●前回のおさらい●
最終日のライブの前に肩慣らしを始めた眞子と崇秀だったが。
その中でも崇秀は、細かい演奏の仕方を眞子に教え込んで来た!!
矢張り、崇秀の演奏は、何処まで行っても普通ではなかった(笑)
……意識は、全く飛んでない。
寧ろ、この状態をもっと楽しむ為には、意識を飛ばすなんて勿体無い真似を出来る筈がない。
この時間を楽しむ為には、もっともっと演奏に集中しないと意味がないからね。
でも、こうやって考えると『真っ白になって演奏する』のって……凄く我儘な演奏の仕方だったんだね。
あれって、今まで自分より上手い人が一緒に演奏してくれてたからこそ、演奏として『成立』してたに過ぎないんだ。
なんかさぁ。
たった一曲の即興で……その辺を思い知らされたよ。
……そんな色々な思考をしながら、即興で始めた肩慣らしの曲は終わった。
「はいよ、OKだ。俺が思ってた以上に、良い感じに仕上がってるじゃねぇかよ。……次、いけるか?」
「当然。……伊達に、倒れながらでも、全ライブに出演してないよ」
「ほぉ、それは良い根性だな。なら、まずは、向井さんの作った『Epitaph』(墓碑)行ってみっか?」
「『Epitaph』(墓碑)かぁ。……それって、一曲目から『覚悟』しろって事?」
「さて、そいつはどうかな?なんてたって眞子は、まだ俺が、この『Epitaph』(墓碑)に込めた、本当の意味を知らないからな」
「オーライ、オーライ。だったら感性のまま、崇秀に合わせてみるよ」
「ハハッ、そう来なくっちゃな。……行くぜ『Real-Epitaph』(本当の墓碑)」
「おぅ♪」
-♪--♪-♪-♪-------♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪……
あっ……
崇秀の宣言通り、横浜アリーナで演奏した時の『Epitaph』(墓碑)とは全然雰囲気が違う。
これ……なんて言ったら良いんだろう。
『どこで死んでも良い。そこが自分の墓標だ』じゃなくて。
それ以降の話。
『荒野に残されたお墓に、お参りする女の人』をイメージする曲だったんだ。
……なんて曲なの。
まるでこれは……
家族の生活を守る為に『賞金稼ぎ』になった旦那さんが、数年間は賞金稼ぎとして上手く行っていたけど、突然の様に悲劇が起こり、アッサリ、賞金首に殺されてしまう。
一家の大黒柱を亡くして、家族の生活は、1日を生活するのも苦しい程に荒んでいくんだけど。
それでも奥さんは、必至に頑張って生活を支え。
旦那さんのお墓と、子供達を守って生きて行く。
そんな女性の強い心理が込められてる曲だ。
そうかぁ……『Epitaph』(墓碑)は、旦那さんを奏でた曲だったけど。
同じ曲でも、崇秀の考えていた『Real-Epitaph』(本当の墓碑)は『女の人の強さ』を描いた曲だったんだ。
凄く良い曲だ……
***
……曲が終わったのは8分後。
かなり長い曲にアレンジされてる曲だったけど、凄く良い感じだ♪
でもさぁ。
いつも思うんだけど。
なんで崇秀は、こんなに凄い曲を、簡単に作れちゃうんだろうね?
まぁ恐らくは、才能じゃなくて、努力の賜物なんだろうけどね。
「どうだ?『Brain-vision=脳天映像』で見た曲の感想は?」
「あぁうん。これ、良いね。……表裏的に物を捉える崇秀らしい良い曲だと思うよ。私は好きかなぁ」
「そっか。……んじゃま、此処からは、オマエの弾きたい曲を弾きたいまま弾け。全部、曲の真意を教えてやるよ」
「あぁ、その前にさぁ。1つだけ聞いて良い?」
「なんだよ?」
「あのさぁ。いつも思うんだけど。……なんで崇秀は、こんな曲を簡単に作れちゃうの?」
気になって、ついつい、口に出して聞いちゃった。
前にも一度、真琴ちゃんが、崇秀に、作曲の極意みたいなものを教えて貰った事があったらしいんだけど。
また、ソレとは、なにか違う意見が聞けそうだったので、聞いてみた。
ってか、私って、なんて我欲に従順なんだろ。
「んあ?またやけに簡単な事を聞くんだな」
「そんなに簡単なの?」
「あぁ、この程度の曲を作るくらいならメチャクッチャ簡単だぞ」
「じゃあ、どうやってんの?」
簡単なんだ。
「なぁにな。曲に対するイメージを多方向に捉えれば良いだけのこった。それを頭の中で、キッチリしたイメージにさえ出来てれば、後は、そこに音を乗せるだけ。……なっ、簡単だろ?」
……なにが?
なに言ってんの、この人?
