●前回のおさらい●
ニューヨークの街中で崇秀と出逢い。
例の研究の成果を、とあるお寿司屋さんで聞く事に成った眞子なのだが。
今のこの体に未練が残る眞子は……
板に盛られた20貫程の握りを10貫程食べた所で。
沈黙して食事を摂っていた崇秀が、とうとう、さっきの話の口火を切ってきた。
ねぇ……食事中だし、その話やめない?
「……さて、喰ってばかりしてても、しょうがねぇ。そろそろ、さっきの話の続きでもするか?」
なんか、今は聞きたくない心境なんだけどなぁ……
今は、どうしても、そう言う気分にはなれないんだよね。
なら一回……誤魔化してみよ。
「うん?なんの話?」
「オマエ、また脳味噌を道端に落したのか?」
人が気落ちしてるって言うのに、また、そう言う事を言う……
「落として無いよ。……って言うか。一回も落した事ないよ」
「あっそ。んじゃあ、話を始めるぞ」
「あっ……うん、そうだね」
ヤッパ、誤魔化せないか……
まぁそれ以前に、崇秀相手だと、どこの誰が来ても誤魔化せるもんでもないか。
度台、無理な話だよね。
「んじゃまぁ。まずは結果だけ言うな」
「あっ……うん」
「悪いがな。オマエを元に戻すのには、まだ少々時間が掛かる。下手したら、戻すのには、年末ぐらいまで掛かっちまうかも知れない」
えっ?
……嘘!!
そっ……そうなんだぁ!!
この案件は、崇秀を持ってしても年末まで掛かるんだぁ♪
そっかそっか♪
「そっ、そうなんだ。そっかそっか、時間掛かちゃうんだ。……じゃあ、しょうがないよね。しょうがない、しょうがない」
「うん?なんだよ、その微妙な反応?」
「あぁいや、別に……なんでもないよ。なんでもない」
「オイオイ、オマエ、なんか喜んでねぇか?戻るのに時間が掛かるって言うのに、それを喜ばれたんじゃ、俺の立つ瀬が無いんだけどな」
「へっ?あぁ違う、違う。全然そう言うんじゃないんだけどさぁ。折角、新しいベースの弾き方をマスターしてきたのに、直ぐに元に戻るのは、ちょっと勿体無いなぁ。とか思ってただけだから。……けど、奈緒さんの件が有るから、一早く戻りたいのは戻りたいんだよ。そこだけは間違いないから。大丈夫、大丈夫」
「あっそ。取り敢えず、面倒だから深くは追求しない。それで納得しとくわ」
「正直に言ってるんだから、面倒臭いとか言うな!!」
う~~~~ん。
どうせ、この様子じゃ……多かれ、少なかれ、崇秀には、私の心は読まれてるんだろうなぁ。
でも、心の中まで、キッチリ読まれているとしても。
自分から、その心の中だけは、今の崇秀には決して見せてはいけない。
例え本音を言いたいとしても、面と向かっては、絶対に言ってはいけない。
だってさぁ。
悩みの相談をしてから、今まで毎日の様に、必至に寝ずに『私を元に戻す研究』をして貰ってるのに。
今更……『もぉこのままでも良いよ』なんて口が裂けても言えないよ。
それに、これが一番重要なんだけど。
あんなに私を受け入れてくれた奈緒さんの件を、絶対に忘れちゃいけない。
だからね。
……眞子は、いずれ消え行く存在で良いと思ってる。
ただ、もぅ少しだけ……ほんの、もう少しだけで良いから……この楽しい時間を過ごしたい。
それで『時間が掛かる』事を、つい喜んでしまったのだと思う。
奈緒さん……崇秀……こんな自分勝手な私で……ごめんね。
「まぁ良い」
「全然、良く無いよ」
「うっせぇ、黙れ。馬鹿の話の付き合ってたら、直ぐにでも夜が明けちまうんだよ。だからゴタゴタ言ってねぇで、俺の話を、ありがたく・聞・け」
「うわ~~~っ、此処のオーナーが言った通り『世界一の傲慢男』だぁ」
「知ってるよ。……だから聞け。いい加減聞かねぇと、テメェの乳首をもいで、デコにひっ付けるぞ。……遺伝子結合させて、完璧なまでに、ひっ付けてやるからな」
「ヤダよ。なんで、そんな千雅夫さんみたいにならなきゃいけないのよ。私はモノマネ四天王のコロッケさんじゃないつぅの!!」
「なら、必要な質問以外は黙って聞け。今度クダラネェ事を言ったら、マジでやっからな」
「はいはい、聞きますよ。聞きゃあ、良いんでしょ。聞きゃあ」
「オマエ……ガチで殴るぞ」
ヤバイ。
マジで殴られそうだ!!
