最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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150 不良さん 最悪の事態だけは避けようとする

公開日時: 2021年7月6日(火) 00:21
更新日時: 2022年11月26日(土) 22:11
文字数:3,865

●前回までのあらすじ●


 島田先生に呼び出しを喰らった、倉津君と山中君。

そこで話された内容は『追試で50点以上取らないと、ライブハウスに警察が突入してくる可能性がある』っと言う物だった。


さて、この試練……どうやって切り抜けるのか?

 教室の扉の前に着いたら、俺等2人を無視して、既に1限目の授業が始まっていた。

だが、俺や山中には、授業を呑気に受けてる暇なんぞ、一分たりとも無い。

明日の無茶苦茶難易度の高い追試をクリアーする為に、馬鹿2人組の山中と俺は、必死に成って廊下から、最後の砦である素直に手を振りながら合図を送り、コッチを向かせる努力を始めた。


するとだな。



『真琴君、どうしたの?』


この馬鹿丸出しの合図に気付いてくれた素直が、不思議そうな顔をして口パクでコチラに向かって、そんな事を言ってくれた。

それに対して俺は必死に拝みながら、廊下に出て来る事を促した。


そしたら素直は……『コクッ』っと頷いて、授業中に手を上げてくれた。



「あの……寺田先生、お手洗いに行っても……良いですか?」

「なんだ有野?小便ぐらい休み時間に行っとけ」

「「「「あははっはははは……」」」」

「すっ、すみません」

「あぁ、もぉ良い。ここで漏らされても敵わん。さっさと行って来い」

「……あっ、はい」


寺田の野郎ぉぉおぉ~!!

素直に恥を掻かせた上に、セクハラ紛いの事をするなんざ、オマエ、良い度胸してんじゃねぇか!!


その言葉、後で、絶対に後悔させてやるからな。

オマエ、明日フリチンにして、朝礼台に括り付けの刑に処すからな。


そんな中、素直は顔を真っ赤にして、廊下に出て来てくれた。


ホント悪いな。

余計な恥まで掻かせちまって……



「どっ、どうしたんですか、真琴君?」

「あぁ悪ぃ。先に謝るな、恥かかせてスマンな」

「あぁ、あれ位なら大丈夫ですよ。寺田先生の、あぁ言うのには、女子全員が慣れてますから……それより真琴君、何か有ったんですか?2人共、さっき島田先生に呼び出しされてたみたいでしたけど」

「イヤ、それがやな、アリス。ちょっと、俺と、マコが、大変な事になっとんねん」

「大変な事ですか?一体、どうしたんですか?」

「追試やがな追試」

「追試?……ですか?追試だと、何か問題が有るんですか?」

「大有りや、実はやな……」


山中が、先程の雛鳥と、俺達2人のやり取りを、事細かに説明を始めた。


***


「50点……ですか?それだったら、大丈夫なんじゃないですか?」

「いやまぁ、そりゃあな。俺は、なんとか頑張れば大丈夫やねんけどやな。アリス、よぉ考えよ。そのテスト受けんのマコも一緒やで。……コイツ、凄いアホやねんで。それはもぉ、究極的なぐらい強烈なアホなんやで」

「アホって……そうは言っても、たった50点ですよ。頑張れば取れますよ」


あのよぉ素直。

今、オマエさぁ『たった』って言ったのか?『たった』って……


50点は『たった』って付く位、簡単に取れるもんなのか?


もしそうなんだったら、みんな凄ぇな。

平気で、そんな神の領域を超えた点数が取れちまうんだな。


オマエ等、マジ凄ぇよ。


天才だな天才……



「そらな、アリス。普通に勉強しとる奴やったら、それぐらいは普通に取れる点数やろうけどもや。コイツだけは違うねん。そうやないねん」

「どうして、そんな事を言うんですか?真琴君だって、それぐらい取れますよ」

「オマエ……コイツの点数を見た事が有るか?それを知ってて、そんな事を言うとんのか?」

「そりゃあ、ありませんけど……」

「知らんやろ。ほな、教えたるけどな。数学77点・現国48点・英語49点・古文4点・現社18点・歴史12点・理科8点……どや?こんなんで、全教科50点以上取れるか?」

「えっ?こっ、古文が、よっ、4点。えぇっと……それ、本当の話?」

「あぁ、恐ろしい話やけど。正真正銘、ホンマの話や」


素直は見た事も、聞いた事もない様な点数に、オロオロと完全に戸惑っている。


けどな。

それが俺の隠す所の無い、本当の実力なんだよ。


驚かして悪かったな。



「えっ、えぇっと。……どうしようかな?どうしたら良いかな?」


あぁダメだな。

この分じゃ、流石の素直も、どうやっても教え様が無いんだな。


だったら、このまま困らせるのもなんだし……



「良い良い。無理なら無理で、自分でなんとかすっからよ」

「でも……」

「大丈夫だって。いざとなりゃ、テストでも盗んで点数取るからよ」

「えっ?えっ?でも、そんな事したら……」

「おぉ、そうか、そうか。その手があったか。漫画みたいな手口やけど、マコ、その方法は悪ないぞ」

「あっ、あの……そんな事したらダメだと思う」

「悪いな素直。優等生のオマエにはわかんねぇだろうけど。マジで、劣等生の俺達には後がねぇんだ。だから、今回だけは見逃してくれ。……じゃなきゃ、またバンドに迷惑が掛かるだろ」

