バタン!
ベッドの上で、むせび泣く少女の耳に、むなしく扉が閉じる音が響いた。
少女の頭には先ほど、リオンが言った「おまえが妊娠するまで、毎日するからな。早くはらめばいいな」という言葉が、繰り返し響いていた。
そのまま、自身をぼんやり見やる。
ビリビリにひきさかれた、もう服とも呼べない布切れに、強い力で捕まれた腰には、手形の痣がのこっていた。
陰部はヒリヒリと痛み、熱をもっていて、いまだに出血していた。
「これが、本当に毎日続くのかな‥」
少女は恐ろしさに身震いし、そのまま膝を抱えて丸くなった。泣きたくないのに、瞳からはぽろぽろと、涙がこぼれおちて、乱れたベッドに新たに染みを作っていった。
暫く丸まっていた少女だが、のろのろと動きだした。
「綺麗にしなきゃ‥」
廊下にでると、強い酒の匂いが蔓延していた。リオンが、一人で酒盛りを再開しているらしい。
酷く荒れているのか、時折ビンが壁に叩きつけられ、割れている音が聞こえる。
少女は身をいっそうとすくませ、音とは反対の裏口へと向かった。
そのまま、裏口から外に出たリオンは、井戸から水を汲み上げ、夜風が躰につきささるなか、水をあびた。
躰は凍えるようだが、ぼんやりとしていた頭は急速に冴えてきた。‥それが事態を好転させるとは思わなかったが。
少女は、昨日あった人生を急変させた出来事について、思いを馳せていた。
その孤児院は、国直轄の運営であった。また、神殿とも親しくしており、表向きはこのご時世にしてはましな環境であったといえた。
しかし、その裏側では、孤児の虐待が日常的に起こっていた。
その孤児達の中でも、少女は売れ残りであった。
貧相な見た目に、ぼろの服しかもっていない彼女は、ある程度遺産を持ってやってきた魔物襲来の為の孤児達よりも、また、生来からの孤児でも、一際美しい顔立ちや、声を持つものたちよりも、利用価値がなく、日々殴られていた。
当然、虐待されたら、より一層貧相になり、魔物襲来で孤児を子供の代わりに引き取る人々が増えたにもかかわらず、少女を引き取りたいと申し出るものは一人としておらず、裏で人身売買をしていた商人達も、彼女に興味すらもたなかった。
また、少女は曰く付きであった。
当初、彼女がいた孤児院は片田舎にあったのだが、魔物が襲来し、ほとんどの人が死んでしまったのだ。彼女は運よく生き延びたのだが、彼女を引き取った王都では、魔物は不吉の象徴であった。
ゆえに、少女自体も不吉とされてしまった。
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