「おいフォルトゥーナ! お前ばっかり活躍してねえで少しはオレを立てろよ! お前だけおいしいところを持っていくんじゃねぇ! 弟は兄に尽くすものだぞ!?」
5人組の冒険者パーティのリーダーを務める勇者であるフォルトゥーナの兄が、オブラートに包むことすらせずに弟の活躍に苦言をズケズケと言う。
フォルトゥーナが活躍したら「目立つな」と怒り、一歩譲れば「サボってないで戦え」と怒る。
食事の際も早く食えば「俺より先に食事を終えるな!」と怒り、遅ければ「モタモタしてねえでさっさと食え!」と怒る。
とにかく弟であるフォルトゥーナの一挙手一投足その全てが何もかも気に入らなくてたまらず、2人の間では文字通り毎日常に休むことなく口論が続いていた。
そんな「水と油」のような仲の双子だったが、ついに別れの時が来た。明日の予定を話し合うミーティングの冒頭で、解雇通達が出されたのだ。
「!! パーティを抜けろだって!? ついにそう来たか……」
フォルトゥーナはパーティリーダーである双子の兄から突然の解雇通知を言い渡された。元々仲が悪かったのでいつかこの日が来るとはある程度は覚悟していたが、それが最悪の形で的中した。
「ああそうだ。ギルドにもお前のパーティ脱退手続きをしたし、もうお前はオレのパーティに居ちゃいけないんだよ!
兄より優れた弟なんて存在してはならないんだよ! どいつもこいつも、いつもテメェの事ばかりチヤホヤしやがって! パーティのリーダーはオレなんだぞ!?」
「兄貴がそう言うなら仕方ないな。分かった、出てくよ」
生まれた時からずっと一緒だった双子の兄弟は初めて別行動をとることになった。これが2人の人生を大きく変えることになるとは、お互いに気づいていない。
翌朝……パーティメンバーはリーダーに言いたいことがあると言って話を切り出した。
「昨晩ずっと考えてたんですけどもういいや、俺このパーティ抜けるわ。お前の横暴にはもうついていけん」
「え……?」
「私も抜けるわ。お世話になりました、じゃあね」
「な、なに……?」
「俺も抜けるわ。じゃあな」
「ちょ、ちょっと待て! 正気かお前ら!?」
突如のパーティメンバー全員の離脱にリーダーは大いに戸惑う。
「お、お前たち正気か!? 俺たちはA級パーティなんだぞ!? せっかくここまで育ててきたパーティを捨てる気か!?」
「ああそうだ。地位よりもパーティメンバーの仲の方が大事だ」
「リーダーと来たらずっとフォルトゥーナの事を怒鳴ってばかりでしょ? あれを聞いてると食事が不味くなるのよね」
「お前はパーティのリーダーとして最低限の事は出来ているとは思う。でもフォルトゥーナに対してあそこまで横暴な態度に出ていい理由にはならない。1人になるだろうが、まぁ頑張れ」
「どいつもこいつも! もういい! 辞めたきゃ辞めろ! どいつもこいつもクビだクビだクビだクビだああああああああああ!!!!!」
双子の兄は怒りに任せてパーティメンバー全員のクビを切った。
この時の彼は知らない。自分には「超凶運」スキルが付いていてこれから不幸が怒涛の如く押し寄せることに。そして、今までは弟のフォルトゥーナについていた「超爆運」スキルで相殺していたことに。
この後彼は不幸ばかりの人生を送ることになるが、それは後のお話。
【次回予告】
勢いでパーティメンバー全員をクビにした勇者。新たにメンバーが集まるが、彼の不幸の始まりはそこからだった。
第2話 「戦士不幸に翻弄されて死ぬ」
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