セルヴェの考え

ラーバノ・セルヴェの日記
Kay.
Kay.

♯6 注文の少ない料理店

公開日時: 2023年8月21日(月) 20:17
文字数:1,644

セルヴェはタクシーを降りて、目の前のレストラン風のコーヒー店に入った。

内装は至って普通。ソファー付きのテーブルが3つ、イスのタイプが5つ、カウンターが5つある。

ただ、気になったのは、なぜか内装がすべて青いこと。勿論白い部分もあるが、青が圧倒的に多い。


そんなお店にセルヴェは入った。

セルヴェはカウンターに座ることした。

すると、店員さんが来る。


おはようございます。なににしますか?


やあ、メニューはあるかな?


メニュー表お持ちします。


そう言うと彼女はメニュー表を持ってきた。セルヴェはこのメニュー表をみて驚いた。

サラダ、コーヒー、グリルチキン、ターキーサンドイッチ、コーンフレーク、お任せの7つしか載ってないのだ。

ここまで少ないメニュー表は初めてみた。


えーと…… これは全部かな?


そうですよ。


えーと…… このお任せとは?


あー それはキッチンの人がオリジナルで作ります。


どんな料理が出る?


それは私たちには分かりません。


なーなるほど…… 。


セルヴェは話を聞いて言葉を失う。そして少し考えたあと、ついになににするのかを意を決して注文した。


では、このお任せで。


え、お任せですか?


ああ、少し興味がある。


本当にお任せで?


ああ、本当だ。それとコーヒーはアイス、フレッシュだけ入れてくれ。


わ、わかりました。少々お待ちください。


ああ、頼むよ。


店員さんはこの人大丈夫か? みたいな不思議な顔をしていた。首を傾げていた。

どうやら、かなりヤバいものが出てきそうな予感だ。

メニュー表にあんなに大々的に書かれてあるし、冒険してみたい気分だった。メニュー表には青い星の真ん中に大文字で「お任せ!メニュー!」なんて書かれてあったらそりゃ興味は出るだろう。昔、親にあの場所に行くなと言われて、興味津々にその禁止場所に入って怒られるのと一緒だ。

子供なら誰しもがやってしまう。セルヴェは大人だが、心は子供のままだ。


先にコーヒーが来る。その10分後に料理が運ばれてきた。


それをみてセルヴェはまたもや驚く。目の前にでてきたのはハサミの形の揚げ物だ。


なんなんだ? これは?


私にも分かりません。


「なんでお前が知らんのだ!」とツッコミを入れたいところだが、そんな気にもなれない。


これはハサミかな?


そうですね。


これはハサミを揚げてあるのか?


いや…… それは無いはずです。恐らく。多分。


多分とか辞めろよ。


大丈夫です、美味しいですよきっと。


あーそう。


まあ召し上がってください。


そうだな…… 。


これは何でたべる? スプーンか? それともフォークか?


フォークでしょ、これは。さして。


なるほど。


セルヴェはフォークを使って、その物体を刺した。


本当にハサミでは無いのだな?


ええ、恐らく。


と、店員さんが見守る中、セルヴェはその揚げ物に少し躊躇いつつも激しく食いついた。

そこには味わったことのない、ジューシーな肉肉しい、味わい。中をよく見ると、レンコンとお肉だった。それをハサミの形にして揚げてある。


なるほど、中はレンコンとお肉か。


良かったですね、ハサミじゃなくて。


冗談は辞めてくれ。


すると、キッチンから1人出てくる。


どうかね? 私の自慢のハサミ揚げは。


キツイぞ、形とネーミングが。


ジャパンにあるのだよ、ハサミ揚げというものが。


ジャパンに? こんなのが家庭に出てくるのか?


ええ、まあ…… すこし形は違いますが。


なるほど、未知なる国だな。


そうですな。


聞くところ、このハサミ揚げを作ったこの男は1992年の春から1年間日本で暮らしていたそうだ。

その時に日本の料理を研究して、ペルーに持ち帰ってきた。

このお店はオーナーの嗜好でこのようなスタイルになっている。今は朝で人は少ないのだが、昼は混むそうだ。


なるほど、楽しませてもらったよ。また来るよ。


ぜひ! ありがとうございました!


そう言うと、セルヴェは会計をしてお店を出た。

すぐ近くにレアル・フェリペ要塞がある。


今日はまだ始まったばかりだが、朝から刺激をもらった。

「おかしなお店だ。これは日記が騒ぐな」と思いながら、パイプを吹かしながら場所に向かった。



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