●前回のおさらい●
ひょんな事から、素直ちゃんのシンセを買いに行く事に成った倉津君。
ですが、放課後に成るまでの時間は授業をボイコットして、お眠りしてるみたいです。
……そして気付けば、いつも通り、放課後。
この糞暑い中、クーラーも無しに、一度も目が覚めなかった自分には感心する。
「ふぁ~~~……ねみぃ~~~」
「あっ……おはよう、真琴君」
寝起きで直ぐに声を掛けられて、誰だと思ったら……素直だ。
どうやらコイツは、俺の隣の席に座って本を読みながら、俺が起きるのを待って居たみたいだな。
そんで、待ってる間に少々汗を掻いたのか、素直からは例の甘い臭いがしてくる。
久しぶりに嗅いだが、ホント甘い臭いだな。
「うん?あぁなんだよ。オマエ、俺が起きるのをズッと待ってたのか?」
「あぁはい」
「馬鹿だなぁ。放課後になってんなら、サッサと起しゃ良いじゃんかよ」
「あっ、ごめんなさい……でも、あまりに気持ち良さそうに寝てたもんだから」
「そっかぁ?……しかしまぁ、なんだな。寝てる時は、なんとも思わなかったが、起きると暑っちぃ~~な」
机から下敷きを取り出して、パタパタ扇ぐ。
ただ、この下敷きは、これ以外で役に立った試しは無い。
無論、その理由は俺が勉強なんぞ一切しないからだ。
「そうですね。今日は特に暑いですね」
「だな。しかしまぁ、よくもこんな暑い中、オマエも待ってたもんだな。俺なんざ、起きただけで、こんなに汗が出て来たぞ」
「えっ?汗?あっ、あの……ひょっとして僕、汗臭くないですか?」
「汗臭いだと?……あぁ気にすんな。人間、汗は掻くもんだ。ソイツは健康の証みたいなもんだからな」
「あっ、あの、ごめんなさい、真琴君。……申し訳ないんですけど、少しだけ待って貰っても良いですか?」
「なんだよ?汗なら気にしなくて良いぞ」
「いえ……でも、汗臭いのは、ちょっと……これでも一応、女だし……」
わかんねぇな。
オマエは一体、なにを気にしてんだよ?
確かに、オマエが言う様に、女が汗の匂いを気にするのは当たり前なのかもしれない。
それに、このクラスに居るブス共の汗の臭いが、俺の鼻腔に入ろうものなら、俺も我慢は出来無い。
だからオマエの言う、その理屈は解る。
その場合、俺も、そんな汗臭い女子を窓から放り出して消臭しなきゃいけないしな。
ただな、そんな中にあっても、オマエの汗だけは別格なんだよ。
兎に角、オマエからは甘い良い匂いしかしないから、オマエは汗を掻いても構わない。
寧ろ、俺の好きな匂いだから、もっと掻いても構わない。
それともなにか?
自分じゃ、自分の臭いってわからねぇもんなのか?
「オマエさぁ、変に心配しなくても、オマエの汗って、全然臭くないんだぞ」
「でも……臭くないって言われても、汗臭いんですよ。それは、なんかちょっと……」
「そっかぁ?俺は好きだけどなぁ。オマエの汗の匂い」
「えっ……」
「オマエの汗の匂ってよぉ。あの鼻につく様な汗特有の臭ぇ臭いはしねぇんだよ。なんつ~か、オマエの汗って、独特の甘い匂いがするんだよな。スゲェ女の子っぽい匂いだと思うぞ」
「えっ?……僕、そんな臭いがしてるんですか?」
「あぁ、してるな。まぁ判り易く言えば、オマエの汗は、桃みたいな匂いがするんだよな」
「桃……ですか?」
やっぱり、自分じゃわからないのな。
汗を掻いてなくても、何時もコイツからは、桃みたいな匂いがするんだよな。
だからきっと、コイツはそう言う体臭なんだろうな。
「あぁ桃だ。因みにだが、俺は桃が好きだから気にしなくて良いぞ」
「あぁ……でも……」
まだ気にしてるのか?
しょうがねぇ奴だな。
俺は、素直の肩に手を回し。
持っていた団扇(下敷き)で、俺の方に向かって扇ぎ始めた。
風に乗って、桃の良い香りがする。
「ほらほら。ヤッパ良い匂いじゃねぇか、全然臭くなんかねぇぞ」
「あっ、あの……ちょ、ちょっと、真琴君」
体を竦めて、眼を閉じて顔を真っ赤になった。
なんでだ?
・・・・・・
……って俺、何やってんだよ!!
女子がイキナリこんな事されたら、普通、誰だってイヤだよな。
しかも、これじゃあまるで俺が『匂いフェチ』みたいじゃねぇか!!
