20日目の16時頃、セルヴェはバーにいた。
いつものカウンターに座ってカクテルを飲んでいる。
そこにマックがやってくる。
やあ、セルヴェ、今日は何飲んでいるんだ?
マックか、ゴッドファーザーだよ。
ゴッドファーザーか、マリオ・プーソの小説ゴッドファーザーが由来のカクテル、アマレットとウイスキーで作る。飲みごたえがあるな。
ああ。
ん? どうしたセルヴェ? 体調でも悪いのか?
いいや。
あのな、健康はもっとも大切だ。成功よりも、金よりも、権力よりも。
ハイマン・ロスか? ゴッドファーザーだな。 本当に大丈夫だ、少し君が居なくなるのが淋しく思うよ。
あ〜 それのことか、まああと…… 30分でアルゼンチンだからな。
アルゼンチンにはなにも求める?
食べ物とガウチョかな? それと女性。
そうか、目的は変わってないか。
なあセルヴェ、もし今後また会うことがあらばオールド・パルでも飲もう。
そうだな。
君とはまた会う気がする。まあ名刺も渡してあるし。
あ、そうだ。僕の名刺がまだだったね、これだ。
セルヴェはマックに名刺を渡した。実はマックに名刺を貰った時、名刺をカバンに入れたままで、手に持ってなかった。なので、今宵名刺をマックに渡した。
そうだったな! グラッチェ!
もうそろそろだな、アルゼンチンを楽しんでくれ。
ああ! またな!
そう言うとバーを出た。暫くして、船はアルゼンチン
のブエノスアイレス港に着いた。ブエノスアイレス港はアルゼンチンの首都でもあり、最大都市で、南米のパリとも呼ばれる。たしかに身を乗り出して観ると、フランスのような街並みが揃う。まるで絵本の世界に入ったかのような感覚になる。この街並みと海、そして夕焼けと鳥は最高のセットだ。
セルヴェはこの街並みを撮りたくて、カメラで写真を撮った。これで4枚目の写真となる。1枚目は10日目の夕焼け、2枚目は机の上に置いたパイプ、3枚目は14日目の海と鳥、4枚目がこのブエノスアイレスの街並みだ。素晴らしい写真が撮れた。
船から外を眺めていると、船を降りて港を歩くマックがいた。その姿をみてセルヴェは言う。
友は近くにおけ、か…… 。
すると、マックは背を向けに手を軽く挙げる。セルヴェの言葉が届いたのか、それとも偶然なのか。
それにセルヴェは微笑みながらマックの大きな背を観ていた。
まるでトム・ヘイゲンが去るようだ。
そして、夜にバーでゴッドファーザーを呑みながらセルヴェは日記を付ける。
内容はこうだ。
「20 giorno」
ついにブエノスアイレスだ。もう少しで、ペルーに着く。
今日は友とのお別れだ、彼はガウチョの取材のためにアルゼンチンで船を降りた。彼が素晴らしいアルゼンチンの旅になるように祈る。
また、彼の船での生活は目立つ身体にも関わらず、目だ立たず紳士的な行動をしていた。尊敬するよ。
また彼とはどこかで会うだろう。
じきにペルーだ、お互い健康で幸多からんことを。
このような内容を残し、セルヴェはパイプを吹かした。このパイプ用たばこはスウェーデン発祥のマックバレン・ヴァージニアだ。ほのかな甘みがある。
世界、日本でも人気の商品だそうだ。ヴァージニアは無香料だが、比較的甘め。
今日も素晴らしい1日だった。あと3日後にはペルーだ。セルヴェは待ち遠しかった。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!