「ぼっ、暴力反対です。……おっ、おっ、女の子に軽々しく手を上げちゃいけませんよ。DVですよDV」
「……悪いが、男女の差別をする気はない。男女問わず、馬鹿には躾が必要だからな」
「あっ、あの~……すみませんでした。もぉ仲居間先生には、一切、反抗しませんので、許して下さい。ごめんなさい」
「あっそ。それは良い心掛けだな」
「あっ、はい。……そうですね」
セ~~~フ!!
危なかったぁ~~~。
崇秀って、本当に男女に差別なく容赦がないから、このまま余計な事を言い続けてたら……多分、本気で『ぶん殴られた』と思う。
女の身で、あの馬鹿げた威力で殴られたら……確実に『死』んじゃうもんね!!
ホント危なかったぁ。
不用意な言葉1つで、本当に殴り殺される所だったよ。
「それはそうとさぁ。なんで、そんなに期間が掛かる予定なの?」
「んあ?あぁそれがな。思っても見なかった新事実が、例の正月明けにオマエに受けて貰った検査でわかっちまったんだよ。……しかも、問題山積みでな」
うわあぁ~~~っ。
私のおかしな体が、また奇妙奇天烈で、おかしな事実を生んじゃった訳ね。
本当に、ごめんね。
「……あの、またですか?」
「いやいや、まぁ事実としては、そんな大層な話じゃねぇんだけどな。厄介なのは間違いないな」
「どういう事?」
「まぁ、そう慌てるな。そこに行き付く前に、まずは『仮定』だったものが『事実』になった点から話すからよ」
「はい、先生。いつも、ご迷惑お掛けします」
「おぅ」
先生は、もぉ怒ってないみたいだね。
「あの~~、それで……」
「なぁにな。例の『真性半陰陽』と『クラインフェルター症候群』の併発してるんじゃないかって話なんだが……あれ、今の段階では『正解』だったみたいだな」
「あの~~、それって『真性半陰陽』の件は、前回に『ほぼ間違いない』って言ってたけど『クラインフェルター症候群』の方も『ほぼ間違いない』って事?」
「まぁ、そういうこったな」
「でもさぁ。なんで、それがわかったの?例の検査の結果?」
「いや、違う。実は、この間な。再度、一葉に、オマエの生まれた病院を洗い浚い洗ってみて貰ったんだけどな。以前取ったデータ以外に、隠されてたファイルってのがあってな。そのファイルを開けてみたら『真性半陰陽』と『クラインフェルター症候群』の併発してるって患者が居た。……オマエの名前付きでな」
「じゃあ、確実なんだ」
「まぁ、俺や、オマエの生まれた時の医療は、今から見たら一世代前のものだから、正確な診断をしたとは思えないんだが。この一件があって、可能性は一気に高くなったって話だな」
「ふ~~~ん。そうなんだ」
もぉこの程度じゃ、別に、なにも驚かないし……
なんか、どちらかと言えば『今更ねぇ』って感じの方が強いかな。
「まぁ兎に角、そう言う事実が、病院側が隠し持ってたって話だな」
「ねぇねぇ、なんで、そんな必要が有ったのかなぁ?」
症例が珍しいから、隠蔽したのかな?
