●前回のおさらい●
楽屋で揉めている奈緒さんと崇秀。
そんな中、山中君が、自分の実力を示す為に、ステージに向かって歩き出す。
彼は一体、どんなパフォーマンスを繰り出すのか?
(今回暴力表現がありますので【閲覧注意】です(笑))
「オイ、もぉそこ、どけや下手糞共。ステージ上で、いつまでも胸糞悪い音立ててんちゃうぞ」
「「「「「ザワザワ……」」」」」
ステージに上がるなり山中は、いきなりドラムの元へ行き。
喧嘩腰に、そんな挑発染みた事を言い始めた。
そして、そんな突然の闖入者に会場内はざわめき始め。
当然、ドラマーからは反論される。
「オイオイなんだオマエ?なんのつもりかは知らないが、順番も守れねぇガキが調子に乗ってると、軽い火傷じゃ済まないぞ」
「やかましいわ、このド下手糞が!!」
「あぁ?」
「オマエこそ、自分の事も解ってへん様なアホの分際が、公共の場で好き勝手ドラム叩くなちゅうんじゃ!!オマエの音なんぞ、酷いノイズや。自分勝手な暴走音でしかない。聞いてるだけでも胸糞悪いで……」
「テメェ……」
「あのなぁド下手、ドラムの基本もわかってへんねんやったら、そんな所でドラム叩いてやんと、さっさと、そこどけや。そんなんやから、こんなショウモナイ味噌っかすを集めた様な糞ライブに参加せなアカン羽目になるんじゃ……このカスが」
「こっ、この野郎~~~!!人が下手に出てりゃ、好き勝手言いやがって……もぉ我慢の限界だ!!ぶっ殺してやらぁ!!」
「ピィピィと、やかましいやっちゃのぉ」
立ち上がろうとした瞬間。
山中は、ドラマーが座っている椅子をイキナリ蹴り。
それで足カックンになった相手に、更に追い討ちをかけるが如く顔面を蹴って、一瞬にして意識を刈り取る。
この流れる様な一連の行動。
これは明らかに、山中が喧嘩慣れしている証拠だ。
まぁ俺も、よくやる手口なんだが……オマエ、此処ライブ会場だぞ。
よくまぁ、そんな酷い事が出来たもんだな。
「「「「「おぉぉおおおぉぉぉぉ~~~ッ!!良いぞ、殺しちまえ!!」」」」」
このアクシデントに、会場内は一気に騒然としている。
そんな中に有っても山中は冷静に対処。
意識の無いドラマーを抱えて、オーディエンスに投げ込む。
「おらよ!!オマエの居る場所はこっちやない。大人しゅう自分の立場ちゅ~もんを弁えて、そっち側で俺の音を聞いとったらえぇんじゃ、この糞ボケが」
中指を立てて舌を出す。
定番の挑発ポーズだが、こう言うのって見てて楽しいよな。
客も喜んでるしよ。
「「「「「おおぉぉおぉぉぉおぉおぉおぉ」」」」」
「ほな、邪魔者も消えた事やし、俺がドラムを叩かせて貰おか」
「「「「「おぉおぉ!!やれやれ!!」」」」」
「……あぁそやそや。序に言うとくわ。もし俺が口だけの下手糞やったら、大ブーイングした上で、ステージ上でボコボコにしばいても構へんで」
「「「「「そんな心配しなくても、お望み通り、そん時はステージ上でブッ殺してやるよ」」」」」
「おおきに、おおきに……そやけど、それやるには一個条件があんで」
なんか提案があるらしい。
何を言う気だコイツは?
