●前回までのあらすじ●
島田先生に呼び出しを喰らった、倉津君と山中君。
そこで話された内容は『追試で50点以上取らないと、ライブハウスに警察が突入してくる可能性がある』っと言う物だった。
さて、この試練……どうやって切り抜けるのか?
教室の扉の前に着いたら、俺等2人を無視して、既に1限目の授業が始まっていた。
だが、俺や山中には、授業を呑気に受けてる暇なんぞ、一分たりとも無い。
明日の無茶苦茶難易度の高い追試をクリアーする為に、馬鹿2人組の山中と俺は、必死に成って廊下から、最後の砦である素直に手を振りながら合図を送り、コッチを向かせる努力を始めた。
するとだな。
『真琴君、どうしたの?』
この馬鹿丸出しの合図に気付いてくれた素直が、不思議そうな顔をして口パクでコチラに向かって、そんな事を言ってくれた。
それに対して俺は必死に拝みながら、廊下に出て来る事を促した。
そしたら素直は……『コクッ』っと頷いて、授業中に手を上げてくれた。
「あの……寺田先生、お手洗いに行っても……良いですか?」
「なんだ有野?小便ぐらい休み時間に行っとけ」
「「「「あははっはははは……」」」」
「すっ、すみません」
「あぁ、もぉ良い。ここで漏らされても敵わん。さっさと行って来い」
「……あっ、はい」
寺田の野郎ぉぉおぉ~!!
素直に恥を掻かせた上に、セクハラ紛いの事をするなんざ、オマエ、良い度胸してんじゃねぇか!!
その言葉、後で、絶対に後悔させてやるからな。
オマエ、明日フリチンにして、朝礼台に括り付けの刑に処すからな。
そんな中、素直は顔を真っ赤にして、廊下に出て来てくれた。
ホント悪いな。
余計な恥まで掻かせちまって……
「どっ、どうしたんですか、真琴君?」
「あぁ悪ぃ。先に謝るな、恥かかせてスマンな」
「あぁ、あれ位なら大丈夫ですよ。寺田先生の、あぁ言うのには、女子全員が慣れてますから……それより真琴君、何か有ったんですか?2人共、さっき島田先生に呼び出しされてたみたいでしたけど」
「イヤ、それがやな、アリス。ちょっと、俺と、マコが、大変な事になっとんねん」
「大変な事ですか?一体、どうしたんですか?」
「追試やがな追試」
「追試?……ですか?追試だと、何か問題が有るんですか?」
「大有りや、実はやな……」
山中が、先程の雛鳥と、俺達2人のやり取りを、事細かに説明を始めた。
***
「50点……ですか?それだったら、大丈夫なんじゃないですか?」
「いやまぁ、そりゃあな。俺は、なんとか頑張れば大丈夫やねんけどやな。アリス、よぉ考えよ。そのテスト受けんのマコも一緒やで。……コイツ、凄いアホやねんで。それはもぉ、究極的なぐらい強烈なアホなんやで」
「アホって……そうは言っても、たった50点ですよ。頑張れば取れますよ」
あのよぉ素直。
今、オマエさぁ『たった』って言ったのか?『たった』って……
50点は『たった』って付く位、簡単に取れるもんなのか?
もしそうなんだったら、みんな凄ぇな。
平気で、そんな神の領域を超えた点数が取れちまうんだな。
オマエ等、マジ凄ぇよ。
天才だな天才……
「そらな、アリス。普通に勉強しとる奴やったら、それぐらいは普通に取れる点数やろうけどもや。コイツだけは違うねん。そうやないねん」
「どうして、そんな事を言うんですか?真琴君だって、それぐらい取れますよ」
「オマエ……コイツの点数を見た事が有るか?それを知ってて、そんな事を言うとんのか?」
「そりゃあ、ありませんけど……」
「知らんやろ。ほな、教えたるけどな。数学77点・現国48点・英語49点・古文4点・現社18点・歴史12点・理科8点……どや?こんなんで、全教科50点以上取れるか?」
「えっ?こっ、古文が、よっ、4点。えぇっと……それ、本当の話?」
「あぁ、恐ろしい話やけど。正真正銘、ホンマの話や」
素直は見た事も、聞いた事もない様な点数に、オロオロと完全に戸惑っている。
けどな。
それが俺の隠す所の無い、本当の実力なんだよ。
驚かして悪かったな。
「えっ、えぇっと。……どうしようかな?どうしたら良いかな?」
あぁダメだな。
この分じゃ、流石の素直も、どうやっても教え様が無いんだな。
だったら、このまま困らせるのもなんだし……
「良い良い。無理なら無理で、自分でなんとかすっからよ」
「でも……」
「大丈夫だって。いざとなりゃ、テストでも盗んで点数取るからよ」
「えっ?えっ?でも、そんな事したら……」
「おぉ、そうか、そうか。その手があったか。漫画みたいな手口やけど、マコ、その方法は悪ないぞ」
「あっ、あの……そんな事したらダメだと思う」
「悪いな素直。優等生のオマエにはわかんねぇだろうけど。マジで、劣等生の俺達には後がねぇんだ。だから、今回だけは見逃してくれ。……じゃなきゃ、またバンドに迷惑が掛かるだろ」
「そうですけど……」
優等生の素直には、不正行為が納得出来無いんだろうけどな。
アホで、どうしようもない俺等みたいな劣等性は、こんな不正でもしなきゃ50点なんて点数は、天地がひっくり返っても取れねぇんだよ。
もっとハッキリ言えば、そんな綺麗事を言ってる場合じゃないんだよな。
手段なんか選んでる暇すらない。
「まぁ兎に角、それは最終手段として……一応、勉強やってみっからよ」
「あっ、はい……じゃあ、わかりましたけど、出来れば……」
