神に喧嘩を売った者達

~教科書には書かれない真実の物語~
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第28話 オリエンテーリング 2

公開日時: 2021年8月25日(水) 14:48
文字数:2,372

*本編前にマークのご案内です*

〈 〉内は英語でしゃべってます。

『 』は念話です。

ややこしいですが、頭でそう思いながらお読みください。

 真新しい白い学生服。服の端はパイピングがされていて、それが独特のラインを描いている。僕が着ているのは赤色だ。なんでも入学した年によってこのパイピングは決められていて、今年は1年が青、2年が赤、3年が黄になっているらしい。この色使いは中等部と高等部が同じだから、ノリとゼンの二人も紺地に赤だったのは、二人も2年生だから。この前聞いたのだが、この学校の寮、中学生と高校生が2人ずつの4人部屋だが、ラインが同じ生徒が同じ部屋に入るらしい。で、赤、青、黄と、順番に部屋が並び、ネームプレートの枠が、その色で囲まれているのだそうだ。自分の部屋以外気にしてなかったが、なんか色がうるさいな、と思ってたのは、勘違いじゃなかったようだ。


 蛇足だが、このパイピングは入学年で決まる。

 中高共に落第制度があるが、留年者は一人違う色の制服で通うことになるらしい。さすがに中等部ではほとんどないようだが、高等部になるとチラホラ混じる。2留ともなるとさすがに浮くが、それでもいるのはいるらしい。色が同じになることもあり3留は認められないそうだ。病気でもそれは変わらず、そもそもの教育方針として優秀な者を育てる、ということなので、病弱者は去れ、ということのよう。いろんな意味で差別が横行しているのは、間違いない学校のようだ。



 僕は、部屋まで迎えにきた淳平と連れだって寮を出た。

 相変わらずの、あやかしである。

 盆で増えるか、と思ったけど、そもそも多くて分からないぐらいの発生率だ。

 僕らが、寮を出たとたん、何匹かがこちらに視線を向けた。


 〈さ、飛鳥ちゃん、自分で結界もどき張っちゃって。ついでに僕ちゃん様も結界に入れてくれると嬉しいわん。〉

 相変わらず、というか、いつも以上にうざいしゃべり。

 僕は黙って、霊力を広げた。淳平も入れぐらいだから、この前ノリたちと出かけたときよりも多少大きく、4メートルか5メートルぐらい。

 〈ん、いいね。消えるねぇ。あ、そうだ。先にいくほど緩くできる?〉

 〈緩く?〉

 〈うん。あのパキッて消えるのうざくない?ヤバイと思ったら近づくなって警告ぐらいして上げちゃおうよ。伸ばす感じ。できるでしょ。〉

 淳平は、僕の霊力を持つと、中央ほど濃く、先に行くほど細く操作して、僕に主導権を寄こした。それをなんとか同じ感じで保持する。

 〈上手、上手〉

 言いながら、僕の頭を撫でようとするから、ばしっと払いのけてやった。

 〈もう、いけずぅ。〉

 僕は無視して歩く。

 集合場所は、学舎付属の校庭とのこと。徒歩10分もかからないが、さらにその時間を減らして、こいつとの会話を減らそうと早足に歩いた。


 確かに魔力を先細りさせていると、逃げる奴も増える。

 逆に言うと、見える人間からしても残酷感は減る、のか?


 足早に歩くこと数分。

 僕らは、校門前につく。

 京の町並みを意識してか、なんとなく濃い茶色で統一された校舎は、中高というより大学みたいだ。

 〈あれ、飛鳥ちゃん、ビビった?〉

 僕が校舎を見上げてると、後ろからそんな風に淳平が言う。

 〈別に。ただ学校ってのはなんか、好きじゃないんだよ。特にこの体になってからはな。〉

 〈フフ。飛鳥ちゃんも生徒と一緒に成長できたらいいですねぇ。〉

 〈うっせいわ。〉

 言いながら、注目されてるのを感じていた。

 学年ごとに色が違うのを忘れていた。


 今、ぞくぞくと入って来るのは青いラインの1年生だ。校門前で異国の言葉でわめいている怪しい上級生なんてのは、気になるのが当たり前。目立たないように、と思ってたのに、誰かのせいで初っぱなから躓きそうじゃないか。

 ニヤニヤ笑ってる淳平を無視して、僕は校門を通過した。

 通過したのは良いが、どこへ行っていいものやら。

 校庭集合、と言ったって、そこそこ広い。

 1年生は受付にいって、どうやらクラスを教えられ、場所を指定されているようだ。僕も受付?

 そう思ってぼうっとしてると、校庭から走ってくる人影が。

 「飛鳥様、ですよね。」

 なんだこいつ。

 「私、倉間葵です。」

 知ってるよね、と言ってるみたいだけど、面識はないぞ。

 「お嬢さん、生徒会の方ですか。ひょっとして帰国子女で編入生の彼を迎えに来てくれました?すいませんねぇ、日本語、咄嗟に出なくてびっくりしてるようで。」

 そこにやってきた淳平が、僕の腕を引っ張って自分の後ろに置きながら、そんな風に言った。そこそこ大きな声で言ったのは、聞き耳を立てている新入生へと知らしめるためだろう。

 「いえ、私は。」

 「あれ、生徒会の人ですよねぇ。その紫の腕章、生徒会でしょ。」

 「それは、そうですけど。」

 倉間と名乗ったその女生徒は、チラチラと僕を見ながら、淳平に遮られている。倉間?そうか、鞍馬の頭目の娘か。そういや3年と言っていた。前にいるのは数少ない黄色だ。

 「生徒会のお仕事で、編入生を連れに来た、他にはないはずですよね。」

 ずいっと顔を寄せつつ、淳平がいう。そして耳元で

 「仕事の邪魔をするのであれば、引き下がってもらえますか、鞍馬とことを構えたくないもので。」

 小さな声でささやくのが聞こえた。


 座間葵は、ここからでも分かるぐらいピクッとして淳平を見た。

 でもさすがに、裏の世界の教育は受けているんだろう、表情をアイドルを見るそれから、後輩を見るそれへと変えて、僕に向き直る。

 「田口飛鳥君ですね。聞いていると思いますが、特別に新入生と一緒にオリエンテーリングを受けていただきます。私の日本語、分かりますか。こちらについてきてください。」

 淳平が僕の背中を押して、前に出す。

 〈まぁ、何かあったら呼びなさい。それと、日本では先生を付けるように。姓に先生。教師には全員です。〉

 「分かってます。矢良先生。」

 僕も、淳平の丁寧な英語に、先生宛の日本語で答える。

 「先輩、お願いします。」

 僕は倉間葵にそう言って、生徒会の集まっているところへと、気を引き締めつつ向かった。

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