最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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039 不良さん 大事な何かを忘れてる(笑)

公開日時: 2021年3月16日(火) 23:36
更新日時: 2022年11月7日(月) 00:21
文字数:4,508

●前回のおさらい●

フレットレス・ベースの説明を向井さんにして貰う不良さん。


だが、説明の内容がイマイチ把握出来ないままの状態なのにも関わらず。

ベースが気に入ったのと、向井さんの「無理そう?」っと言う言葉にムキに成ってしまい、購入を決意。

その場で、イキナリ店員を呼び、そのまま購入しようとするが、向井さんに試し弾きをして貰う事を思いだし、それを実行して貰う。


そして良い音が出るベースだったので「このベース、当たりだったよ」っと言う向井さんの言葉に、ついつい反応して余計な事を言ってしまい、彼女を拗ねさせてしまう。


さて、どうする不良さん(笑)

「すっ、すんません」

「はぁ……もぉ、勝手にすれば」


そう言って、少し拗ねた奈緒さんは、この場から離れていく。



「あぁ……ちょ、ちょっと奈緒さん」

「あの、お客様。コチラの商品は、どうします?」


奈緒さんを追い掛けようとしたら、店員に止められた。


あぁまぁそうだわな。

閉店間際に来たんだから、客とは言え、これ以上、俺等に時間をとられるのは嫌だろうしな。


なら!!



「あぁ買います、買います。もしあれだったら、先に包んでおいて下さい」

「あっ、ありがとうございます」

「あぁ、あの、買いますけど。ちょっとだけ精算は待って貰って良いですか?」

「あぁはい。解りました。では、レジでお待ちしてます」

「ッス。……ちょ!!奈緒さん待って下さいよ」


そう言った後、慌てて奈緒さんを追いかける。


けど、そう言えば俺、ベースの金額聞いてねぇや。


まぁ良いか。

幾ら高いと言っても、どっかの糞高いベースみたいに何百万もしねぇだろ。


***


 奈緒さんを追いかけた結果。

俺に文句を言いたかったのか、奈緒さんをアッサリ捕まえる事が出来た。

いや、寧ろ、掴まえたと言うより、俺を待ち構えていたっと言う方が、より正確かも知れない。


怒ってるな。

こりゃあ、大分、怒ってるな。



「あのねぇ、クラ。さっきのは、ちょっと酷くない?あそこで、あんな事を、普通言う?」

「いや、だから、すんませんって。ネタッスよ、ネタ」


いかんな。

こう言う悪癖は、どうにも山中のボケ菌に汚染されてる証拠だ。


あのアホ関西人が、いつも面白い事ばっかり言うもんだから。

つい俺も、自分が面白いと思った事を口に出しちゃう癖が有るんだよな。


此処は、反省だな反省。



「もぉ」

「怒んないで下さいよ。ってか、元々それに言い出したのは、奈緒さんじゃないですか」

「あぁ、そう言えば、そうだよね」


あれ?ケロッとしてる。

ってか、そんなに怒ってないご様子ですな。


だったら……



「あの奈緒さん、取り敢えず、ベースの精算をしたいんで、レジに戻って良いッスか?」

「あっ、ごめん」

「あぁ、良いんッスよ、良いッス」


なんかね。

俺、本当に、この人にはベタ惚れなんだなっとか実感しちまった。

このままじゃ、ナンデモカンデモ許しちゃいそうな勢いなんだよな。


こんなんで大丈夫か俺?


まぁなんにも増して、先にベースの精算しなくちゃな。

そんなツマラナイ事を考えるのは、その後にしよう。


……ってか、危険そうだから考えたくないんだろうな、俺。



「あっ、お帰りなさい。彼女、大丈夫でしたか?」

「あぁ、大丈夫ッスよ……ってか、彼女に見えました?」

「はぁ?違うんですか?」

「あっ、お幾らですかね?」


この店員、滅茶苦茶良い人だな。

奈緒さんを、俺の彼女だって見てくれるなんて、ドンだけ良い人なんだよ。


この店スゲェ気に入ったから、是非、人にも薦めるべきだな。



「あの定価が21万で20%OFFなんで168000円なんですけど、大丈夫ですか?」

「はぁ、大丈……」

「あっ、あの、もぅ少しまけて貰えませんか?彼、学生なんで……」

「へっ?」

「ですよね。……では、少々お待ちくださいね」


俺の支払う意思を無視して、店員は奈緒さんの言葉に反応。

そして彼は、どこかに電話をしながら電卓を叩き出す。


いやっ、あのぉ、別に、そんな事しなくても構わねぇけど。

大体、買い物って、店の言い値で買うのがセオリーってもんじゃねぇのか?



