●前回のおさらい●
ある程度は、今の状態を認めて貰えたものの。
現状のままでは『別れなきゃいけない』事も考慮している奈緒さん。
その奈緒さんの「別れる」っと言う言葉に、倉津君は過剰反応してしまう。
「クラ、落ち着いて」
「嫌だ、嫌だ嫌だ!!そんなのない!!嫌だぁ!!」
「落ち着きなさい、倉津真琴!!」
「!!」
奈緒さんは、業を煮やしたのか怒鳴ってきた。
けど、落ち着けって言われても、そう簡単に落ち着ける訳がない。
奈緒さんと別れると言う事は、俺にとっては世界の終末に等しい出来事。
こんな話を彼女の口からされたのでは、目の前が真っ白に成ばかりだ。
これじゃあ、冷静に成ろうとしても、冷静に成れる筈がない。
「良いクラ?『戻る』『戻らない』は以前の問題としても、いづれこの問題は、どういう形であれ解決はする。その時に、少しでも焦らないで済む様に『心の準備をしなさい』って言ってるの」
「そんなの、奈緒さんは当事者じゃないから、そんな事が言えるんだよ。こんな姿に成ってしまった俺の気持ちなんて、なんにも解ってないじゃないか」
「じゃあ、君は、もし、私が男になったら受け入れるって言うの?」
「当たり前だ!!姿形なんて問題じゃない。奈緒さんが奈緒さんであるなら、それで問題なしだ」
なに言ってんだよ、奈緒さん!!
俺は、そんな事ぐらいじゃ揺るが無いぞ!!
「君は馬鹿なの?じゃあ君は、男になった私のチンコを握りながら、一生、私のケツに精液を注ぎ続けるつもりなの?冗談じゃないわよ!!私は、そんなの断固お断り!!君となんか別れて、男として生きる事を望むわ」
「なんだよ、それ?それじゃあまるで、俺に男に抱かれろって言ってるのと同じじゃないかよ!!」
「そうだよ。私は、そうハッキリ言ってるの。解らなかったの?」
「ふざけるな!!そんなの見捨ててるのと同じじゃないかよ!!」
「ふざけてなんかない!!……私だって、そんなの嫌に決まってるじゃない。なんで?なんで解ってくれないのよ?」
「えっ?」
「私だって……嫌に決まってるじゃない。でも、もしクラが女の子のままだったら、どうにもならない事だって……一杯あるじゃない。だからせめて、女の子として生活出来る様にしてあげないと……クラが壊れちゃうでしょ。私は、そっちの方が嫌だよ。なら、女友達でも、クラと一緒に居れる方が幾らかマッシだって……そう思ったんだもん。それぐらい、わかれ朴念仁!!」
奈緒さんは泣きながら、必至に、自分の意思を、俺に伝えてきた。
それにまた……奈緒さんは、自分を悪人に仕立ててでも、俺の先の事まで考えていてくれていた。
それなのに俺は、自分だけが1人被害者だと思い込み、彼女の心的な状態を全く考慮していなかった。
その上、そんな優しい彼女の言葉に対して『見捨ててる』なんて酷い言葉まで投げ掛けてしまった。
これじゃあ、人の事を何も見てないのは、俺の方じゃねぇかよ……
「……ごっ、ごめん、奈緒さん。また俺、自分だけが被害者に成ったつもりで、他の事が考えられなくなっていた。……なんで俺、いつも、こんなんなんでしょうね」
「うぅん。クラが、そういう気持ちになるのも、全部、解ってたんだけどね。私が、そう言わなきゃ、クラが現状に耐え切れなくなって壊れちゃうかなって……私、クラとは、どういう形であれ一生付き合って行きたいもん。離れたくないもん」
「奈緒さん。それ、本気で言ってるんですか?」
「うん、本気。でも、今後の事を考えるなら、お互い、色んな準備は必要だと思う。それに付き合い方も考えなきゃイケナイ。……クラには、どんな事があっても幸せになって欲しいからね。此処だけは解ってね」
「奈緒さん……」
結局、この人は、自分を差し置いてでも、俺を優先的にモノを考えてくれる。
それはまるで、自分の人生なんてお構いなしの様にだ。
なのに俺は、こんな小さな事に拘ってゴチャゴチャ文句だけを言ってるだけなんて、一体、今まで、奈緒さんのなにを見て来たんだろうか?
