●前回のおさらい●
待ち合わせの時間OK。
奈緒さんに選んで貰ったとは言え、倉知君が着て来た服装も問題なし。
なので一件すべてに問題が無い様に見えるのだが、崇秀には、まだそれとは別に不満がある様です。
「なんだよ?何が気に喰わないんだよ?」
「いや、別に、そんな大層なこっちゃねぇんだけどな」
「おっ、おぅ」
「……オマエさぁ、なんで、俺の前でだけは『男言葉』のままで話すんだ?」
そこですか……そこの指摘ですか。
……いやまぁ、オマエさんがそう言いたい気持ちも解らなくはないんだがな。
此処は言うまでもない様な話。
眞子になってから逢った『片倉』や『ネットのオッサン』それに昔からの知り合いでも『素直達』の様な眞子の正体が俺だって知らない連中なら、普通に『女言葉』を使っても、どうって事ねぇんだがな。
どうしても『コイツ=崇秀』の前だけでは『女言葉』は使い難いんだよな。
なんてたって、コイツとは下手に付き合いが長過ぎるからよぉ。
今だに……『オカマみたいに思われるんじゃないか?』って不安感が心にこびり付いて、どうしても拭い切れないんだよなぁ。
勿論、そんな事を崇秀が思わない事や、言わないとは解ってるんだけどな。
もし罷り間違って、そんな言葉を崇秀が吐いて、嫌な言葉を直撃させて来たら……
俺は100%の確率で、必ず、その場で『周喩の様に大量の吐血』をして『先祖代々の墓』にお世話になっちまう。
まさにご臨終だ。
だから俺としては、まだそんな最期を迎えたくはないから、どうしても「オマエに対しての女言葉」だけは避けたいってのが事実なんだよな。
故に、コイツにだけは『女言葉』を使えないでいるんだよ。
要するに、この行為はですな。
『心の保険を掛けてる』って奴ですよ。
「いや、あのよぉ……」
「まっ、心配しなくても、無理にとは言わねぇし、強制もしねぇよ」
「そうなんか?」
「……けど、オマエさぁ、今の自分の面で、その男言葉喋ってる姿を鏡で見た事あるか?」
「いや……敢えては、ねぇけどよぉ」
そう言おうとした瞬間。
崇秀は、俺の前に鏡を出して、強制的に、俺に自分の姿を確認させる。
・・・・・・
最悪だよ……俺。
今、鏡で、自分の姿を確認したんだけど……酷い違和感しか感じねぇ。
……って言うのもな。
可愛い格好で、可愛い面してるのに……それに反して、最低なぐらいヒデェ言葉遣いなんだよな。
こんな女、幾ら可愛くても、絶対ドン引きするだけじゃねぇかよ!!
う~~~わっ!!マジで最悪だ。
「……オマエねぇ」
「ほれ」
崇秀は、俺が喋るたびに、鏡をコチラに向けると言う、とんでもなく意地の悪い事を始めた。
しかもコイツ、その俺の姿を見ながら『ニヤニヤ、ニヤニヤ』笑ってやがんだよな。
このサディスト野郎!!
こんな可愛い俺を虐めんな!!
鏡の中の俺が、滅茶苦茶、嫌がってるじゃねぇかよ!!
「やめろつぅの!!」
「ほぉ~~~っ、そんな『はしたなくもデカイ声』を、こんな公共の場で出して良いのか?此処、駅前だから、みんな、コッチを向いて聞いてるぜ。オマエの印象がドンドン悪くなって行く一方だな」
「だから、そう思うんなら、やめろっての」
「面白いから、ヤダね。……テメェの無様な姿を見て、もっと恥ずかしがれ」
意地悪バージョンの奈緒さんか!!
……ってか、この2人、こう言う意地の悪い処は、ホントに瓜二つなんだよな。
もぉ、酷い事をする時に関しては、やる事、成す事、全く一緒。
『実は、知らない所で血の繋がりがあって『姉弟』なんじゃねぇの!!』って疑いを持つ程、意地の悪い所がソックリなんだよな。
特に、俺をいたぶる時に関しては、子供の様に目がキラキラしてやがる。
最悪だよ。
そんで……この意地悪姉弟は、意地悪を始めたら最後。
どんなに俺が嫌がっても、絶対に辞めねぇんだもんな。
あぁ~~~もぉ、マジで最悪だよ。
「もぉ崇秀やめてってば!!ちゃんとするから、お願い!!お願いします!!」
「ほぉ。やりゃあ出来んじゃねぇかよ。つぅかオマエ、今『女言葉』を使ったから、今日『男言葉』禁止な。因みにだが、もし使ったら……あぁ、そうだなぁ……」
「なっ、なに?」
「向井さんの『悶絶!!性感帯地獄……眞子、まだ1時間も有るよ♪』のコーナー送りだな」
だから奈緒さんか!!
