彼女を姿を変えられる理由。
”傷が治る“という事象。
そのことの秘密を、必死に説明しようとしてくれてた。
小難しい言葉ばかりで、全部を噛み砕いて理解することは難しかった。
そもそも、——だ。
目の前で起こった現象があまりに異常すぎて、「話」どころじゃなかった。
マジックを見た時とか、幽霊を見た時とか、まだ、「ロジック」がハッキリしてるから、考えるだけの余地がある。
…でも、「姿」が変わるなんてあり得ない。
考えようにも考えられない。
鏡の向こうにいる自分には触れられない。
あの感じ、…わかるかな?
鏡の中から人が出てきたらびっくりするだろ?
絶対に起こらないことが起こったんだ。
そりゃ、パニックにもなるって。
首を傾げる俺に、アカリは説明を続ける。
明日は朝が早いなんて、すっかり忘れてしまっていた。
時計を見たら、いつの間にか12時を過ぎていた。
さすがにまずいなと思いながら、彼女の話を遮った。
とにかく、一旦落ち着こう
無理やりにでも自分にそう言い聞かせ、状況を整理しようとした。
相変わらず、色んなことがわからない。
わかる部分と、そうじゃ無い部分との差が激しすぎる。
特に、——話。
「生物」が、ウンタラカンタラは。
率直に言うと”ややこしい”
色んな専門用語が飛び交ってた時点で、すでにお手上げ状態だった。
ただ、それでも聞けたのは、あり得ない現象に対する「理解」を進めようと思ったからだ。
訳がわからない話も、自然と耳を傾けてしまう自分がいた。
それだけ、“理解したい”と思う自分がいた。
変な感じだけどさ。
彼女がどうして逃げているのか。
どうして、行方不明になってたのか。
知りたいこと。
気になること。
たくさんの疑問点を抱えながら、俺はシャワーを浴びることにした。
ひとまず、彼女の言うとおりにしようと思った。
ぶっちゃけどうすればいいかわからなかった。
警察を呼ぶべきだろうとついさっきまで考えてたけど、絶対ダメって言うから、まあ…、仕方なく。
ふと我に帰る。
明日は6時に起きなきゃいけない。
呑気にしてる場合じゃない。
眠れないのはわかってたが、ベットに入った。
彼女はソファで眠るみたいだった。
ベットを使うか?って聞いたのは聞いた。
でも、「大丈夫」みたいだった。
っていうのも、久しぶりに、テレビを見たかったらしくて。
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