「おう、なんだよ?早く言えよ関西人。今更ビビッてんのかよぉ?」
「アホぬかせ。この期に及んで、なにをビビる必要があんねん?此処でビビるんやったら、最初から出て来ぇへんわ。それにのぉ、そんな命乞いみたいなミットモナイ真似、関西人が晒すかい」
「じゃあ、なんだよ、関西人?」
「俺のドラムが、コイツ等の音を喰い破ったら、この場は、俺のバンドと総入れ替えさせて貰うで……それでも構へんか?」
「おぉやれ、やれ!!このライブハウスには、元より下手糞なんぞに用はなしだ!!」
「さよか。……ほな、遠慮のぉ全喰いさせて貰うで」
空席になったドラムに向かって歩き出すが。
その途中で、ギターが奴が、山中の首根っこを掴んで止める。
まぁそうなるわな。
「おい、オマエ、ちょっと待てよ。誰がテメェとつるんでやるつったよ?」
「カスが……演奏せぇへんねやったら、この場から降りぃや。それともオノレは、中学生の叩くドラムにビビッとんのか?シャバイにも程があんぞ」
「んだとコラ?」
「この糞カスが……ギターしか持たれへん様な、そんなヒョロコイ体で、俺と此処で喧嘩するちゅう~んか?えぇ度胸やないか。……オノレも、さっきの奴同様、客席ダイブしてみるか?」
オマエ……その目、かなりヤバいぞ(笑)
「ケッ!!くっ、口だけは達者な奴だな。……しょ、しょうがねぇ。そこまで言うなら楽器で勝負してやらぁ!!」
「それでえぇ、賢明や」
圧倒的な暴力は、時にして必要な場合がある。
使い様を誤れば、全て己に返って来るが、上手く使えば威圧になる。
このギターの奴からも感じ取れるが、山中は後者を上手く使えた様だ。
しかもまぁ山中の奴。
ホント、なに事も無かった様にドラムの席に着きやがった。
意外に度胸あんな。
「ほな行くで。曲はMisfitsのAstro Zombiesやったな。1・2」
座るや否や、山中の早い掛け声と共に、曲は素早くかかり始める。
この時点で、山中は後には引けない1人ぼっちの戦いが始まった。
しかも、音が下手糞だった場合は公開処刑決定の『Dead or Alive』方式でだ。
当然、俺は手に汗を握って、それを見守った。
……んだが、そんなものは無駄に過ぎなかった事を、直ぐに思い知らされる。
あの奴の身体的特長とも言える撓る腕と、撓る手首が激しくドラムを叩き。
パンクの曲に相応しい、激しいビートを刻み始めた。
そして今更ながら気付いた事なのだが、スネアドラムを叩く足の動きも早い。
まるで今までの演奏が、全員を試していたかの様な変貌だ。
兎に角、奴のドラムは他を威圧し圧倒する。
ただ此処で、それが『我儘な音』かと聞かれると、それは違う。
アイツは、完璧に他の奏者との連携を図りながらも、綺麗なリズムを刻み、音を外す気配すらない。
他の楽器と同調しながらリードすらしている。
まさに、山中とドラムが一体化した様な感じすら受ける。
しかしまぁ、なんだな。
全然関係ない話なんだが、此処で、まさか『MisfitsのAstro Zombies』が掛かるとは、夢にも思わなかった。
このTHE-Misfitsってバンド、アメリカの結構、有名なパンクバンドなんだがな。
兎に角、ホラー・イメージが強いバンドで、過去の経歴から見ても、矢鱈とホラー映画とコラボレーションしているんだよな。
そんなマイナーメジャーなバンドの曲が、此処で掛かるとは、夢にも思わんかったわ。
因みにだがTHE-Misfitsの略歴はこんな感じな(↓)
結成当時はグレン・ダンジグ(vo、piano)ジェリー・オンリー(b)マニー(ds)というギターレスの3人編成で始まったバンド。
1978年には新ドラマーとギタリストを迎えて4人編成となり。
1979年には彼等のシンボルとなる骸骨マーク”Crimson Ghost”や、髪の毛を真ん中に垂らしたトレードマーク”Devilock”の登場によって、現在のアイデンティティが確立された。
その後、数々のメンバー・チェンジを繰り返しながら、1980年当時15歳だったジェリーの弟であるドイル(g)が加入。
此処で、グレン、ジェリー、ドイルという黄金ラインナップとなる。
1982年に記念すべき1stフル・アルバム「WALK AMOUNG US」
1983年に2nd「EARTH A.D./WOLF'S BLOOD」を発表。
しかし、この頃には、バンド間の不協和音が最高潮に達し同年秋のハロウィン・ライヴを最後に解散した。
残された映像を見ればわかるんだが、兎に角バンドも客もよく暴れる。
まぁこの辺は、最近薄れてきているパンクの基本だな。
因みにだが、THE-Misfitsの名前の由来は……グレン・ダンジグは、マリリン・モンローの死を取り巻く噂に非常に興味を持っていて、モンローの遺作である映画『荒馬と女』(原題:The Misfits)からとったものだそうだ。
只今、楽屋にて揉めている説明マニアの奈緒さんに代わり、倉津真琴がお送りしました。
こんな感じで良いのか?