素直の良い匂いに釣られて、なんちゅう事してんだよ!!
「わっ、悪ぃ。あんまりにも良い匂いだったからよ」
「本当……ですか?」
「マジマジ、スゲェ良い匂い。つい、釣られちまったよ」
「そうですか……なら、良いかな」
今度はモジモジしはじめたぞ。
またなんか俺、変な事を言ったのか?
「あっ、あの、真琴君……じゃあ、そろそろ行きましょうか?」
「おっ……あっ……あぁ、だなだな」
素直のフォローに助けられて、なんとか変な方向にはいかなかったな。
まぁ兎に角、この好機に乗って、買い物を早く済ませてスタジオに行こう。
俺のこった……気付かない内に、またおかしな事を言い兼ねない。
そうやって俺と素直は、以前に奈緒さんと一緒にベースを買いに行った、例の楽器店を目指して、電車に乗って横浜に向う。
***
店に到着したのは、少し日が落ち始めた夕方6時過ぎ。
放課後になってからも、少し俺が眠り過ぎたとは言え。
此処まで時間が掛かったのには、ちょっとした理由があるんだよな。
それがなにかって言うとだな。
途中で飯を喰ってたからだ。
当然、飯を喰う理由になったのは、素直の腹が減ってた訳じゃない。
俺が朝から授業も受けずに眠りこけていて、なにも喰っていないのが原因。
店に向う途中の電車の中で、腹がミットモナイぐらい『グゥグゥ』鳴ってしまい。
それを見兼ねた素直が、食事をする事を薦めてきた。
そして俺は、空腹に負けて、なにも考えずにMACに入り。
ビッグマックを2つと、照り焼きバーガーを1つ。
それに、ポテトのLを1つに、更にナゲットを1つ喰い漁る。
その間、素直はジンジャエールを飲みながら、なにが面白いのかは知らないが、俺をズッと眺めていた。
そんな面白いぐらい、ガッツイてたんだろうか?
まぁそんなこんなで、無駄な時間が経ってしまい。
素直が楽器屋に居れる時間は、1時間程しかない酷い状態になっていた。
わざわざ横浜まで出てきたって言うのに、悪い事したな。
取り敢えず、謝るか。
「悪いな、素直。俺が飯なんざ喰っちまってたから、あんまり時間無くなっちまったな」
「あぁ、全然大丈夫ですよ。今日は下見しに来ただけですから。それに買うものが決まっていたら、また次来た時、直ぐに買えますからね」
「そうかぁ。……ホント悪いな」
「あの、真琴君……あの、その……その時はまた、僕と一緒に来てくれますか?」
「なに言ってんだよ。そんなの当たり前だろがよぉ。今日、時間が無いのは完全に俺のせい。そのミスの償いは、今度来た時に必ず報いる。……第一よぉ。シンセサイザーって重そうなイメージねぇか?オマエが1人で家に持って帰るには、ちょっと無理があんだろ」
「あっ、あの……持って帰らなくても、配達して貰うつもりなんですけど……」
「あぁそっか。そうだよな。じゃあ、俺イラネェか?」
……だよな。
世の中には『配達』って便利なものが有るよな。
けど、それじゃあ償いは出来ねぇな……どうすっかな?
「あっ、あの……今度も一緒に来てくれるんじゃないんですか?」
「あぁ。オマエが、俺を必要だって言うんなら、幾らでも着いて行くが」
「そっ、そうですか……じゃあ、おっ、お願いします」
「なんだ、持って帰るのか?」
「あぁ~っと……えぇっと……あっ、はい」
「ふ~ん、そっか」
「えぇっと……直ぐにでも、家で弾いてみたいですし」
なにを焦っているのか知らないが、素直は必死にそう言った。
「あぁそうか……じゃあ、俺が家まで持って行ってやるよ」
「あっ、あの、最寄の駅までで良いです」
「はぁ?なんでだよ?んな面倒臭い事言わねぇでよぉ。別に家まで持って行きゃあ良いじゃねぇか」
「あっ、あの……ぼっ、僕ん家、結構そう言うのが厳しいんで」
「あぁそう言う事な。じゃあ駅までな」
「あっ、はい」
嬉しそうに返事を返してきた。
本人が納得出来る様な回答が出来たんだから、まぁ良いッか。
んじゃあ話も付いた事だし、早速、シンセを見て行こうぜ。
最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>
今回は、特に意味はない回なのですが。
なんとなく、ホッコリしたシーンを入れようかなぁって思って書いてみたです♪
まぁ、その結果は、倉津君が臭いフェチだと言う真実が露呈しただけなんですけどね(笑)
さてさて、そんな中、次回は本命である『シンセの購買』に入って行くのですが。
倉津君が居て、普通に購入出来る筈もなく、また一波乱起こりますです♪
なので良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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