独り、だと思った。
友達と、アニメの話で、俺だったらもっと上手くやれる、とか言って盛り上がってた。
今思えば笑い草だ。
気がつけば、たった独りでこの世界にいて、もちろん、友達とか仲間とかできたけど、どこか溝があった。
ふわふわと、現実味がなくて、物語を見てるような、そんな気分で日々を過ごした。
王子様と、聖女様と、パーティー組んで、お城で訓練して、騎士団長に投げ飛ばされて、でも、ある日強くなりましたねって誉められて、いい気になった。
俺は勇者だ、英雄だって、王子様や聖女様と友人で仲間なんだって、物語の主人公きどりで、ー 全然、わかってなかったんだ。
魔物のと戦線から、少し離れた簡素な、のどかな村のダンジョン。
そこの魔物たちを討伐しても、クリアしても全然怖くなくて、王子様と聖女様と、俺たち無敵だー!って笑いあった。
その夜、村の人達が俺たちを歓迎して、盛大な宴を開いてくれた。
お城のパーティーとかとは比べ物にならないけど、アットホームで、暖かな人達がお祝いしてくれて、声をかけてくれる、そのことがとてつもなく嬉しかったんだ。
「あんたたちは希望だ!」
「ありがとう、世界の為に戦ってくれて」
「これ食って、鋭気を養ってくんろ」
「この村の名物のサクトウの果実酒、どうぞ」
俺も、王子様も、聖女様も、皆笑って、肩くんで、酔っぱらって、語り合った。
騎士団長なんか、嫁と娘自慢なんてはじめて、隊員達に、飲み勝負挑まれてた。
なんでも、嫁さん、めちゃくちゃ気立てのいい美人らしい。
そうして夜が更けて、俺たちは一度仕切り直して王都に向かった。
次くるときは、旅のはじまりだ!なんて朗らかに話ながら。
その知らせが入ったのは、旅立ちの準備がおわり、明日にも旅立とうと出立式をしていたとき。
荘厳な謁見の間で、それぞれの役割を任命されていた、その中に、伝令がかけこんできた。
「魔物達が、第一次戦線を突破し、第二次戦線まで押し寄せてきた!救援を頼む」
たどり着いた、あの村は、壊滅状態だった。
家々は焼け落ち、そこかしこから生臭い匂いが漂っていた。
「だれか、いないのか!!」
王子様が声を張り上げるが、誰も答えない。
仕方なしに、見覚えのある屋根の家の残骸に近づくと、
ーーー、木片の中に、片目のつぶれた、内臓が引きずり出された男がいた。
なぜ、死んでいないのか不思議なその男は、虫の息で、かすれかすれにつぶやく。
「来てくれたのか、勇者たち。どうか、娘だけは、娘だけは、助けてくれ」
そうつぶやいた直後に、男の瞳から精気が消えた。
慌てて、木片を掻き分けていくと、脳と、腸を喰われた女と、なにも残っていないんじゃないかと言いたくなるような、手足と洋服の残骸があった。
その残骸の中に、青いリボンを見つけて、俺は絶叫した。
狂ったように、ただ、何もできず、叫びつづけた。
それは、あの宴で聖女様が、幼い女の子に上げていたリボンだ。
にぱっ、と、可愛らしい顔で笑っていた少女のものだ。
俺は、おそるおそるさっきの男を振り返った。
その男は、俺と酒を酌み交わし、肩をくみ、またこいよ、としゃべっていた男だった。
ふわふわとした夢が、最悪の状態で覚めた。
ここは紛れもない、現実で、昨日まで一緒にいた隣人が、今日は骸になって出迎える、そんな世界だと、気がついてしまった。
ぞくぞくとした嗚咽がこみ上げ、その場に両手をついて、吐きちらす。
吐くものが胃液のみになっても、こみ上げるものはとまらず、血液まじりの胃液を吐きつづけた。
後から聞いた話では、王子様や聖女様も似たようなものだったらしい。
この世界が、自分の使命が、物語の絵空事、綺麗事ではなく、残酷だときがついてしまった。
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