【完結】僕は今、異世界の無人島で生活しています。

異世界の無人島で生き残れ!
コル
コル

3、今気が付いた事

公開日時: 2023年3月31日(金) 17:33
文字数:2,563

 しかし悔しいな、せっかく肉が手に入るチャンスなのに。

 でも、島の大きさなんてどうしようもない。

 猪鹿蝶の行動パターンさえ分かればな…………あ、そうだ!


「あ、あのさ、猪鹿蝶が食べた卵芋のところ、あの辺りに罠を仕掛けるのはどうかな?」


 卵芋は全部食べられてはいなかった。

 とすれば、また食べにくる可能性は十分考えられる。

 いつ来るかわからないから見張るのは無理でも、落とし穴みたいな設置系の罠をおけばいけるかもしれない。


「ん~……」


 あれ? アリサの渋い顔が戻らない。

 いい考えだと思ったんだけどな。


「厳しい、かな……別にイノシカチョウは、卵芋が好きってわけでもないし。雑食でなんでも食べるから、たまたま卵芋が目に入って、食べただけよ」


「で、でもさ、全部食べなかったから、また食べに来るかもしれないじゃないか」


 可能性があるのなら、それにかけてもいいと思うんだよな。

 何もしないよりはマシだろうに。


「それは、食べなかったじゃなくて、食べられなかったんだと思う」


「食べられなかった? ……えと、どういう事?」


「リョーは、リーンの実を取りに、あの辺りを歩いたんでしょ? じゃあその姿を見た、イノシカチョウは……」


「ああ! そういう事か……」


 猪鹿蝶が卵芋を食べている時に、僕が来て逃げだしたと。

 なんというタイミングだ。

 待てよ、よくよく考えたら異世界人から逃げるって習性が無かったら、あの時に襲われていたかもしれないのか。

 うわ、そう考えると今更ながらめちゃくちゃ怖くなってきた。


「そんなにイノシカチョウ、食べたいの?」


 その言い方をされると、僕が食い意地が張っている人みたいに思われてるようで嫌だな。

 食べたい気持ちはあるけど、それだけじゃないってちゃんと伝えないと。


「き、貴重な肉だし、魚以外の保存食にもなるしさ。諦めるにはもったいなと思っただけだよ」


「……あ~、なるほど……本音を言うと、うちも肉は食べたいから、気持ちはわかる……わかった、何かいい方法が無いか、考えてみるね」


「た、助かるよ」


 本当に僕の言いたい事が伝わったのだろうか。

 まぁいいや、ここはアリサのひらめきに頼ろう。

 こればかりは任せるしかないしな。




「塩をバムムの入れ物の中に入れた、ミースルを食事分の量を獲った、もんどりを海の中にセットしなおした、板状にした石も手に持った……」


 拠点に持ち帰る物を手に取り、他に忘れ物が無いかもう一度辺りを見わたした。


「……大丈夫かな。じゃ、じゃあ沢に行こうか」


「あれ、拠点に戻るんじゃないの?」


「も、戻る前に使った服と土器を洗っておこうと思って」


 別に拠点に戻ってからでもいいけど、洗い物はさっさと済ませておきたいんだよな。


「なるほど、了解~」


 ついでに、これで猪鹿蝶の手掛かりも見つけられるといいな。



 と思っていたけれど、やっぱり現実は甘くなかった。

 猪鹿蝶の手掛かりなんて、全く無い状態で沢に着いてしまった。

 まぁこればかりは仕方ないか。


「ぼ、僕は石と土器を洗うから、アリサ……さんはこす為に使った服の洗濯をしてくれるかな?」


「は~い、まかせて~」


 服をアリサに渡し、僕は土器を水の中につけて洗い始めた。


「……」


 うーん……手でこすっているだけだと洗えている感じがしないな。

 スポンジとたわしが欲しいけど、当然どっちもあるわけがない。

 これは今後の事を考えてもあった方が良いよな。

 何か代用品が手に入れたいところだが……あーそういえば、小学校の頃にヘチマを育ててヘチマたわしを作った事があったな。

 手ごろな大きさに切って、30分ほど煮て、皮をむいて、種を取り出して、乾燥させて完成。

 っと、簡単な流れで作れる。


 でだ、問題はヘチマその物だ。

 この世界にある可能性はほぼないだろうけど、聞くだけ聞いてみるか。

 あればラッキーなんだし。


「あ、あのさ、ヘチマってこの世界にあるかな?」


「ヘチマ? なに、それ?」


 やっぱり無かったか。

 そうなると、バムムみたいな代わりになるものだな。


「えーと……ヘチマって、瓜の一種なんだけど……全体が緑色で、長い楕円の形をしている野菜で……そのー……えーと……」


 どうしよう、これ以上言葉が出来ない。

 思ったよりヘチマの説明が難しいぞ。


「ウリ? 全体が緑色で、長い楕円の野菜……う~ん、ごめん。いっぱい候補があって、どれの事を言っているのか、わからないや」


「あー……」


 そうだよな。

 流石に説明不足すぎてわからないよな。


「……ご、ごめん、今のは忘れて……」


「? リョーが、いいのなら」


 とりあえず一度置いておいて、それっぽいのを見つけたらアリサに聞いて確認。

 ヘチマみたいな物だったらヘチマたわしを作ってみよう。


「こんな、ものかな。よっと――」


 アリサは洗っていた服を絞った後、勢いよく振りパンッと辺りに鳴り響いた。

 へぇー、こっちの世界でも同じ事をするんだな。


「ねぇねぇ、こんな感じで、いいかな?」


 アリサは服を広げて、僕に確認して来た。

 汚れが目立つほどの事はしてないし、水洗いでも綺麗になっているな。


「そ、それでいいよ。そこの日の当たる木の枝にでもかけて、干しておいてくれる?」


「うん、わかった」


 干された服がそよ風で揺れている。

 こう綺麗になった物を見るのって、なんか気分が良いよな。

 綺麗に……か。


「……」


 目線を洗濯物から自分の着ている服に移した。

 そういえば、雨で濡れて以降はこの服を洗濯していないな。


「くんくん……うーん……」


 服の一部を引っ張って臭いを嗅いでみた。


「臭い……かな?」


 まぁ臭くなくても、流石に洗濯はしないといけないよな。

 清潔にするのもサバイバルだと大事な事だし。

 そうと決まれば、今夜あたりに灰汁作りをしておこう。

 で、明日は僕とアリサの服を洗濯……あっ! そうなると僕の着る服が無いじゃないか!

 じゃあ服が流れ着くまであきらめるか? ……いや、それだといつになるかわからないから駄目だ。


 うー雨に濡れた時は1人だったから裸になったけど、流石にアリサがいる前では無理。

 ヘチマの代用とか考えている場合じゃないぞ。

 服だ、服の代用を早急に手に入れなければいけない!


「えーと……えーと……えーと……えーと……」


 僕は必死になって頭を回転させつつ辺りを見わたした。

 あるのは葉、葉、葉。

 ぐおおお! 葉っぱ1枚で前の部分を格好しか思いつかない!!

 裸よりましかもしれんが、そんな格好もできるわけがないよ!!

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