「じゃあですね。上に聞いた処30%までは値引きOKっと言う事なので147000円って事で」

「あっ、ハイ、じゃあ……」

「店員さん。あっ、あのピックと弦2セットづつ、オマケして欲しいなっとか……この子、まだ初心者だし」

「へっ?あぁ、まいったなぁ……けど、時間も無いですし、良いですよ。但し、他の人には、絶対言わないで下さいよ」

「ありがとう」


奈緒さんって、買い物上手なんか?


俺は、彼女の交渉の上手さに感心しながら、財布から金を出す。



「へっ?あれ?ローンじゃないんですか?」

「いやっ、キャッシュだけど?だって、中学生が、勝手にローンなんて組めないっしょ」

「はっ、はぁ」


何を驚いてるんだ、この店員は?

ひょっとして俺が、ローンなんぞを組むとか思ったのか?


もしそうなら、馬鹿言っちゃイケねぇな。


ローンってのは、人に金を借りる行為だろ。

=顔は知らねぇが、ソイツに借りを作るのと同じ。


そんなのお断りだ。

人間、身の丈に合った生活をしねぇと破滅しちまう。


あぁ因みにだが、この金は俺が稼いだ金だ。


先に言っとくが、カツアゲした金じゃねぇぞ。

親父の代行で取立てに行って、ちゃんと自分で稼いだ金だからな。



この後、精算を終わらせて店を出るんだけどな。


俺等が最後の客だったのかして。

店員に案内されながら、電気が、いくつか消えた店内を歩いて、裏口から出る羽目になった。


故に、もぅ時間は21時30分を廻っている。


***


 外に出て思った事は、流石、政令指定都市だって事だ。

こんな時間になっても尚、まだまだ人が溢れかえっている。


そんな中、俺は、奈緒さんと一緒に駅に向かって歩いているんだが……

しかし、こんな遅くまで女の子を連れまわして良かったのだろうか?


なんか奈緒さんには悪い事をしたな。


じゃあせめて、なにかしろのお詫びをしなきゃな。

あぁ、それと、買い物に付き合って貰った御礼も必要だな。



「奈緒さん」

「んっ?なに?」


うぉ、新バージョン!!

『なに?』の前に『んっ?』が付いてる。


それだけで、以前と受ける感じが、全然違う。


はぁ~~~っ、ホント、女の子の表現力には負けるな。


なんて言いながら、照れてる俺。



「あっ、あの……」


緊張する俺。



「んっ?どうかした?」

「あの」


どもる俺。



「ちょ、大丈夫?なんか変だよ?」

「あっ、あの、前から気になってたんですが……」

「んっ?だからなに?」

「なんで奈緒さんって、そんなに可愛いんッスか?反則ッスよ」

「えっ?」


なに言ってんだ俺?



「クスッ、なにそれ?またからかってんの?」

「いやっ、そうじゃなくて」


上擦る俺。


いや、この、俺シリーズも、いい加減ダサいな。

もぉ辞めよ。



「そうじゃなくて……なに?」

「あの、初めて逢った時から思ってたんですが……」

「んっ」

「奈緒さんって、そんなに可愛いのに、なんで俺みたいなボンクラっと遊んでくれるんッスか?」

「なんでって聞かれても……困る」

「イヤ、だってそうじゃないですか。奈緒さん、折角、可愛いのに、俺なんかと居たら損するじゃないですか?それに俺なんかよりカッコイイ奴なんて五万と居ますよね」

「ねぇ、クラ。何が言いたいのかは知らないけど、損しちゃイケないの?」

「いや、そりゃあ構わないですけど。別に、敢えて損しなくても」

「ふぅ……じゃあ、損だと思ってない」

「けど……」

「口答えしないの。口答え禁止」

「また、そうやって、直ぐはぐらかす」

「はぐらかしてないよ。それに心配しなくても、クラは十分格好良いよ」

「えっ?……えぇえぇえぇぇぇ~~~!!」


はぁ?俺が格好良いだって?


