最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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118 不良さん 釣られる

公開日時: 2021年6月4日(金) 00:21
更新日時: 2022年11月21日(月) 13:05
文字数:3,191

●前回のおさらい●


 ひょんな事から、素直ちゃんのシンセを買いに行く事に成った倉津君。


ですが、放課後に成るまでの時間は授業をボイコットして、お眠りしてるみたいです。

 ……そして気付けば、いつも通り、放課後。


この糞暑い中、クーラーも無しに、一度も目が覚めなかった自分には感心する。



「ふぁ~~~……ねみぃ~~~」

「あっ……おはよう、真琴君」


寝起きで直ぐに声を掛けられて、誰だと思ったら……素直だ。


どうやらコイツは、俺の隣の席に座って本を読みながら、俺が起きるのを待って居たみたいだな。

そんで、待ってる間に少々汗を掻いたのか、素直からは例の甘い臭いがしてくる。


久しぶりに嗅いだが、ホント甘い臭いだな。



「うん?あぁなんだよ。オマエ、俺が起きるのをズッと待ってたのか?」

「あぁはい」

「馬鹿だなぁ。放課後になってんなら、サッサと起しゃ良いじゃんかよ」

「あっ、ごめんなさい……でも、あまりに気持ち良さそうに寝てたもんだから」

「そっかぁ?……しかしまぁ、なんだな。寝てる時は、なんとも思わなかったが、起きると暑っちぃ~~な」


机から下敷きを取り出して、パタパタ扇ぐ。

ただ、この下敷きは、これ以外で役に立った試しは無い。


無論、その理由は俺が勉強なんぞ一切しないからだ。



「そうですね。今日は特に暑いですね」

「だな。しかしまぁ、よくもこんな暑い中、オマエも待ってたもんだな。俺なんざ、起きただけで、こんなに汗が出て来たぞ」

「えっ?汗?あっ、あの……ひょっとして僕、汗臭くないですか?」

「汗臭いだと?……あぁ気にすんな。人間、汗は掻くもんだ。ソイツは健康の証みたいなもんだからな」

「あっ、あの、ごめんなさい、真琴君。……申し訳ないんですけど、少しだけ待って貰っても良いですか?」

「なんだよ?汗なら気にしなくて良いぞ」

「いえ……でも、汗臭いのは、ちょっと……これでも一応、女だし……」


わかんねぇな。

オマエは一体、なにを気にしてんだよ?


確かに、オマエが言う様に、女が汗の匂いを気にするのは当たり前なのかもしれない。

それに、このクラスに居るブス共の汗の臭いが、俺の鼻腔に入ろうものなら、俺も我慢は出来無い。


だからオマエの言う、その理屈は解る。

その場合、俺も、そんな汗臭い女子を窓から放り出して消臭しなきゃいけないしな。


ただな、そんな中にあっても、オマエの汗だけは別格なんだよ。

兎に角、オマエからは甘い良い匂いしかしないから、オマエは汗を掻いても構わない。

寧ろ、俺の好きな匂いだから、もっと掻いても構わない。


それともなにか?

自分じゃ、自分の臭いってわからねぇもんなのか?



「オマエさぁ、変に心配しなくても、オマエの汗って、全然臭くないんだぞ」

「でも……臭くないって言われても、汗臭いんですよ。それは、なんかちょっと……」

「そっかぁ?俺は好きだけどなぁ。オマエの汗の匂い」

「えっ……」

「オマエの汗の匂ってよぉ。あの鼻につく様な汗特有の臭ぇ臭いはしねぇんだよ。なんつ~か、オマエの汗って、独特の甘い匂いがするんだよな。スゲェ女の子っぽい匂いだと思うぞ」

「えっ?……僕、そんな臭いがしてるんですか?」

「あぁ、してるな。まぁ判り易く言えば、オマエの汗は、桃みたいな匂いがするんだよな」

「桃……ですか?」


やっぱり、自分じゃわからないのな。

汗を掻いてなくても、何時もコイツからは、桃みたいな匂いがするんだよな。


だからきっと、コイツはそう言う体臭なんだろうな。



「あぁ桃だ。因みにだが、俺は桃が好きだから気にしなくて良いぞ」

「あぁ……でも……」


まだ気にしてるのか?


しょうがねぇ奴だな。

俺は、素直の肩に手を回し。

持っていた団扇(下敷き)で、俺の方に向かって扇ぎ始めた。


風に乗って、桃の良い香りがする。



「ほらほら。ヤッパ良い匂いじゃねぇか、全然臭くなんかねぇぞ」

「あっ、あの……ちょ、ちょっと、真琴君」


体を竦めて、眼を閉じて顔を真っ赤になった。


なんでだ?


・・・・・・


……って俺、何やってんだよ!!

女子がイキナリこんな事されたら、普通、誰だってイヤだよな。


しかも、これじゃあまるで俺が『匂いフェチ』みたいじゃねぇか!!