それにしてもこれって……
「そりゃあオマエ。『倉津組の看板』を背負って立つ息子が、そう言う症状で生まれたとあっちゃあ、組の威信に関わるから、倉津の親父さんが『隠蔽』したんじゃねぇの」
「あぁ、そっか。確かに、組にとっちゃあ大問題だね」
「オイオイ、まるで他人事だな。……それにどうかしたのか?」
「あぁ、そう言う訳じゃないんだけど。なんか、なんて言うのかなぁ。真琴ちゃんと、私って、本当になんなんだろうね?」
なんか哀しいなぁ。
此処でも、存在を否定されてるみたい気分だ。
方や『消え行く存在』
方や『出生すら、表沙汰に出来無い人間』
これじゃあ、私も、真琴ちゃんも……ただの哀れな存在だよね。
「ふぅ……両方、俺の親友だ。それ以外は知らねぇし。それ以外は知ったこっちゃねぇ。……ドブみたいに臭い事を言ってるがなぁ。これだけが、俺にとっての事実だ。他の奴等は知らねぇが。俺には、必要不可欠な存在には違いねぇよ」
もぉ……また、そう言う事を言うでしょ。
「ぐすっ……じゃあ、なに?私と、真琴ちゃんの存在は……ぐすっ……崇秀の為だけにあるみたいじゃない……なにそれ?」
「それじゃあダメなのか?それに俺だけじゃなく、向井さんも、オマエ等2人の事を必要としている。……贅沢抜かすな」
……ホントだね。
贅沢だよね。
贅沢過ぎるよね……馬鹿みたい。
「ホントだね。……崇秀と、奈緒さんに想って貰えるなんて、多分、世界広しと言えども、私達だけだもんね。……そっか、そっか」
「まぁ……2人に想われてる奴が、雑魚でどうしようもねぇけどな」
「だね。……本当に、そうだと思うよ」
「まぁ、兎に角だ。変な事を考えるな。向井さんも、俺も、絶対に『オマエの存在』を否定する様な真似はしない。だからこれからも、俺と向井さんの為にバシバシ働け」
「酷いなぁ。……でも、頑張っちゃうもんね♪」
「おぅ、そうしてくれ」
ふふっ……もぉ恥ずかしいなぁ。
なんだか2人にメロメロだよ。
もぉ……
恥ずかしいから、早く誤魔化そっと……
「あの、あの、それはそうとさぁ。さっきの話が、崇秀の言う『新事実』って奴なの?」
「バカタレ。んな訳ねぇだろ。それだけが新事実なら、まだ対処のしようは、幾らでもあったんだよ。……けど、この間の『検査』で状況は一転した」
「ごめん。……全然わかんない。私の体、またなんかやらかしたの?」
「そりゃあ、事実を、まだなにも言ってねぇんだから、解る訳ねぇだろ。……馬鹿かオマエわ?」
「あっ、そっか。……っで、その隠してる新事実ってなに?」
「別に隠してねぇが?」
意地悪い事を言うなぁ。
そこ、普通に言えば良くない?
「じゃあさぁ、その隠されてない新事実って、なに?」
「なぁ~~にな。今のオマエの染色体には『XX染色体』しか無いって事だ」
「うん?女の子なんだから、それで正常じゃないの?」
あれ?
確か……
男性が『XY染色体』を持っていて、女性が『XX染色体』を持っている。
そんで私は『真性半陰陽』は関係ないとしても『クラインフェルター症候群』だから『XXY染色体』を持っていた。
そんな私が、女の子になって『XX染色体』になった。
なにか不思議な事でもある?
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
矢張り、崇秀を以てしても、この件は簡単に片付く物ではないらしく。
一歩進んだと思ったら、また新たなる新事実が発覚して、振出しに戻る様な状態が続いてるみたいですね。
ですが、そんな中でも、全ての事実を発覚しきれば、いずれ答えが出ると言う確証があるのかして。
最低限『年末には元の体に戻せる』とも断言してきました。
矢張り、こ奴は狂ってますな(笑)
さてさて、そんな中。
自身の体に『XXの染色体しかない』事を、極当たり前の事と感じてる眞子なのですが……本当にそうなのでしょうか?
次回は、その辺を書いていきたいと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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