やさぐれ英雄と名もなき孤児の少女

月城月華
月城月華

第一章

灰色の少女と酒浸り英雄 1

公開日時: 2022年3月14日(月) 02:05
文字数:877

「お待ちしておりました。だと!

俺はお前のようなガキ、知らんぞ。どこのどいつだ、お前のようなみすぼらしいガキを、この世界を救った英雄の妻に、と言ったやつは!!」


リオンは少女をどなりつけたが、少女は少し視線を伏せ、無機質な声色で告げた。


「国王様のご命令です」


「なに!?」


「国王様が、あなた様の妻に私をと。」


「っ、知らん!聞いてない!おい、お前!俺はいまから町に戻る。俺が帰るまでに、きっちりいなくなっておけよ!!」


理不尽な命令だ!とリオンは憤り、少女にわめきちらすが、少女はもう一度頭を下げたまま、そこを動かなかった。


苛立ち紛れに地面を蹴り、リオンは踵を返し、町にもどった。


そのまま、酒場に顔を出し、酒と女を捕まえようとしたが、どの酒場もリオンの姿を見たとたん、扉を閉め、営業を終了してしまった。


ならば、と娼婦を抱こうと、娼館にいくも、

本日は休業日となっていた。


これはおかしいと、人通りが少ない町をみわたしながら、こそこそ端を早足で歩く男を一人捕まえ、襟首をつかみ脅しながら話を聞いてみた。


「これはどういうことだ!?普段なら、空いている酒場も、娼館も閉まっている。立ちんぼの一人も立っていない。

普段寄ってくる女どももいない。なにか、知らないか?」


「い、いえ‥私はなにも」


「ああ?本当に知らねえのか?目を反らさず、俺の目をみて言ってみろ!!」


ぎりぎりと、襟首をさらに締め上げれば、男はついに、白状した。


「お、王命なんだ!!酒場にも娼館にもお前をいれるなって!!

こ、これ以上のことは俺はなにもしらない!」


ギリッと歯を食い縛り、男をその場に放り投げると、リオンは王城に向かった。


「おい!俺を誰だと思ってる!王に拝謁させろ!」


「リオン様、今、リオン様は王城に出禁になっております。

聞いたところ、リオン様はご結婚なされたとか。

おめでとうございます。

つきましては、その御方が、色々ご存知かと。

どうぞお帰りください」


「てめえら、ふざけんなよ!!」



王城に入れなかったリオンは、しぶしぶ屋敷にもどった。


そこには変わらず、先ほどの少女が待っていた。


「お帰りなさいませ。リオン様」

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