●前回のおさらい●
ジムさんがカスタムした楽器は個人カスタム故に、他人が弾くと違和感を感じる。
それを踏まえた上で、今度は眞子がエリアスさんのベースでチャレンジしてみたのだが……
「うん?……鞍馬ちゃん。今、そのベースを平然と弾かなかったかい?」
「あぁ、いや、別に平然に弾いてたって訳じゃないですけど。弾き易いベースではありましたね」
「なっ!!先生の製作された他人仕様のカスタム・ベースが弾き易いだって?眞子、それは、本気で言ってるのか?」
「へっ?あぁ、いや、だから、本気って言いますか。あの、私ですね。元々、人の真似が得意なんですよ。だから、あんまり違和感を感じなかったんじゃないですかね?……解んないですけど」
あぁでも。
もし、これが正解なら。
崇秀の普段から言ってる事は、ヤッパリ、正しい事が証明された事になる。
人を感性を己の中に取り込み。
それによって、多種多様な対応が出来る様になるんだから、ジムさんの言ってた理屈的にも合ってるって話だもんね。
けど、誰に言われる事なく、そんな事を自分で思い付くなんて……ヤッパ崇秀は凄いね♪
「鞍馬。……幾ら真似が得意って言っても、ある程度の限界はあるんじゃないの?」
「あぁ、勿論有りますよ。でもですね。さっきも言いましたけど。私、元々人の弾き方の真似バッカリしてベースの弾き方を憶えたもんですから。私の演奏って、実は、人の癖だらけなんですよ。だから多分、今回は、そこが功を奏したって処じゃないですかね?……解んないですけど」
「他人の癖の塊って……信じられない」
いや、そう言われましても……
現実そうなんで……
「しかしまぁ驚いたなぁ。こんな東洋のちっぽけな島国に、2人も、オイラの楽器を使いこなす人間が居るとはなぁ。これは、少々驚愕の事実だ」
「あぁ、いやいや、使いこなせてなんかないですよ。個人的にエリアスさんの演奏が好きだから、真似してただけですって」
「そうかい、そうかい。……あぁ、因みにだが鞍馬ちゃん。ホランドがベースを弾いたら、こんな感じって言うのは出来るかい?」
「ホランドさんがベースですか?……あぁ、じゃあ、例えばですけど。こんな感じでどうですか?」
ホランドさんと言えば、一番最初に思い付くのは『優しい音』だよね。
だったら単純に、バラード系を弾けば楽なんだけど、それじゃあ、あまりにも安易過ぎる。
なんてったって、安易にバラードを選択したら、ホランドさんの強烈な汎用性の高さを表せないからね。
なら、敢えて此処は、真逆のPUNKっぽく弾いてみよっかな。
その方が面白そうだし。
でも、曲は弾き慣れた『Serious stress』
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪--♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪-----♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪--♪……
大体こんな感じかな?
***
……って、曲を弾き終えたんだけど。
なんで、みんな黙ってるの?
そんなに、私の演奏は的を外してましたか?
「そっ……そんな馬鹿な」
「えっ?えっ?なにが馬鹿なんですか?あの、ひょっとして、イメージと違い過ぎて気分を害しちゃいましたか?」
「いや、そうじゃないんだよ、鞍馬ちゃん。ホランドの奴は、イメージ通り過ぎて、本人が気持ち悪く思ってるんじゃないか?」
「えっ?気持ち悪いって……でもでも、ジムさんが、ホランドさん風に弾けって言ったんじゃないですか。酷いですよ」
「そうなんだけどなぁ……」
なんで、そんなに顔を顰めるんですか?
そんな理不尽な話ないですよ。
ホランドさん風に弾けって言うから、必至で弾いたのに、気持ち悪がられるって……それは、あんまりなんじゃないですか?
「こりゃあ。思った以上に、手の付けられない化物になってるね」
「えっ?化物?……あの、私、化物じゃないですよ。そんな言い方って、酷いですよ」
「酷いのはドッチよ。……それ、私のベースのまま弾いてるんだけど」
「あっ……」
あり?
あぁ……そう言えば、なんとな~~~く弾き易かったから、そのまま弾いちゃったね。
それに、曲調をPUNKにしたから、エリアスさんの感性が混じちゃってたのかなぁ?
でも……それはそれとしても、化け物は、あまりにも酷くないですか?
……ってか、奈緒ネェ、なんで、コッチをジィ~~~と見てるの?