素直の良い匂いに釣られて、なんちゅう事してんだよ!!



「わっ、悪ぃ。あんまりにも良い匂いだったからよ」

「本当……ですか?」

「マジマジ、スゲェ良い匂い。つい、釣られちまったよ」

「そうですか……なら、良いかな」


今度はモジモジしはじめたぞ。


またなんか俺、変な事を言ったのか?



「あっ、あの、真琴君……じゃあ、そろそろ行きましょうか?」

「おっ……あっ……あぁ、だなだな」


素直のフォローに助けられて、なんとか変な方向にはいかなかったな。


まぁ兎に角、この好機に乗って、買い物を早く済ませてスタジオに行こう。


俺のこった……気付かない内に、またおかしな事を言い兼ねない。


そうやって俺と素直は、以前に奈緒さんと一緒にベースを買いに行った、例の楽器店を目指して、電車に乗って横浜に向う。


***


 店に到着したのは、少し日が落ち始めた夕方6時過ぎ。


放課後になってからも、少し俺が眠り過ぎたとは言え。

此処まで時間が掛かったのには、ちょっとした理由があるんだよな。


それがなにかって言うとだな。


途中で飯を喰ってたからだ。


当然、飯を喰う理由になったのは、素直の腹が減ってた訳じゃない。

俺が朝から授業も受けずに眠りこけていて、なにも喰っていないのが原因。


店に向う途中の電車の中で、腹がミットモナイぐらい『グゥグゥ』鳴ってしまい。

それを見兼ねた素直が、食事をする事を薦めてきた。


そして俺は、空腹に負けて、なにも考えずにMACに入り。

ビッグマックを2つと、照り焼きバーガーを1つ。

それに、ポテトのLを1つに、更にナゲットを1つ喰い漁る。


その間、素直はジンジャエールを飲みながら、なにが面白いのかは知らないが、俺をズッと眺めていた。


そんな面白いぐらい、ガッツイてたんだろうか?



まぁそんなこんなで、無駄な時間が経ってしまい。

素直が楽器屋に居れる時間は、1時間程しかない酷い状態になっていた。


わざわざ横浜まで出てきたって言うのに、悪い事したな。


取り敢えず、謝るか。



「悪いな、素直。俺が飯なんざ喰っちまってたから、あんまり時間無くなっちまったな」

「あぁ、全然大丈夫ですよ。今日は下見しに来ただけですから。それに買うものが決まっていたら、また次来た時、直ぐに買えますからね」

「そうかぁ。……ホント悪いな」

「あの、真琴君……あの、その……その時はまた、僕と一緒に来てくれますか?」

「なに言ってんだよ。そんなの当たり前だろがよぉ。今日、時間が無いのは完全に俺のせい。そのミスの償いは、今度来た時に必ず報いる。……第一よぉ。シンセサイザーって重そうなイメージねぇか?オマエが1人で家に持って帰るには、ちょっと無理があんだろ」

「あっ、あの……持って帰らなくても、配達して貰うつもりなんですけど……」

「あぁそっか。そうだよな。じゃあ、俺イラネェか?」


……だよな。

世の中には『配達』って便利なものが有るよな。


けど、それじゃあ償いは出来ねぇな……どうすっかな?



「あっ、あの……今度も一緒に来てくれるんじゃないんですか?」

「あぁ。オマエが、俺を必要だって言うんなら、幾らでも着いて行くが」

「そっ、そうですか……じゃあ、おっ、お願いします」

「なんだ、持って帰るのか?」

「あぁ~っと……えぇっと……あっ、はい」

「ふ~ん、そっか」

「えぇっと……直ぐにでも、家で弾いてみたいですし」


なにを焦っているのか知らないが、素直は必死にそう言った。



「あぁそうか……じゃあ、俺が家まで持って行ってやるよ」

「あっ、あの、最寄の駅までで良いです」

「はぁ?なんでだよ?んな面倒臭い事言わねぇでよぉ。別に家まで持って行きゃあ良いじゃねぇか」

「あっ、あの……ぼっ、僕ん家、結構そう言うのが厳しいんで」

「あぁそう言う事な。じゃあ駅までな」

「あっ、はい」


嬉しそうに返事を返してきた。


本人が納得出来る様な回答が出来たんだから、まぁ良いッか。


んじゃあ話も付いた事だし、早速、シンセを見て行こうぜ。


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


今回は、特に意味はない回なのですが。

なんとなく、ホッコリしたシーンを入れようかなぁって思って書いてみたです♪


まぁ、その結果は、倉津君が臭いフェチだと言う真実が露呈しただけなんですけどね(笑)


さてさて、そんな中、次回は本命である『シンセの購買』に入って行くのですが。

倉津君が居て、普通に購入出来る筈もなく、また一波乱起こりますです♪


なので良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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