●前回のおさらい●
カジ君の説得に成功したステラさんは、そのままグチ君の説得を始めるが。
家庭の事情から、再来年には就職が決まっているグチ君には、どうにもステラさんの話は受け入れにくい。
そんな彼に向かってステラさんは『クダラナイ人間』だと吐き捨てる。
その理由とは……
「ぐっ!!」
「その若さで、保身する事ばかり考えるクダラナイ人間になるぐらいなら、仲間の為だけに、己の人生で1度ぐらい、大きなチャレンジをしても良いんじゃないんですか?」
「アンタの言い分は解る。……だが、あまり器用に立ち回れない俺に、そんな二足の草鞋を履く様な器用な真似が出来るのか?」
「そんな事は、私が知る由も有りません。それはアナタ自身の問題であり、自らの努力次第です。……ですが。もし、私と組んでバンドをするとおっしゃるなら、必ず私が良い夢を見させて上げますよ」
言うだけの事はあって、相変わらず凄い自信だな。
でも、コイツには、それを裏付ける実績があるだけに。
これは過信ではなく、本当の自信だと言っても問題はないだろうな。
「知り合ったばかりのアンタの言葉を、俺に信じろって言うのか?それは些か無理が有るんじゃないか?」
「いいえ。『信じろ』なんて、おこがましい事は口が裂けても言いませんよ。ですが、お互いを自然に信じられない人間同士では、元々仲間とは呼べないのではないでしょうか?」
「えっ?ちょっと待ってくれ!!そう言うって事は……アンタは、既に、俺を信じてるって言うのか?」
「えぇ、勿論、最初から信じてますよ。それにアナタが、真琴の仲間を名乗ってる以上、それを疑う余地など私には有りませんしね。私は、無償でアナタを信じますよ」
「この人、全部、本気なのかよ……まいったな……」
ステラ……オマエって……本当に馬鹿なんだな。
なんで、クズの人間の代表格の俺を、そこまで真っ直ぐに信用するんだ?
そりゃあ俺だってよぉ。
口は悪いが、大切な仲間であるオマエの事を100%信じてはいるけどな。
俺は、オマエ程、確証のない事に手を出す勇気なんぞないぞ。
オマエは、何故そこまでする?
何故そこまで出来る?
……ホントに解らない女だな。
「っで、どうなんですか、グチ?これで断る様なら、一生タマ無しとして生きていくしかありませんが、それでも良いんですか?」
「女のアンタに、そこまで言われて、男の俺が、このまま引き下がれないだろ。やってやるよ。アンタがビックリする様なぐらい、必死ドラムを叩いて成長してやるよ」
「そうですか。では、その貴方の覚悟とやらを、じっくり拝見させて頂きますね。グチ、男に二言は許しませんからね」
「アンタに言った以上、全て覚悟の上だ」
「それは、とても重畳な事です」
堅牢な山口城。
抵抗虚しく落城す……か。
矢張り、ステラの口撃力はハンパじゃねぇな。
……っと思いながらをステラを見ていたら、奴も、こちらをジィ~~~っと見てやがる。
次は俺ッスね。
「っで、真琴どうしますか?やってくれますか?それとも、まだゴネるんですか?」
「はいはい。降参だよ降参。オマエの好きにしろ」
俺城……瞬時に陥落。
無抵抗のを示す為に『ガンジー宣言』
「うん?低脳にしては、やけに物分りが良いですね。またなにか良からぬ事を企んでいるのですか?」
「この場面まで来て、今更なぁ~~んも企んどりゃせんよ。オマエが、あまりにも気前良過ぎるから、感心しただけのこったよ」
「流石ポンコツですね。私の心理を良く理解しています。そう言うの悪くないですよ」
「アホか?オマエのややこしい心理なんぞ、全くわからんわ」
「キスをした仲なのに、そこからは、なにも伝わってないのですか?」
「ぶっ!!」
「ブッ!!」
「ぶっ!!」
此処に来て、このアホは、また余計な事を……
そう言う誤解を招く様な発言をカジやグチにしたら、余計な面倒が降りかかるだろうが!!
ったく!!余計な事ばっかり言いやがって!!
一回、その余計な事バッカリ言う可愛らしい口を、膠(ニカワ)でベッタリくっ付けたろか!!
ホント、なんで、そう言う事ばっかり言うんだ、オマエは……
「ちょ、ちょっと待てよ、クラッさん……そりゃあ、幾らなんでもあんまりだろ。奈緒ちゃんに、有ッちゃん。それにステラちゃんまで、全員手篭めにしてるのかよ?」
オマエまで、なんちゅう事を言いやがるんだ!!