「うん……眞子。此処で、話をぶり返す様で悪いんだけど。ヤッパリ、私達と一緒にバンドやろうよ。私は、今ので確信した。眞子は、ウチのバンドに、絶対入るべきだよ」
「えっ?えっ?なんですか急に?そっ、それに、そう言われましても……」
「眞子。私からも正式にお願いしよう。私達と一緒にやって貰えないか」
「えっ?えぇっと……」
「うんうん。一緒にやろうよ。鞍馬のベースと、私のベースで、バンドの音を、もっと深めようよ。絶対、楽しいからさぁ。私達とやろ」
「えぇっと……困りましたね」
これは困ったなぁ。
こうやって誘って貰えるのは、非常に嬉しいんだけど。
私自身の腕前が【奈緒グリ】の演奏レベルに達してないし、他のメンバーの人の意見も聞かないと……
それにですね。
こんな事ぐらいで、重要なバンドのメンバーを決めちゃダメだと思うんですよ。
「困る?……あぁそっか、そっか。眞子は、自分を高く売ろうって寸法だね」
「ちょっと、違いますよ。私、そんな事は考えてないです」
「じゃあ、なにが、そんなに気に入らないのよ」
「気に入らないなんて滅相もない。でも、さっきも言いましたけど。私も自分でバンドを作ってみたいです。奈緒ネェと、崇秀をギャフンって言わせたいですから」
「そっか。ヤッパ、ダメかぁ。じゃあ、眞子、最終確認するけど。それ……本気なんだよね?」
……本気です。
「ごめんなさい。……生意気言ってますけど。私なりに本気です」
「……そっか。じゃあ、もぉなにも言わないし、誘わない」
「待て2人共。【GREED-LUMP】は、元々眞子が結成したものだ。その話自体に問題は無い筈だぞ」
「あぁ……そうかも知れませんね。でも、そうじゃないんです」
「何故だ?」
「いや、仮にですね。作ったのが私だとしても、もぉ【GREED-LUMP】は、今のメンバーだからこそ【GREED-LUMP】なんですよ。だから、今の私に入る隙なんてありません」
「そんな事は無い筈だ。こうやって、みんな、君の参入を熱望してるんだからな」
皆さんが、そこまで言ってくれてるなら、ひょっとしたら、そうなのかも知れませんね。
でも、私は、もぉ出来上がった誰かの力で勝つのは嫌なんです。
それになにより【GREED-LUMP】は目標にすべき存在であって、手を取って貰う存在ではありません。
だから、なんと言われても、私の【GREED-LUMP】の参入はありません。
「気持ちは嬉しいですけど……ダメです。皆さんは、私と真正面から戦って下さい」
「……眞子」
「そうだね。翌々考えたら、私と、鞍馬は、お互いをライバル宣言をした仲。違うバンドで同じステージに立つ事はあっても、共闘なんて有り得ないよね。……此処は1つ。参入を断った事を、後悔させてあげるのが筋ってもんよね」
「あぁ、はい!!でも、後悔はしない様に頑張ります!!だから、私が駆け上がるまでズッと頂点に君臨し続けて下さいね」
「うん。そこで待っててあげるから、全力で駆け上がっておいで」
「あぁ、はい!!宜しくお願いします!!」
エリアスさんは解ってくれた。
お互いを高めあうなら、味方であるより、敵である方が遥かに相手を意識をする。
それは、今の私には、とても重要な事。
だから、エリアスさんの、この心遣いには感謝の念が尽きない。
「まぁ、そう言う訳だから、奈緒。私は『鞍馬争奪戦』は降りた。……いや、企画自体を潰す方向に持って行きたいんだけど……そぉ言うの、どぉ?」
「ふふっ、それ、良いね。眞子には、世間の厳しさを身に沁みさせるのには、今回、良い機会だと思うしね。『眞子を得れる権利』を得た上で、参入を断ってやる」
そうですよ。
それで良いんです。
「少し待て2人共!!そんな事をして、なんの意味がある!!……オマエ達2人が、一番、眞子の参入を望んでいたんじゃないのか?」
あっ……ホランドさん。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>
眞子の汎用性を目の当たりにした奈緒さんが、再び勧誘をしたみたいなのですが。
その眞子の答えは変わらずに「NO」
矢張り、眞子個人として手は、奈緒グリを越える様なバンドを作りたいみたいです。
そしてその「NO」っと言う答えに対して、奈緒さんとエリアスさんは納得したようなのですが。
どうやらホランドさんは納得がいかない様子。
なら、この意見の分裂は何処へ向かって行くのでしょうか?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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