最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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588 ネットさんに対する恩義

公開日時: 2022年9月17日(土) 00:21
更新日時: 2023年9月11日(月) 15:57
文字数:3,595

●前回のおさらい●


 倉津君同様、どこか『お笑い三等兵』な性格なネットさん(笑)

その性格と、女性慣れしていないのが重なって、待ち時間で並ぶ列で混乱を巻き起こすが……それも此処まで!!


コミケと言う戦場が、今、開戦する!!


 ネットのオッサンが深夜から並んでくれたお陰もあり。

かなり列の前の方をキープ出来たので、ほぼ開場と同時に会場内に入る事が出来た。


これは(借金の返済業務以外では)待つのが大嫌いな俺にとっては、非常に有り難い事態ではあるんだがな。

実は俺……11月ぐらいには先持って主要サークルには連絡を付けて置いたから、殆どの商品は『取り置き』して貰ってる状態なんだよな。


だから実際の話だけをすれば、こんなに会場に早く入る必要性が無かったりするんだよな。


つぅのもな。

これは、今年の6月ぐらいからの始めてた話になるんだがな。

その頃から俺は、ちょっと崇秀の真似事をして、資金難で困ってるサークルの手助けなんかを細々としてやってたりしてたんだよ。


そんで、そこから、ソイツ等のツテを辿って有名サークルにまで、なんとか行き着き。

そのサークルにも、取り置きが頼める程度の関係には成っていたので慌てる必要性はなかった訳だ。


まぁ、その取り置きのメールを送る際にも『ウチの親戚の倉津眞子が現場に行くから、宜しく頼むな』って添えて置いたから、コチラも問題なしだし。

そこにプラスα、今回、奈緒さんに頼まれたBL本に関しても、ネットのオッサンが前以てキッチリと抑えてくれてるから、コチラも万事問題なしな状態な訳だ。


なので、まさにコミケ対策に於ける完璧な布陣と言って過言でもないだろう。


……ってな訳で。

さして慌てる必要の無い俺は、会場内をプラプラと歩きながら色々なサークルを散策する。


けどな、幾らそうやって完璧な布陣を引いたとはいえ、此処で問題がない訳でもないんだ。


って言うのもな。

今はこんな形だから、お試し用に置いてあるエロ同人誌を、立ち止まってまで堂々と読む訳にはいかないし。

それに伴って、新しい融資先を探す新規開拓も出来やしねぇんだよ。


まぁ勿論、場所が場所だけに腐女子しても良いんだろうが。

どうしても俺の中で、眞子と言う存在が、そう言う行為をする人物だと思えないんだよな。


どちらかと言えば、清楚なイメージを大事にしたいから、そう言う行為を本能的に避けてる部分があるみたいなんだよ。


それになにより、もっと大きな問題が、この倉津眞子って形は、自分で思っている以上に目立つ事。

ただ単に会場内を歩いてるだけなのにも拘らず、道行く男が、異様な程にジロジロジロジロ見て行くんだよ。


中には、コスプレしてる訳でもないのに『一緒に写真撮らして貰っても良いですか?』とまで、男女問わず言われる始末。


まぁ俺自身も真子の容姿は可愛いとは思うが……眞子の容姿って言うのは、そこまでか?そこまでなのか?


そんな訳もござんして、尚更、この眞子と言う容姿のままでは、エロ同人誌を見るにしてもグツが悪い。

世間の目が、此処まで自分に集中してたんじゃあ、身動きも取り難いってもんでございますよ。


なので仕方が無く、倉津真琴として頼んで置いた同人誌と、奈緒さん用の『BL本』だけを2時間程掛けて回収だけをして廻ってる状態が続くだけだった。


まぁただ、その序と言っちゃあなんだが。

サークル参加させてくれたオッサンのブースの宣伝もして置いたんだがな。


この辺の恩義だけは、決して忘れちゃいけないからな。


ほんで、先持って奈緒さん家に本を郵送し、プラプラとオッサンのブースに戻って行った。


……にしても、この眞子の容姿と言う問題だけで。

隠れた才能を持つ新鋭の作家の捜索する事すら出来無いなんて……コミケに、なにしに来たんだ俺?