「ちょ、オマ!!人聞きの悪い事を言ってんじゃねぇぞ!!誰がステラを手篭めにしたんだよ?俺は、そんなに物好きじゃねぇつぅの」
「カジ、それは少し違いますね。認識を改めるべきですよ」
おっ!!流石に俺が哀れだと思って、ステラの奴フォローする気になったか。
まっ、まぁ、この辺はナンだカンだ言っても、コイツが、俺と、奈緒さんの仲を一番理解してくれてる訳だからな。
これは、当然の処置だと言えるだろうな。
ってか、この悪戯好きの這い寄る混沌め。
これに懲りたら、もぅ悪さするんじゃねぇぞ。
「俺のなんの認識が誤ってるんだ?ステラちゃんは、やっぱ、クラッさんの言う通り、手篭めになんかされてないって言いたいのか?」
「いいえ。『真琴に女誑し具合は、そんな可愛いものじゃない』と改めて頂きたいだけです」
「へっ?」
「肉体関係に至らなくても、ポンコツは、女性の心を奪い去る事を得意としています。これに嵌った相手だけなら、奈緒・素直・美樹・真美・元香・理子・咲・千尋・その他諸々、私の知らない所でも、まだまだ沢山居る筈です。真琴は、アナタの考える様な甘い男ではないんですよ」
オイオイ……チミはフォローもせず、なにを言っとるのかね?
オィちゃんが、いつ、そんな真似をしたって言うんだい?
嘘はいかんぞ、ステラ君。
「ちょ!!クラッさ~~~~ん!!これは一体、どういう事だよ?クラッさんが言ってた話とは、全然違うじゃねぇかよ!!これの、どこが奈緒ちゃん一途なんだよ。そんなもん、1欠片もねぇじゃねぇかよ!!イケメン撲滅運動とか言う前に、自分の、その女誑しな態度を治したらどうなんだよ」
「うぉ!!カジ!!それは酷い誤解だぞ!!」
ステラの奴、マジで最低だな。
千尋の名前が出る事によって混乱するカジを、アッサリとより深い混沌の渦へと引き摺り込みやがったよ。
ステラの様な悪意の塊を、ちょっとでも信用した俺が馬鹿だった。
「オイオイ、どう言う事か説明して貰おうか、クラッさん」
「しらねぇ、シラネェ、知らねぇな。んな事実はどこにもねぇし。そんなもんは、ステラの、いつもの戯言に過ぎねぇ。知るかぁ!!知った事かぁ~~~!!サラバだ!!」
俺は、この件については、いつも酷い誤解を受けているので。
どうせ言い訳や、説明をしたとしても誤解を解ける事はないだろうし、その説明をするだけでも時間が掛かる。
故に俺は、今の言葉を発しながら、扉に向って逃亡を図る事にした。
だって、もぉこれ以上説明するのなんて面倒臭ぇんだもんよ。
オィちゃんも疲れとるんじゃよ。
「あっ、逃げた」
「逃げましたね」
「逃げたな」
「るせぇよ!!逃げてねぇし!!それに俺は、本当に奈緒さんに一途なんだよ~~~~~だ!!馬~鹿、馬~鹿!!」
「子供ですか……軽蔑すべき最低さですね」
一旦、バンドの話が終着点に付いたので、マジで逃げてやった。
本気で、これ以上の面倒は御免被りたいからな。
マジでサラバだ!!
あっ……愚痴に、奈緒さんが彼女だってバレちまったな。
まぁ良いっか、グチだし。
***
……さて、子供の様な言い分の発したまま、教室を上手く脱出した俺なんだが。
今の時点では、行き先が『第二音楽室』ぐらいしかない。
なので仕方なく、役に立たないのを重々承知した上で、そこを目指す事にした。
だが……これが、全ての間違いの始まりだった。
こんな余計な逃亡をしたばかりに、この後、一番気分の悪い出来事に遭遇する羽目になる。
本音で言えば、恐らく、この物語でも1・2を争う程の気分の悪い出来事だ。
こんな胸糞悪い嫌な想いをする位なら。
疲れてても、カジやグチに必死に言い訳してた方が幾らもマッシだったって位、気分の悪いものに遭遇する。
そして、その悪夢の様な胸糞悪い話は、本当に些細な事から始った……
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
なんだかんだ言いながらでも、ステラさんがバンドに加入する事が決まって、バンドの問題に成っていたメロディーラインの確保が出来ましたね。
だから此処は、めでたし、めでたし、っと言う事で(笑)
……ですが、今回のタイトルは『表裏文化祭』
こんな良い事だけで終わる筈もなく。
次回、恐らくは、この物語の中にあって、最大級の胸糞展開が待ち受けています。
倉津君は、この胸糞展開を乗り切る事が出来るのか?
そこは次回からの講釈。
なので、また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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