【完結】僕は今、異世界の無人島で生活しています。

異世界の無人島で生き残れ!
コル
コル

7、出来上がり

公開日時: 2022年12月18日(日) 17:32
更新日時: 2022年12月22日(木) 12:22
文字数:3,051

 朝日が昇り、辺りが明るくなってきた。

 ああ、もう朝か。

 ……眠い……眠いけど今日も1日頑張らないと。

 僕はベッドからゆっくりと起き上がり、横で寝ているアリサに声を掛けた。


「ア、アリサ……さん、起きて。朝だよ、おーい」


「……んっ……うう……」


 僕の声にアリサが目を覚まし、ゆっくりと上半身を起こした。


「ふあ~…………おはよ~……リョーって、朝早いよね~……」


「そ、そうかな。アハハハ……」


 早いんじゃなくて、ただ寝れていないだけです。

 こればかりは自分の問題だから、アリサに文句を言っても仕方ないのが悲しいところだ。


「え、えと……じゃあ朝の支度しようか」


 今までの野宿とは違って、今日から拠点で生活を開始する。

 となれば朝の支度が当然やらないといけない。


「わかったわ。あ~それにしても、ここから沢まで行って、顔を洗いに行くのは面倒ね」


 確かに朝から歩いて顔を洗いに行くのは面倒だ。

 まぁ水汲みもかねてだから、結局は沢に行かないといけないんだけど……その辺りも考えないといけないか。

 でも、今はその前にやらなければいけない事があるんだよな。


「そ、その前にやらないといけない事があるんだよね……」


「ふえ? 顔を洗うより、先にやる事?」


「そ、外のかまどとシェルターのかまども火が消えている……つまり……」


 僕はひもぎり式道具を手に取り、アリサに見せた。

 そう、真っ先にやる事は火おこしだ。


「……ああ……そっか……そう、だね……」


 道具一式を見たアリサはうんざりした様子。

 その気持ちすごくわかる。

 朝起きて早々に肉体労働をしないといけないんだからな。

 でも、こればかりは必要な事だからやるしかない……。


「そういえばさ、火おこしって、1人でも出来るの?」


「……へっ?」


 火おこしの準備をしていると、アリサが不思議な事を聞いて来た。


「そ、それはできるけど……」


 何でそんな事を聞いてくるんだろう。

 まさか、自分だけ楽したいとか考えているんじゃないだろうな。

 おいおい……無人島でそれは許されないぞ。


「あっ! 誤解しないで! うちが楽したいとか、そういう訳じゃないから!」


 僕の思った事が顔に出てたのか、アリサは慌ててそれを否定して来た。


「リョーが居るから、今は火をおこせるけど……うち、1人だと……」


「あー……なるほど」


 そうか、今までアリサは火の魔法でつけいたんだものな。

 この島に来てからも僕と2人でやっていたし。


「だから、いざって時にうち1人でも、火を起こす方法を知りたいなと」


 確かに……僕が病気や怪我で動けなくなってしまったら、火が無い状態になってしまう。

 それは非常に良くないぞ。水同様に火も重要だからな。

 けど、まいぎり式の道具はまだ作れない……なら、きりもみ式とゆみぎり式の2つを説明しておくか。


「わ、わかったよ。えと、僕が教えられるのはきりもみ式とゆみぎり式の2つだね」


「ふむふむ……きりもみ式と、ゆみぎり式」


「きりもみ式は、この木の棒を両手で回転させて火を起こす方法」


 僕は手にしていたひきり棒を両手に挟み、手を擦ってひきり棒を回転させる所をアリサに見せた。

 ……ちょっと見せただけなのに、もう手のひらが痛いぞ。

 やっぱりこのやり方だと慣れている人がやらないと駄目だな。


「ゆみぎり式は……ちょっと待ってね」


 僕は頑丈そうで少し曲がった枝を拾い上げ、両端に蔓を縛って簡単な弓を作った。


「この弓の蔓をひきり棒に巻き付けて…………こんな感じで、回転させて火を起こす方法」


 弓を前後に動かして、ひきり棒を回転させた。

 うーん……この枝は駄目だな。

 頑丈だけど、しなりがあるからうまくひきり棒を回せない。

 今後やるなやら気を付けないといけないな。

