●前回までのあらすじ●
ライブ開始と共に、一人で先にステージに上がり。
アレンジにアレンジを重ねた、速弾きバージョンの演奏を始める倉津君。
これが上手く嵌り、観客は盛り上がってくれたのだが、そこに山中君がステージインしてくる。
さて、どうなる?
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「「「「「来たぁ~~~!!関西野郎の超速ドラム!!相変わらず馬鹿の癖に早ぇぇえぇ~」」」」」
俺の不安は見事なまでに的中した。
山中は予想に反する事無く、アッサリと俺の低音に合ったドラムの叩き方をしてきた。
いやはや、奴の言う通り、ホント経験値の差ってデカイな。
アレンジの上に重ねたアレンジな筈なのに、簡単に付いて来るなんてよ。
ホント、おっかねぇな経験値って奴は……
でもな、この時点では、まだ、ほんの少しだが余裕は有った。
ナンダカンダ言っても山中が、俺に上手く合わせてくれている部分が多岐に渡って見受けられたから、そこまでは厳しくなかった。
だが、そんな事を考えながら、ふとステージの袖を見てみると……今度は、あの温厚な嶋田さんが、俺の方を見て『ニヤッ』っと不敵な笑みを浮かべている。
いや、それどころか、普段、温厚な嶋田さんが、なんか挑発的で邪悪な笑みを浮かべてる。
ハッキリ言ってしまえば、山中の件もある事だし、こりゃあ滅茶苦茶怖いな。
喧嘩とかならビビる事は皆無だが、音楽関係の話となれば、話は別。
嶋田さんの不敵な笑みは、一瞬、背筋に氷水を掛けられたみたいな感覚に陥った。
……これはヤバイ!!
軽い煽りを入れたつもりが、どうにも嶋田さんを本気で煽っちまったらしい。
俺は直感的に危険を感じたが、その瞬間には、嶋田さんが、ゆっくりと立ち上がり、ステージに入場してくる。
そして、ステージに入りや否や。
なにを思ったのか、嶋田さんは俺達に睨みを利かせて、演奏中断を促す。
その表情は、殺人者に匹敵する怖さだ。
俺と山中は無意識の内に嶋田さんの指示に従い、いつの間にか、楽器を演奏する手が完全に止まっていた。
当然、会場はざわめくが、嶋田さんは再び『ニヤッ』っと笑う。
そこに椿さんの声援が聞こえた。
……っと同時に、嶋田さんの顔は元に戻る。
意外と器用な表情をする人だな。
「浩ちゃ~ん!!やるなら、最初から全員やっちゃえ~~~!!」
へっ?椿さん!!なんちゅう事を言うんですか?
折角、落ち着いた嶋田さんを、アナタが煽ってどうするんですか?
「うん。じゃあ、行くよ、椿」
「浩ちゃん、全開でイッちゃえ~~~!!」
「倉津君、山中君行くよ。俺に付いて来れるかい?」
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「「「「「おおおおぉぉおぉぉ~~~ッ!!キタァ~~~!!久しぶりに、死神がメンバー狩りに来たぞ!!」」」」」
その言葉を皮切りに、嶋田さんのギターからは、恐ろしい程の早弾きの音が、歓声と共に会場内に木霊する。
しかも、当然の如く、その音は一切リズムが外れておらず、勿論、音のズレなんて物も存在しない。
どこをどうやったら、あんなに正確なタッピングが出来るんだ?
嶋田さんは一切ギターを見てないどころか、完全に椿さんの方を見ながら演奏してるぞ。
やべぇ!!
嶋田さんに付いて行く処か、俺、こんな早弾きなんて、絶対に出来ねぇぞ!!
さっきのインチキ臭い早弾きだけでも、かなり限界だったのに……
ところで……『死神のメンバー狩り』ってなんだ?
「ほらほら、どうしたんだい、お2人さん?俺が折角、真面目に弾いてあげてるって言うのに、まだ弾かないつもりかい?それともまさか、こんな程度の事も出来無いのに、俺に音楽で喧嘩を売ったんじゃないだろうね?もし、それが事実なら、サッサと俺に狩られちゃいなよ」
「ククッ……言うやないか、言うてくれるやないか嶋田さん。そやけど、あんま俺を舐めて欲しい無いもんやな。俺は、この程度のスピードやったら屁でもないでぇ」
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「「「「「オッシャ、行けぇ~~~!!行け~~~!!関西野郎!!オマエが、逆に死神を食い破れ!!」」」」」
「任さんかい!!この程度やったら、鼻糞穿りながら、片手で演奏出来る位、余裕じゃあぁ!!」
行ったぁ~~~!!
山中の奴、嶋田さんの強烈な挑発に乗って、無茶苦茶早いスティック捌きでドラムを叩き始めた。
しかも、正確なリズム感は、なにも損なわれていない。
って事は、ヤッパ、今までのスピードは俺に合わせてくれてた訳な。
……にしても、山中の奴、相も変わらず、挑発に弱いな。
簡単に、嶋田さんの挑発に乗っちまいやがったよ。
単純過ぎんだろ。
けど、これで俺は、更に自分の立場が追い込まれたって事だよな。
もぉ此処まで来たら、このスピードの早弾きが出来るとか、出来ないとかの問題じゃなくて、絶対にコレに着いて行かなきゃイケナイない状況に成っちまったよ。
どうすんだよ、これ?
まぁつっても、こんな事になっちまったのは、元を正せば俺のせいだし、やらねぇ訳にもイカネェか……
ならこのまま、四の五の考えず行ったれ!!
『ドン』
俺が脳内で、無理矢理構成したメロディーラインを、ベースに乗せて弾こうとした、その瞬間。
思いも寄らない衝撃が、俺の背中に浴びせ掛けられ、簡単に裏返ってしまう。
えっ?なんだこれ?
早い話、今の俺は訳も解らず。
オーディエンスの方に背中を向けて、ドラムの山中を真正面から見てる感じだ。
いや……ホント、なんだこれ?
だが、その解答は、直ぐにオーディエンスから齎された。
「「「「「奈緒様~~~~!!」」」」」
俺の背中を押した犯人は……なっ、奈緒さん?
奈緒さんだと!!
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
はい、アホが余計な事を考えて、墓穴を掘りましたね。
ですので、これから倉津君の事を『Mrアンダーティカ―(墓堀人)』っと呼んでやってください(笑)
っで、そこに乱入していたのは、山中君、嶋田さんと言う順番の後。
最近、倉津君に悪さばっかりしている奈緒さんが、ステージに入ってきました。
はい、これもぉ、100%波乱ですね。
頑張って倉津君(笑)
……って事で、その様子を次回はお伝えします。
なので良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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