しか使えない事を理解せざるを得なかった。
んな訳でだ。
俺に残された奈緒さんの友人関係の選択肢は、早くも1択しかない訳なんだが……
もう片方のアホの樫田に連絡したところ。
なんとか連絡は付いたものの、本人に取り次いで貰って、質問した結果……
『あぁ、夜に、奈緒が何してるか知らないなぁ』
……っと、予想していた以上のハイペースで、アッサリ脱落。
少し期待していただけに、ガクッと膝から崩れ落ちそうになった。
その上、無理矢理起されたのか、俺が話をしてる途中で、電話を切られる有様。
『前世からの付き合い』云々を言う割には、当てにならない奴だ。
オマエも奈緒さんの友達なんだったら、呑気に眠ってないで、少しは協力しろ!!
矢張り、コイツは何所までも使えねぇ奴だ。
―――そして、俺の愚痴は絶えない。
そんな訳で、残す所は国見のオッサンと、遠藤、馬鹿秀と言った感じなんだが……まず、遠藤はないな。
消去法を使う訳ではないが、多分、康弘は奈緒さんの連絡先すら知らない。
それ以前に、そこまで深い付き合いが有る様には思えない。
故に、さっさと確認だけして電話を切る。
早い話、結果は『知らない』って事だな。
んな訳で、ドンドンと手詰まりな方向に行く訳なんだが……此処で我が悪友『馬鹿』に電話してみる事にした。
コイツは超絶エスパーだから、きっと『誰が、何所で、何をしてるか』ぐらい簡単に解る筈。
事、こう言う事に関しては、必要以上に期待値の高い男だ。
故に、馬鹿みたいに簡単に、奈緒さん発見の糸口が掴めそうな気がして、少しだけ明るい気持ちになる。
そんな訳で、早速馬鹿秀に電話してみると……幸先良く、静流さん(崇秀の母親)が1コールで電話に出てくれた。
……んだが、運が良かったのも此処まで、まだ『崇秀が帰宅していない』旨を静流さんに告げられる。
今回ばかりは、先程と違い『期待が大きかった』だけにダメージがデカイ。
俺が必要じゃない時は、無駄に出て来るくせに……コイツも、意外に使えねぇ男だった。
これでとうとう、俺に残された選択肢は少なくなってきた。
気付けば……
奈緒さんが用事があると言っていた『横浜』へ向かうか。
一応、今もバンドの籍を置いている『国見のオッサン所』に向かう。
……かの2択しか選択肢が無くなってしまっていた。
けど、時間的に、この2つを廻るのは厳しい。
時間と移動距離から考えても、どちらか一箇所に絞らなければならない。
俺は、改札の券売機の前で腕を組んで悩んでいた。
『横浜』か、それとも『オッサン所』か?
まいったなぁ。
マジで、全然わかんねぇ?
このままじゃ時間ばっかり過ぎるし……マジどうっすかな?
悩めば悩む程、時間が無駄に経過する事ぐらいは解っているつもりだが、中々簡単には決めかねている。
本来なら悩まず行動するのだが、先程、嶋田さん家にノープランで行き、思わぬ出来事(椿さん)に遭いパニックに陥った。
……それが頭を過ぎって離れない。
かと言って、これ以上連絡する相手も居ねぇし……
そう思った瞬間、俺はある事に気付いた。
『( ゚д゚)ハッ!!!』
そう言えば、国見のオッサンって、ウチの馬鹿親父の幼馴染とか言ってたよな。
だったら、ひょっとして糞親父の奴、国見のオッサンの連絡先を知ってんじゃねぇか?
これが上手く行けば『オッサンの所』で奈緒さんに逢えるし、ダメでも『横浜』に移動は出来る。
これなら逢えなくても、最低限度、納得出来る範囲は、全部探せるんじゃないか?
冴えてる。
冴えてるぞ俺!!
(↑遠藤に聞けば、オッサンの連絡先が解るという事は、最後の最後まで気付かなかった間抜けな俺)
なので、即座に行動に移す。
荒々しく公衆電話の受話器を取って、実家に連絡してみる。
プルルルルル……
プルルルルル……
どうなる事やら。
最後までお付き合い、ありがとうございますです<(_ _)>
こうやって第二十六話『奈緒の気持ち』が始まった訳なのですが……出足から、倉津君、焦ってますね(笑)
まぁ、こう言うスットコドッコイな所が、彼の持ち味なので、そこは笑ってあげてください。
さてさて、そんな中。
奈緒さんの行方を捜す為に、国見さんの電話番号を聞こうと、実家に電話を掛けた訳なのですが。
彼の思惑通りに事は進むのでしょうか?
いや、寧ろ、そんな事がある筈もなく。
倉津君は、ある衝撃の事実を知らされる事に成ります。
さて、それは一体、何でしょうか?
そこはまた次回の講釈。
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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