●前回のおさらい●
倉津君の寛大な処置に、涙が自然と零れ落ちる奈緒さん。
その涙が、奈緒さんの膝枕で寝ている沙那ちゃんに掛かってしまい……
あぁ……奈緒さんの泣き声と、零れ落ちた涙が、沙那ちゃんの顔にかかって、沙那ちゃんが起きちゃったな。
寝てる子に可哀想な事をしたな。
「あぁ、本当だね。雨漏りしてるね」
おぉ……流石は奈緒さん。
相も変らず、どんな時も対応が早いな。
まだ感情のコントロールが利かずに、眼から涙がポロポロ零れてるのにも関わらず。
それを強引に拭きとり。
そのまま言葉を発し、沙那ちゃんの話に合わせて行ってるよ。
この人、本当にスゲェな。
「奈緒お姉ちゃん。泣いてるの?涙が一杯出てるよ」
「ははっ……泣いてるのがバレちゃったね。恥ずかしいから、隠してたのに」
「……なにか悲しい事が有ったの?おにぃちゃんと喧嘩したの?」
「うぅん、違うよ。喧嘩なんて、なに1つもしてないよ。これはね。嬉しい時に流れる涙なの。お姉ちゃんね。泣く程、嬉しい事が有ったんだよ」
「ホント?」
「うん、ホント。だから、沙那ちゃんは安心して、もぉちょっと寝てて良いんだよ。ゆっくり、おやすみ」
「うん。……良かったね、お姉ちゃん」
「うん」
お互いが笑顔で顔を見合わせてから。
そう言った後、奈緒さんが、沙那ちゃんの頭を優しく撫でていると、沙那ちゃんは再びスゥスゥっと寝息を立てながら眠ってしまった。
涙が、顔に零れ落ちて起きたとは言え、少し寝惚けていただけのかも知れないな。
「……ねぇクラ。この子、可愛いね」
そんな自分の膝の上で眠る沙那ちゃんを見ながら、奈緒さんは呟く様な小さな声で、そう言った。
恐らくは、母性本能が働いてるんだろうな。
「そうッスね。俺と、奈緒さんの子供も、こんな風に育って欲しいッスね。みんなに愛される子に育って欲しいッス」
まぁそうなる為にも。
俺には、まだ、どうしても乗り越えなきゃいけない困った諸事情が、ふんだんに有るッスけどね。
それも出来るだけ早急に対処して、そう成れる様に努力するッスよ。
……俺の馬鹿遺伝子だけは、どうにも成らないッスけど。
「そうだね。私なんかの子じゃ、こうは育たないかも知れないけど。クラの血が混じるなら、それも可能かもね」
「いやいやいやいや、なにを言ってるんッスか?奈緒さんの子供だからこそ、こう言う良い子に育つんッスよ。俺なんか血が色濃く出ちまったら、その子の人生、お先真っ暗になっちまうだけじゃないッスか。辞めてやって下さいよ」
いや、ホントそうッスよ。
馬鹿で、厳つくて、その上、粗暴なのにヘタレ。
どこを取っても、なにも良い所がない様な人間が俺ッスからね。
そんな無様な能無しな能力だけは、絶対に、自分の子供には背負わせたくないッスよ。
だから目一杯、奈緒さんに似た子を産んであげて下さい。
そうすりゃあ、男であろうと、女であろうとハッピーライフだけが待ち構えてますからね。
なんの欠点もない超絶優良種な『眉目秀麗』な子供が出来る筈ッスから。
心から、そうお願いするッス。
まぁ、無理矢理欠点を探すとしたら。
唯一男だった場合、ちょっと身長が低くなっちゃうかもしれませんがね。
女の子だったら、完璧過ぎる筈です。
「そんな事ないって。私は、クラみたいな優しい子に成って欲しいな。誰にでも優しくて、それでいて最後には、絶対に人を信じられる。そんな子供が良いなぁ」
「いや、奈緒さん。それ、ダメっしょ。多分、そんなお人好しじゃ、騙されるばっかりの人生に成っちまうッスよ。少しぐらい、人を騙せる位じゃないと、これからの世の中渡っていけないッスよ」
「そぉ?別に騙されたって良いじゃない。人を騙して、それを笑って居られる様な人間の方が、私は嫌だよ。私みたいに大切な人を裏切る様な人間には成っちゃイケナイ」
あぁ……この分じゃ。
俺がチャリを押しながらチンタラチンタラ悩みながら帰ってる間に、眞子の奴が、奈緒さんに電話しやがったな。
奈緒さんの言動には、それを匂わす言葉が見え隠れしているし。
今回の一件で、俺が一番腹が立っていた話を、今現在の奈緒さんには、まだしてない状態だからな。
要するに、心の中でしか言ってなかったのに、こういう言動が奈緒さんの口から出たって事だ。
でも、1つ勘違いがあるッスよ。
確かに、あんな話を、笑いながら平然としてた奈緒さんは気に喰わないッスけど。
事情が有った以上、奈緒さんは、俺を騙してなんかいないッスし、裏切ってもいないッスよ。
それに、女子同士だからしてしまうノリなんてものもあるんですから。
そんな訳なんで、もうアレに関しては、悪い偶然が重なったとしか俺は認識してないんで。
「ハァ……眞子から聞いたんッスか?」
「うん、聞いた。それで凄く考えさせられた。今思えば、よくもあんな酷い話を、笑いながら出来たもんだと、自分の無神経さを罵りたくもなったよ。私は、クラの言う通り、最低な事をしちゃったんだよ」
「そうッスかね?俺個人としては、間違いを反省が出来たんなら、もぉそれで良いと思うんッスけどね。そりゃあ、そこで反省出来なきゃ、流石の俺でもドン引いちゃいますけど。奈緒さんは、ちゃんと反省した。だから、もぉ、それで良いんッスよ」
ホント、それで良いんッスよ。
「そうなんだ。あんな事を仕出かした私なのに、まだ、そんな風に思ってくれてるんだ。……クラッて、本当に優しいんだね。私には勿体無い彼氏だよ」
「いやいや、そんな事ないッスよ。勿体無いのは奈緒さんの方ッスよ。それに優しいのは、奈緒さん限定ッスから」
これ、デフォルト。
奈緒さんと付き合い始めた頃からのデフォルト。
その前は知らん。
記憶に無い。
(↑ただの未成年犯罪者だったからな……憶えてない事にする俺)
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
倉津君、今回も見事な対応で、全てを上手く転がしましたね♪
中々やりおるわい(笑)
しかしまぁ、なんですね。
今話してるのは奈緒さんだけなので、こう言う事を言うのもアレなんですが。
あの、どうしようもない屑だった序章から比べたら、世間での倉津君の評価もずいぶん変わったもんですよね。
自身の本質(優しさ)を前面に出せるようになったし。
失敗が多いとは言え、沢山の努力や経験を重ねて、じっくりと成長してきた甲斐があったと思います。
さてさて、そんな中。
まだ人から『優しい』っと言われるのが、少し恥ずかしい様子の倉津君。
全く持って無意味な反論をしてる様なのですが。
この後、奈緒さんは、どの様な返しをしてくるのか?
次回は、その辺を書いていこうと思いますので。
良かったら、また遊びに来てくださいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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