***
っとまぁ、そうこうしてる間に、2分ちょっとしかない曲だから、曲自体は直ぐに終わるんだが……
勝敗は、山中以外のメンバーの顔を見れば明白だ。
ステージ上に元居たメンバーは、山中に煽られて上手く弾けなかったのか、表情が思いっ切り暗い。
そんな奴等を嘲笑うかの様に、山中は笑いながら話し出す。
「ハハッ、笑かしょんのぉ。なんやねん、それ?MisfitsのAstro Zombiesとは思えん中途半端な音やなぁ。まぁ言うたかて、元々そないに上手いバンドやないから、そう言う面ではリアルと言えばリアルやけどなぁ」
「クッ!!」
「……まぁその中でも特に酷かったんはベースのアンタや。アンタ、最悪の極みやな。自分が目立つ事バッカリ考えて、俺とのラインを作ろうともしてへん。しかも合わす気0って。……そんな風にヤル気が無いんやったら、オマエ、もう帰れや」
「「「「「ひっこめ~~~っ、ベース!!帰れ!!帰れ!!帰れ!!」」」」」
「やってよ。……ほな、お疲れさん。お帰りはアチラやで」
反論の異を唱える隙も与えて貰えず、すごすごとベースは楽屋に引っ込んでいく。
今回の演奏に、自分也に思う事が有ったんだろな。
だが、酷いのも否めない。
これじゃあ、ただの晒し者じゃねぇか。
けど、ちょっと待て!!
此処でベースが引っ込んだって事は、まさか……あの馬鹿、イキナリ俺を呼ぶ気じゃねぇだろうな?
まぁ、今更ジタバタしても始めらねぇから、別に俺を呼んでも構わないんだが……
俺はThe Sex Pistolsのナンバー『Anarchy In the U.K.』か、崇秀の作ったオリジナル『Not meet the time』しか弾けないのは、最低限考慮しろよ。
これは命令だ。
さてと、どうなる事やら。
悟り(ヤケクソ)を開いた今の俺は、自分自身に余裕すら感じる。
なんて思っていたら。
「オイ、関西人。オマエがベースを退場させたんだから、さっさとオマエの所のベースを早く呼べよ」
「まぁそう慌てんなって、今呼んだるさかい」
うぉ、自分だと判ってるだけに、今更ながらドキドキして来たぞ。
これはまるで、指名を一回も取れなかったホストが、初めて指名を貰う瞬間みたいな気分だな!!
まぁ、どんな気分かは知らんけどな。
「奈緒ちゃ~~~ん、出番やで~。はよ来てくれなぁ。俺、このまま、此処で1人で居ったら、緊張で、うんこ漏らしてまうでぇ~~~」
はぁ?そこで奈緒さんだと……
あぁけど、よくよく考えたら順当なラインだよな。
奈緒さんの楽曲レパートリーは異常に広いから、色々な曲が弾ける可能性が高い。
なら、2曲しか弾けない俺を呼ぶよりも良い判断だと言える。
ただ、その分、俺の出番が無かったりしてな。
ははっ……笑えねぇ。
「奈緒だと?奈緒って、第1部でオマエが一緒に弾いてた『Jazz-R』の奈緒ちゃんの事か?」
「そや、えぇやろ。奈緒ちゃんは、ウチのメンバーや」
「「「「「ふざけんな!!来るかぁ!!調子のんなよ、アホ関西人!!死ね!!嘘付くな!!そこでウンコ漏らして死んでろ!!」」」」」
「ヒドッ……」
山中が馬鹿話しているうちに、俺は楽屋の状況を確認しにダッシュして行った。
最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>
山中君、エグイ攻勢に出ましたね(笑)
まぁ少々誇張表現をしてしまったのですが。
この時期(1990年代後半)って、意外とこう言う事が、ライブハウスでは結構あったんですよね。
バイオレンスな揉め事も、かなり多かったですしね(笑)
さてさて、そんな感じでステージ上は進んで行っていますが。
倉津君が向かった、楽屋で揉めている奈緒さんと崇秀の方は進展があったのでしょうか?
それを次回は報告したいと思いますです。
また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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