 これは実際にやってみないとわからない問題だった。


「なるほど、わかったわ。とにかく、木の棒を回転させればいいのね」


 厳密には、燃えやすい火口とか木の種類とかも関係あるんだけど……まぁあながちそれも間違いじゃないからいいか。


「でも、きりもみ式は、うちには無理ね」


 アリサが両手を挙げてヒラヒラと羽根を動かした。


「……確かに」


 半分以上羽になっているアリサの手だと、火きり棒を回すというのは無理だ。

 となると、ゆみぎり式にむいている枝を探さないといけないな。

 で、まいぎり式の道具作りも考えた方がいいか……。


「……ま、まぁ今日の所はひもぎり式で火を起こそうか」


 どちらにせよ、今火おこしをするのが先だ。


「うん。教えてくれて、ありがとうね」


 その後、2人して必死に火を付けた。

 アリサ1人でも火を起こせるようになるのは大切だけど、ひもぎり式で素早く安定して火おこしが出来るのも重要だよな……問題は山積みだ。




「じゃあ、行ってくるね」


「う、うん。気を付けて」


 火おこしも無事に終わり、アリサが先に沢へと行く事になった。

 僕は火の番で残り、アリサが戻って来たら交代という流れだ。


「さて、朝ご飯の準備をするか……とは言っても、今から卵芋の蒸し焼きを作る時間は無い……もう焼き卵芋でいいか」


 残っていた卵芋の殻を割り、木の棒を刺して火の傍へ置いた。


「これで良し。後は、土器がどうなったのか確認をしないと」


 シェルターの中へ入り、火が消えたかまどの炭を退かして土器を拾い上げた。


 まずは比率A……は底の部分しかない。

 縁の部分が無くなっていて、皿みたいになってる。

 その皿の部分も手に持つと粉々になった。

 予想通りと言えば予想通りだけど、なんか悔しいな。


 そして、比率B。

 これは器の形も残っているし、うまく焼けている感じだ。

 指ではじいてみるとカンカンと音が鳴っているから、十分に固まっている。

 ただ、あちこちヒビが入っているから水は入れられないな。


 最後、比率C。

 器の形がぐにゃぐにゃに変わっちゃっている。

 柔らかかったから焚火の炭の重みで変形したっぽい。

 これも失敗……と言いたいところだけど、指ではじいてみるとカンカンと音が鳴る。

 ヒビもなく比率Bよりもきれいに固まっている感じ。


 比率Bは大量のヒビ割れ、比率Cは型が無いと形が変わる。

 となると、比率Bと比率Cの間が良さそうだな。

 ……うん、アリサが戻ったらさっそくそれで土器を作ってみよう。



 アリサが戻り、火の番を交代した僕は沢には向かわず粘樹の所まで向かった。

 流石に粘樹の樹液はもう出ておらず、鱗で新しい傷をつけて採取する事にした。


「んー今後の事も考えると、毎回傷をつけて採取っていうのは良くないよな」


 それで粘樹が弱って枯れてしまっては大問題だ。

 採取方法も何かしら考えないといけないぞ。

 なんか色々やる事が増えて来てばかりだ……。


「っと、今は土器づくりに集中集中」


 比率はともかく作った粘土が火で固まる事はわかった。

 なら、今度は大き目の土器にチャレンジだ。

 比率Bと比率Cの間の比率で作った粘土に、強度をあげる為繊維状の葉を砕いて混ぜる。

 そして皿を作って、ひも状にした粘土をその周り乗せていって側面を作っていく。


「…………出来たっ!」


 サッカーボール位の大きさの器が完成。

 うーん……自分でいうのもなんだけど、これは素晴らしい物が出来たぞ。

 この縁なんて荒々しい波の様な感じですごく迫力がある。

 あれ、もしかして僕って陶芸の才能があるのでは……?


 そう思った僕は2個目、3個目と器を作った。

 どれもこれも素晴らしい出来に僕は酔いしれ、スキップをしながら拠点へと戻った。

 こんな才能があるなら有名な陶芸家になれちゃうんじゃないかな?

 もしかしたら、1個数百万円で売れちゃうかも!?

 と本気で思っていた。


 僕の作品を見て、アリサがお腹を抱えて大爆笑する……その時までは……。

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