「あのさぁ。……それって、口で言う程、簡単な事じゃないと思うんだけど」
「そうかぁ?だったら、それってよぉ。完全に曲のイメージが出来てないから、難しくなってるだけなんじゃねぇのか?そこをキッチリとイメージ化して、一貫しないから、作曲が難しくなる。まぁ言うなればだ。『下手にブレる』からダメなんじゃねぇの?」
「う~~~ん。言いたい事は解るけど。やってる内に『曲を、もっと良くしよう』とか思っちゃうじゃない。そう言う時ってない?」
「作曲中に『曲をもっと良くしよう』なぁ?……それはないな。まずにして、その思考が俺にはない」
「なんで?」
えぇ~~……
私は、作曲をした事が無いから解らないけど。
アレンジをしてる時でも、少しでも良く仕上げ様と、あれこれ必至に考えちゃうんだけどなぁ。
根本的な思考が違うのかなぁ?
「『なんで』って?……なんもわかってねぇなぁ、オマエわ」
「なんで、なんで?」
「良いか眞子?曲ってのはな。なにがあっても、一旦は、最後まで作り切るもんなんだよ。その上でアレンジをして行った方が、比較的良い物が出来る。曲を作りながら、同時進行でアレンジをするなんざ『愚の骨頂』だ。……基本コンセプトを外した曲じゃあ、中々良い物は出来無いと思うぞ」
あぁそっか。
あれも欲しい、これも欲しいじゃ。
最終的に、色んな意思が交じり合いすぎて『なんの曲か、わかんなくなっちゃう』って事かぁ。
改めて言われてみれば、確かに的を得た回答だね。
……だからかぁ。
アリーナでの奈緒さんの曲のアレンジも。
罷り也にも、曲の基本コンセプトが出来ていたからこそ、簡単にアレンジが加えられた。
作曲やアレンジには『自制心』が大事って事なのかぁ。
「なるほどねぇ。曲を作るのって、大変だね」
「いやまぁ、実際は、そんな小難しい話じゃないから、その捉え方もどうなんだって話だが。この件を体現してる奴等が、俺以外にも、ちゃんと居るぞ」
「居るんだ……誰?」
「向井さんと、嶋田さん。この2人には、曲を作る際のイメージのブレが少ない。最小限のブレで抑えてるからこそ、あれだけのスピードで曲を作れるものだと思うんだがな」
「そっかぁ……」
あぁ……そうだね。
確かにそうだ。
奈緒さんも、嶋田さんも、凄いペースで曲を作って行っちゃうもんね。
そっかそっか……そう言う原理かぁ。
「まぁ、そう言う訳だから。今から演奏する曲は、オマエが選曲しろ。どういう意図で作られた曲か、俺が、俺なりの見解で教えてやる」
「えっ?私が決めて良いの?」
「あぁ、曲を決めるだけで良い。後は、作者の込めた意図を、俺なりの解釈で、音を造っていくからよ」
「あの、それってさぁ。……崇秀の曲じゃなくても、出来るの?」
「当然」
また奇妙な事を言い出した。
なんで曲を作った本人じゃないのに、そんな事が解っちゃうんだろ?
もし本当なら……これは、本当に凄い事だよ。
並の人間じゃ、絶対に出来ない様な理解力だよ。
「あの、じゃあさぁ。奈緒さんの作った曲の意味を教えて欲しい」
「OKだ。……しかしまぁ、なんとも解り易い所に行ったもんだな」
「そうなの?奈緒さんの曲って、そんなに解り易いものなの?」
「あぁ、向井さんの作った曲は、全てオマエに向けられたもんだからな。彼女の意図を探るのは、非常に簡単だ」
「えっ?嘘?……奈緒さんの曲って、全部、私に向けられた物だったんだ」
「はぁ……相変わらず、鈍感だなオマエ」
「うぅ~~」
……知らなかった。
私はテッキリ、奈緒さんは、曲を通して『自己表現』をしているものだと思っていた。
そうじゃなかったんだ。
確かに、これじゃあ、鈍感を通り越して、ただの『お間抜けちゃん』だよね。
まぁ、でも、言われてみたら、初期の曲では、私もそう感じる面があったから、妙に納得なのかもね。
……にしても、全部の曲が、そうだったとわね。
「まぁ良い。少しでも時間が勿体無いから、サッサとやってみっか」
「あっ、うん。お願いします」
「なぁ眞子。……それはそうとオマエ、本当に、素直になったもんだな」
「えっ?あっ、うん。だって、素直なのが一番なんだもん」
「そっか……」
一瞬、崇秀が奇妙な顔をしたが……
直ぐに、それを払拭したのか、連続的に奈緒さんが作った曲を奏で始めた。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
ちょっと今回のお話は、アレな話に成っちゃったのですが。
どの様なジャンルであれ、創作しながらアレンジを加える事って、実はあまり良い事ではないんですね。
なので例えば、話を構成してる際や、作曲をしてる際は。
「あっ、これ良いかも!!」って思った事が有れば、まずは即座に物語や曲に詰め込もうとするのではなく、メモを取る事。
こうやって、順序立てて創作した方が、非常に効率が高かったりしますしね。
それになにより、無理に詰め込んだ創作物を作るぐらいなら。
小説なら次話、作曲なら次作に、それを使用した方が纏まりも良くなりますしね。
ですので出来ればなのですが『思い付いたら即使う』のではなく。
吟味した上で、アイディアを使う様に出来る自制心を持った方が良いと思いますです♪
さてさて、そんな創作物に対する崇秀講座があった中。
次回は、他人の意志を汲み取る方法と言うものを書いていきたいと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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