最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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287 不良さん、意外な形での音楽バトル勃発の原因となる

公開日時: 2021年11月20日(土) 00:21
更新日時: 2022年12月17日(土) 16:34
文字数:2,715

●前回のおさらい●


 自分のバンドメンバーを含め、全てのステージ上の人間が生き生きと演奏する姿を見て、凹み気味の倉津君。

そして、そこで更に崇秀さんのステージ復活。


倉津君は、この状況を、どう考えるのか?

「おっしゃ。最高に面白くなってきやがった。会場の温度も上がった事だし、そろそろ、俺も復帰すっかな」

「待ってました!!」

「ヒヒヒ……ご期待に沿えれば良いけどな」


ステージに戻って行く崇秀を見ながら、俺は、再度凹む羽目になった。

奴のステージ復帰を待ち望んだ観客が、有らんばかりの熱気を、奴にぶつけているからだ。


此処に来て、更に会場全体の温度が上がり、熱狂し過ぎた観客の数人が倒れている。


それでも観客は、他人を無視してでも盛り上がり続ける。


本当に、なんなんだろうか?

なんで俺は、一瞬でも、コイツに勝てるなんて幻想を抱いたんだろうか?


奴は、俺が『打倒』を掲げてもいい様な相手じゃなかった。


崇秀は、本物の魔王だ。



「……って、言いてぇ所なんだが。実は、まだ最後の隠し玉が残ってる」

「マジかよ!!」

「オウともよ。……さぁ倉津、一緒にやろうぜ!!」


……出れる訳がねぇだろ。

俺は、先程言った様な事が原因で、ステージインを躊躇せざるを得ない心境に陥っていた。


すると……



「なるほど……出てこないか。こりゃあまた、面白い演出をしやがるな」

「なんだ?どういう事だ?」

「いやな。以前に倉津とは、一度、2人で楽器バトルをした事が有るんだよ。あの馬鹿、それを、此処で再現するつもりで出て来ねぇんだよ」


なっ!!なに言ってやがる!!


んな訳ねぇだろ!!

ステージに上がらない理由を、どうやったら、そんな解釈になんだよ!!


このキチガイ野郎!!



「面白ぇ、実に面白い……だが、普通に、そんな勝負をした所で面白もくねぇ」

「じゃあ、仲居間さん、どうすんだ?」

「倉津には、少しハンデをくれてやるんだよ」

「ハンデ?」

「あぁ、倉津は、まだ楽器を始めて日が浅い。だから、普通に勝負したんじゃ、勝敗は明らかだ。んじゃあ、んなもんを、やっても面白くもねぇだろ。だからよぉ、此処に居るメンバーを好きなだけ選択して、好きな曲を弾け。俺は、ヴォーカルだけを1人選んで、同じ曲で勝負してやる。……これなら面白ぇだろ」


オマエふざけんなよ!!


幾らオマエが、超絶テクニックを持っていても。

此処のメンバーを全員相手にして、勝てる見込みなんて1000分の1もねぇぞ!!


この挑発は、此処に居るみんなを舐めるにも程がある!!



「オイ!!ざけんなよぉ、崇秀!!」


挑発に乗って、俺はステージに入ってしまった。



「来たな……」

「オマエ、ふざけるにも大概にしろよ!!テメェ何様のつもりだよ!!」

「俺様」


なんでだ?

なんで、そんなに余裕が有るんだ?


この状況下にあっても、勝算でもあるのかコイツ?



「舐めんな!!」

「舐めちゃいねぇ。……俺は、事実を言ったまでのこった」

「ふざけんな!!」

「ふざけちゃいねぇ。現に此処に居るメンバー全員を一辺に相手にしても、俺は勝つ自信が有るぜ。……但し、ヴォーカルは1人必要だがな」


コイツ……この期に及んで、マジで全員を敵に廻すつもりか?