「そうですけど……」


優等生の素直には、不正行為が納得出来無いんだろうけどな。

アホで、どうしようもない俺等みたいな劣等性は、こんな不正でもしなきゃ50点なんて点数は、天地がひっくり返っても取れねぇんだよ。

もっとハッキリ言えば、そんな綺麗事を言ってる場合じゃないんだよな。


手段なんか選んでる暇すらない。



「まぁ兎に角、それは最終手段として……一応、勉強やってみっからよ」

「あっ、はい……じゃあ、わかりましたけど、出来れば……」

「ほな。狙い目は、今夜やな」

「だな」

「あの、夜って……勉強は……」


素直には名目上あぁは言ったが。

今回の追試は100%50点以上を取らなきゃイケナイ様な、所謂『絶対に負けられない戦いだ』


故に、この人としてダメな作戦は、ほぼ高確率で実行される事であろう。

そんでその為にも、鍵開けの名人の『サブロー』って元空き巣の組員を、ウチの組から連れて来ないとな。

そいつさえ使えば、今回のミッションは、簡単にコンプリート出来る筈だからな。


まぁそうやって今回は、恐らく、悪事を働く事になるが、これに懲りて、今後は少しづつでも日頃から勉強してみるか。


毎回こんな事をする訳にもイカネェしな。


まっ、そんな訳でだ。

3人で教室に戻って、授業を受ける訳なんだが。


俺は教室に入った瞬間……睡眠する。


結局、学習能力0の様だ。


***


 んで気付けば、毎度の事ながら放課後。

なんの進歩も進化もなく、いつも通りのダメな学校生活を送ってしまう。


しかも、そのまま、いつもの調子で山中と素直に声を掛け、一緒に横浜のスタジオに向う訳なんだが……今日は、いつもとは、ちょっと勝手が違う。

普段は、いつもニコニコしてる素直が、今日に限っては、やけに不服そうな顔をして、俺等の後ろから付いて来ているんだよな。

普段の素直は、絶対に、こう言った表情を見せないんだが、多分、勉強をせずに不正を働こうとしている俺達2人が気に入らないんだろう。


故に、此処は『触らぬ神に祟りなし』

敢えて、何も言葉を交わさずに、そのままスタジオに直行する事にした。


練習が始まったら、素直も不機嫌なままではいられないだろうしな。


***


 ところがだ。

そんな期待をしていたにも拘らず、いつもの練習スタジオに到着してみたらだ、今日に限って、スタジオが予約で満員。

予約を入れてなかった俺達は、当然、今日がライブ前日なのにも拘らず、最後の練習が不可能になる。


仕方が無いので、近くのMACで、奈緒さんと、嶋田さんの到着を待つ事にしたんだが、素直の不機嫌な様子は変わらないままに成ってしまった。


居心地悪ぃ……


***


 そして、少々険悪な雰囲気の中、商品を持って、二階席の飲食スペースに着席したんだが。

席に座って数分した位に、業を煮やした素直が口を開く。



「あの、真琴君、山中君。……さっきから喋ってばっかりいるけど、勉強しなくて良いんですか?それに僕が見ていた範囲だと、今日、学校でも、全く勉強していなかった様な気がするんですけど……」


2人の口と行動が伴っていなかったのが不服だったんだろう。

此処に来て、彼女の不満が爆発させてしまった様だ。


普段、素直は、殆ど怒らないから、妙に迫力があるな。



「なっ、何を言うとるねんアリス。俺は、ちゃんと授業中にテスト範囲を消化したちゅう~ねん。もう万全やっちゅうねん」

「ホントですか?じゃあ山中君、これ、解いてみて下さい」

「どっ、どれやな?」


突然、素直に問題を渡されて、最初は焦っていた様だが。

山中の奴、悩みながらも、何とか解答を導き出してやがるな。


オイ……マジかよ。

オマエ、本当に勉強してたのか?



「これでどないやな、アリス?」

「……全然、合ってません。公式からして、なに1つ合ってません」

「なんやて?あれ?おかしいなぁ。俺、なにを間違うたんやろ?それともなにかの勘違いやろか?」


あぁ……やっぱりな。


簡単にボロを出しやがった。



「……ヤッパリ、なにもやってなかったんですね」

「イヤイヤ、ちゃうねんって。俺、マジでやっとったって。偶々、問題の入り方を間違うただけやがな」

「間違いって……テストだったら、それで終わちゃうんですよ」

「そやかて。……人には、誰しも間違い言うもんがやな」

「それならそれで、もぉ良いです。好きにして下さい」

「いや……」


うわぁ~~、素直の眼が怖ぇ。

山中の奴が、完全に威圧されてんじゃねぇかよ。


しかも、素直、次の獲物を見つけた様に、俺の方をジッと見てるな。


あぁ~~~、もうダメだ。

こりゃあ完全に、次は俺が犠牲になる番だな。


そんな折……



「ねぇねぇクラ。あれ、どういう事なの?今スタジオに行ったら、予約で使えなかったんだけど」

「あっ!!なっ、奈緒さん」

「うん?」


ヤッタァ!!

素直に怒られる一歩手前で、タイミング良く奈緒さんが来てくれた。


その分、タイミングが悪いと思う素直は、更に機嫌が悪くなる。

んで、奈緒さんは、そんな素直の空気を読んじゃったりするんだよな。


結局、最悪な展開だよ。


これは、マジで終わったな。


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


はい、アホ2人が考え付いた方法は『テストを盗む』っと言う、なんとも古典的な方法だったみたいですね。


ホント、アホですね(笑)


でも、そんな中、奈緒さんが登場しちゃったので、これはもぉ絶対に怒られますね。

まぁまぁ、そこは定番なのですが。

さてさて、どんな怒られ方をするのかが見物です。


その辺を次回は書いていきたいと思いますので。

また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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