●前回のおさらい●
奈緒さんを探して、横浜を探し回る倉津君。
だが、色々な所に入ってみるものの、奈緒さんは見つからない。
そして最後に『思い出の場所』と『待ってる』をヒントに思い付いた場所とは!!
最終的に俺が向った先……
それは、夏の海水浴に行く際に、待ち合わせ場所で使った『相鉄の駅周辺』
奈緒さんが口にした『思い出のある場所』で『待ってる』が、唯一同時に成立する唯一の場所だ。
因みにだが。
『思い出のある場所』=初の待ち合わせ場所。
『待ってる』=奈緒さんを待たせた事がある。
って、単純な解釈の元、この解答を導き出したんだがな。
今考えてみると、意外と、この2点が重なる条件って、此処しかないんだよな。
勿論、これが正解か、どうかまでは、今のところ不明だがな。
けど……もぅこれが本当に、最後の希望だから、今は、これに縋るしかねぇんだよな。
さてさて、奈緒さん居てくれるのかなぁ?
居たら居たで、大問題だけどな。
***
……っと、そんな風に思いながらも、駅周辺を探してみたものの、一向に奈緒さんを見付られる気配が無い。
けどな、車で駅周辺を廻っていて、一点だけ、どうしても気になる場所が有るんだよな。
なんなんだろうな、あれ?
こんな時間にも関わらず、あんな異常な盛り上がりを発している不自然極まりない人だかりは?
それに、偶に、微かに聞こえて来る聞き覚えの有るダミ声。
ってか、あの人……まさかな……
俺は、そんな不安な気持ちを抑えながらも、慌てて車を路上に停め。
その人だかりに向って歩いていった。
「♪~~~~~」
「奈緒ちゃ~~~~~ん」
「「「「「奈緒ちゃ~~~ん!!奈緒ちゃ~~~~ん!!」」」」」
やっぱりだ。
間違いなく奈緒さんの声だ。
それに……『奈緒さんある所に鮫島有り』と言われる程の熱狂的信者『鮫島良一with親衛隊』のダミ声も耳に入って来た。
これは、確証に至る、絶対的な証拠だ。
なら後は、奈緒さんの姿を確認すれば、ミッション・コンプリートだ。
……にしても奈緒さん。
有名人のアナタが、こんな人の多い所で路上ゲリラ・ライブをするなんて、あまりにも無理・無茶・無謀が過ぎるんじゃないッスか?
ちょっとはね、俺の言う事に耳を傾けて、自分自身を自覚しないと、ホントに、いつか豪い目に遭いますよ。
そんな無謀な事が大好きな悪戯なティンカーベルを捕獲すべく。
『どれだけいるんだよ、これ?』って位の人を掻き分けて、漸く、最前列まで、どうにかこうにか辿り着く事が出来た。
そこには案の定、予想に反する事も無く奈緒さんがM-80を持って演奏し、地べたに座りながら歌を唄っていた。
……のは良いんだけどな。
彼女の前に置かれたGUILDのハードケースの中には、溢れんばかりの札や、小銭が『パンパン』になる位、満タンに入ってるんだよな。
しかも、その札の数って言うのも、1000円札が多いのは否めないんだが、5000円や、10000円札まで。
更には、500円札なんて懐かしい物までチラホラ見えている。
一体、総額、幾ら入ってんだ、あれ?
それに、これ……どうするつもりなんだよ、この人?