「ほな。狙い目は、今夜やな」
「だな」
「あの、夜って……勉強は……」
素直には名目上あぁは言ったが。
今回の追試は100%50点以上を取らなきゃイケナイ様な、所謂『絶対に負けられない戦いだ』
故に、この人としてダメな作戦は、ほぼ高確率で実行される事であろう。
そんでその為にも、鍵開けの名人の『サブロー』って元空き巣の組員を、ウチの組から連れて来ないとな。
そいつさえ使えば、今回のミッションは、簡単にコンプリート出来る筈だからな。
まぁそうやって今回は、恐らく、悪事を働く事になるが、これに懲りて、今後は少しづつでも日頃から勉強してみるか。
毎回こんな事をする訳にもイカネェしな。
まっ、そんな訳でだ。
3人で教室に戻って、授業を受ける訳なんだが。
俺は教室に入った瞬間……睡眠する。
結局、学習能力0の様だ。
***
んで気付けば、毎度の事ながら放課後。
なんの進歩も進化もなく、いつも通りのダメな学校生活を送ってしまう。
しかも、そのまま、いつもの調子で山中と素直に声を掛け、一緒に横浜のスタジオに向う訳なんだが……今日は、いつもとは、ちょっと勝手が違う。
普段は、いつもニコニコしてる素直が、今日に限っては、やけに不服そうな顔をして、俺等の後ろから付いて来ているんだよな。
普段の素直は、絶対に、こう言った表情を見せないんだが、多分、勉強をせずに不正を働こうとしている俺達2人が気に入らないんだろう。
故に、此処は『触らぬ神に祟りなし』
敢えて、何も言葉を交わさずに、そのままスタジオに直行する事にした。
練習が始まったら、素直も不機嫌なままではいられないだろうしな。
***
ところがだ。
そんな期待をしていたにも拘らず、いつもの練習スタジオに到着してみたらだ、今日に限って、スタジオが予約で満員。
予約を入れてなかった俺達は、当然、今日がライブ前日なのにも拘らず、最後の練習が不可能になる。
仕方が無いので、近くのMACで、奈緒さんと、嶋田さんの到着を待つ事にしたんだが、素直の不機嫌な様子は変わらないままに成ってしまった。
居心地悪ぃ……
***
そして、少々険悪な雰囲気の中、商品を持って、二階席の飲食スペースに着席したんだが。
席に座って数分した位に、業を煮やした素直が口を開く。
「あの、真琴君、山中君。……さっきから喋ってばっかりいるけど、勉強しなくて良いんですか?それに僕が見ていた範囲だと、今日、学校でも、全く勉強していなかった様な気がするんですけど……」
2人の口と行動が伴っていなかったのが不服だったんだろう。
此処に来て、彼女の不満が爆発させてしまった様だ。
普段、素直は、殆ど怒らないから、妙に迫力があるな。
「なっ、何を言うとるねんアリス。俺は、ちゃんと授業中にテスト範囲を消化したちゅう~ねん。もう万全やっちゅうねん」
「ホントですか?じゃあ山中君、これ、解いてみて下さい」
「どっ、どれやな?」
突然、素直に問題を渡されて、最初は焦っていた様だが。
山中の奴、悩みながらも、何とか解答を導き出してやがるな。
オイ……マジかよ。
オマエ、本当に勉強してたのか?
「これでどないやな、アリス?」
「……全然、合ってません。公式からして、なに1つ合ってません」
「なんやて?あれ?おかしいなぁ。俺、なにを間違うたんやろ?それともなにかの勘違いやろか?」
あぁ……やっぱりな。
簡単にボロを出しやがった。
「……ヤッパリ、なにもやってなかったんですね」
「イヤイヤ、ちゃうねんって。俺、マジでやっとったって。偶々、問題の入り方を間違うただけやがな」
「間違いって……テストだったら、それで終わちゃうんですよ」
「そやかて。……人には、誰しも間違い言うもんがやな」
「それならそれで、もぉ良いです。好きにして下さい」
「いや……」
うわぁ~~、素直の眼が怖ぇ。
山中の奴が、完全に威圧されてんじゃねぇかよ。
しかも、素直、次の獲物を見つけた様に、俺の方をジッと見てるな。
あぁ~~~、もうダメだ。
こりゃあ完全に、次は俺が犠牲になる番だな。
そんな折……
「ねぇねぇクラ。あれ、どういう事なの?今スタジオに行ったら、予約で使えなかったんだけど」
「あっ!!なっ、奈緒さん」
「うん?」
ヤッタァ!!
素直に怒られる一歩手前で、タイミング良く奈緒さんが来てくれた。
その分、タイミングが悪いと思う素直は、更に機嫌が悪くなる。
んで、奈緒さんは、そんな素直の空気を読んじゃったりするんだよな。
結局、最悪な展開だよ。
これは、マジで終わったな。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
はい、アホ2人が考え付いた方法は『テストを盗む』っと言う、なんとも古典的な方法だったみたいですね。
ホント、アホですね(笑)
でも、そんな中、奈緒さんが登場しちゃったので、これはもぉ絶対に怒られますね。
まぁまぁ、そこは定番なのですが。
さてさて、どんな怒られ方をするのかが見物です。
その辺を次回は書いていきたいと思いますので。
また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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