最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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472 こんな……こんな物が、この文化祭の終焉かよ!!

公開日時: 2022年5月24日(火) 00:21
更新日時: 2023年1月4日(水) 06:10
文字数:2,031

●前回のおさらい●


 青山さん達との話も終わり。

彼女達の心理を読み切った倉津君は、真上さんに電話を掛けながらも、一路、とある場所に向かった。


そこは『女子トイレ』

そして無情にも、そこの一番奥の扉からは、携帯電話の着信音が聞こえて来た。


慌てて扉を開くと、そこには……

真冬も近い、この11月と言う時期に。

全身をビチャビチャに水で濡らされた真上さんが、完全に血の気の失せた真っ青な唇をしながら、体温だけでも逃げない様に体を丸めてグッタリとしていた。


しかも、無意識の内に体を小刻みに震わせながら……


この様子からして、苛めを受けた後も、長時間、この場に放置されていたのが解る。


そんな酷い状態の彼女は、虚ろな目で、眼の前に立つ俺をジッと見ている。


明らかに、半分以上は意識が飛んでいるのが手に取る様に解らう。



「まっ、真上さん!!真上さん!!しっかり!!」

「倉津……さん……?」

「大丈夫ッスか!!誰が!!誰が、真上さんに、こんな酷い真似をしたんですか?」


聞くまでもない事を聞きながら、俺は慌てて上着を脱いで、真上さんに被せ、まずは最低限度の暖をとらせる。

こんなもん一見しただけで、風邪をひくとか、そう言う可愛いレベルの問題じゃないからな。


下手したら、このまま凍え死んじまうよ!!


……それにしても、あの青山って女。

こんな非道な真似をしておいて、よくもまぁ平然と、あんな馬鹿げた与太話が出来たもんだな。


真上さんに恨みがあるとは言え、此処まで無慈悲な苛めをするか?


限度を超えてやがる。



「……あっ、あの……倉津さん……これは、誰のせいでもないん……ですよ」

「なっ!!」

「私が此処に入った後、モップが倒れて来て……扉を塞いだだけなんです。だから……なんでもありませんよ」


この人……こんな酷い目に合わされたって言うのに、まだ、あの馬鹿な女共を庇うって言うのか?


信じらんねぇ……


こんなのどう見ても、人為的に行なわれた虐めじゃねぇかよ。



「なんで、そんな見え透いた嘘を付くんッスか!!明らかに、こんなもん、人為的な虐めじゃないですか!!」

「全然……違いますよ。私……虐めになんて在ってませんよ」

「じゃあ、この水でビチョビチョになってる服は、どう説明するんッスか!!こんなもん、どうやっても説明が付かないじゃないですか!!」

「それは……ですね。少し靴が……汚れたので……此処で洗おうと思ったら、水が噴出して……来て、ビチョビチョになっただけなんですよ。それでモップが……扉を…………」


全てを言い終わる前に、真上さんの意識が途絶えかける。


俺は慌てて、彼女の頬をペチペチと叩き、意識を戻させようとした。



「ちょ!!真上さん、しっかり!!しっかりして下さい!!寝ちゃダメっすよ!!直ぐに、病院に連れて行ってあげますから!!目を覚まして下さい!!」

「……あっ……ごめんなさい。ふふっ、こんな場所で寝るなんて……変ですよね。大丈夫ですよ……大丈夫。私は、全然平気……ですよ。ヘッチャラ……です」


真上さんは力無く笑いながら。

俺の手の中で、今だに毅然とした態度を振舞おうとする。


さっきまで、意識が途切れかけていた人とは思えない態度だ。


だが……何故、此処までする必要があるんだ?

この人、どうなってるんだ?



「なに言ってんッスか!!兎に角、こんなままじゃ死んじゃいます。直ぐに、病院に行きますよ」

「ダメですよ。私、まだ帰ってから、店の準備があるんです。……だから、病院に行ってる暇なんてないんです。……倉津さん、お願いですから、私を店に連れて行って下さい」

「馬鹿ですか!!こんな状態で店に行ったって、なにも出来無いッスよ!!兎に角、病院に行きますよ」

「ダメ……店……」


先程同様、言葉を出し切る前に、真っ青な顔をしたままグッタリとする。


彼女の体から一気に力が抜け。

俺の両腕には、冷え切った彼女の体温と、彼女の命の重みが圧し掛かってくる。


それに『はぁはぁ』っと、息をするのも苦しそうだ。


酷く衰弱している。



……なにしてんだ俺は……


この緊急時に、こんなどうでも良い問答なんてしてる場合じゃねぇだろうに!!


我を取り戻した俺は、意識が無くなった真上さんを、その場から抱え上げ。

この忌まわしいトイレから、張り紙だけを剥がし取り、一旦、廊下に出る。


そこで、廊下の窓に掛かっているボロイ・カーテンを一気に引き千切り。

彼女の衣服を脱がし、少しでも暖を取る為に、それを彼女に巻き付ける。


そこからは、彼女を背中におんぶしながら、玄さんに連絡を付けて。

暖房をガンガンに効かせた車を、人気の少ない裏門まで持って来て貰う様に手筈を整えて置いた。


後は、このまま真上さんを背負って、玄さんが待つ裏門まで走って行くしかない。


此処からは、時間と、真上さんの体力次第だ。




……けど、本当に、なんで、こんな事になっちまったんだろうな?


全てが『表裏を表す様な文化祭』だったのは否めない話だが、これは流石に無いだろう。


なんでウチの文化祭を一生懸命手伝ってくれたり。

それを楽しみにしていてくれたりしていた真上さんが、こんな酷い目に遭わなきゃいけねぇんだよ?


こんな理不尽な事があって良い訳ねぇだろ!!


『真上さんに、もしもの事があったらアイツ等、全員許さない……』



俺は、そんな言葉を噛み締めながら、玄さんが待つ裏門へと、ひた走って行った。


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>

これにて第一章・第十六話『表裏文化祭(終)』は御仕舞に成りますが、如何だったでしょうか?


色々な事がありながらも、楽しくも、成功を収めて行った文化祭の裏側では。

倉津君の知らない所で、その一番の協力者であった真上さんが、トンデモナイ苛めに合ってました。


これこそが、真の『表裏文化祭』の意味だったんですね。


1つの事象だけを集中して見ていたら、他の部分では、何が起こっているか解らない……って意味ですね。


まぁまぁ取り敢えずは、とんでもなく胸糞の悪い展開のままで、今回は終わって行くのですが。

次回からは、第十七話『辞めさせたい事実』っと言うタイトルで、今回の一件を解決していきたいと思います。


倉津君が、この悪夢の様な一件を、どう捉えるかにご期待ください♪って感じで。

また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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