セルヴェの考え

ラーバノ・セルヴェの日記
Kay.
Kay.

♯2 パナシェとグラスホッパー

公開日時: 2023年8月17日(木) 17:22
文字数:1,762

海の上をカモメが優雅に飛ぶ。かもめのジョナサンを思い浮かべるような鳥だ、凛々しく飛んでいる。

これにセルヴェが話す。


麗な朝だな。まるで映画にでそうだ。


と、パイプを吹かす。パイプはリバプール型だ。


このパイプはこの船で知り合った男性、カサブランカで降りた人に頂いたものだ。モロッコはすべて青い街があると聞いた。その人は革製品を作る仕事だそうだ。

その男は小柄で、落ち着いている。カサブランカには友人がいて、その友人に会いにいくと言っていた。

男は船が好きでイタリアからよくモロッコまでいく。

セルヴェはロックマンの腕時計を見る。


さて、そろそろコラツィオーネ。


コラツィオーネはイタリア語で朝ごはん。客船にはルームサービスが豪華だ。毎日朝食、昼職、夕食が変わる。今日はパンだ。セルヴェはチャパタというパンを食べる。これはイタリア語で「スリッパ」という意味だ。スリッパのような形をしている。生地に加える水分が多くしっとりとした食感が楽しめる。

セルヴェはこのパンが好きだ。コスタ・マリーナにある雑誌を手にして、朝食を食べた。


ファション雑誌で、イタリア語で書かれている。本当は新聞が読みたいところだ。

セルヴェはラ・レプッブリカが好きで、よく読んでいた。


今日で14日目だ。まだ先は長い。パンを食べながら船でやることを考えた。


さてと、海の写真でも撮るか。


そう言うと部屋に戻って、カメラを取り出す。ヤシカフレックスAIIIは1960年代に生産されたカメラ。白黒写真になる。昼頃まで、優雅に椅子に座って写真を撮る。セルヴェは昔からカメラは好きで、色彩のある現代よりモノクロの世界に興味があった。マトリョーシカ作家として、モノクロの世界は非常に興味がある。黒だけのマトリョーシカがあってもすごく楽しいし、あってもいい。マトリョーシカは自由だ。ただの民芸品ではない。大人の趣味だ。だが、子供から大人まで楽しめるものは数少ない。例えば絵本やチェス、子供から大人まで楽しめるのはこの辺だろう。マトリョーシカは世界的に有名なものだが、持つ者は少ない。

興味のあるコレクターは、セルヴェの所にやってくる。彼はオーダーメイドとレディメイドの2つのパターンがある。オーダーメイドのほうが圧倒的に多い。

工房からでる時、最後の仕事は日本からの顧客だった。なんでも昔話の桃太郎が好きで桃太郎のデザインのマトリョーシカを制作して欲しいと言われた。

できた時、その日本人はかなり喜んでいた。自分でも最後にふさわしい仕事だった。


海の写真は良く撮れた。その時、トビウオが跳ねた。

その時のシャッターチャンスは最高の出来。モノクロだが、感動ものだ。


13時頃、バーでカクテルを呑みながらいつもの日記を書いていた。

その時、1人の男性が喋りかけてきた。


やあ! なんだ? 日記書いてるのか!?


この男はマクソン・クラリー、大柄のルーマニア出身でイタリアのジェノバ在住だ。彼は速記者をしている。マックというネームで呼ばれる。彼はアルゼンチンに行くそうだ。

彼は速記者の傍ら、雑誌ライターをしている。今回アルゼンチンの民族衣装ガウチョの取材に行くところだ。船に乗って11日目に出会った。

手にはパナシェを持っている。


やあ、マック。そうだ日記だ。君はパナシェを呑んでいるのかい?


ああ、このビール美味しい! 君は? その青色のやつなんだったかな?


これはグラスホッパーだ。


あー! それね!


呑むかい?


いいや、甘口は苦手でね。


辛口のほうがお好きか。


まあね。


僕は甘口でも辛口でもいける。ワインは呑めるかな?


いやワインは苦手さ。


イタリアに居るのにかい?


生まれはルーマニアさ、まあワインが苦手なルーマニア人がいてもいいだろう?


そうだな。僕はワインよりカクテル派だ。


おれはビールやウイスキーがいいな!


ウイスキーか、いいね。なにを呑むのだい?


ジェムソンはすきだ!


ジェムソンか、アイリッシュは僕もすきだ。どうだ、今度呑みにいくかい?


いいね! またその時連絡くれ。


わかった、君の番号に連絡するよ。


ああ! またな! ガハハハハ!


そう言うとマックはバーの女の子に話しかけに行った。


まったく、元気なお人だ。


マックとお酒の話で盛り上がった。この話はセルヴェも好きなので、楽しい思い出だ。「あの男とはどこか気が合う」そう思いながら、グラスホッパーを飲み干した。


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