(;´д`)トホホ……


***


 そんな感じで、少々時間を費やしながらも、漸くオッサンのブースまで帰って来て、直ぐに気付いた点があるんだがな。


正直オッサンのブースは、かなり暇そうだな。

ワイワイと賑わう他ブースとは打って変わって閑散としていて、見事なまでに閑古鳥が住み着いて鳴いているような様子。


まぁ、オッさん自身が、そんなに社交的ではないにせよ。

こう成っているのには、ある意味、明白な理由があったりするんだよ。


……って言うのも、このオッサンな。

既に50近い年齢で、昨今の絵と比べると2世代ぐらい絵のタッチが古い。

だから、最近の絵とは完全に一線を博しており、今時の若者や、一般受けする様な絵柄じゃないからなんだよ。


まぁ精々頑張っても、同年代のマニア受けするのが良い所だろうからな。


でも、悲しいかな。

そのマニアらしき奴等の姿も、今は誰1人として見当たらない。


これは、あまりにも無残だ。


・・・・・・


はぁ~~~、もぉしょうがねぇなぁ。

じゃあ、オッサンにはサークル参加させて貰った恩も有る事だし、ちょっとだけでも俺が売り子をして売り上げに貢献してやっかな。


こう言う面での義理と人情を忘れちゃあ、お終いだからな。



「ネットさん」

「あっ、あぁ、あぁ、お帰り倉津さん。どっ、どうだった、コミケ初参加は?ちゃ、ちゃんと欲しいものは買えた?」

「はい。お陰様で、ネットさんが頼んで下さった商品も、真琴ちゃんに頼まれていた商品も全部回収出来ましたよ。何から何まで、ありがとうございました」


『ペコリ』



「あっ、あぁ、そ、そ、そ、それは良かったね。良かった、良かった」

「はい♪」

「と、と、と、所で、こ、こ、こ、こ、これから、倉津さんはどうするんだい?」

「あっ、はい。それなら、ネットさんには、こんなにもお世話になってしまいましたので。真琴ちゃんの替わり、私が、ネットさんのお手伝いをしたいと思います」


どぉ?この意見イケてる?


如何にも『女の子慣れ』してない感じのオッサンだけど、こう言えば俺の手伝いを受けてくれるか?



「おっ、お礼って、そ、そ、そ、そ、そんな事しなくても良いよ、良いよ。ぼ、ぼ、僕は友達が少なくて、チ、チ、チ、チ、チケットが余ってただけだから」

「あの、そう言われるって事は、ひょっとして、ご迷惑でしたか?」

「いっ、いやいやいやいや、そっ、そっ、そっ、そんなそんな!!ご、ご、ご、ご迷惑だなんて滅相もない!!」

「本当ですか?」

「ほっ、ほっ、ほっ、ほんとだよ」

「そうですか。でしたら、もしネットさんが宜しければなんですが、この時間を利用して、先に、お食事に行かれてはどうでしょうか?もうじき、お昼ですし。……その間、私が、お店番してますので」

「く、く、く、く、倉津さんが、こ、こ、こ、こ、此処を、み、み、見ててくれるのかい?」

「はい、私で良ければ喜んで♪」


満面の笑みで、質疑応答を繰り返す。

だって眞子は、とても良い子で『清らかな乙女』ですもん。


まぁ……一昨日、奈緒さんの思わぬ行動で、ちょっとだけ汚れちゃったけど。



「あぁっと、えぇっと、じゃ、じゃあ、す、す、少しの間だけ、こっ、こっ、此処のブースを、お、お、お、お願いして良いかな」

「はい。お任せください。ですからネットさんは、どうぞ、ごゆっくりランチを摂って来て下さいね」


俺がそう言った後、漸くオッサンは立ち上がり。

何度も何度も振り向きながらも、ペコペコと頭を下げ、昼食を摂りに行ったんだがな。


いやいや、こんな程度の事で、なんもそんな何回も頭下げんでも……寧ろ今回、此処での件で世話に成ってるのは俺の方だし。


しかしまぁ、なんかそう考えると、ネットのオッサンは、ホント気の良いオッサンだよな。

真琴の時から、このオッさんとは、ネット上で、そう言う付き合いはしてたんだけど。

ほんと、俺の実家の職業も、年齢も超えて、普通の友達みたいに接してくれるメッチャ気の良いオッサンなんだよなぁ。


人柄が滲み出てると言うか、なんと言うか……マジで、良いオッサンなんよなぁ。


それに、さっき言ってた、このオッサンの漫画もな。

確かに、絵柄自体が二世代ぐらい古臭いのは否めないんだが。

それに反して、設定や内容なんかは、此処最近の作品には無い位キッチリと練り込まれてて、実に面白い内容の作品なんだよなぁ。


なのに、なんで売れねぇんだろうな、これ?

なんか世の中の奴って、流行にバッカリ目が行くだけで、ほんと見る目がねぇよな。


その考えると、なんかおっさんが日の目を見ない事に腹が立って来たな。


・・・・・・


よっしゃ!!

なら、俺自身がオッサンをそう言う風に思うのなら、此処からは行動あるのみだな!!


ただ単に店番をするだけで、恩返ししたなんて考えず。

もっとオッサンの恩に報いる為にも、此処は俺が眞子として一肌脱いで、この本の完売を目指してみるか!!

この眞子の容姿を使えば、此処にある在庫数の30部ぐらいだったら、なんとかすりゃ全部ハケルるだろうしな。


そんでおっさんの漫画が、少しでも世に広まってくれれば重畳ってもんだ。


……ってな感じで、早速気合を入れて、オッサンの作品を売り込もうとした矢先。

まだ、俺がなにも行動して無いのにも関わらず、何故か1人の男がフラフラと、明らかにこのブースに目指している様にやって来た。


ってか、あれ?確かコイツって、さっき俺が回っていた有名ブースの奴だよな……


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


ネットさんの人の良さを感じて、此処で倉津君が、なにやら奮起しそうな雰囲気ですね♪


まぁでも、こうやって『人に対して恩義を感じる事』って、人として本当に大事な事なので、此処は素直に称賛してあげたいです。


そして、上手く行って欲しいと思いますです♪


さてさて、そんな中。

なにやら有名ブースの作家さんが、このネットさんのブースに現れた様ですが。


この人は、どう言う人なんでしょうね?


それは次回の講釈なのですが。

倉津君の眞子としての奮闘が気になりましたら、是非、また遊びに来て下さい~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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