そりゃあ勘違いですよ。


俺なんか、生まれて、この方13年。

一度たりとも、女子にモテた事なんかありませんからね。


それこそ告っても、ビビられて女の子が逃げて行くのがオチ。

誰も俺に、そんな事を言った奴なんていませんから……


まぁ、俺がモテない最大の理由は、女誑しの馬鹿秀が、いつも一緒だからでしょうけどね。


はぁ……ホント虚しいな。



「なんで、そんな反応するのよ?」

「だってよぉ……」

「……イジケ虫」

「えっ?」

「今、クラ、仲居間さんの事を考えてたでしょ」

「あぁ、考えたッスね」

「あの人は、特別な人間。……あんな人、滅多にいないよ」


まぁ……ありゃあ確かに、長い付き合いの俺から見ても、ハンパねぇバケモンだ。

なにをやらせても様になる男だ。


そんな事は重々承知している。

だからと言って、そのままギブアップする訳にもいかない。

同じ男として生まれた限りは、なにが有っても、誰であっても、絶対に負けるなんてミットモナイ真似は出来無いからな。


これは、世間で言えば、非常にツマラナイ事なんだが、俺にとっては大事な事だ。


ツレに負けるなんざ、絶対にお断りだ。


今、負けていようが、最後に勝てば官軍だからな。


でも、現時点では、奈緒さんの言う通りだ。

アイツに勝てる事なんざなにもないし、勝とうとする事自体が、所詮、夢物語。


今の俺では、なにをとっても勝てる要素が殆ど無い。

つぅか、あんな天才の上に努力する様な性質の悪い奴に、早々勝てるか!!


虚しいが現実だ。


それでも……俺は、アイツを比較対照にする事だけは確かだ。



「はぁ、これでも、一応は解ってるんッスよ。あんな化物みたいな奴、早々居ない事なんて」

「じゃあ、気にしなくても良いんじゃないの?」

「まぁ、そうなんッスけどね……でも、簡単に負けを認める訳にもいかないんッスよ」

「そっかぁ。男の子って大変だね。でもね、そう言う所が、クラの格好良い所なんじゃないかな」

「はっ、はは……それって、ホントにカッコイイっすかね?」

「私はカッコイイと思うよ。見た目とか、格好ばかり気にしてナヨナヨした男なんて最悪。そんなのに比べたら、クラの方が数十倍カッコイイよ……なんてね……なんかこう言う事を面と向かって言うのって、ちょっと恥ずかしいよね」

「奈緒さん……」


まだ逢って2回目だって言うのに、この人は、ちゃんと俺を見てくれてたんだな。


はぁ……まいったな。

これじゃあ俺が、奈緒さんにドップリ嵌るのも頷ける。


多分、相手のそう言う気持ちって、自分に全身から伝わって来るんだな。


いや、ホントまいった。

俺、本気で、この人の事が好きになりそうだ。


まぁ勿論、俺が奈緒さんを好きな事を、彼女が迷惑だと思わなかったらの話だがな。



「ねっ、そんな事よりも、クラ。おなかすかない?」

「あぁ、そう言えば、俺、昼から奈緒さんの学校の前では張ってたから、なにも喰ってねぇや」

「へっ?ちょ……まさか、私が出てくるまで、アソコで、ずっと待ってたの?」

「ッスよ」


うわっ、引かれたかな。



「ホントにもぉ、クラは困った子だね」

「いや、だって、奈緒さんが早退とかしたら不味いなって思って……すんません」

「はぁ……もぅ、ホント……まぁ良いか、でも、学校サボったらダメだよ」

「ッス」

「じゃあ、おなかも空いたし。此処は奮発してモスとかに行っちゃう?」

「そうッスね。でも、今日は、俺、奈緒さんを散々引っ張りまわしたから、絶対に此処は奢らせて貰いますよ」

「ダメだよ。ワ・リ・カ・ン」

「ダ・メ・で・す。今回ばかりは、奈緒さんが口答え禁止ッス」

「もぅ、なによ、それ?」


そう言って奈緒さんは、ちょっと頬を膨らました後、俺を見ながら『クスッ』っと笑ってくれた。

そんな彼女の笑顔を見ながら俺は『色々あったけど、今日はホント充実してる1日だな』っと思わざるを得なかった。


こんな日がズッと続けばいいのになぁ。


そんな事を考えながら、奈緒さんとモスに向かって行くのであった。


幸せだぁ!!


……ってか。

それは良いんだけどよぉ。

俺、なんか重要な事を忘れてねぇか?


なんか非常に重要な事を、奈緒さんに言わなきゃいけなかった様な気がするんだが……気にせいか?

(↑奈緒さんに会いに行った、当初の目的を完全に忘れてる俺)


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


これで七話は終了に成ります(笑)

ベースの件で揉めたり。

奈緒さんと買い物に行ったり。

お目当てのベースを買えたりで、比較的、幸せな時間を満喫する倉津君ですが……


世の中、そんなに甘くないのは当然の事。

次話では、結構、この子の人生を左右するお話が出てきます。


それが何かは……読んでくれると嬉しいなぁ|д゚)チラッ


そんな訳で次話から。

『第八話 不良さんの横浜事変』をお送りします。


是非、またお越しくださいね(*'ω'*)ノ

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