まぁ、こんな所で1人。
答えのない思考にまどろんでいても仕方がないから、唄も終わった所だし、取り敢えずは声掛けよ。
「奈緒。こんな所でなにやってるんだ?」
そう優しく言うと、奈緒さんは『ほぇ?』って言う様な表情で顔を上げた。
……っと、同時に俺は、後ろの観客達には見えない様に、指で自分の姿を指し示す。
こうすれば、きっと察しの良い奈緒さんなら『クラ』とは言わない筈だからな。
その為だけに、社会人の真似をしてスーツを着てきたんだからな。
「マネージャー?……って、遅い!!」
「あぁっと、すまないな。少し車が渋滞に巻き込まれて、身動きが取れなかったんだ。……それにしても、これはなんなんだ?なんの真似だ?」
「マネージャーを待ってる間の暇潰し」
「コラコラ、会社に内緒で、勝手な真似をしちゃダメだろ」
「だって、マネージャーが、こんな所に、タレントを、いつまでも放ったらかしにしてるから悪いんじゃない」
「確かにそうだが。これは些かやりすぎだ。奈緒、下手したら罰金になるんだから、気を付けないとダメだぞ」
「ちぇ。楽しくやってたのに、怒られちゃったよ」
口を尖がらせて、膨らんで拗ねた。
それにしても、俺が話を始めてからって言うもの、結構、周りが静まり返ってるな。
普通、こう言う場合は、もっとザワザワするもんなんだがな。
まぁ、声が通る分、幾分話し易いから、問題はないんだがよぉ。
これって……観客にビビられてる?
(↑心配しなくても、僕は、まだ『筋者』じゃないよ)
「はぁ~~~、奈緒。そんな風に拗ねてないで、取り敢えず、行くよ」
「ちょっとタンマ、ちょっとタンマ。ねぇねぇマネージャー。私、もぅ一曲唄いたい。不完全燃焼だから、唄って良い?」
「ダメだよ。今ですら危うい状態なのに。こんな事を更に続けたら、その内、ホントに警察が来るよ」
「良いじゃない、別に」
「いや、よくないからね」
「……ってかさぁ、マネージャー。折角、みんな、こんなに集まってくれたんだからさ。これで急に終わりはないんじゃない?」
「しかしだな」
「ファンサービスは大切だよ。ファンサービスわね。……それにさ、警察の始末書ぐらい、何枚でも、ちゃ~~んと自分で書くからさ。……お願い!!ねっ、あと一曲だけ弾かせてよ。ねっ、ねっ、良いでしょう?」
ホント、この人だけは……
こう言う人を驚かせる様な、サプライズ的なゲリラ・ライブをするのが好きだよな。
既に有名人の彼女からしたら、なんの得にもならない様なサービスなのに、なんで、こんなに喜んでするんだろうな?
ホントに謎だ。
「はぁ~……わかったよ。但し、絶対に、あと一曲だけだよ」
「もちもち♪」
さっきまでの不機嫌は、どこか彼方に一気に吹き飛んで、一瞬にして機嫌が良くなる。
そして奈緒さんは、俺の認可が下りたので、ギターを構えたまま、地べたから立ち上がる。
「みんなぁ。マネージャーからのお許しが出たよぉ。んじゃあ、もぅ一曲だけ、最後に唄ってみよっかぁ♪」
「「「「うぉ!!マジかよ!!まだ唄ってくれるのか、奈緒ちゃん、マジで最高だよアンタ!!」」」」
「にひひ……どもどもね」
っと、ご機嫌に唄い始める奈緒さん。
そして、それと同時に俺は鮫島を引っ張って、少し離れた場所に行った。
曲が終わったら、この事態を収拾しなきゃいけねぇしな(;´д`)トホホ
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
待ちくたびれた奈緒さんの……遊び(笑)
いやホント、奈緒さんは、こう言うゲリラライブが好きですよね(笑)
いやまぁ一見すれば、やることなす事、滅茶苦茶なんですが。
ゲリラライブって、その場でしか感じられない独特の臨場感がありますし。
観客との距離の近さから、本当の意味での熱気を感じる事が出来るので……これをやってみたいシンガーは多いと思いますよ。
(まぁ、常識的に考えれば危険なので、絶対にやらないでしょうけどね(笑))
さてさて、そんな中。
この事態を収拾すべく、鮫島さんを引っ張って行って、なにやら話をするようですが。
倉津君は、一体、如何収拾を付けるつもりなんでしょうね?
それは次回の講釈。
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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