男として情けないにも程があるな。
「あぁ、でも、私も、ちょっと早急過ぎたよね。嫌な事まで言って、ごめん」
「いやいや、そうじゃなくて、俺がわからず屋なだけッス」
「知ってる。……だからね、お互い喧嘩せずに、納得出来る事を、1つ1つゆっくりと解決して行こ。事がどうあれ、ヤッパリ、クラと喧嘩するのは嫌だよ」
「……そうッスよね。ホント、嫌なもんッスよね」
うん、本当にそうだよな。
今はまだ直ぐには納得出来無い事かも知れないけど、いづれ納得出来る様になる事もあるかも知れない。
だから、今は、ゆっくりで良いんだよな。
ゆっくりで……
「あぁっと、イケナイ。もぉこんな時間だよ。遅刻しちゃう」
「あぁ、奈緒さん。俺の事は、取り敢えず、放って置いて貰って良いんで、仕事に行って下さい」
「でも……」
「心配ないッスよ。翌々考えたら、千尋や、素直。それにステラが来ても、別段問題なんてないッスよ。アイツ等の扱いなら慣れてますしね」
そうだよ。
こうなってしまった以上、今更ビクビクしたって始らねぇ。
それに、今までだって色々困った状況を乗り越えて来たんだから、今回もなんとでもなるさ。
それになにより、俺には奈緒さんが居てくれる。
そんな奈緒さんが一緒にさえ居てくれる事さえ確定してるなら、怖いものなんて、なにもねぇよ。
「本当に大丈夫なの?」
「はい。もぉ絶対的に大丈夫ッス。あぁ勿論、こんな形ッスから、偽名は使いますけどね」
「偽名?……因みにどういうの?仕事に行く前に、そこだけ教えて」
「倉津眞子。俺の親戚って設定にしておきます」
「解り易ッ!!」
「でしょ。……ってか、奈緒さん。急がないと、本当に遅刻しちゃいますよ」
「あっ、うん。じゃあ、一旦、仕事に行って来るけど。仕事が終わったら、直ぐに帰って来るから待っててね」
「ウッス。奈緒さんの言い付けを守って、大人しく待ってます」
そう言い残して奈緒さんは、元気良く仕事に向って行った。
彼女を見送ると、俺は1人になった事に不安を抱えた。
でも、奈緒さんが言ってくれた言葉に大きな希望を持てたので、今は前だけを見る事にする。
取り敢えず、一歩一歩でも前進だ。
……にしても、これで崇秀のせいじゃなかったら、どうしようかな?
服は、もぉしょうがないとしてもだな。
男に抱かれるのとか、そういうのだけは、なにがあっても絶対に勘弁願いたいよな。
一瞬、そのシーンが脳裏を過ぎり。
俺は背中に『ゾクッ』っとするものを感じながら、当面の問題である『女物の服』と睨めっこを始めた。
ヤッパ、これも、そう簡単じゃないな。
寧ろ……無理だな。
イキナリにしては、この女ものの服はハードル高すぎるだろ。
お願いだから、誰か助けちくり!!
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
これにて第一章・第二十一話【Trance・Chenge-Dream】はお仕舞になるのですが、如何だったでしょうか?(笑)
まぁ、どうしても『TS』っと言うリアリティの欠片の無いファンタジーなお話なので、完璧にリアリティーを持って書きあげる事は出来なかったとは思うのですが。
『TSした本人すら即座に自身の姿を受け入れられない事』や『相手側が疑った掛かるシーン』等を、倉津君や奈緒さんの性格を加味した上で、そこそこは面白く書けたと思いますです♪
そして、それを踏まえた上で『奈緒さんの愛情の深さ』も表現出来たものだと自認しております(笑)
(まぁ、この辺は、私の思い込みかもしれませんがね)
さてさて、そんな中。
今度は倉津君が、そんな愛情深い奈緒さんの要望に応える番。
『女性物の服を着る』っと言う、不良で硬派に生きて来た倉津君にとって耐え難い様な試練を乗り越えられる事が出来るのか!!
そこは次回から始まる、第二十二話【体に宿る2つの心】っでお話していきたいと思いますので。
ご興味がありましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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