この仮初の姉弟、寸分違わず、言い分が全く同じじゃねぇかよ!!
これ、なんの虐めだよ?
「あっ、あの、崇秀さん……それは置いておくとして、1つだけ聞いて良いですかね?」
「んだよ?」
「何故に、そんなに拘るんでゲスかね?」
「別にぃ。……敢えて言うなら、テメェが連れてる『女』が、世間に変な奴だと思われちゃあ困るからだよ。そう言うの、俺にとっちゃあ『マイナスイメージ』だからな」
うまい事言うなぁ。
これって遠回しに……
『オマエは本当に可愛いんだから、もっと可愛く見て貰え』って言ってるのも同義語だよな。
(↑そこまで言ってないのに気付かない、ナルな俺)
ふ~~~む、でも、俺の心境としては、まだ微妙なんだよなぁ。
第一な……
「けどよぉ。オマエとは付き合いが長いだけに、突然、俺が『女言葉』になるって、気持ち悪くねぇか?」
「全然。んなもん、なんとも思わねぇな」
「なんでぇ?」
あれ?
コイツって、マジで、そう言うの気にしてないのか?
それとも、そうした方が、俺の為だから、そう言ってるだけなのか?
わかんねぇ野郎だな。
「はぁ?なに言ってんのオマエ?……じゃあ、逆に聞くけどよぉ。『倉津眞子』って女は、オマエのイメージの中で、そう言う汚い言葉を使う『ズベ公』なのか?」
「『ズベ公』って……」
「いや、だってそうじゃねぇかよ。そんな汚い言葉を、普段から平気で使う様な女なら、まさに『ズベ公』の称号がピッタリじゃねぇかよ」
「まぁ、そうだけどよぉ……」
「もし、オマエ自身が『違う』って言うなら、それは修正すべき点だ。オマエが理想とする女の像を、自分の心の中でムラ無く作るべきなんじゃないのか?じゃねぇと、いずれボロが出るぞ」
ヤナ話だな。
でも、それだけに有り得る話でも有るんだよな。
崇秀以外の奴の時は『完全』に『眞子モード』を上手く使えてたけど、コイツの前で使わなかったら、咄嗟の時『ボロ』が出る可能性も高くなる。
けどなぁ……
そうやって理屈では解っててもなぁ……
「けどよぉ。オマエに気持ち悪がられるのって、かなり嫌じゃん。付き合いが長いだけにダメージがデカイって」
なっ、なっ。
だから、今後、頑張ってみるからさ。
ちょっとは、この俺の繊細な気持ちもわかっちくり!!
「なにを言うかと思えば、このトンチキだけは!!」
「なにがぁ?」
「あのなぁ倉津よ。昨日話をした時点で俺は、オマエの事を、既に『倉津眞子』だと認識してるの。だから、変な違和感なんか感じねぇの。……オマエ、昨日の俺の話で、なにを聞いてたんだよ?」
確かにな。
確かに、オマエの言う事は、ほぼほぼ正しいよ。
俺も間違っちゃいないとも思う。
けど、それは建前上の話である可能性もあるんじゃねぇか?
人である以上、そんな風に口で言う程、そんな簡単に割り切れてないんじゃないかなぁって思うんだよなぁ。
因みにだが、密かに『気持ち悪い』って思われてるのもダメージでかいんだぞ。
「えぇ~~~っ、嘘だぁ。人間の心なんて、そんなそんな簡単に割り切れるもんじゃねぇだろうに」
「そっかぁ?そうでもないけどなぁ」
出たよ。
この馬鹿、また『新しい変人の片鱗』を見せ始めやがったよ。
もし、コイツの言う事が本当なら、常人じゃ計れない様な『脳の切り替え』が、脳内で行なわれてるって事だぞ。
普通で考えたら無理だって、そんな事。
どうやったら、そんな奇妙な脳内変換が、瞬時に出来んだよ?
どう考えても有り得ないっしょ。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
本人の言う通り、恐らく倉津君は、自身の正体が知られていない人物に対しては『女性』として接する事が出来るのですが。
崇秀の様に付き合いが長く、眞子の正体を知っているだけに『女性』として接するのが難しい所なんでしょうね(笑)
まぁ、状況が状況なだけに、倉津君の言わんとしたい事は解らなくもないのですが。
こうやってそれを大衆の面前でやってしまったら【世間での悪い印象が付いてしまう可能性が高く】また【それは同時に、今までの頑張りすらも崩壊しかねない】一件として、即座に崇秀は、この行為を辞めさせようとしているみたいです。
良い印象は定着し辛く、悪い印象は一瞬で認識されてしまう、なんて事実もありますしね。
さてさて、そんな中。
崇秀が、またなにやら不可解な事を言い出しそうな雰囲気なのですが。
何を言い出すか気になった方は、是非、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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