「……ちょっと待ってくれるかな、仲居間さん。それは、ちょっと聞き捨てなら無いセリフだね。少し調子に乗り過ぎてるんじゃないかい?」

「そッスか?……だったら、倉津の代わりに、嶋田さんが、俺と遊んでくれます?」

「良いよ。……なら俺は、まず、ベースの奏者として倉津君を指名するよ。それで良いね?」

「勿論、そりゃあ願ってもない」


話が勝手に進み始めた。

どうやら嶋田さんが、俺の喧嘩を代行してくれる流れらしい。



「ほんだら俺も、嶋田さんサイドに付かせて貰おか。崇秀、オマエは敵じゃ」

「あぁ良いぞ、良いぞ。そうやって好きなだけ、思う存分に馴れ合ってくれ」

「あっ、あの……じゃあ僕も……」

「OKだ、アリス。何人でも掛かって来い。……ッで、もぉ他に自殺志願者は居ねぇか?居ねぇなら、これで打ち切んぞ」


此処で奈緒さんが入ってくれれば、いつものウチのメンバーになるんだが……


代行とは言え、これは嶋田さんの喧嘩だ。

指名する権利は嶋田さんにしかなく、俺が横から口出しする事じゃない。



「じゃあ、椿も」

「良いッスよ。その代わり、嶋田さんが負けても泣いちゃダメですよ」

「ぶぅ!!浩ちゃん負けないもん!!」

「そッスか。じゃあ、頑張って」

「は~い」


奈緒さんの代りに、椿さんが参戦を表明。

そこが奈緒さんじゃないのは非常に残念だが、彼女の声も、また絶大な戦力になる。


寧ろ、喜ばしい事だ。



「んじゃま、終了で良いか?」


この声を聞いても、矢張り、奈緒さんは手を上げない。


受付は終了だ。



「OKだ」

「いいや、まだだよ。仲居間さんの指名が、まだ終わってない」

「んあ?あぁ、そんなん誰でも良いッスよ。……因みに、誰かやりたいって人が居たら手を上げてくれ」


誰も手を上げない。


崇秀の無茶な考えに、付いていける人間は居ないんだろう。



「じゃあ、可哀想だから、私が仲居間さんに付きます。……良いですよね?」

「ほぉ、向井さんか。そりゃあ、願っても無い申し出だ」


はっ、はぁ~~~???

なっ!!なんでだ奈緒さん?

なんで俺達じゃなく、崇秀の側に付く?



「ちょ、奈緒さん!!」

「うん?なに?」

「『うん?なに?』じゃないッスよ!!なんで、崇秀の側に付くんッスか?」

「いけない?」

「いけなくはないッスけど、それじゃあ……」

「そぉだね。君と、私は敵同士になっちゃうね」


わかっててやってるのか?



「わかってるなら、尚更、なんでッスか?」

「私はね。仲居間さんに借りを作りたくないの。理由はそれだけ……いけない?」


借りを作りたくないだけで、俺と敵同士になるって言うんですか?


そんな……そんな事されたら、真剣に打ち込めないじゃないッスか。


俺……奈緒さんの負ける姿なんて見たくない。



「それと、もぅ一点。……君が気に入らない」

「俺の、なにが気に入らないんッスか?」

「全部……って言うかね。君さぁ、なに仲居間さん相手に逃げてんのよ?そんな軟弱な君なんて、私は見たくないの。……だから、性根を叩き直す気持ちで、1回、本気で君をぶっ潰す……私の彼氏に雑魚はイラナイの」

「……奈緒さん」


俺の惰弱な精神が見透かされていた様だ。



「はい、終わり。嶋田さんチームと、俺・向井さん組で対決は決定な。じゃねぇと観客が退屈するからな。……それで良いッスか、嶋田さん?」

「良いよ」

「OKッス。……ッで曲は、なんにします?」

「勿論、前回のリベンジ込みで『Not meet the time』」

「ですよね。そう来ますよね。じゃあ、そちらの先攻でどうぞ」

「うん、良いよ、じゃあ始めようか」


俺の心の準備が出来無いまま、嶋田さんは対決を了承する。


これを聞いた対決に参加しない他のメンバーは、ステージの両サイドに散り。

この対決を見守る体勢に入っている。


また俺は……心に蟠りを持ったまま、曲を引く羽目になった。


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


なんかステージ上では、とんでもない事に成ってきましたね。

奈緒さんを除くいつものメンバー+椿さん VS 崇秀&奈緒さんコンビ!!


この戦いの行く末は、一体、どうなるのか?


それは次回の講釈。

また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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